Game*Sparkレビュー:『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー:『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』

コアゲーマーが見た『桃鉄』最新作。変わらない面白さはニンテンドースイッチの存在で現代化した―。

連載・特集 Game*Sparkレビュー
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1988年から続く長寿シリーズからの、Switchでは初となる最新作『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~(以下、桃鉄令和)』。2020年11月19日の発売から2ヶ月程度しか経過していないにもかかわらず、既にシリーズ歴代で最高の売上を達成していることから、本作がいかに待望されていたのかがわかります。

最初にお断りしておきますと、筆者は普段Game*Spark誌上では主に海外ゲームの記事を手掛ることが多く、「本シリーズも数作友人宅で遊んだことがある」という程度で全く詳しくありません。「桃鉄」のソフトを自分で所持してがっつり遊ぶというのは(恥ずかしながら)始めての体験でした。ということで、ここからは「桃鉄シリーズファンではない」という目線からのレビュー(兼プレイレポート)をお届けします。

刷新されたポップなグラフィックスで彩られた「旅情」

シリーズ作にあまり明るくなく過去作との比較が難しい筆者にとっても、本作にはひと目でわかる「刷新された」部分があります。それは<b>キャラクターデザイン</b>です。本作から非常に特徴的で本シリーズを象徴するような存在であった「桃太郎」「貧乏神」などの見た目がまったく新しいものへと変化しています(厳密には前作『桃太郎電鉄2017 たちあがれ日本!!』から「キングボンビー」などのデザインは変更されていたようです)。シリーズに愛着のあるプレイヤーにとっては寂しいことでしょうが、これはこれでポップでかわいく、長く遊ぶにしたがって愛着も湧いてくだろうと個人的には思います。

凶悪なデバフ性能(この形容で正しいかはわかりませんが)を誇り、プレイヤーを恐怖のどん底に突き落とす「キングボンビー」も、その性能に引けをとらない凶悪なグラフィックに進化しています。その禍々しさたるや豪鬼の新スキンかと見まごうほどです。キングボンビーだけではなく貧乏神には様々な種類が存在しますが、その点については後述します。

本作は基本的には「すごろく」であり、ゲームのほとんどすべてがデフォルメされた日本地図上で進行していきます。なので、ともすれば味気なくなってしまいがちなゲームだと思うのですが、本作では時々挿入されるイベント画などでそういった味気なさを軽減させてくれています。特に目的駅到着時の背景はすばらしく、数パターンしかないのにも関わらず駅の特徴を掴んだものが採用されているため、すごろくの盤面に旅情を見出すことができるのです。

駅にある物件などで「あ、ここは○○が有名な場所なのか」ということを楽しく知れて、勉強になるいうのも本作の大きい特徴です。筆者は日本の地理にあまり明るくなかったのですが、ゲームプレイを通じて<b>中部あたりのよく知らない県の位置関係を大まかに把握することができました</b>。そんなん義務教育で習うだろという話ですが……。ともかく、画面としては大した変化がないはずなのにちょっとした旅行気分になれるというのは本シリーズの大いなる魅力でしょう。国内で発売されているすごろくゲームの中で本シリーズが頭抜けた人気シリーズである理由がなんとなくわかった気がしました。

程よく大味、程よく陰険なゲームプレイ

桃鉄有識者の薦めもあり、筆者はまず「ひとりで桃鉄」を100年モードでプレイ開始しました。クリアまでにおよそ30時間程度かかるためかなりマニアックな印象を受けますが、本シリーズのファンにとってはおなじみの人気のある遊び方だそうです。そして、詳しくないながらも長時間遊ぶ中でなんとなく桃鉄のキモとなるような部分も見えてきました。

いまさら「桃鉄」のルールをよく知らない人がいるとはあまり思えないのですが一応説明しておくと本作は前述の通り基本的に「すごろく」ゲームです。様々な方法で金銭を得ながら「物件マス」で物件を購入することで不動産収入を得、最終的に(所有物件の価値を含む)総資産が最も高かったプレイヤーの勝利となります。短期的に目的地が設定され、最初に到着したプレイヤーにボーナスがあるため(特に序盤は)プレイヤーたちは大まかに同じ方向を目指すことになります。誰かが目的地に到着したとき、最も目的地から遠くにいたプレイヤーには「貧乏神」とよばれるデバフ効果を擬人化したようなものが取り憑いてしまいます。そのため正しくプレイすれば(特に長期間プレイすると)「有利な人間はどんどん有利になっていく」、「負けているプレイヤーはどんどん負けていく」「しかし、たった1ミスで順位が完全に逆転しかねない」という三点においてトランプの「大富豪」に似ています。そして「大富豪」よろしく大味で性格の悪い阿鼻叫喚がすごろくという長尺のゲームプレイの間ずっと楽しめるわけです。「友情破壊ゲーム」などと呼ばれることがあるのも、こういう性質のためでしょう。

