『バトルフィールド 2042』漠然とした「残念さ」はどこから?【コラム】 3ページ目 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『バトルフィールド 2042』漠然とした「残念さ」はどこから?【コラム】

『BF』、生きてくれ!!

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良かった点

さて、ここまで問題点を挙げてきましたが、『BF2042』は多くの良い点も同時に存在しています。ビークルと歩兵は両存していますし、過去作よりは少なくなったとは言え破壊要素もあります。大規模戦闘も楽しめます。ただ、これらは「BF」シリーズとしての良い要素です。本項では『BF2042』だからこその良い要素を上げていきましょう。

なお、本項には「ビークルの呼び出し」といった、現状では機能していないものの試みとしては良かった要素も含めます。その際はなぜ機能していないのかについても解説していきます。

現在の環境問題を反映した世界観

世界設定については現実世界でも危惧されている環境問題に注目しており、なかなかに面白い世界観でした。マップのゲーム的構造はともかく、ビジュアルや設定については魅力的です。砂色の荒野と緑の人工農業地帯が対比になっている「リニューアル」やインドの廃船解体場を舞台にした「ディスカード」などは一目見たら忘れられない、良いビジュアルと設定のマップでした。

マルチプレイに比べて遊ぶ時間が極端に少ないキャンペーンを廃し、世界観やストーリーの説明をプレイヤーカードにて行ったのも個人的には高評価です。(だからといってマルチプレイが良かったわけでは無いのですが……)

『BFV』では評価が分かれた女性兵士(WW2ではソビエトなど一部の国を除いて戦闘部隊に女性を配置しなかった)の存在も、現代~近未来戦ということで全く違和感がなくなりました。

ただ、世界観を反映した陰鬱なBGMやシリアスな世界観とコミカルなキャラクターが合っておらず、肝心のゲームプレイ時の世界観は何ともチグハグな印象です。特にBGMは盛り上がりに欠け、嫌いです。

バッジや称号の要素

これまでのシリーズでは戦闘に応じて獲得できるリボンやメダルを収集しても自分だけしか見られませんでしたが、戦闘に応じて獲得したバッジをプレイヤーカードに付けて見せびらかすことができるようになりました。

本当の意味で自己満足的だった、やりこみ収集要素を見せられるようになったのはとても良い点だと思います。

銃のアンロック・アタッチメントアンロックは過去作に比べても比較的優しめ

銃のアンロック方法についてはシリーズ過去作に比べて大分優しめです。銃のアンロックは妙な任務(タワーから1ラウンドで5スナイプキルなど)を達成せずとも良く、プレイしていればレベルの上昇で自然とアンロックされます。

銃のアタッチメントのアンロックも1試合30~50キルほどすると考えて10試合で(300分程度)で全てアンロックできると考えれば程よいでしょう。

ビークルの呼び出し

ビークルの呼び出しは機能していません。広大なマップの移動を助けるために呼び出し機能があるのかと思ったら、基本的に呼び出せるのは移動用車両(バギー。バイクなど)では無く、戦闘用車両だったというのは期待外れでした。

また、ビークルの呼び出しにはクールダウンや上限があり、思うようには使えませんでした。ただ、シリーズで初めて実装した機能として、その挑戦性と今後のポテンシャルは評価できます。ただし、ビークルの呼び出しによって戦線が構築されにくい、いわゆる「回遊」の傾向が強まってしまう懸念もあります。

回復箱の効果範囲表示

回復箱の効果範囲表示は痒い所に手が届く、明確な良い点です。

AI兵士の存在

AI兵士の存在も挑戦的です。もっとも、AIはそれほどアクティブでは無く、「人間に近いか?」と問われると首をかしげる部分もありますが、これからの進化に期待できます。

銃器の拡散

『BF2042』は前作『BFV』と異なり、発射した弾の距離が遠くなるに従い拡散していきます。つまり、適正な距離でなければ狙った場所に飛びません

これは広いマップで戦うことの多い『BF』シリーズに適していると思います。『BFV』のリコイル制御次第で遠方の敵も対処できるゲームシステムになると上級者と初級者の差が付きすぎます。ランク別や内部レートでのマッチングが有るならばプレイヤーのテクニックが直接反映されるバランスでも良いのですが、『BF』シリーズは1つの戦場に初心者から上級者まで集まる方式となっており、ゲームの側が実力差を増幅させるような『BFV』式の挙動は適切ではありません。

『BFV』のような銃の挙動にすると遠距離でのキルタイムが速くなりすぎると感じていたので、銃器の拡散については明確に良い点だと考えます。

ハザードゾーン・ポータルに関して

『BF』でバトロワライクなゲームを楽しめるハザードゾーンに関してですが、面白いか、面白くないかで言えば間違いなく面白いゲームモードになっています。ただし、『BF』シリーズにバトロワを求めていたか、と問われると首をかしげてしまいます。『BF』の強みは大人数で遊べる大規模戦闘であり、4人でコソコソ隠れながらマップ内に隠された報酬を探しまわるゲームモードは完全に『BF』の強みを消してしまっているのです。

