
全世界83億人の音ゲーマーの皆さん、音ゲーは好きでしょうか。筆者は音ゲーが好きで好きでたまりません。そしてADVゲームも大好きです。なので、ストーリーも音ゲーも濃厚なタイトルなんて最高としか言いようがないわけです。しかしそんな音ゲーがそう出るなんて・・・と思っていたら出るじゃないですか。そう、それが今回紹介するlowiroによるリズムゲーム『In Falsus』です。
つい直近同じ会社から出ている『Arcaea』も音ゲー界隈では非常に盛り上がっていたのもあり、その続編となれば期待値も上がるというもの。今回、発売に先駆けて本作を遊ばせていただく機会を得ましたので、その手触りをお届けします。音ゲーも物語も、「嘘」はつけない。
嘘をつけば必ずバレる世界で、5人の少女が動き出す

まずは本作のシナリオから紹介します。舞台は近未来。それぞれ別々の日常を過ごしていた5人の女子高生が、ある日突然、政府直轄のプログラム「AARC(アーク)」への参加を命じられるところから、物語は動き出します。

この世界の住人には、着用者の精神状態を通知する首輪「バインド」の着用が義務付けられています。感情が大きく揺れ動けばインジケーターの色が変わり、怒りや焦燥を覚えれば赤みを帯びる。そして言動と感情が一致しない発言――つまり嘘をつけば、警告としてノイズが走る。
つまり嘘をつけば、必ずバレるのです。優しいお世辞も、強がりも、その場しのぎの言い逃れも許されない。一見すると誰も偽らない誠実な世界のようでいて、実際に少女たちの内心を覗いてみれば、そこにあるのは「隠せないからこそ生まれる苦悩」ばかりでした。息が詰まるような閉塞感が、序盤からずっと通奏低音のように鳴り続けています。

なお、序盤のストーリーについては公式Xでも概要が公開されているので、雰囲気だけでも掴んでおきたい方はそちらを覗いてみるとよいでしょう。そして当然ながら、シナリオは第2章のその先へと続いていきます。個人的には2章までは長い助走だったなという印象すらありました。その先で彼女たちが何を見ることになるのかは、ぜひご自身の目で確かめてください。あと要所要所のボス楽曲出現時の演出、すごいです。本当に。
5人分のタイムラインが、同じ出来事の“裏側”を見せてくる

本作のシナリオは、メインキャラクター5人それぞれの視点から描かれます。そしてこれを支えているのが、視点ごとに用意されたタイムラインの仕組みです。
同じ時間軸を別のキャラクターの視点でなぞってみると、彼女はそのときまったく別の場所で別のことをしていたと分かる。あるいは、こちらの視点では何気なく流された一言が、向こうの視点では深く刺さっていたと分かる。同じ出来事を、誰がどう受け止めていたのかが、視点を切り替えるたびに立ち上がってくるのです。
嘘がつけない世界を舞台にしておきながら、実際には「言葉にされなかった本心」が山ほど積み上がっていく。この構造が実に巧みで、筆者は気づけば「さっきのあの場面、この子の側から読み直したらどうなるんだ?」とタイムラインを行ったり来たりしていました。考察が好きな人ほど沼にハマるタイプの作りです。
エンカウント―勝てば楽曲が解禁される、カードと音ゲーの複合戦

シナリオを読み進めていくと、敵と対峙する「エンカウント」が発生します。これがいわゆるリズムゲームパートであり、そしてこのエンカウントに勝つことで楽曲が解禁されるという仕組みになっています。曲を手に入れるにはまず勝て、というわけです。
エンカウントに臨む際、プレイヤーはカードを5枚セットします。カードにはそれぞれ攻撃力と防御力が設定されており、
攻撃力の合計値が高いほど、相手に与えるダメージが大きくなる
防御力の合計値が高いほど、相手のダメージが小さくなると共にスタート時点の総体力になる
という、分かりやすい設計です。攻撃に寄せるか、耐久に寄せるか。その判断も楽しさの1つです。
そして楽曲が始まると、こちらと相手とで互いにダメージを与え合う展開になります。ここで注意したいのが敗北条件で、自分の体力が0になった時点で、曲の途中だろうとアウト。さらに楽曲終了時点で敵の体力を0にできていなくてもダメ、加えて楽曲終了時点でクリア条件を満たしていなくてもダメ。つまり「削り切る」ことと「叩き切る」ことの両方が要求されるわけです。
カードは楽曲の進行に合わせて左から順番に自動で使用されていきます。当然ながら相手側もカードをセットしてくるので、ここに読み合いが生まれます。カードには5つの属性が設定されており、敵の弱点属性のカードをセットしておくとステータスが1.25倍に。この補正がなかなか馬鹿にならず、「どうしても勝てない」という相手に対して属性を合わせ直しただけで一気に楽になった、という場面が何度もありました。腕前だけでゴリ押しできない部分があるのは、音ゲーとしては珍しい味わいです。
設計図に粒子を並べる―カード作りがそのままパズルになっている

では、その肝心のカードはどこから来るのか。シナリオを進めると手に入る「設計図」から、「クラフト」して作り出します。元となる設計図はカードを作っても無くならないこと。同じ設計図から何度でも作り直せるので、素材さえあれば試行錯誤し放題です。

