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Game*Sparkレビュー:『東方紅魔郷:New Classic』誰でも遊びやすくなったリメイクでありながら、「挑戦」と「上達」のストイックさは健在

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Game*Sparkレビュー:『東方紅魔郷:New Classic』誰でも遊びやすくなったリメイクでありながら、「挑戦」と「上達」のストイックさは健在
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『東方紅魔郷 ~ the Embodiment of Scarlet Devil.(以下、紅魔郷)』は、2002年の「コミックマーケット62」にて頒布されました。可愛らしいお人形さんのような少女たちに、魅力的なキャラクター設定、エレガントでドラマチックな音楽。「東方Project」の人気はインターネットを中心に爆発的に広がり、大人から子供、さらにはゲームをプレイしていない人までも惹きつけました。特に『紅魔郷』の人気は根強く、今でも盛んに『紅魔郷』のファンアートや音楽アレンジなどの二次創作が行われています。

しかし『紅魔郷』はPC専用で、他機種への移植はありません。そのため、ディスクを入手しなければ遊ぶことができませんでした。さらに現行のOSでは正常に動作せず、非公式のツールやパッチを当てる必要があるなどプレイまでのハードルの高さも存在します。キャラクターや音楽から興味を持ったものの、環境が整わず指をくわえていた人は多かったのではないでしょうか。そもそも弾幕STG自体を遊んだことがない、という人もいるかもしれません。筆者もかつて中学生だった頃に、そうした歯がゆさを味わったことがあります。

『東方紅魔郷 ~ the Embodiment of Scarlet Devil.』(2002)

長らくプレイしづらい作品となっていた『紅魔郷』ですが、24年の時を経て『東方紅魔郷:New Classic(以下、紅魔郷NC)』として現代に蘇りました。『紅魔郷NC』は、成長した開発者(開発者談)によってグラフィックや音楽が作り直されたNew Classic版と、2002年当時のゲームを可能な限り再現したClassic版の2つを収録しており、まさに誰でも手の取りやすい作品となったのです。

本記事では、そんな『紅魔郷』をリメイクした『東方紅魔郷:New Classic ~ the Embodiment of Scarlet Devil.』のレビューをお届けします。

「チャレンジモード」でさらに遊びやすく

『紅魔郷』は通常面6つとEXステージ1つで構成された縦型弾幕シューティングです。難易度EASYのみ全5面となり、EXステージはNORMAL以上のノーコンティニュークリアで解放されます。

自機は攻撃範囲に優れる神社の巫女「博麗霊夢」と移動速度に優れる魔法使い「霧雨魔理沙」の2人で、それぞれ2つのショットタイプが用意され、合計4種類の組み合わせを楽しめます。攻撃力は遠距離だと低めだがホーミングが便利でボムの効果時間も長い「霊の御札」や、絶大な威力と範囲を誇るが移動速度が遅くなるボムを放つ「恋の御札」など、どれも長所と短所がハッキリした性能です。

原作には残機制しかありませんでしたが、New Classic版ではゲームオーバーなしの「チャレンジモード」が追加され、初めてSTGに触れる人でも1回で最後のステージまでたどり着けるようになりました。

さらに、後の作品で採用された低速移動時の自機の当たり判定表示や、画面下部の赤く光るエネミーマーカーが追加され、遊びやすさ・倒しやすさも向上しています。オリジナル版にはこうした補助要素が無かったため、感覚で自機の当たり判定を掴むしかなく、またボスの位置も目線を上に向けないと把握できませんでした。

画面下に赤い光が表示されているので、弾避けに専念していてもボスの位置を確認しやすい。

上部に移動すればフルパワーでなくてもアイテムが回収できる仕様に変わり、これによって得点稼ぎやエクステンド(※1)のしやすさにもつながっています。
筆者もオリジナル版の『紅魔郷』ではNORMALのノーコンティニュークリアが叶いませんでしたが、こうした仕様の追加によって『紅魔郷NC』にて条件を達成し、EXボスの「フランドール・スカーレット」を拝むことができました。

