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Facebookとも“共闘”でVRを盛り上げていきたい―SCE吉田修平氏に改めて訊く「Project Morpheus」

3月にサンフランシスコで開催された、世界最大のゲーム開発者向けカンファレンスイベントGDCにてSCE ワールドワイド・スタジオ プレジデント 吉田修平氏らによって発表された“Project Morpheus”(以下プロジェクト モーフィアス)について改めて吉田氏を直撃しました。

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Facebookとも“共闘”でVRを盛り上げていきたい―SCE吉田修平氏に改めて訊く「Project Morpheus」
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3月にサンフランシスコで開催された、世界最大のゲーム開発者向けカンファレンスイベント「Game Developers Conference」(以下GDC)にてソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデント 吉田修平氏らによってプレゼンテーションが行われた“Project Morpheus”(以下プロジェクト モーフィアス)。

E3を控えたプロジェクト モーフィアスの現状について、プロジェクトの推進者の一人である吉田修平氏に直接取材を行いました。そこから見えてきたバーチャルリアリティへのSCEの取り組みをレポートいたします。

聞き手: 黒川文雄

■「あまり難しいものは必要ない・・・」

――黒川:何度も聞かれていると思いますが、私自身も驚きをもって迎えたものがプロジェクト モーフィアスだと思っておりますが、開発の経緯として、ソニーさんが開発されたヘッドマウントディスプレイ「HMZ」シリーズが最初にあって、その流れのなかで生まれたものなのか、それと並行してアメリカで発表されたバーチャルリアリティ・ヘッドマウンディスプレイ「オキュラス・リフト」(Oculus Rift)に触発されたものなのか?それともまったく新しいコンセプトに基づいて開発されたものなのかをおしえてください。

はい、最初に明確に申し上げておきますと「HMZ」シリーズの開発経緯を経たものではないですね。また、オキュラスト・リフトに触発されて開発をスタートしたわけでもありません。我々独自のイニシアティブで開発してきたものです。

――完全にゲームエンタテイメントに特化した新しいデバイスを作り出そうとしたと考えてよろしいのでしょうか?

というよりは「バーチャルリアリティ」(以下VR)の方向性ですね。VRのコンセプト自体は前々からありますよね。それこそ業務用ゲームや体感ゲームで、いろいろな使われ方をしたり、実現したりしてきました。当時はコストが非常に掛るものが多かったのですが、オキュラス・リフトも、我々がGDCでプレゼンしたプロジェクト モーフィアスチームもそうなんですが、世の中に出回っているデバイスを使って手軽に実現できるような時代になってきました。

確かにプロジェクト モーフィアスの最初のころの手作りのプロトタイプは「HMZ」や、世の中に出回っている、その他のヘッドマウントディスプレイを使って実験を行ってきましたが、それだけでは、当然のことながら我々が目指すことは実現できませんでした。時間の経過とともに、VRに必要なセンサー技術のコストが下がり、ディスプレイも軽くて高性能なものがそろってきて、クオリティとコストが見合うような時代になったということが大きいと思います。



――時代の流れのなかで、それぞれのスペックが向上し、一方でコストが下がった、つまりVRデバイスの普及のバランスに時代が追いついたということですね。より作りやすくなったということですね。

そうですね。「時代が・・・」という点でいえば、VR用のデバイスは、今まではコンシューマー(民生機器)レベルでは全く実現できなかったこということです。それらが初めて実現できるような時代になったということですね。

――私自身もセガにいて、鈴木裕さんの開発した『ハングオン』や『R360』とかを見てきました。その頃の体感ゲームというのは大きな機器や、ハコ物、大きなディスプレイを、大きく動かすことでVRを感じさせることが多かったと思いますが、時代の変化のなかでもっとコンパクトにできるのではないだろうか?と思っていましたが、なかなか実現できなかったですね。また、時代の流れのなかでゲーム業界が、やや不況に見舞われ、VR的な体感ゲームそのものの流れが空白期間がったと思っています。しかし、近年、マイクロソフトさんのキネクトのようなデバイスなどがリリースされて、体感的な流れがあり、オキュラスが登場して、さらにプロジェクト・モーフィアスはその可能性を一気に拡げようとしているようですね。