「貧乏神」は戦術した「キングボンビー」をはじめとした様々な形態に変化します。特に「デストロイ号」形態は凶悪で、周囲の物件を無差別に燃やし焼いてしまうという極悪非道っぷり。焼かれた物件は所持していない状態に戻るため、実は(既に借金まみれのような)最下位にとっては都合のいい場合もある効果なのがうまいこと出来ていると思います。キングボンビーには他にも数種類の形態がありますが、要はお金がなくなるかカードがなくなるか物件がなくなるかなので既に資産がないプレイヤーにとってはあまりデメリットになりません。なんとかして上位のプレイヤーになすりつけることができれば大逆転も期待できるため、ゲーム中は常に緊張感が漂います。

ゲームを有利にすすめるにあたって、最も重要な要素(と言ってしまっていいでしょう)が様々な効果を持つ「カード」です。凶悪な効果を持つカードも多く下位のプレイヤーにも逆転の目があるわけで、特にCPU戦ではCPUが強いカードを得た時に抑止する方法を常に揃えておくというのが勝利の秘訣になります。正直少々強力すぎるのでは?というカードも存在していますが、このあたりはパーティーゲームですので、多少大味でも盛り上がればよいのだと思います。一人で遊んでいると盛り上がりもクソもないのですが……

ソロの長期間プレイでは、10兆円と高価な「桃太郎ランド」の購入、そして全物件の独占が一つの目標になってきます。カードを揃えちゃんと危機管理さえしていれば滅多なことでは(対低レベルCPU戦では)逆転されることもないのでゲーム後半は作業感が増していきます。コツコツちまちまとマップを塗りつぶしていくような地味なプレイングが好きなプレイヤーにはきっと向いているでしょう。

桃鉄ある程度知ってるプレイヤーであれば、チートめいた性能を持つCPU「さくま」をも赤子の手をひねるように倒せるようになるそうです。オフラインのソロプレイヤーにとっては「さくまを倒す」というのもモチベーションになりえるでしょう。洋ゲープレイヤーとして最強CPUが製作者の名前なのは『シヴィライゼーション』シリーズを思い出しますね(どっちが先なのかは知りませんが)。

筆者としては長期間コツコツ遊ぶより10年ぐらい遊ぶのが(有利不利が固定されないため)最も楽しいCPU戦だと思います。ひとり用には他にも全国ランキングを搭載した10年トライアルモードなども存在しますが、リセマラの跋扈によってほとんど全国ランキングが機能しておらず、「自分一人で記録を更新していく」以外の楽しみ方は期待しないほうがよいでしょう。

スイッチというハードが面白さを現代化させた

本作はシリーズ経験者にとっては、奇を衒ったものではないおそらく非常にスタンダードな「桃鉄」だったのではないでしょうか。それにも関わらずここまで売上が伸びた一つの要因として「ニンテンドースイッチというハードとの相性の良さ」があるのは間違いないでしょう。テレビでも遊べ、携帯モードでもあそべ、持ち寄っても遊べ、ネットでも遊べるという「遊び」の多様性が、もともとよく出来ていた『桃鉄』のおもしろさを復活させ、見事に現代化したのです。

もちろん不満点は無いわけではなく、(長時間かかるというゲームの性質上どうしても難しいのは理解しますが)野良マッチはやはり欲しかったですし、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』のアイテムスイッチよろしく強すぎるカードや「銀次」などの理不尽系イベントのオンオフを細かく設定できれば……とも思いますが、まあ、どちらもないものねだりですね。筆者としても久々にプレイしたすごろく系ゲームということもあって存分に楽しめましたし、旅行などしづらい時節柄もあって、桃鉄の世界で仮想旅行を楽しむのも乙なものでした。あとは友達がいればもっと最高だったでしょうね……

総評:★★★

良い点
・ポップでかわいいグラフィックス
・旅情を感じられる
・ニンテンドースイッチというハードとの相性が最高

悪い点
・一部カードやイベントが強力すぎる
・オンラインランキングが機能していない
・友達がいないという現実に直面させられる


《文章書く彦》
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