Game*Sparkレビュー:『BATTLETECH』【年末年始特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー:『BATTLETECH』【年末年始特集】

ボードゲーム原作のターン制ストラテジー『BATTLETECH』のレビューをお届けします。戦場のリアリティを追求した巨大ロボ同士のバトルがテーマのゲームです。

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ゲーム業界も大賑わいとなった2018年。皆さんはこの年に、何本のAAAゲームや注目のインディー作品などをプレイしてきたでしょうか。今年からオリジナルレビューを掲載し始めたGame*Sparkでは、「2018年の話題作」を振り返るゲームレビューを集中連載として年末までお届けします。第3本目は、Steamで配信されたPC向けストラテジー『BATTLETECH』です。




Game*Sparkの読者の皆様、年末年始はどのように過ごすご予定でしょうか。筆者は硬派すぎるウォーストラテジーゲーム『BATTLETECH』をプレイし、正月明けのだらけた空気を巨大ロボとともに一掃するのもいいのではないかと思います。

本作はHarebrained Schemesが開発、Paradox Interactiveによって4月25日にSteamで配信された巨大ロボバトルのターン制ストラテジーゲームです。元となるのはFASAコーポレーション(以下「FASA」)が1984年に出版したボードゲーム「BATTLETECH」(初版タイトルは「BattleDroids」)。FASAはJordan Weisman氏らが設立した会社で、主にテーブルトークRPG(TRPG)やウォーゲームを扱っていました。TRPG「Shadowrun」などもあり、古参ボードゲームファンには名の知れた大手ボードゲーム会社ですが、2001年に突如解散してしまいます。Jordan氏はその後いくつかのベンチャー企業を立ち上げ、2011年には本作のデベロッパーであるHarebrained Schemesを設立。デジタルゲームの開発を行い、Steamでは『Shadowrun Returns』シリーズなどが配信されました。

Harebrained Schemesは2015年にKickstarterで本作のクラウドファンディングを行い、最終的にはファンディングゴールの25万ドルを10倍以上も上回る280万ドル近くを調達することができました。本作配信後、2018年6月には配信元Paradox InteractiveによるHarebrained Schemesの買収が発表されます。Paradox Interactiveと言えば、『Europa Universalis』シリーズや『Hearts of Iron IV』シリーズなどの歴史シミュレーションで有名なスウェーデンのゲーム会社。今後本作のDLC配信も控えており、Jordan氏は開発に集中するため、財務やマーケティングなどをParadox Interactiveに委託することに決めたそうです。ちなみに11月28日には本作第1弾DLC「Flashpoint」が配信されましたが、今回は触れずに無印のレビューを行います。

『BATTLETECH』のトレイラー

本作の概要ですが、巨大ロボの戦いを描いたターン制ストラテジーゲームです。ボードゲームが原作になっていることから、サイコロを振って攻撃が当たった外れたのようなランダム性の高いゲーム感覚が味わえます。また巨大ロボは頭・腕・胴体・両手・両足などいくつかのパーツで構成されており、それぞれにダメージがあります。武器を積んだパーツが壊れれば攻撃できなくなったり、弾薬を積んだパーツに被弾すれば誘爆が起こったり、操縦者が死亡すればただの鉄の塊になってしまうなど、被弾したときの一発一発がその後のゲーム展開を変えてしまいます。

さらに攻撃するたび巨大ロボに熱が蓄積され、一定値を超すとオーバーヒートしてしまうなど、攻撃判断だけでも結構頭を悩ませます。武器によって発熱量も違うので、熱を抑えるためどの武器で攻撃するかまでその都度考えなければなりません。これを「展開が遅い」「何をするにも時間がかかりすぎて面倒」と見るか、「戦場のリアリティ」「ボードゲームやTRPG的で面白い」と見るかで評価が分かれてくるかと思います(ボードゲーム版もこの複雑さゆえに評価が分かれていました)。このあたりについては後ほどまた解説します。まずは本作の特徴でもある巨大ロボ「メック(バトルメック)」と、そのカスタマイズ性を見ていきましょう。