昔は、VRはロケーションベース・ビジネスだったと思うんですね。アメリカほうでは「バーチャリティ」と呼んでいたものがそれにあたります。また、セガさんがアーケードでやっていたものがありますが、SFで想像されている「そこに何かがある、そこに自分が居る」という錯覚を憶える体験は、なかなか得られなかったわけですね。それがここに来て、最新の3Dセンサー、高性能ディスプレイ、3Dのグラフィックスを生成するパソコンなり「プレイステーション4」などのパフォーマンス・スペックが向上したことで、VRの臨界点にたどり着いたということです。

他にもValveさんなどが、VRにおいて「(アクションゲームでの)レイテンシー(反応時間)を何ミリセカンドに抑えたらプレゼンス(そこに存在する感じ)が生まれる」ということを発表されているように、VRはどこかに突き抜ける瞬間が近いのではないかと我々も思っています。

――その瞬間が近づいている感触があるということですね・・・。

はい、かなりいいところまで来ているような気がしています。

■ハードウェア設計には徹底的なこだわり

――突き抜ける瞬間と言うと、やはり、それを具現化するソフトが伴わないといけないと思うのですが、ゲームというエンタテインメントで言うと、ある程度、長い時間遊ばせるようなエンタテインメントですよね? その点で、私自身も体験したのですが「オキュラス・リフト」よりも「プロジェクト モーフィアス」のほうがヘッドマウントディスプレイとしてはフィット感が良くて解放感もあるので、圧迫感を感じなかったし、そもそも、装着している重さはほとんどなかったんです。

あ、そこはSCEのメカエンジニアが滅茶苦茶こだわったところなんですよ。つまり、オキュラスさん方式のゴーグルタイプは、一般的に使用方法がわかりやすいものですよね。ぱっと見で「ああ、こうやって使うモノなんだな」ってわかりやすいんですよ。誰でも装着しやすいというメリットがありますよね。前面のディスプレイをバンドで押さえる方式です。でも、その部分で装着させるということは、そのバンドをある程度の強度と圧迫によって支えないといけないのです。ゆえに重さを感じやすかったり、圧迫感を感じやすかったりします。外したときにオデコに赤いスジがはいったりしますよね(笑)。

それに対してウチのメカエンジニアは、バイザータイプを選択しました。頭に載せる方法です。もっとわかりやすくいうと、頭全体で支えて、バンドは補助的なものにすることで装着感を軽いものにしています。また、バイザーのバンドの後ろの部分に敢えて「重石(おもし)」を入れています。これによって重さのバランスが取れて、頭全体で重さを平均的に分散させているんです。ゆえに、プロトタイプ本体の重さは、実はうちのプロジェクト モーフィアスのほうがオキュラス・リフトよりも重いんですが、前面のプレッシャーや装着感がすごく軽くなっているんですね。このあたりはアメリカのテック系ジャーナリストの方にもほめてもらっているところです。「装着しているのを忘れる」それが大事な目的です。

VRシステムで大事なのは装着していても、自分がそれを装着していることを忘れて、別の世界観に没入できることです。端的に言って、違和感がないことですね。たとえば首を回したときに「絵が」遅れて表現されるとすごく違和感があると思うんです。そういう不具合をどんどん取り除いていって、かなりいい線まで来ているのが現在のプロジェクト モーフィアスです。バイザータイプで作っている理由のひとつは装着感を良くするという拘りゆえです。



■実は「ムーブすげぇ!」

――プロジェクト モーフィアスは日本での開発でしょうか?

