「デジボで遊ぼ!」ではボードゲーム要素やカードゲーム要素、テーブルトークRPG(TRPG)要素のある魅力のデジタルボードゲームを特集。今回はオンラインでプレイできるテーブルトークRPG作成ツール『TaleSpire』をお届けします。
本作はBouncyrock Entertainmentによって、2021年4月15日にSteamで早期アクセス版が配信。Bouncyrock Entertainmentはノルウェーのインディーデベロッパーで、キックスターターでのクラウドファンディングを行ったところ、8,504人から目標額の3倍以上、日本円でおよそ4,560万円が集まりました。コロナ禍において行き来が制限されていることから、オンラインでのTRPGセッションの需要が増えているのかもしれません。
本作の内容ですが、ゲームではなく、あくまでTRPGを作成するための「ツール」です。GM(ゲームマスター)が、自分の考えたTRPGを実現するための開発環境であるため、面白くなるかどうかはGM次第ということになります。いったいどんなツールなのか、さっそく見ていきましょう。
あくまで作成ツール
まずはTRPGのセッションに使うキャンペーンを作成します。「Create new」をクリックして、キャンペーンに名前を付けるようです。とりあえず「GAMESPA」としておきました。「PLAY」ボタンを押せば始まります。
そしていきなり作成画面に投げ出されました。うん、わけがわからないよ。何かちょっと『Sims4』の部屋作成画面に似ていますね。そもそもゲームではないので、「自分でマップやシナリオを考えて作れ」という事ですが、どこからとっかかっていいのかがわからない。この時点でかなりやる気を無くしていましたが、画面左側にチュートリアルの一覧が並んでいますね。これを試してみましょう。
チュートリアルですが、ムービーとテキストでの説明があるだけなので、説明書を読むのとあまり変わらないですね。一つ一つ地道に理解していくしかなさそうです。
画面の基本操作ですが、W,A,S,Dでカメラの移動。Q,Eでカメラの回転。CTRL+右クリックでカメラの高さ調整。マウスホールで拡大縮小です。またスペースキーでメニューを呼び出したり、非表示にしたりできます。
画面左上のアイコン「Campign&Board Settings」で、テーブルの色や、プレイヤーのステータス名、長さの単位を変更できます。
ステータス名の所は「STAT1」~「STAT4」までありますが、これを「STR(力)」「DEF(防御)」「INT(賢さ)」「DEX(素早さ)」とでも書き換えておきましょう。長さの単位ですが、「METER(メートル)」にしておき、1ブロックを1メートルに設定しておきます。それっぽくなってきましたね。
画面左上のアイコン「Boards」で、新しいマップを追加作成することができます。「始まりの町」「魔物のいる森」「ダンジョン」など、セッションに必要な場面を追加していきましょう。GMはここからマップ切り替えができます。
また自分の作ったマップをテキストの形でアウトプットし、コピー&ペーストで他のユーザーのキャンペーンに追加できます。気軽にマップのやり取りができるはいいですね。
「Talesbazaar.com」というサイトで、ユーザーの作ったマップが公開されていたので、試しに取り込んでみました。自分で一から作るのが面倒な人は、他のユーザーのマップを素材にして、改編していくといいかと思います。作り方の参考にもなりますので、他のユーザーの作品は一度見ておいた方がいいでしょう。
オリジナルマップを作成
それでは建物のパーツを自分で配置していきます。パーツは「城」「廃墟の城」「酒場」「砂漠の村」「寺院」など様々なジャンルに分かれています。自分の作りたいジャンルを選んで、気に入ったパーツを置いていけばいいでしょう。
ただ配置の時の操作がちょっとややこしいです。Alt+左ドラッグでパーツの回転、Ctrl+左ドラッグでパーツの高さ調整、Shift+左ドラッグでパーツの平行移動、Shift+右クリックでパーツ削除になります。
範囲選択ツールでは、立体的にオブジェクトを選択できます。最初に広さを決めて、そのあと高さを設定します。範囲選択したオブジェクトをコピー&ペーストすることで、マップ作成の作業量を減らせます。
また選択したオブジェクト群(「Slabs」と言います)をテキスト出力して、コピー&ペーストで他のユーザーに利用させることも可能です。画像は先程の「talesbazaar.com」で公開されていたユーザー作成のSlabsです。気に入ったのがあれば利用してみるのもいいでしょう。
床は範囲指定で一気に敷くことができます。床の上に床を重ねると、階段状のマップも作成が可能。慣れてくると、範囲指定を使って、壁も床も一気に作ってしまえるでしょう。
マップを暗くしたり、霧を発生させたり、光源の位置を変更したりもできます。またBGMを流したり、環境音を発生させたりもできるので、場面にあった選曲をしてセッションを盛り上げるのもいいでしょう。実際のTRPGのセッションでも、GMがプレイ中にBGMを流したりすることがありますね。本作に可能性を感じてきました。
画面右にある水面バーをドラッグして引き上げるだけで、お手軽に水面を作り出せます。これはかなり楽。水没した遺跡とか、港町を作るのに便利ですね。本作はセッション中でもGMがマップを編集できるので、状況に応じてマップに変化を起こすのも面白そうです。
ゲームをプレイ!(一人で)
