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『ELDEN RING』格ある物語の作り方とは?現代エンタメに欠かせない「類型」【ゲームで世界を観る#23】

王道のパターンを知るのがヒットを生む秘訣です。

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かつて、大いなる力を与える「エルデンリング」が砕け、その欠片を巡る「破砕戦争」によって狭間の地は荒廃した。やがて、黄金の祝福を失って追放された「褪せ人」が霧の向こうから狭間の地に戻り始める…。そんな『ELDEN RING』の世界観は、大ヒットドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」およびその原作となるファンタジー小説「氷と炎の歌」の作者であるジョージ・R・R・マーティンの創作神話をベースに作られています。表題でもある「エルデンリング」や「黄金律」、「巫女」の存在など、謎めいたキーワードを少しずつ明らかにしていくのも本作の醍醐味ですね。

多くのゲームでは神話上の力を主人公が得る、または持っていることが物語を大きく動かします。特にアクションゲームでは、主人公が多数の敵をなぎ倒せるような力を最初から持っている理由にもなりますし、物理を無視した派手な動きをさせられます。『大神』『ゴッドオブウォー』など、神の力を振るって巨大な敵を相手取る主人公の作品は、印象に残る傑作にもなりやすいです。

創作にせよ古代からの伝承にせよ、神や英雄の物語にはある一定のパターン、見てはいけないと言われたものを覗いてしまう、忌み嫌われていた存在が一転して偉大なる存在になる、などいわゆる「お約束」が出てきます。世界各地でバラバラに育った文化で生まれた物語の中に、世界で共通するものが出てくるのは何故なのか? その謎は「比較神話学」という研究の対象になってきました。

物語の構造や登場人物の役割など、研究者によって系統は大きく異なりますが、現れるパターンは「物語類型」「神話類型」と呼ばれ、それぞれが文化にとってどのような意味があるのかを考察していきます。主要なものに旧約聖書の「ノアの箱舟」のような「大洪水」の類型があり、世界中の古代神話の中に「大きな洪水が起きて古い文明が壊滅し、僅かに生き延びたものが現在の世界の始祖である」というものです。

考えられる理由としては、単純に世界各地で起こる大洪水または津波の被害が、民族の存亡に関わるほど甚大だったというのが妥当でしょう。東日本大震災のような大津波を古代の人々が目撃したら、まさしく世界の終わりだと考えても不思議ではありません。

もう一つの可能性としては、人類が共通のイメージを持つほどの大きなイベントが起きたとするものです。氷河期の終わり、約1万年前に大規模な海面上昇が起こっており、この頃からの口伝が神話の中に残ったのかもしれません。

心理学のユングは類型に見る神話のイメージや、事象に対する感覚に共通するものから、全ての人類、動物は意識の奥底に共有する部分を持っていると考えました。それを「集合的無意識」(普遍的無意識)と名付け、その集合的無意識の中にあるパターン「アーキタイプ」から、世界の宗教や神話の源泉となったとしました。『ペルソナ』シリーズはこの概念をモチーフとしており、人類の持つ願望や思いが神や悪魔などの超常存在を生み出す設定です。

神話研究者のジョーゼフ・キャンベルはそういった類型の研究から、「英雄の旅」の物語は全て共通する要素を持っていると著書「千の顔を持つ英雄」で提唱しました。大雑把にまとめると、主人公である英雄は非日常の異世界へ旅立ち、様々な試練を経験して成長した後に元の世界へ帰還する、というもの。途中にいろいろなお約束の「要素」はあるものの、おおよそこの構図に集約されるとしました。

キャンベルの理論は物語の創作にも応用され、脚本を勉強するに当たっては必ずと言って良いほど参照されます。主人公が経験を積んで成長する過程を軸に据え、そのドラマを生むためにどんな役割の人物を配置していくか、というように考えていけるのです。これはゲームに於いてもとても重要な考え方で、ステージ数や成長曲線を決めた後に、それに合わせてシナリオを用意する必要があります。

例えばRPGだと街やボス戦をいくつ出してボリュームはこのくらい、というのを先に決めておかないと予算や人員の関係でプロジェクトが破綻しかねませんから、シナリオライターはある程度決まった枠の中で脚本を作ります。そのため出す要素、ボス役の人物や手に入れる力などの「類型」が先に決まっている上で、その間を埋めるように後付けのシナリオを書いていくという場合もあるのです。システム上進行にリンクした主人公の成長が中心となるゲームと「英雄の旅」の考え方は相性抜群と言えるでしょう。

もう一つゲームと相性が良いものを挙げるなら、民俗学の折口信夫が提唱した「貴種流離譚」です。王の一族や強さを誇る英雄が何らかの事情で異境へ流され、一度力を失うも困難を乗り越え、再び偉大な存在に戻るという類型です。これの良い点は、冒頭に於いて強い力を持った主人公が危機に陥るという強力な幕開けになるのと、失った力を取り戻していくので成長の目標と実感を与えられます。

例えば『天穂のサクナヒメ』の場合は、自分の能力にあぐらをかいていたために追放される、置かれた環境の変化に戸惑う、自分の驕りに気づく、と、序盤だけでも3つのドラマを用意できますね。そして、「良い米を作ることが最強を取り戻す唯一の道」とゲームシステムと物語に大きな筋道を明示します。最終的な目標が見えていると、それに向かってプレイヤーも頑張ろうという気持ちになります。

『エルデンリング』の物語も、エルデの王になる資格を持つ主人公が強敵と対峙しながら失われた祝福を取り戻していく、貴種流離譚とも取れます。気になるのは「貴い」という言葉に特殊な意味合いが含まれているように思える点です。狭間の地には集団でうろついている「貴人」がいるのですが、フロムソフトウェアの前作『Sekiro』にも「貴人」という存在が出てきます。前述の折口信夫は「貴種」について高貴な生まれだけでなく、異界からやってきた存在も含めるとしています。これを「まれびと(客人)」と言い、来訪神として丁重にもてなすと祝福を得られるという風習があります。この類型から、あくまでも序盤時点での想像ですが、狭間の地にもたらされる黄金の祝福は「貴人」が持ち込んだのでは、と考えることもできます。果たして彼らは何を探しているのでしょうか…?



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