はい、メカ部分は日本ですが、ソフトの開発はアメリカとロンドンのチームも参加して作っています。そして、ソフトの部分で大事なことは「トラッキング技術」です。

トラッキング技術の背景には、「プレイステーション2」時代の『EyeToy』や「プレイステーション3」時代の「PlayStation Moveモーションコントローラ」(PS Move)など、ずっとカメラを使った3D空間認識技術のアルゴリズムを研究しているアメリカのチームがあります。PS Moveは、その開発過程の商品としてのひとつの結果ですが、今から考えるとVRの入力コントローラーだったと思うんです。

PS MoveはPlayStation Eyeと組み合わせ、コントローラが3D空間上のどこにあり、どちらを向いているのかなどを確認できるものだったんです。PS Moveには、プレイヤーの手の位置がわかるポジショントラッキング技術が活用されています。前のフレームから次へ、ユーザーの手がどのように動いたかを図るのにジャイロセンサーだけでは相対的な動きしかわからないのですが、ある空間のなかで、絶対座標の位置がフレームごとにわかるのがPS Moveだったんです。ですから実は技術的には「ムーブすげぇえ!」とか思っていたわけです。

それで世の中に出したんですが、実は入力側で3D空間の処理ができたとしても、ゲームではテレビの画面(平面)上でしか表現ができませんでした。ですからPS Moveですぐれた技術を使ってゲーム体験を作るということはとても難しかったんです。ゆえに当時はPS Moveのポテンシャルをフルに活かした作品というのは生まれにくかったんです。例えば『スポーツチャンピオン』の卓球のゲームではPS Moveがデバイスとしてすごく喜ばれたんですが、それはやはり正確なトラッキングができたからなんですよ。一方フリスビーとか腕の正確な動きが反映できるもの以外は、残念ながらゲームにうまく活かすことがなかなかできなかった。

しかしプロジェクト モーフィアスは3D空間にユーザー(プレイヤー)が入るということですから、そうなると逆に入力装置も3D空間を扱わないと違和感が出る。それはサウンド面でもあてはまりますね。

高画質ディスプレイと、3Dセンサー、3Dグラフィックスをリアルタイムに再現するパワフルなPS4の組み合わせでバーチャルな映像や視覚が実現できると、重要な要素としてあと足りないのは入力、聴覚(サウンド)です。

つまり、ここに物体があって、ある音を発しているとしますね・・・そうするとコッチから聞こえてこないといけない。音の位相の部分がきちんと反映されていないとVR上では違和感があるわけです。そうすると、その違和感によって現実に引き戻されてしまうわけです。「ああ、ディスプレイでものを見ているだけなんだった・・・」ってことになるんですよ。ですから、そこを全部クリアすべく開発に取り組んでいます。GDCで展示したプロトイプはその3つの要素を全部実現しています。

指摘しないとなかなか気が付かれないのですが、こり3つの要素はSCEとしては実現できていると思っています。しかも、それらすべて、今からもっとよくなるように開発を行っています。ディスプレイ、センサー、ビジュアル、入力、トラッキング、3Dサウンド、すべてにおいて改善の余地があると思います。



■将来を考えると長時間装着しても違和感のないものになる

――ちょっと話を戻しますがゲーム全編で装着しているものとして楽しむことになるのか。もしくはゲームのシーンによってプロジェクト モーフィアスを装着するような流れになるのか、デバイスを供給する側としての楽しみ方はどんなものになると思いますか?

それは、これから議論していくところだと思っています。将来を考えると、当然ながら長く装着しても違和感がないものになると思いますし、そういうものを創ろうと思っています。しかし、今のプロトタイプで何時間も装着というのは慣れていないと疲れますよね。そういう部分について例えば「装着後30分で休んでください」とアナウンスするかどうかは、これからハードの完成度をどれくらいまで追い込めるかにかかってくると思います。

楽しく使えるかどうかは、ソフトとデバイスの使い方によっても違ってきます。ソフトの部分で違和感が出るケースもありますので、今からノウハウを構築して、デベロッパーのみなさんとそれを共有しながら、ユーザーの皆さんが気持ちよく長く楽しめるようなものを作っていきたいですね。専門家の方とも必要に応じて臨床試験的など行い、その結果も踏まえて考えていきたいです。