クラフト画面を開くと、ヘックスマスで仕切られたマップが現れます。ここに「粒子」と呼ばれるパーツを、色に合わせて配置していくことで、攻撃力や防御力が上がっていく――という仕組みです。
また、粒子を好き放題に敷き詰められるわけではありません。使える粒子の個数には上限があり、さらに粒子同士が重なってはいけない、隣接していない粒子の塊を作ってはいけないといったルールが設定されています。これらを守らずにクラフトしようとすると、ペナルティが発生。ペナルティが1回発生するごとにクラフト時の攻撃力と防御力が減衰していき、ペナルティが3回以上発生するとステータスが0になりクラフトができなくなります(カードとして成立させるには攻撃力・防御力ともに1以上が必須です)。
つまりこのクラフト、限られたピースをルールの中でどう敷き詰めるかというパズルそのもの。「ここに大きい粒子を置きたいけど、そうすると向こうが飛び地になる……」と唸りながらヘックスマスとにらめっこする時間が、想像以上に楽しかったです。音ゲーを遊びに来たはずなのに、気づいたらパズルで頭を使っている。この寄り道の多さも本作の魅力でしょう。
粒子稼ぎとフリーモード―「負けても曲は最後まで遊べる」の優しさ

ではクラフトするための粒子はどこで手に入るのか。ここで登場するのが「フリーモード」です。
フリーモードでは、解禁済みの楽曲を好きなだけ遊べます。いわゆる音ゲーパートそのものです。そして、欲しい粒子を持っている相手を設定し、エンカウントをクリアすることで粒子を獲得できるという流れ。しかもシナリオを進めるほど、より強力な粒子を持った相手が追加されていくので、「シナリオを進める→強い粒子が狙える→強いカードが作れる→もっと強い相手に挑める」という気持ちのいい循環ができあがっています。
なお、フリーモードでは体力が0になっても楽曲のプレイ自体は続行できるという点。シナリオ中のエンカウントだと途中で強制終了ですが、フリーモードなら曲を最後まで遊べます。
ただし、粒子をもらうには通常のエンカウントと同じ勝利条件を満たす必要があるのでご注意を。「最後まで遊べる」と「報酬がもらえる」は別の話です。あと別に粒子はいらないという場合は相手を設定しなければ普通の音ゲーと同じように楽曲にクリアすることだけに専念できます。
6ボタン+マウス。左手が悲鳴を上げ、そして上達する

そして肝心のリズムゲーム部分。本作はボタン6つとマウス操作を組み合わせた、普通の音ゲーとは少々異なるスタイルです。難易度は4段階あります。
MINIMAL:最大4つのキーを使用
EVOLVED:5つのキーを使用(レーン自体は6個使う)
ULTIMATE:6つのレーンをフル活用
FORBIDDEN:6つのレーンをフル活用+2レーン以上に跨ったノートが登場

クリア条件はシンプルで、楽曲開始時点でミスゲージが15点与えられます。ミスゲージは楽曲中にミスをすると減っていき、逆に上手く演奏すると15点に戻っていきます(15点が最大)。楽曲終了時点でミスゲージの値が0以上であればクリアです。逆に言えば曲終了時点でミスゲージの値がマイナスになっていたらノルマクリア失敗です。なお、ミスゲージは-15点で下げ止まりするので、前半でミスを沢山出しても後半で巻き返せばクリアの可能性があります。もちろんその逆も然りですが…
また難易度についてMINIMALとEVOLVEDは楽曲の解禁と同時に遊べるようになりますが、その上は段階的な解禁制です。EVOLVEDの難易度6以上の譜面を一定数クリアすることでULTIMATEが解禁され、さらに難易度8以上のULTIMATE譜面を一定数クリアすると難易度10のFORBIDDENが解禁、難易度10のFORBIDDEN譜面を一定数クリアすると難易度11のFORBIDDENが解禁……と実力に合わせて難易度が解禁されていきます。腕前がそのまま鍵になっていく構造で、上級者ほど「まだ先がある」と分かるのは嬉しいところでしょう。

そして最後に、これから遊ぶ方へ筆者から助言です。初期配置では左手でキーボードを叩くことになるのですが、右利きの方はキーコンフィグで右手側のキーを押す配置に変更するのが個人的にはおすすめです。マウスと利き手の兼ね合いはありますが、筆者はこちらの方がずっと馴染みました。
とはいえ、どちらにせよ小指まで使うことになるので、最初はまず間違いなく苦心します。押したいキーが押せない、押せたと思ったら別のキーを巻き込んでいる、その繰り返し。筆者も最初は自分の手が他人のもののように感じられました。
しかし、これがまた良いのです。指が一本ずつ言うことを聞くようになっていく快感。昨日は絶対に取れなかったフレーズが、今日は指が勝手に動いて拾えている。あの瞬間のためだけに音ゲーを遊んでいると言っても過言ではないわけですが、本作はその快感をきっちり用意してくれていました。

嘘のつけない世界で、5人の少女が何を見て、何を隠しきれなくなっていくのか。その物語を追いかけると楽曲が解禁され、楽曲を叩けば粒子が手に入り、粒子を並べればもっと強いカードができて、さらなる物語に触れることが許される。
シナリオを読む理由と、譜面を叩く理由と、パズルを解く理由が、全部つながっている。これが『In Falsus』を触っていて一番気持ちよかった部分でした。
『In Falsus』は2026年9月9日よりSteamにて発売中です。収録楽曲は70曲以上、うち40曲以上が本作のために書き下ろされたオリジナル楽曲です。デモ版も配信されているので、まずはあの独特な操作感だけでも味わってみてはいかがでしょうか。
嘘のつけない世界の真実は、あなたの指先で解き明かされるのを待っています。











