なぜ、時代に逆行した『世界樹の迷宮』は成功したのか? リマスター版にも受け継がれるその魅力とは【UPDATE】 2ページ目 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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なぜ、時代に逆行した『世界樹の迷宮』は成功したのか? リマスター版にも受け継がれるその魅力とは【UPDATE】

リマスター版の発売も決まった『世界樹の迷宮』。果たしてどんな魅力で当時のプレイヤーを引き付けたのか。未経験のユーザーへのお勧めポイントと併せて紹介します。

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なぜ、時代に逆行した『世界樹の迷宮』は成功したのか? リマスター版にも受け継がれるその魅力とは【UPDATE】
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■『世界樹の迷宮』が人気を博した、2つの理由

『世界樹の迷宮』シリーズが備える特徴について簡単に説明しましたが、それを支える大きな要素であり、本作に惹かれたプレイヤーたちにひときわ支持されたのが、「戦闘」と「マッピング」です。

【高めの戦闘バランスだからこそ、勝利が心地よかった『世界樹の迷宮』】

シリーズ1作目が発売された2007年は、「PlayStation 3」や「Wii」が広がり始めた頃。特に、Wiiがカジュアル層に支持されたため、ゲームに「快適さ」や「遊びやすさ」がより強く求められる傾向にありました。難易度が高かったり不親切なゲームは、狭い範囲のコアゲーマー向けを除いて時代にそぐわなくなっていると思われていた頃です。

ですが『世界樹の迷宮』はむしろ「難しく」、そして「利便性は高くない」ゲームという見方もできるタイトルでした。その印象からか前評判は割れており、どれだけ支持されるかは全く不明。そんな状況の中登場した1作目の『世界樹の迷宮』は、一時期入手が困難になるほどの人気で、後にシリーズ化を果たすほどの活躍を残します。

まず戦闘面ですが、ニンテンドーDSソフトの中ではかなり高めの難易度です。家庭用ゲーム全般から見ても、水準以上の難しさを持つ歯ごたえ満点のバランスでした。しかし、その難易度の高さは、単なるステータス差や理不尽な敵の強さによるものではなく、「強いけども対処方法のある手ごわさ」がほとんどでした。

強烈な炎のブレスをまともに受ければパーティは半壊。しかし、事前に炎系の防御を敷けば、格段にダメージが抑えられます。また、後衛にいるメンバーを狙う敵がいれば、防御力の高い味方が「挑発」を行うことで、敵の攻撃を引き付けて後衛の危険度を下げられます。

こうした対処法があるため、一見理不尽な攻撃も戦略ひとつで打破が可能。むしろ、その強大な力を戦略でねじ伏せる快感がより大きくなり、撃破する心地よさも倍増します。この歯ごたえと気持ちよさを両立させた『世界樹の迷宮』のバトルは、コアなゲームファンから大きな賛同を得ました。

【懐かしい「手書きマッピング」の楽しさを、ゲームに取り入れた大胆さ】

そしてもうひとつ、『世界樹の迷宮』の代名詞とも言える特徴が、「手書きマッピング」です。迷宮に点在する階段や危険な罠は、どこにあるのか。そうした情報は攻略面だけでなく、生きて帰るためにも欠かせません。

昨今はもちろん、当時もオートマッピング型のゲームは多く、自動的に記されたマップを頼りに遊んだものです。しかし『世界樹の迷宮』シリーズの場合、マッピングはプレイヤー自身が行い、壁や隠し通路、宝箱の場所などをその手で記します。

ここで「手書きしないとダメなの? 面倒くさそう」と思うのは、決して間違いではありません。実際、発売前は多くの人がそう考えました。数歩歩くたびに線を引き、罠や階段を示すアイコンを置き、時にはコメントも付け加える。なんて時代に逆行しているシステムなんだ──と。

ですが蓋を開けてみると、「手書きマッピング」の楽しさに目覚めた人が続出。確かに一手間が増えているのは事実ですが、手間は面倒ごとにあらず。未体験だと信じられないかもしれませんが、「迷宮の地図を自分で描く」という行為そのものが、例えばレベルアップであったり、強い武具を手に入れるといった、ひとつの報酬として得られるものに近い喜びを帯びていたのです。

手書きマッピングそのものが、万人に広く親しまれる魅力、とは言いません。人を選ぶのは事実ですが、だからこそ、この一手間の行程そのものを楽しく感じる方も一定数おり、そんなユーザーたちが『世界樹の迷宮』のマッピングシステムを力強く支持しました。

実は、こうした手書きマッピングの楽しさは、黎明期の『ウィザードリィ』時代ではお馴染みの要素でした。自分だけの地図を作る楽しさは80年代の時点ですでに確立されており、『世界樹の迷宮』のマッピングが受け入れられたのも、ある意味当然の話だったとも言えます。

といっても当時の手書きマッピングは、ゲーム内のシステムではなく、方眼用紙などに直接書き込むという物理的な形でした。しかしその文化も、攻略本の販売やネット上での攻略サイトの登場、そしてゲーム自体が快適性を追及してマップ機能などが便利になったことから、手書きマッピングの文化は鳴りを潜めます。

そんな時代に登場した『世界樹の迷宮』は、ゲームの中に「手書きマッピング」のシステムを採用。一方でわざわざ用紙を置いて筆記用具を手にするといった煩わしさを省き、“自分の手で迷宮の謎を明かす”マッピングの楽しさだけを提供する姿勢が、RPGファンを中心に確かな人気を育む一因となりました。

時代の流れに安易な迎合を見せなかった姿勢が、大きな成功に繋がった『世界樹の迷宮』。バトルとマッピングが織り成す「自分だけの冒険」を味わえる作品だからこそ、冒険者たるプレイヤーたちは『世界樹の迷宮』の登場に歓喜するのです。その歓迎ぶりは、平成でも令和でも何ら変わりません。


《臥待 弦》
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