※1 1000万、2000万、4000万、6000万と得点ごとに残機が1増える仕様。

クリアまでにミス回数は20を超えたが、最後まで遊べることはやはりうれしい。

オリジナル版の『紅魔郷』には無かった、クリアしたボスのスペルカードを練習できる「スペルプラクティス」も搭載され、まさに「これがあればもっとやりやすいのに……」と多くのプレイヤーが感じていたであろう願いが反映された、かゆいところに手が届くリメイクに仕上がっています。

では、これらの機能追加や「チャレンジモード」によって、『紅魔郷NC』は誰でもすぐにクリアできる簡単な作品になっているのでしょうか。もちろん、答えはそうではありません。「東方」シリーズに流れる「挑戦し、上手くなること」は、本作にもしっかりと存在しているのです。

主役は「弾幕」、上達と挑戦し続ける心が求められる

『紅魔郷』のシステムはいたってシンプル。「撃ち、躱し、倒す」の3要素をベースに、ショットを撃ちながら次々と放たれる弾幕を避けていきます。通常移動で大きく移動しつつ、ボタンを押して「低速モード」に切り替えれば、より精密に弾幕の隙間を縫うような回避が可能です。

そして「スペルカード」という名を持つ「ボム」を切り札にして弾を消し、自機を守りながら高威力の一撃を叩き込むことができます。ボムの入手手段は限られており、道中に登場する中ボスを倒して1つ入手するか、残機を1つ増やすかの2種類しかありません。

ほかにも敵の弾を当たり判定ギリギリで避けた時に点数ボーナスが発生する「Glaze」などもありますが、基本的にはこれらがプレイヤーが行う主な操作となります。

おそらく本作が弾幕STG初体験となるプレイヤーであれば、「STGが苦手な方向けです」と書いてあるEASYを最初に選び、その弾幕の苛烈さと「苦手な方向け」という文言に首を傾げるでしょう。なんとかEASYをクリアしたかと思えば、5面ボスのメイド「十六夜咲夜」に問答無用で突き返され、バッドエンディングを迎えてしまいます。そしてグッドエンディングのために「おおよそほとんどの人向け」であるNORMALに突入すれば、「これって本当にノーコンティニュークリア出来るの?」と思うはずです。

「東方」シリーズでは、多くの作品でグッドエンディングの条件に「ノーコンティニュークリア」が課せられています。作品によってはEASYでも見られる場合と、NORMAL以上に限られるものがありますが、『紅魔郷』ではそもそもEASYが5面までしかないため、グッドエンディングを見るにはNORMALをノーコンテニューしなければなりません。

ならば本作で追加されたゲームオーバーなしの「チャレンジモード」でなら何度ミスをしても見ることが可能ではないか……と思われるかもしれませんが、そう単純にはいきません。チャレンジモードでグッドエンディングを迎えるにはミス回数5回以内(エクステンドでミスが-1される)のクリアが条件となり、初期残機を5に増やした場合の従来の残機制である「標準モード」とほぼ条件は変わらないのです。結局はどちらのモードを選んでも、プレイヤーは上達しなければグッドエンディングを見ることができない仕様となっています。

こうした設計は「初心者お断り」のように見えてしまい、せっかく初心者に向けたモードを搭載したというのにグッドエンディングが見られないのは不公平ではないか、リメイクではEASYでも6面まで遊べていいのではないか、という懸念が浮かびます。実際『紅魔郷』以降はEASYにも6面が含まれていますし、難易度によって変わるべきなのはゲームの難しさだけで、それ以外の要素はすべて平等にすることこそ、どのユーザーも楽しめるゲームが目指すべき姿と言えるかもしれません。

しかしそれでは「弾幕シューティング」である本作の面白さには辿り着けません。ただボスに辿り着いて1度倒しただけでは、弾幕を躱し耐える緊張感や、パターンを覚え、適応しながらプレイを繰り返す度に感じる自身の上達、 そして自由に表現される弾幕の美しさを感じる前にプレイを終えてしまう。オリジナル版のパッケージに「弾幕シューティング本来の面白さを追求した、究極の形状美」「弾幕好きが弾幕好きの為に贈る」とあるように、本作はいわば「弾幕」のために存在しているのです。