まだ世の中に存在しない商品なので、ユーザーの皆さんが楽しく遊んでくれるようなものを、正しく理解して使ってもらうことも考えています。コンシューマー向けのプロダクトでPS4をターゲットにしていますから、接続すればすぐに遊んでもらえるようなものを目指しています。

――プロジェクト モーフィアスは、人間の脳を直接的に刺激するエンタテインメントだと思うのですが、つまり視覚、聴覚、平衡感覚など人間の本能的な部分を刺激するもので、ややもすると危険な部分もあると思うのですが・・・つまりフィリップ・K・ディックが「アンドロイドは電気羊の夢を見るのか」で書いたようなリアルバーチャルワールドですね。ある種の危険性もあるような気がするのですがいかがですか?

その心配の前に実現したい夢の世界がありますね。今、黒川さんがおっしゃったことは目の前の夢が実現したあとにやってくる心配事なのではないかと思います。

たとえば、われわれが実現したいのは、プロジェクト・モーフィアスをかぶると楽しい世界に行けることです。人によって異なりますが、景色の綺麗なところ、ファンタジーの世界の入り口、火星なんかも考えられますよね。あくまでもVR環境での話ですが、その人がそこに行くことでわくわくできる、例えば自分の能力が高められて、ヒーローになれる体験を提供したいんです。

それをコンシューマーレベルで実現したいのですが、一時期言われた、ネットゲームに夢中になるあまりご飯を食べない「ネット廃人」のようなものになってしまう可能性もありますね。アディクション(嗜癖、中毒性)というのは夢の世界が実現した時にはきちんと考えないといけないと思っています。

また、VR技術が十分でないときや、ソフトが十分に練り込まれてないとき、三半規管がやられてしまうVR酔いのようなものがありますが、これはできる限りおこらないようにしたいです。最初のプロダクトを出すときには実現していなかればいけないですね。ただし普通のジェットコースターに乗っても気持ちが悪くなる人もいるわけですから、100%問題が起こらないようにするのは難しいですね。

ひとつYouTubeでアップされていた面白い映像がありまして、ロシアのショッピングモールで、オキュラス・リフトのジェットコースターのデモソフトを、ジェットコースター嫌いの人が体験しているんですが、コースターの頂上に上がったときに「バン」と背中を押されたら、立っていられなくなって床をのたうちまわってしまうんです・・・周りでみんなが笑っていて、やられた本人も笑っちゃうというものです。そういう体験がどういう影響をもたらすのかって興味ありますよね。やはり、色々なテストをしていますが、ホラー的なものはソフトとしてVRと相性がいいと思いますね。むちゃくちゃ怖いです。テンション高まりますね。(笑)。

――普通にできない体験 ジャンピングフラッシュのようなものも実現すると思い白いですね。

そうそう、あとは空中浮遊とかハンググライダーのようなエクストリーム系スポーツや疑似的な旅行などもあっているソフトだと思います。

■VRは新しい産業を開拓するようなものに匹敵する!

――そうなるとプロジェクト モーフィアス=ゲームエンタテインメントじゃないものをも開拓できますね。

そうですね。VRは新しい産業を開拓するのに匹敵するポテンシャルがあります。最初はPS4もプロジェクト モーフィアスも必要で、新しい体験が大好きな人をターゲットに考えていますが、深海探検を楽しめるデモ『THE DEEP』を体験すれば分かるように、ゲーマーではない人も楽しめるものになっています。博物館で展示している恐竜の骨格を等身大のサイズで体験するなど、魅力的で新しい使われ方が出来れば面白いと思います。

