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2019年、e-Sportsに対して企業はどう動いたか―新しい風も吹き始める【年末特集】

2019年も様々な企業がe-Sportsへと参入してきましたが、いったいどのような動きがあったのか。大きな動きを中心に振り返りましょう。

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2019年、e-Sportsに対して企業はどう動いたか―新しい風も吹き始める【年末年始企画】
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昨年度は年末企画として、e-Sports元年における企業動向を筆者の確認できる範囲だけで取り扱ってみました。ありがたいことに多方面から想像以上の反響をいただけたので、今年も筆者の観測できる範囲のみで「e-Sportsに対する企業動向」についてすることとしました。今回も本稿で取り扱う内容については、e-Sports業界の全てではなく、また一部抜粋も含まれることをご了承ください。

「PJS」にサッポロビールとガストが協賛



『PUBG』の国内プロリーグである「PUBG JAPAN SERIES」には様々なスポンサーが付いていますが、このプロリーグにアルコール飲料を取り扱う「サッポロビール」とレストランチェーンの「ガスト」が協賛しました。

昨今、アルコール類の広告は様々な事情を抱えていますが、「サッポロビール」は清涼飲料水を取り扱う「ポッカサッポロフード&ビバレッジ」と異なり、スポーツ観戦により近い関係にあるアルコール飲料を取り扱っています。「Grade1 Day5」番組終盤には「サッポロビールプレゼンツ PJSアーカイブス ~未来に残したいこの一戦」といった形で別途枠が設けられ、キャスター陣が勢揃い。サッポロ黒ラベルを飲みながら話を進めていく……という、印象的な商品露出とアプローチで存在感を示しました。

一方で、どちらかと言うと「チキンディナー」より「ステーキ」の印象が強いガストも関わり方が気になるところですが、こちらも放送中のインターバルを利用して商品を露出。ドン勝にちなんだローストチキンはもちろん、その他主力商品をキャスターが美味しそうに頬張る……といったように、観ていてお腹の空く演出を見せました。

そして不思議なことに、視聴者がスポンサード企業の商品、今回の話で言えば黒ラベルとガストの商品をテイクアウトや宅配で用意し、食べ飲みしながら放送を見るという光景がTwitterで散見されます。ファンが楽しんでいる大会のスポンサー企業の商品を購入し、大会と企業を応援している……という、強固かつ理想の構図ができあがっていると言えます。

地域単位で見れば、大手企業の本格参入はまだ


最近、筆者はチーム作りの方法やマナー研修といった内容で講演を始めました。そういった中で関わってきた企業や団体の話を聞く限り、地域で多少なりとも盛り上がっていても、企業としてはe-Sports部門を設立したり社員が個人的に人的リソースを提供するといった形で関わり始めてはいるものの、企業が名前を挙げて支援したり大会を開くほどの大きな流れは生まれていません。

実際に話を聞くと、現時点のe-Sports業界に進出しても投資に対してリターンが少なく、即座に結果を出しにくいため、金銭投入や本格的な参入を控えているようです。もちろんそれを理解した上で参入する企業もありますが、それはごくごく一部の話。昨年は「e-Sports元年」という形で盛り上がってはいましたが、問題は今年より先の2年目以降の成長と展開。どれだけ現状を保ちつつ、成長を促せるかといったところにかかっているように思います。

筆者としては、企業は従来のコミュニティを尊重し、コミュニティは協力してくれる企業を敵だと考えず、お互いに協力体制を築いていくことが重要だと考えています。

高校生選手権もより本格的に……茨城では国体も開催



様々なタイトルで高校生を対象とした大会、いわゆる高校生選手権が開催されるようになりました。『太鼓の達人』では小学生向けの大会もあったりと、低年齢層に対してのアプローチも積極的になったように思えます。

とは言え、シーンを拡げやすくなるのはプロリーグを始めとする継続的な大会です。採用タイトルを変えず、どういった形でシーンを盛り上げていくか考えなければならない時期は、直に来ると思います。

特に年齢を指定した大会は、その年齢を過ぎてしまった選手は当然参加できません。しかし、更に上の年齢層を対象とする大会がなければ、その選手は当該タイトルでの活動をやめてしまうでしょう。そういった点もきっちりとフォローしていく体制を早急に整えていく必要があります。

また、茨城国体には各都道府県から多くの選手が参加し、盛り上がっていました。採用タイトルは『グランツーリスモSPORT』「ウイニングイレブン2020』『ぷよぷよeスポーツ』で、ここでも熾烈な争いが繰り広げられました。

筆者が関係者からよく聞いたのは「国体を目標にしてはならない」という言葉でした。もちろん、これは悪い意味ではなく、「国体は単発大会だから、その先を見据えていかなければならない」という意味です。国体で採用され急激に注目度が集まったが故の言葉ではありますが、国体を目標に据えていた選手も多いと聞いており、大会のうちのひとつと選手が捉えられるかどうかにかかっているように思います。

『グランツーリスモSPORT』はネイションズカップやマニュファクチャラーカップなどのオンライン予選に加え、選ばれたドライバーのみが世界各地でライブイベントとして大会に出場していますし、『ウイニングイレブン2020』も世界各地で開催されているプロリーグの成功を受け、eFootball Leagueプロリーグやオープン大会が開催されています。

しかし、『ぷよぷよeスポーツ』には公式で開催されているものがプロ・一般混合大会のみで、他タイトルにあるようなリーグ形式の大会が開催されておらず、ユーザー主催のプロリーグのみ。競技シーンが整いきってないように見えるのも、筆者としては多少の不安要素と見ています。

自社サービスを活かしたチームや個人に向けた支援が流行?



