冷たい雨の中から“熱”を探す。『Rain98』は、世紀末の厭世感で日常の光を描く物語【体験版プレイレポート】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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冷たい雨の中から“熱”を探す。『Rain98』は、世紀末の厭世感で日常の光を描く物語【体験版プレイレポート】

雨原玲奈という女にどっぷりハマりこんだ、3時間の体験版。

連載・特集 プレイレポート
冷たい雨の中から“熱”を探す。『Rain98』は、世紀末の厭世感で日常の光を描く物語【体験版プレイレポート】
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もしもあの世紀末に、恐怖の大王が降臨して
世界が終わっていたならば――。

ゲームレーベル“C#4R4CT3R”は、1998年の日本を舞台にしたサイコサスペンスADV『Rain98』の体験版配信を2026年10月17日より開始しました。

本作で綴られるのは、世界の滅亡を願う男女ふたりの物語。とある事情により2026年からタイムスリップした主人公とヒロイン・雨原玲奈(CV:土屋李央)との共同生活が描かれます。

ダウナー美少女と雨の音がする部屋でいっしょに暮らす――こう書くと何やら素晴らしいものに思えますが、その生活はどこか仄暗く、厭世と諦観に満ちたものでした。

◆「完全じゃないけど、無いよりはマシ」きっと世界はそういうもの

この世を生きていて、ある種の閉塞感を感じたことは無いでしょうか。スマートフォンを見ても流れるのは戦争、不景気、物価高など憂鬱なニュースばかり。世界が元気だった時代は遥か過去。現在に希望はなく、未来への展望は無に等しい。

そんな世界を終わらせたい人が、実際に“終わらせる力”を持ったら。『Rain98』は、そんな物語だと言えるでしょう。

主人公は、現代である2026年を生きる22歳の若者です。仕事で疲れ、いつものように横になりながらスマートフォンを見て、何の価値も見いだせないこの世へ静かに沈んでいく。そんな彼が、なぜか1998年にタイムスリップしてしまったことから、物語は動き始めます。

彼がタイムスリップした先は、少女・雨原玲奈の住む一室。一度は追い出された彼ですが、とある事情から彼女とともに共同生活を送ることに。

その理由は、彼女があることに興味を持ったからでした。それは、「彼が未来から来た」ということ。1999年7月、世紀末に現れる恐怖の大王によって世界が滅ぶ――。そんな予言の先から来た主人公に、玲奈はあることを尋ねるのです。「そこは、どんな世界か」と。

「世界はどこまでいっても、何も変わらないんですね」

未来がどうなっているかは、先ほども書いたとおりです。世紀末の閉塞感に囚われた1998年も、不透明な未来をひた歩く2026年も、そう変わりはありませんでした。

そして彼女は、そんな未来から来た主人公へ、とある事実を告げます。曰く、自分こそが1999年に滅びをもたらす大王・アンゴルモアであり、主人公にはその手伝いをしてほしい、と。

そうして、雨原玲奈と主人公の、奇妙な共同生活が始まるのです。

世界を滅ぼすには、自分の中に“熱”が必要だと玲奈は語ります。その熱とは、心の揺れ動き。誰かと何かをすることで、溜まっていくものだと。

熱は“エンジェルシール”という印になり、そのシールを“エンジェルパスポート”というシール帖へと貼っていく。シールの枚数が100枚になれば、熱が玲奈の体を食い破って膨張し、世界を滅ぼすことになるのだとか。

ここが玲奈の部屋。基本的にはこの場所を中心に、各種行動を選びながらシールを集めていくことになります。

シールの溜めかたはいくつもあります。玲奈といっしょに物を食べたり、公演でブランコに乗ったり、本の間違い探しをいっしょにしたり、コインランドリーに行った帰りに相合傘をしながら帰ったり。プレイヤーは自由に玲奈と交流しながら、シールを貼っていくことになるのです。

……さて、ここで「おや?」と思った人もいるのではないでしょうか。「さも絶望しかないみたいな顔しといて、やってることはただのイチャイチャ同棲生活じゃねえか」と。「世界より先にお前らが先に滅べ」という感想を抱いた方もいるかもしれませんね。

渋谷でデートもします。ポテト談議に花を咲かせたりします。

ここに関しては、実際のところ“そう”でした。完全にダウナー美少女とのイチャイチャ同棲生活でした。

玲奈がとにかく、とても、かわいい。主人公に対してはあくまでそっけなく、クールでローテンションな態度は一切崩さない。

でもね、何かを送ったり、一緒に遊んだりすると、くれるんですよ。シールを。

つまりは何でもない会話のなかでも、彼女の中に何かしらの熱が生まれていたことになります。素っ気ない態度をしていても、何か心が揺れ動くものがあった。その事実だけでとても愛おしく思えてくるのです。