例えば6面ボス、つまりラスボスの「レミリア・スカーレット」には、紅魔館の住人たちの弾幕を繰り出すフェーズがあります。これらは見た目上も違いが出る上、弾を見て避け方をある程度想定することが可能です。レミリアは紅魔館の主なため、館の従者の弾幕を使用できるのにも納得がいきます。キャラクター設定と弾幕の演出が、しっかりと噛み合っているのです。

特に、レミリアが咲夜を思わせるナイフを用いて繰り出す通常弾幕の美しさは、楽曲「亡き王女の為のセプテット」とタイミングまで計算し尽くされたように噛み合っており、本作でも印象に残る弾幕となっています。スペルカードではない通常弾幕ですが、筆者はこの弾幕を初めて見た時、今まで避けてボムを使い突破する存在だと思っていた弾幕に「美しい」と感じ、魅入られました。

背景の夜空に紅く光る月とのコントラストも幻想的。

音楽から本作に興味を持ちプレイする方も多いと思われますが、筆者はプレイした後にサウンドトラックで楽曲を聴いたところ、どこか物足りなさを覚えました。では、何故そう感じるようになったのでしょうか。それはステージの構成や画面全体を含めて曲が作られているからであり、弾幕も曲の一部だからです。単体でももちろん十分に魅力的ではありますが、弾幕と組み合わさって初めてその真価を発揮すると言えます。そうした弾幕と楽曲を纏った彼女たちは、より鮮烈な存在としてプレイヤーの記憶に残るはずです。

殺伐としているようでどこかゆるくもある台詞も、独特の味をもたらしています。

このように、本作は弾幕の魅力を引き出すようにキャラクターや背景、音楽が作られています。そのためには、たとえ難易度によってプレイヤー間に体験の差が生まれ、平等とは言えないゲームになるとしても、プレイヤーが自力で「弾幕」の面白さに辿り着けるようにしたのでしょう。

綺麗になった『紅魔郷』がそこに

『紅魔郷NC』は基本的にステージの構成やパターン、演出は原作と変わりません。一部道中に少し敵が増えているなどの違いは見られるものの、2面ボス「チルノ」の開幕時に頭上へ陣取れば弾を回避できることや、5面道中での上部回避といった安置は、そのまま残されています。

これらは今見てもほとんど直す必要が無いほど『紅魔郷』が完成されている、と言えるでしょう。『紅魔郷』原作をそのまま現代に合わせて遊びやすくするリメイクとしてはこのような判断も決して間違いではないのですが、本作はボスの登場演出や次の面に入る時の字幕演出などもほぼ同じなため、ややシンプルな印象を受ける面もあります。『紅魔郷』以降の作品はさらに凝った演出になっているだけに、もう少し演出面に手を加える余地も残っていたように感じられました。

また背景の彩度や明度が高くなったことにより、一部のステージ(特に2面道中)において弾幕が背景と同化し見づらく感じる箇所が存在します。致命的というほどではありませんが、弾の見やすさにはもう少し気を配ってほしいところです。

原作(画像左)は背景の彩度が低く白い弾が目立って見えるが、NC版(画像右)は背景が明るくなっており、白い弾が一瞬水面の反射光に見えてしまうことがある。

当時のZUN氏のテイストを損なうことなく再現されたイラストの完成度は非常に高く、各キャラクターの印象は全く崩れていません。ドットで表現されたアニメーションも非常に可愛らしく、生き生きとしています。プレイ中はなかなかキャラクターを見る余裕がありませんが、現代はどのハードでも気軽にスクリーンショットやクリップを残せますし、リプレイ機能も存在します。そちらでじっくりと動きを鑑賞してみるのも良いでしょう。

ルーミアの切れて見えなかった腕も表示されるように。
楽しそうに弾幕を飛ばすチルノの動きは、かなりかわいい。

ZUN氏による音楽アレンジも、キャラクターの個性がより色濃く反映されたリッチなものになっています。特に3面道中の「上海紅茶館 ~ Chinese Tea」は、ボスである門番「紅美鈴」のルーツに合わせ、より中華風の彩りを加えられました。改めて通して聴くと、3面までの明るく元気な曲から4面はシリアスに、5面は激しいロック……と、ラストに近づくにつれプレイヤー自身の緊張感も高まっていくよう設計されていると感じます。