想像力をくすぐるメックのカスタマイズ



舞台は西暦3025年。宇宙へと進出した人類は、銀河においても絶え間ない戦争を繰り広げてきました。その戦争において主戦力となったのが「メック(バトルメック)」と呼ばれる巨大ロボたちです。画像を見ていただければわかりますが、ガンダムのようなスマートな機体ではなく、ダグラムやボトムズのようにガシャンガシャンと音を立てて動きそうな、重量感のある武骨なロボットです。このメックに乗るパイロットを「メックウォーリア(メック戦士)」と言います。

メックの元ネタは日本のロボットアニメで、初期のボードゲーム版は「太陽の牙ダグラム」や「マクロス」シリーズのメカニックデザインを無断利用していたことでも話題になっていました。これに対してクレームを付けたのは日本ではなく、「マクロス」などのライセンスをタツノコプロ(当時は竜の子プロダクション)から正式取得して再構成し、「Robotech」というアニメを作ったアメリカのHarmony Gold社。この訴えによってデザインを一新させ、重量感ある機械的なデザインに変更したのが現在の「BATTLETECH」です。ちなみにボードゲーム初版の「BattleDroids」というタイトルも、「スターウォーズ」に登場するドロイドがルーカスフィルムの登録商標だったため「BATTLETECH」に変更したという経歴があります。

「BATTLETECH」関連のデザインについては、近年でもHarmony Gold社によって訴訟されており一応の和解が見られたようです。しかし上の画像、シルエットで見れば左からボトムズ、ダグラム、マクロスに登場する機体に見えなくもないような……。ちなみに「メック」という名称は、和製英語の「メカ」から来ているようです。


メックは8つのパーツによって構成されています。頭、胴(中央、右、左)、腕(右、左)、脚(右、左)です。このそれぞれのパーツに武器や弾薬、ユニットを積んでいくカスタマイズ性の高さが本作の特徴です。ボードゲーム版においても自分好みのメックが作れることが人気の理由でした。

プレイヤーは戦場において、最大4体のメックを操ることができます。少ないと思う方もいるかもしれませんが、1体ごとに管理する項目が多いため、これぐらいが適正数かと思います。その分、1体欠けるだけで戦力激減なので、できるかぎり死なないように立ち回らなければなりません。


ちなみにこれがメックのカスタマイズ画面です。一見複雑そうに見えますが、左側にある武器などを装備したい位置にドラッグ&ドロップするだけです。メックには機体ごとに限界重量があるので、「強い武器やユニットをとにかく積め」というわけにはいきません。取捨選択する必要があります。

武器の種類ですが、基本的には「実弾系」と「レーザー系」に分かれます。実弾系は発熱が低い武器ですが、弾薬もパーツのどこかに積まなければなりません。また弾薬に被弾すると誘爆が起こります。レーザー系は何度でも撃つことができますが、発熱が大きいのが難点。また武器には短距離用・長距離用もあるので、バランスを考えて装備しましょう。武器以外の装備ですが、たとえばジャンプするためのジェットや放熱器などがあります。自分のカスタマイズしたメックがゲーム内で動くのはなかなか楽しいですよ。

歯ごたえ抜群のゲーム難易度


キャンペーンモードのミッション3。おそらく多くの人が死亡させているであろうDEKKERさん。筆者もその例に漏れませんでした

ゲームモードですが、キャンペーン、キャリア、スカーミッシュの3種類があります。普通はキャンペーンから始めるものですが、ミッション1でチュートリアルをすませたばかりのプレイヤーに対し、ミッション2において大勢の敵が本気で殺しにかかってきます。初プレイのとき、「まだ敵が出るのか」と絶望感を味わいました。そしてミッション3は、初見で誰も死なずにクリア出来たら大したもの。難易度の高いゲームなので、気合いを入れてプレイするのがいいでしょう。同様のターン制ウォーストラテジー『XCOM』シリーズで、生きるか死ぬかの戦いを潜り抜けてきたプレイヤーには適したゲームではないかと思います。