この表情、この言動なのに、最後にはシールが入手できる(つまり心が動いてた)というのがとても……。相合傘のシーンは、細かいセリフも含めぜひとも見ていただきたい。

ただ、そうやってシールを貼った先、結末には何が待ち受けるものは……そう、100枚貼った後に訪れるのは世界の滅び。彼女の中から溢れた熱がすべてを壊し、世界は終わってしまうわけですね。

『Rain98』は、この構造こそが美しいんです。滅びを願うことから始まり、熱を通じて彼女のことを知る。しかしその熱を重ねた先にあるのは自らの望んでいた滅び。

この歪みに気づくと「じゃあこのふたりは、どういうことを思いながらこの日々を紡いでいくんだろう」と、つぎの展開が気になって仕方なくなる。プレイヤーにとってヒキになるような、感情の揺さぶりを生んでいるのが印象的でした。

そういった構造もさることながら、全体的な物語の雰囲気もどこか仄暗いものになっています。世紀末も、現代も、どちらも変わらず蔓延する「もうどうしようもない」という雰囲気。あくまで体験版の範囲ですが、ふたりにとって世界はどこまでも“敵”で、ただひたすらに冷たいものとして描かれています。

しかしそんな冷たい世界だからこそ、熱の存在がまた映える。体験版全体を通じて、闇を描くことで光の輪郭を象ろうとするような、どこかそういった印象を筆者は受けました。

「完全じゃないけど、無いよりはマシ」

これは相合傘のシーンで玲奈より発されたセリフなのですが、個人的にはこのセリフこそ、『Rain98』の核心のようなものを感じざるを得ませんでした。世界とか、人とか、優しさとか。世の中のあらゆるのもが、そういうものなんじゃないかと。言葉だけだと妥協にも見えるセリフですが、どこか本質めいたものを感じ、自分の中に染み入ったことを覚えています。

本作はマルチエンドであることが明言されています。いまのところ体験版を遊んだ限りでは、「最終的に世界をどうするのか」といったところに焦点が当たりそうですが、果たして。すでに3時間近くを遊んだ身ではありますが、とにかく先が気になって仕方がありません。

◆作り込みが半端じゃない。無数のイラストと抜群の手触り

と、ここまで語ってきたのはあくまでも物語として見た『Rain98』のすごさ。それ以外にも、本作が非凡である部分がいくつもあります。

まずはゲームサイクルについて。体験版では、基本的に玲奈と交流することでエンジェルシールを集め、一定枚数に達するとつぎの物語が読めるというシステムになっていました。シールの集めかたは自由。いっしょに本を読んでもいいし、何か物をプレゼントしてもいい。その辺りはプレイヤーの裁量に任せられている形ですね。

ちなみに、シールが一定数溜まってからも、物語を進めるかどうかはプレイヤーが選択できます。「いまできることをすべてやってからつぎの物語が読みたい……!」という凝り性のプレイヤーにも安心。

プレゼントを送るにはお金が必要になります。そのために“内職”をしてお金を稼がなければいけません。こういった内職はすべてミニゲームになっており、体験版では、ガシャポンのカプセルを詰める単純作業と、アイロンビーズを作成する作業の2種類が確認できました。

それ以外にも、渡したプレゼントによっては新たなミニゲームが解放されることもあります。たとえばトランプを渡せば、玲奈と大富豪を楽しむことができます。

それ以外にも、プレゼントによっては様々なサブイベントが発生します。服をプレゼントすると、サウンドノベルのような演出のデートイベントが。街の占い師に話しかければ、つぎに自分が何をするべきかを占ってくれるイベントが。

メインの物語が縦軸だとするならば、こうしたミニゲームやサブイベントなどの横軸も充実している。これも本作の大きな魅力です。

体験版では、このスポーティな服を送ることができます。デートシーンの空気感が最高でした。

個人的に体感してほしいのが、アドベンチャーゲームらしからぬ手触りのよさ。プレイヤーの操作ひとつに細かなレスポンスが返ってくるので、動かしていて気持ちいいんですよね。

できることは多いですが、そのぶん導線も丁寧に作られているので、つぎに何をすればいいのか迷わないのもすばらしい。演出もゲーム内の雰囲気に即したものになっているので「わかりやすいけど、世界観的にそれはどうなの……?」と思うようなことも無かったです。