もちろん、アレンジ版の楽曲コメントも見られます。

原曲に切り替えることもできるため、気分に合わせて聴き比べも楽しめる仕様です。切り替えてみると、本作のアレンジも画面を彩る枠のイラストや背景と一体になるよう作曲されたのだろうと実感できます。原曲に切り替えると、聞き慣れていることもあり落ち着くような感覚を覚えるのですが、それでも本作の画面にしっくり馴染むのはやはりアレンジ版なのです。

こちらは音楽の尺に合わせて追加されたと思われる妖精たち。いきなり自機狙いが飛んできて驚くところ。

ちなみにClassic版をプレイしたところ、体感としては原作とほとんど変わりませんでした。もちろん、こまかな部分に相違点はあるかもしれませんが、通常のプレイでそれを意識する場面はほとんどありません。

左がオリジナル版で、右が移植版。画質もそのまま再現されています。

本作は2002年の『紅魔郷』に細かな補助要素を追加し、誰もが挑みやすくなるような調整を加えたリメイクです。人気のキャラクターもZUN氏の当時のイラストのイメージを崩さず綺麗に描き直され、音楽もまた原曲で表現しきれなかった部分を汲んだZUN氏本人のアレンジがなされています。演出面などの追加は少なく、リメイクとしてやや寂しい部分も残りますが、シンプルでストイックな弾幕シューティングとしては何度も繰り返し遊びたくなる魅力があり、「東方」シリーズの入口として適したタイトルと言えるでしょう。

『紅魔郷』は難しいゲームです(原作にあるZUN氏のおまけテキストによると、難易度は抑えてあるそうですが……)。だからこそ、コンティニュー3回以内でレミリアに到達した時や、スペルカードの「レッドマジック」を避けきりノーコンテニュークリアを果たした時の達成感は、何者にも代えがたいものがあります。

チャレンジモードで最後まで戦えるようになったEXボスのフランドールにも、ある条件を達成すれば新規の弾幕と楽曲が見られるようになっています。そのためにはきちんと上達して倒せるようにならなければならず、新たに上達する意味と目標が提示されました。こちらもただ簡単になったわけではないのです。もっとも、筆者の腕前でそこまでたどり着けるかは正直まったく自信がないのですが……。

こうして何度も挑戦を繰り返した頃には、きっと『紅魔郷』に登場する彼女たちのことがもっと好きになり、弾幕という表現そのものの面白さにも気づけるようになっていることでしょう。リメイクと移植、どちらとしても非常によく出来ているため、筆者としては更なるRepriseとして、いつか『妖々夢』や『永夜抄』も遊べるようになってくれれば嬉しい限りです。

Game*Spark レビュー 『東方紅魔郷:New Classic ~ the Embodiment of Scarlet Devil.』 PC/PS5/スイッチ/スイッチ2 2026年9月10日

弾幕の美しさが詰まった色褪せない名作、シンプルでストイックな弾幕シューティング

GOOD

  • 原作の魅力そのままに細かな補助要素を追加し遊びやすくしたリメイク
  • 「チャレンジモード」の追加により、初心者でも最後の面まで遊べるようになった
  • ステージやパターンに変更はないが、今見ても色褪せない弾幕の美しさ
  • プレイヤー自身が上達することを大事にした設計
  • EXボスにも条件つきで見られる追加の弾幕と楽曲が用意され、新たな目標が増えている

BAD

  • 一部のステージで背景と弾幕の明度の差が少なく、弾が見づらくなっている
  • 移植も収録されているので、リメイクとして演出を派手にする余地もあったように感じる
  • グッドエンディングを見られない仕様は、上達することに重きを置いた設計とはいえ一部プレイヤーには厳しい面も
《ライター:もぐ水,編集:みお》

ライター/カントウ25区 もぐ水

主にアクション・シューター・ADVなどジャンル気にせずいろいろ遊びます。 サウンドがカッコいいゲームやロボットが出てくるゲーム、血みどろなゲームが特に好きです。

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編集/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

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