また、バトロワは既にサービスが円熟し、プロから初心者まで膨大なプレイヤー層を抱えたゲーム(しかも無料!)が複数存在しています。こうした事情を鑑みると『BF2042』のハザードゾーンは何とも中途半端な立ち位置で、精彩を欠いています。

ちなみに、発売一か月の時点で既にPS5ではマッチングしなくなっており、2月現在はクロスプレイをオンにしてもマッチングしないことは付記しておきます。いずれにせよ、ハザードゾーンをプレイするために『BF2042』を買うのは全くの無意味です。

ポータルはプレイヤー自身が管理者となりコミュニティゲームを作成できるレンタルサーバーに、過去のマップや銃器を付属させ、管理者は細かなカスタマイズができ、さらに無料!と夢のようなモードです。様々な魅力的なサーバーについてはGame*Sparkでも度々お伝えしてきましたが、実際に自分で作り、真面目にゲームサーバーを運営しようとすると、その不完全さに驚かされます

例えば、観戦モードが無くスコアボードが表示できないのも相まって管理者がチーターに対処するということが難しくなっています。また、チーム間のバランスを図るための強制チーム移動も実装されていません。コンクエストやラッシュではルールエディタ(カスタマイズ用のプログラム)も使えません。

と、現状はあまり評価できるものではありませんでした。

漠然とした「つまらなさ」はどこから?

公式サイトより

『バトルフィールド 2042』を一言で表すならば、「唯一無二の大規模対戦FPSだが、多くの問題もはらんでいる」に集約されます。上述した通り、本作は大小の様々な欠点があります。欠点とは言わないまでも、過去のシリーズから大きく変わり過ぎて不満に思う点も多々あります。特に、マップはどうしようもない致命的な欠陥です。できることならば、全マップを抜本的に作り直して欲しいレベルです。

ハザードゾーンは求められていたものだろうか、分隊やパーティ内での高度な連携は求められていただろうか。多くのプレイヤーは大規模な戦争ごっこ、偶然に遭遇するキャンペーンのような瞬間、見知らぬプレイヤーとの思わぬ連携。プレイヤー同士を連帯させ「戦友」にしてくれる瞬間を望んでいたのではないでしょうか。『バトルフィールド 2042』はこうしたユーザーのニーズと『BF』の良さを汲まなかった結果、ハザードゾーンも「All-out Warfare」もポータルも、全て中途半端になったのではないでしょうか。ただ、筆者が冒頭で提示した『BF』に求める大人数対戦であることビークルと歩兵が両存した戦闘であること。野良との自然な協力要素があること。オブジェクト破壊要素があること。の4つの必須要素は、ところどころ不完全なものの、満たしているのです。ゲームも一部の不具合を除けばそれなりに遊べます。マルチキルが取れれば興奮しますし、勝敗だってつきます。プレイングの多様さも今まで通りです。

にもかかわらず、今作をプレイしていて、そしてレビューを書いていて、本作の漠然とした「つまらなさ」の根源に悩むことになりました。3ヵ月も経たないうちにアクティブユーザーが4000人台になるということは大なり小なり皆「つまらない」と思っているはずです。筆者はこの「つまらなさ」の原因が「甲斐の無さ」つまり、物事を行ったことに見合う興奮がない。 やる意味がないこと。にあると感じています。

従来からの2倍の128人というプレイ人数は個々人の影響力を抑制し、無力さを感じるようになりました。人数で平押しするしかない遮蔽の少ない拠点やマップ構造もこれに拍車をかけています。スコアボードや戦績が無いのは分かりやすい、やり甲斐のなさです。過去作では拠点を制圧する積極的な行動のリターンとして、敵と銃撃する興奮が得られましたが、拠点が多い今作は勝利への積極行動を行っても、誰もいない拠点で待つだけという、甲斐の無いゲーム体験ばかりになります。

確かに、今作ではバッジや称号といった「報酬」要素がありますが、ゲーム体験で最も大切な報酬はスリルや手ごたえ、興奮といった楽しさで、まるで仕事のように課題をクリアすることではありません。翻って、今作は勝利への積極的な行動がゲーム体験の本質的な楽しさに繋がらない、「甲斐の無さ」がつまらない原因なのではないでしょうか。


ただ、発売直後から評価の良かった『BF』シリーズを筆者は『BF1』しか知りません。『BF4』では1年近くサーバー問題があり、『BFV』も発売前から様々な問題で騒動になり、最後にはアップデートが打ち切られてしまいました。それでも、今までの『BF』シリーズはそれなりに評価を回復していったのです。今作は過去と比べても危機的ですが、最も大きな問題点であるマップや兵科を抜本的に作り直し、細々とした不満点(スコアボード・銃の種類)を改善できれば持ち直すポテンシャルを感じます。


《大塩》
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