マップの画面では、つぎに行くべき順路を雨の波紋が示してくれます。雰囲気にピッタリな誘導方法で、とても好き。
飛び道具的な演出もあるのですが、全体の雰囲気が統一されているからか変に感じることはありませんでした。

スチルや背景、キャラクターの立ち絵なども非常に豊富……というより、グラフィック面はもはや恐怖を感じるほどの凝りようと物量で、物語が進むたびに細かく絵が変わっていくのも印象的でした。前述の手触りなども含めて、「アドベンチャーやノベルゲームは退屈」と感じるユーザーでも遊びやすいように感じます。

後でお話も伺ったのですが、体験版の時点でゲーム内のグラフィックは300点以上あるとのこと。製品版から考えると、まだ全体の2~3割ぐらいのはずなのに……。

『Rain98』は、とにかく作りこみが恐ろしい。テキストの完成度。物を動かすときの細かな手触り。イラストの点数とクオリティ。体験版で遊んだ範囲だけでも、そのすべてに執念じみたものを感じました。

さらにそのクオリティをもう一段引き上げているのが、土屋さん演じる玲奈の声。キャラクターの性質もあって全体的に抑揚があまり無いのですが、そんな中でも細かな感情の変化が感じとれるんです。体験版の最中、6月から7月に1ヵ月ほど時間が飛ぶ場面があるのですが、6月と7月のあいだで主人公に向ける声の明るさが微妙に違っていたんです。

それだけで特にテキストで描写されているわけでもないのにふたりのあいだの距離感が少しだけ縮まったことが感じられ、思わず口から「すげえ……」という声が漏れました。

このゲームをプレイして、玲奈を好きにならない人はいないのではないか。そう思ってしまうほど魅力的なキャラでした。
もちろんそれは「魅力的に感じてしまう」よう、綿密なストーリーラインが組まれているからこそでしょう。本当にこの少女は“沼”ですよ。

今回の体験版からは、新たに能登麻美子さん演じるキャラクターも登場。セリフ数はそこまで多くはないものの、底知れない“怖さ”で強烈な印象を残してきます。製品版になればもっとセリフが増えるのかと思うと、期待と恐怖でゾクゾクします。能登怖いよ能登。

能登さん演じる“夜瀬京子”。こちらを侵食されるような、じんわりとした怖さを感じる演技がすばらしかったです。

◆世界の空気を「不味い」と感じた人にこそ遊んでほしい

『Rain98』体験版のプレイ時間は約3時間ほど。いま振り返るとかなりの長さがあったように思うのですが、体感としては一瞬でした。特に玲奈がかわいくて仕方なかった……。ダウナーな感じで接してくるのに、主人公と何かをするたびに感情を動かして、シールをくれる。つまりは熱を持ってくれるというのがもう、ね。本当にかわいくて……。

冒頭にさんざんストーリーのおもしろさについて語りましたが、やはり“ヒロインが魅力的”ということ以上に重要なフックはないのかもしれません。土屋さんの演技も最高でした。雨原玲奈、本当に好き。

“彼女のルーズソックスを自分が履かせる”というフェチズムofフェチズムのようなシーンもあります。おかしくなりそう。

筆者は奇しくも、本作の舞台である1998年に生まれました。幼少期からなんとなく暗い空気のニュースばかりを吸って育ったこともあり、小中学生の時点で「未来なんぞどうしようもないのでは」という思いを抱えながら育ちましたし、それは今でもあまり変わっていません。社会不安とともに生きてきたと、胸を張って答えることができるでしょう。

だからこそ、本作の抱える厭世的な空気感はどこか心惹かれるものがあり、こんな世界の中でともに熱を探しながら過ごしていく、玲奈のことはより一層愛おしく思うのでしょう。物語がどういった結末を迎えるのか。製品版がリリースされる日を楽しみに待ちたいと思います。

『Rain98』は、そんな世界に対しての冷たさや居心地の悪さを感じた人にぜひとも遊んでほしい一作。本日2026年10月17日公開の体験版だけでも3時間以上遊べるボリュームになっていますので、ぜひとも一度触れてみてください。

『Rain98』はPC(Steam)にて2026年発売予定です。

《ライター:オクドス熊田,編集:みお》


ライター/ オクドス熊田

1998年生まれ。川に潜って魚を捕ったりゲームしたりテキストサイトを読んだりしていたらいつのまにかフリーライターになっていた。現在は紙面、web問わずいろいろと活動中。好きなレーンはTOPレーン。ソウルチャンピオンはタム・ケンチ。

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編集/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

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