実際にプレイしてみましょう。フレンドがいなくても、GMとプレイヤー役を切り替えることによって、テストプレイができます。ダイスロールですが、画面下中央に並ぶダイスを必要な数だけクリックしてから、ドラッグ&ドロップでまとめて投げられます。一度投げたダイスはまたつかんで振り直すことも可能。あまり力一杯投げると変な所へ飛んでいってしまいますが、出目の合計は画面中央に表示されるので問題ありません。
適当にキャラクター駒を配置して、それっぽくしてみました。セッション中に敵を増やしたりといったことも自由自在。また駒を右クリックで、様々なアクションやエモートが行えます。敵に攻撃したり、一回転して喜びを表したり、ふわふわと宙に浮いたりなどですね。
GMは、特定のプレイヤーに駒の使用許可を与えられます(もしくは動かす権利を奪うことも)。駒をHIDE状態にするとプレイヤーから見えなくなるので、奇襲を演出するのに良いでしょう。
画面右下にある測定メニューを使えば、距離や範囲などを測定できます。ゲームルールとして、矢は何メートルまで届くなどの設定ありましたら、これで測定して当たるかどうかの判定ができます。
測定用の範囲は、画像のような扇型以外に球体と直線があります。武器の種類に応じて使い分けたり、ジャンプ距離を測ったりすることもできますね。
駒を選択した状態でEnterキーを押すとチャット欄が表示。文字を入力すると、その駒に吹き出し付きのセリフを表示させられます。残念ながら日本語は表示されず、空白になってしまいます。アップデートで改善されるかもしれませんが、現状は音声チャットを使った方が良いですね。
駒を右クリックで、ステータスやHPなどを編集することもできます。当然、戦闘自体は自動ではないので、ダイスを振って、その結果を自分たちで変更しないといけません。TRPGはゲームごとに戦闘ルールも違いますし、下手に自動戦闘システムを組み込んで使いづらくしてしまうのもどうかと思いますので、その場その場で変えられる形の方がいいとは思います。
画面上の「ターンベースモード」を選択すると、GMが駒の動く順番を決められます。これで誰の番かが管理しやすくなります。戦闘など、素早さ順に動かなければならないなどのルールがあれば、これで並び方を決めておくといいでしょう。最後のプレイヤーが行動を終えたら、また自動的に最初のプレイヤーに戻ります。
また「カットシーンモード」を使うと、GMがプレイヤーに見せたい角度やシーン(あらかじめ用意しておくことも可能)を編集できます。戦いの前など、演出に凝りたい時に使えますね。
他にも、背景の一部を見えないようにする(プレイヤーたちが近づいたときに見せる)などといった機能も。あと必要なのは、プレイヤーを楽しませるためのストーリーと語り口ですね。こればかりはツールではどうにもならないので、ぜひ想像力を働かせて「僕の考えた最強のTRPG」を作成してみてください。
お手軽で柔軟性のあるTRPG作成ツール
オンラインでTRPGをプレイするという試みは、インターネット初期の頃からありました。しかし各プレイヤーは数字や平面的なマップなど、味気の無いデータやグラフィックと睨めっこしながらプレイしなくてはなりません。メールを使ったやり取りでのプレイというのもありましたね(すごく時間が掛かりますが)。
本作ではそういったオンラインTRPGの欠点を補い、ビジュアル的・直感的に何が発生しているかをプレイヤーに分かりやすく伝えられます。音楽や効果音を使ったり、カットシーンモードで演出を加えたりなどもできるため、映画やゲームを作成している気分も味わえます。演出に凝りたいGMには良いツールとなるでしょう。
また他のユーザーが作ったマップやSlabsを手軽に導入(もしくは配布)できますので、そこから自分用に改編していけば、作成の手間は大幅に削減が可能。そもそも最初の内はどう作ったらいいのか分からないので、他のユーザーの作品を参考にしながらオリジナリティを出していくのがいいかと思います。
欲を言うと、駒やオブジェクトなど、プレイヤー自身がカスタムした3Dモデルを取り込めるようにすれば、制作物の幅が広がるのではないと。ただ、それだとユーザー側も3Dモデルを新たにダウンロードしなければならないなど、互換性に問題が出てくるおそれもありますね。あまりごちゃごちゃとシステムが多すぎると気軽に作成できるという本来の目的から外れてしまうため、リアルタイム編集が容易な現在の状態がベストなのかもしれません。
それとオンラインでのセッションですが、当然ながらプレイヤー側も本作を購入する必要があります。開発を行わないフレンドに購入(定価2,570円)させなければならないので、プレイまでのハードルが高いのは否めません。プレイヤー側に開発機能を外した無料(もしくは低価格)のクライアントを提供できれば、本作も広まりやすくなるのではないかと思います(GMとプレイヤーは、そもそもTRPGに対する目的が違うので)。
何はともあれ、本作は手軽にオンラインTRPGを楽しめるツールになっています。TRPGに興味のある方、そしてプレイに付き合ってくれるフレンドがいる方(ここが重要かつ極めてハードルが高いですが)は、ぜひ本作を試してみてください。
製品情報
開発・販売:Bouncyrock Entertainment
対象OS:Windows通常価格:2,570円
サポート言語:英語
ストアページ:https://store.steampowered.com/app/720620/TaleSpire/