2019年より「GMOペパボ」が、e-Sportsチームに対して自社のインターネット関連サービスを提供するサポートを開始しています(かく言う筆者の運営チームも支援を受けています)。サーバ、ドメインといったチーム運営に必須の部分だけでなく、グッズの製造・販売サービスなども提供され、チームがよりローコストで収益を得やすい構造を提供しているのが特徴です。2020年からはチームだけでなく個人も対象にして支援を拡大するとしています。

筆者は元々、個人としてロリポップ!とムームードメインを利用していたので、移行作業などは求められませんでした。しかしちょっと込み入ったことに手を付けようとすると、1~2ランクほど上のプランを契約したり、オプションサービスの契約が必要といったことはありますし、そういった面での金銭的負担は意外にかかります。サービス提供といった面では可能な企業も限られていますが、モノではなく必要なサービスを提供するというのは、e-Sports業界に関しては思ったよりも有用なのかもしれません。

KONAMIの音ゲーがe-Sports化、2020年から賞金総額2000万円でリーグを開催



「KONAMI ARCADE CHAMPIONSHIP」で数々の優勝を飾ってきたDOLCE.氏がKONAMIとプロ契約を結んだのは記憶に新しいところですが、アーケード事業を取り扱うコナミアミューズメント主催で、アミューズメント施設を運営する企業がチームオーナーとなる「BEMANI PRO LEAGUE」が2020年より開催予定です。選手はプロテストやドラフト会議を行い、プロ契約を行った上でシーズンを戦っていきます。その賞金総額は2,000万円とのことです。

音ゲーは音楽を楽しむだけでなく、スコアや譜面難度的にも競技性が非常に高いことで知られていますが、従来の公式大会よりもより熾烈な争いが頻繁に見られそうです。

ウェルプレイドがJeSUに加入


ウェルプレイドの代表取締役CEOの谷田優也氏ことアカホシ氏が明かしていますが、ウェルプレイドが12月にJeSUに加盟。同氏はJeSUとコミュニティの相互理解が、ウェルプレイドの“達成したいビジョンにつながる”としています。

一部では不評が目立っていたJeSUですが、先日プロライセンスを受領したももち氏も配信で語っていた「JeSUは悪者じゃない」というメッセージを正しい形で広めていく活動が、今後いろいろな面で見えるようになってくることになるかもしれません。

TV局も徐々に進出。地方局のローカルイベント開催も


昨年の記事でも触れたTV局の進出ですが、既存番組はより深く掘り下げたり、多方面にジャンルを拡げたりと、各番組それぞれの特色をさらに活かしています。また地方局では、地方イベントの開催や、ローカル番組においてe-Sportsの話題を取り上げることも増えました。少しずつではありますが、ゆっくりと浸透していっているというような状態に思えます。

最近では少しずつe-Sportsの実況を行うTV局アナウンサーも増えており、着実にe-Sportsに対しての理解は深まっていると言えるでしょう。

スポンサードの余地はまだまだ



PCゲームの大会はオンライン開催が多くを占めていますが、一方でモバイルタイトルやコンソール向けタイトルは真逆を行っています。モバイル/コンソールのオンライン大会もそれなりに開催されてはいますが、PCに比べるとオフライン大会が多いのです。

オフライン大会では会場費などコストがかかる(店舗を利用しての開催もありますが)のはもちろんですが、それに際し、大会協賛や後援といった形で企業が関わるスペースもまだまだあります。大会・会場規模にもよるものの、協賛企業のブース出展といった形を取ることも少なくないため、モバイル大会においては、来場者に直接アプローチできる機会があるとも言えます。

一方のオンライン大会では、やはり幅広い地域を対象として視聴数を稼げることが特徴です。オンラインサービスや通販といった形を取れる企業がスポンサードをしている例が多いように思います。検証すべき点は多数ありますが、スポンサードなどで参入を考えている場合は、アプローチできる層を見極めた上で、スポットや継続的にスポンサードを行っていくのが肝になりそうです。

正しい関わり方を選ぶことが重要



今年も様々な面の動向をお伝えしましたが、共通するのは「正しい形で関わり、正しい方向へ進めていく」ということです。企業もファンや消費者ありきですし、その逆も然り。また、地方でもe-Sportsは盛り上がってきていますが、タイトルが偏っていたり、草の根的な活動に留まっているところも少なくありません。そういったシーンに対しても、ユーザーやコミュニティを尊重して関わることができれば、その企業はコミュニティにとってもかけがえのない存在になっていくことでしょう。
《kuma》

kuma

作詞家/作編曲家/元Esports競技勢。FPS、アクションRPG、シミュレーター系が主食。ハードウェア・ソフトウェアレビュー、インタビューなどをやっています。

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