ただ、「ライトゲーマーお断り」というわけでもありません。パッチ1.1以降は、キャンペーン開始時に「CUSTOM CAMPAIGN」を選択することにより、難易度や得られる報酬・経験値の量など細かいカスタマイズが可能になりました。「どうしても勝てない」という方はこのあたりをいじってみるといいかと思います。逆に「物足りない」というハードコアな方は設定を難しくしたり、アイアンマンモードに挑戦したりすることもできます。

キャリアモードのキャラクター作成画面

キャリアでは自由に銀河を渡り歩き、依頼を受けたりすることができます。「ストーリーなんていらないから、とにかく傭兵団を指揮して好きにやりたい」という人はここから始めるのも良いかと。スカーミッシュはいわゆる対戦モード。ボードゲーム感覚でさくっと1ゲームできるため、筆者もCPU相手によく遊んでいます。戦闘で行き詰っている人は、スカーミッシュで練習してからのほうがいいかもしれません。

スカーミッシュモード。森林に潜み、川を渡る敵を待ち伏せ。森林にはダメージ軽減の効果がある

ゲームのメインとなる戦場ですが、行動の速い順で敵味方がユニットを動かすルール。当然重量のあるメックは行動が遅くなります。またメックの移動ですが、「歩く、走る、ジャンプ(ジャンプ用ジェット必要)」の3種類。ジャンプは地形を無視して進めますが、使うとジェットによる発熱が起こるため、移動後に攻撃できないといった事態になったりもするので注意が必要です。またジェットによって飛び上がり、敵を踏みつける攻撃もできます。なかなか爽快ですが、自機も落下ダメージを受けるため(場合によっては脚が壊れる)、ここぞというときに使いましょう。

攻撃時には、どの武器を使うかが選択できます。装備中のレーザーやミサイルを一斉発射するのもいいですが、できれば弾薬の残量や機体の熱を考えながら選ぶのがいいかと。敵が接近してきたら、一気に近づいて殴ってやるのも効果的です。またメックは攻撃を受けるたびに安定性がなくなり、やがて転倒します。こうなると、立ち上がらないかぎりは何もできず、一方的に敵から攻撃を食らいます。こういった点も「巨大ロボを動かすリアリティ」を感じさせてくれます


ゲームの難易度をさらに押し上げているのが、資金のやりくり。戦闘が終わるたびに機体を修理しなければなりません。修理費だけでなく、場合によっては数カ月といった時間がかかります。またパイロットが怪我した場合もその度合いに応じて休ませなければなりません。その間にメックの維持費や傭兵たちへの給料、銀行のローン返済など、お金はどんどん減っていきます。いったん負のスパイラルに陥れば、立て直すのはかなり困難。戦場でも拠点でも心休まる暇がないのも、ある意味戦争のリアリティなのかもしれません。

ゲーム進行の遅さがネックに


戦闘開始時のロード画面

『BATTLETECH』ファンやボードゲーム・TRPG好きの人には手放しで喜べそうな内容なのですが、そうでないプレイヤーや、単に「PCゲーム」として考えたときに、ゲーム進行の遅さが気になってくると思います。まず戦闘に入るまでのロード時間が長いこと。SSDにインストールした状態でもかなり時間がかかります。特にキャンペーンでは、ミッションによって分単位の時間がかかることも。試しにキャンペーンのミッション2途中のセーブデータをロードしてみましたが、SSD搭載の環境で1分20秒ほどかかりました。

執筆時点でのパッチはバージョン1.3ですが、今のところバグ修正やUI改善、ゲームバランス調整、オプション追加などが中心で、ロード時間の根本的な解決はまだないようです。データが多いので、基本的にロードは長いものだと思っておいたほうがいいかもしれません。