――映画で「ナイトミュージアム」という作品があって、博物館に飾っている恐竜や歴史的な立像が、夜な夜なうごき出すという作品があるんですが、そういう感じの演出を、プロジェクト モーフィアスを使って、博物館で体験ができるようになると面白いですね。ゲーム体験のみならずあらゆるエンタメ体験にVRの演出ができる新しいデバイスだと思います。

プロジェクト モーフィアスのプロトタイプを開発していて思うんですけど、たとえばクルマのレースゲームに使用したとき、運転席でクルマを走らせているのも楽しいけど、クルマを止めて外へ出て、景色を楽しむということもありますよね。自分の車を外から眺めるという経験です。あとはカッコいいスポーツカーを保有してみたりとか、自分のバーチャルガレージにクラシックカーを保管して愛でるとか、ドライブしたりというのがいいと思うんですね。

あとオキュラス・リフトのデモ映像にもあったんですが、自分が学校の先生になって、教壇にたって、女生徒の視線を一身に受けるというデモがありますね。それも面白いと思います。

――初音ミクのデモ映像とかもありますね。

■フェイスブックとは「共闘」関係です。

好きな人たちや愛でる対象が手に入るとか、その関係性が近くなるということにVRのユニバーサル(世界共通)なバリューがあると思うんです。ですからGDCでプロジェクト モーフィアスを発表して様々な業種の方々からお声掛けをいただいております。それは、とてもうれしいことですね。

そうやって、いろいろなところでオキュラスリフトやプロジェクト モーフィアスが使われだして、VRに触れる方を増やすことで、VRの存在に気づいてもらうという意味で、オキュラス・リフトとは協業ではなくて「共闘」関係ですね。

――なるほど「共闘」関係ですね。御社のプロモーションコンセプトですね。笑)

そうですね。どっちから入っていただいても、お互いのためになるというのが現在の状況です。ゲームで言えばインディーズ系の方はオキュラス・リフトで開発していますが、PS4はPCベースのアーキテクチャーですのでプロジェクト モーフィアスに比較的簡易に移植ができると思います。

――SCEさんは、「インディーストリーム」を推進していますが、プロジェクト モーフィアスにもインディーズ系メーカーが簡単にエントリーできるようになっているのでしょうか。今の印象はメジャースタジオや海外スタジオが主に開発しているように見えますが?

GDCまでは、開発環境やツールの数が限られていました。つまり手造り的にやっていたんです。しかし、今はGDCで展示したキットを幅広く提供できるようになっています。インディーズのほうが発想にオリジナリティがあると思いますし、ブレイクスルーしたコンセプトのものが多くありそうですね。大手とガチンコで勝負するというよりも、発想で抜きんでているものを感じますので、積極的に参加してほしいと思っています。

■ソーシャルスクリーンは周りの人たちを巻き込むソーシャル要素です。

実はプロジェクト モーフィアスには「ソーシャルスクリーン」という機能があります。画面に普通の再現映像が出ているですが、実はオキュラスさんなど他社さんは、複眼の画面になっていることをご存知ですよね?

――はい、あ、そういえば、今まで、当り前のように画面を見ていましたが、確かにそうですね。プロジェクト モーフィアスの再現された画面は、普通の画面ですね。オキュラスの画面は、複眼のメガネの画面みたいになっていますね。全く意識していませんでした。

でしょ!!(笑)。そうなんですよ。実はプロジェクト モーフィアスの体験者の周りにいる人にもわかりやすくなっているんです。VRだからと言ってパーソナルな体験だけに終わらせたくないんですよ。VR体験をしている人が「なんか、すごい変な人」みたいに見られたくないんですね。VRをみんなで楽しめるものにしたいんです。

プロジェクト モーフィアスはヘッドマウントユニット単体じゃなくて、プロセッサーユニットというものがあります。その組み合わせで動いています。PS4のほうではオキュラス・リフトと同じく、複眼向けの映像を生成していますが、PS4に繋いだプロセッサーユニットで片目分の映像を取り出して、普通の平たいスクリーン向けに映像を直して送っているのです。