メックの動きの遅さも問題になっていました。重量感のある巨大ロボが遅いのは当然なのですが、そのガシャンガシャンとした移動を毎回見せられると、プレイヤーによっては待ちきれないかもしれません。筆者も初プレイ時にはロード時間ともどもあまりに時間がかかりすぎて、キャンペーンを最後までプレイするモチベーションを保てるか、かなり不安になっていました。

この点に関してはユーザーからの批判が多かったようで、パッチ1.1でスピードアップオプションが付きました(「SETTING」>「COMBAT」から「SPEED UP COMBAT」をチェック)。ちなみにオプション設定しなくても、スペースキーでその都度スピードアップできます。メックの移動についてはこれでストレスがだいぶ軽減されましたが、星間移動時のアニメーションなどスキップできない場面があり、このあたりも今後のパッチでの解決が期待されるところです。


さらには、何をするにしてもかかる時間。メックの修理、パーツの取り換えなど、それぞれ日数の必要な作業です。巨大メカなのですから作業時間がかかるのは当たり前なのですが、ちょっとしたカスタマイズや修理でも毎度毎度何日も待たされるのは、ゲーム的にはつらいと感じる人もいるでしょう。

星間移動にも日数がかかりますし、隊員が怪我しても復帰まで時間がかかります。資金はその間にも容赦なくどんどん減っていきます。これを現実的と見るか、ゲームなんだから遊びやすくして欲しいと考えるかで、評価は分かれるかと思います。

総評


敵にパンチを食らわせるメック。近接攻撃は命中率が高い

本作はボードゲームやTRPGを土台としたことから、攻撃がヒットするかどうか、どの部位に当たったかなどの、サイコロ的な緊張感を味わうことができる作品です。この状況を脳内で想像できる人にはかなり適したゲームです。TRPGプレイヤーには合っているのではないかと思います。骨のあるウォーストラテジーを遊びたいという方にもぴったりです。

その一方で、PCゲームとして考えた場合には、スキップ機能を付けたり、メックのパーツ付け替えぐらいは時間がかからないようにしたりなど(これは賛否両論だとは思いますが)、省略すべきところは省略する必要があるのではないかとも思います。ライト層に向けに改善した結果、元のユーザーからそっぽを向かれる事態も有り得るので難しいところではありますが。いっそのことライト層向けに簡易モードでも付けて、ハードコアなプレイヤーと住み分けさせるのもアリかと。これまでユーザーの要望を聞き入れ、パッチで様々なオプションを追加してくれたデベロッパーなので、今後の展開には大いに期待できるかと思います。

何はともあれ、本作は「戦場のリアリティを再現した骨のあるウォーストラテジーゲーム」です。巨大ロボ同士が殴り合ったり、武器を壊されて何もできなくなったり、転倒して集中砲火を食らったり、両脚をやられて戦闘不能になったり、壊れた機体の修理に時間がかかったりなど、「巨大ロボを扱えばこうなるよね」という現実がこのゲームにはあります。鉄と油と硝煙の臭いを感じたい方はぜひとも本作をプレイしてみてください。

総合評価: ★★☆

良い点
・巨大ロボを動かしているというリアリティ
・歯ごたえのある難易度
・濃厚な世界観


悪い点
・ロードが長い
・ゲームの進行が遅く、何をするにも時間がかかる





「Game*Sparkレビュー」では、読者の皆さまのゲームの感想も募集しています。下記リンクにて質問にお答えください。回答期間は2018年12月30日から2019年1月6日まで。また、集計終了後には「Game*Spark読者レビュー」として記事を公開し、回答やコメントを取り上げる場合があります。日本語サポートのないこのゲームをどれだけの方たちが遊んでいるのか、そもそもアンケートとして成り立つのか(プレイヤー数的に)不安ですが、本作をプレイした読者の皆さまはぜひともご協力ください。

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《渡辺仙州》

歴史・シミュ・ボドゲ好き 渡辺仙州

主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「マイナーゲームTV」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「西遊記」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。

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