――おお、なるほど、それはすごいですね。複眼から単眼にコンバートしているんですね。

これは、周りにいる人にもVR体験をしてもらいたかったからなんですよ。また、『THE DEEP』にもVR体験を周りの人と一緒に楽しんでもらう仕掛けがあります。鮫が来て亀をガブリと噛むシーンがありますが、周りの人が海の上から見たカメの動きをタブレットのアプリケーションを使って指定することができるのです。それによって、鮫の動きを誘導することができます。任天堂さんの「Wii U」でも同じようなコンセプトのものがあると思いますが、一人がタブレットを持っていて他の人は逃げるようなものとか、1人がオバケ屋敷に入り、他の人がタブレットでお化けの出る場所を決めて驚かせるようなものに近いです。

ヘッドマウントユニットを被っている人の体験を、周囲の人も共有できることからソーシャルスクリーンと呼んでいます。周囲の人もワイヤレスコントローラーなどで楽しめるゲームが作れることを、これからデモやサンプルなどを通じて見せていきたいですね。

■フェイスブックのオキュラス社買収はいいことだ。

――フェイスブック社にオキュラス社が買収されたことにより、オキュラスリフトの製品版は、従来以上に資金を元手にデバイスのクオリティをあげてリリースしてくるような気がしますが、そのあたりはいかがでしょうか。

同じVRですから、基本的にはやろうとしていることは同じでしょう。おそらく、使っている手法や技術は非常に近いものだと思います。

何が違うのかというとフェイスブック社の投資があったことで資金が潤沢になり、以前よりも投資がしやすくなるということはあるでしょう。でもそれ以上に感じるのは、フェイスブックが注目をしたということにより、VRがメインストリームのメディアに注目されたということですね。

オキュラス社という若い会社がフェイスブックに買収されたことへの注目や、ソニーやフェイスブックという会社が参画することで「VRがメインストリームになってくる」と話題にしていただけるのはいいことだと思っていますし、ソニーとフェイスブックはもはやVRの「共闘」関係にあると言ってもいいと思います。

――フェイスブック参入は歓迎ですね。

フェイスブック社のマーク・ザッカーバーグ氏は「モバイルの次の、将来のプラットフォームがVRだ」と言っています。具体的にはどのようなことを指しているのかはわかりませんが、VRにインパクトやポテンシャルを感じているのではないでしょうか。

フェイスブックですからコミュニケーションの部分でのメリットを感じてらっしゃるのでしょうが、VRでいいのは、相手がそこにいる感じ、近くにいる感じがすることですね。それはおそらく、PlayStation Homeでやっているサービスや、もしくはセカンドライフでやっているようなものに近く、VRはそれ以上の存在感が演出できる部分が魅力なのでしょう。オキュラス・リフトもプロジェクト モーフィアスも最初はゲームユーザーなりゲームアプリケーションがVRを市場として立ち上げるきっかけになるであろうと思っていますが、その先にはゲーム以外の様々なアプリケーションがあるでしょうし、疑似体験やコミュニュケーションをするメディアとして、よりパワフルになるというビジョンがあるのではないでしょうか。

■発売時期はどうなる?

――今後の予定は、6月中旬の「E3」でのデモ展示、プロジェクト モーフィアスは年末商戦への投入かと思っていましたがいかがでしょうか?それと価格面などのはいかがでしょうか。

残念ながら、年内の発売はありません。プロトタイプの完成度の向上や、技術自体を見直しますので時間がかかります。さまざまなテストをこれからやります。最終仕様も、価格面もまだ全く未定ですね。

――最後に意地悪な質問ですが、VRを牽引するにはエロ系コンテンツのポテンシャルがあると思いますが、いかがでしょうか?

それは、すべての新しい技術に言えることなのではないでしょうか。先日開催されたユニティ社主催の「Unite Japan」にはオキュラス・リフトを用いた、それを少し感じさせるコンテンツもあったようですね(笑)。

――ありがとうございました
《インサイド》
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