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6年の時を経て「RTA in Japan」でのクリアタイムは5分の1に。『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』RTAの進化

「RTA in Japan ex #2」のトップバッターを飾った『スカウォ』RTA。その進化の軌跡を、走者のHiST氏へのインタビューとともにお届けします。

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6年の時を経て「RTA in Japan」でのクリアタイムは5分の1に。『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』RTAの進化
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2023年4月28日から30日にかけて静岡県で開催された、国内最大級のRTAイベント「RTA in Japan ex #2」。LANパーティ「C4 LAN 2023 SPRING」内で行われた同イベントですが、「C4 LAN」内で「RTA in Japan」が開催されたのは2回目です。前回開催されたのは「RTA in Japan」発足の翌年にあたる2017年でした。

RTA in Japan for #C4LANJP - RTA in Japan

これらの開催時にトップバッターを飾ったのは、いずれもHiST氏による『ゼルダの伝説 スカイウォードソード(以下、スカウォ)』。『スカウォ』Any%のRTAは、すば氏による2019年のランを含めるとこれまでに3度、「RTA in Japan」に採用されています。これは同一作品・同一カテゴリーの採用回数としては、『スーパーマリオブラザーズ』のWarplessに次ぐ数字です。

過去3回の「RTA in Japan」本番の完走タイムを比較してみると、2017年は6:01:03、2019年は2:16:43。そして2023年(今回)は1:20:18。初回の披露と比べて、何とおよそ5分の1にまでタイムが縮まっています

2017年の世界記録は4:59:41と、いわゆる『3Dゼルダ』の中でも最長であった本作のAny%RTAですが、2023年4月時点の世界記録は1:09:37。本記事ではこの6年間で『スカウォ』RTAに何が起こったのか、その進化の歴史を紐解きます。

タイトル画面でリンクを操作!「Back in Time(BiT)」とは

『スカウォ』と言えば、Wiiリモコンプラスとヌンチャクを振って操作する、2011年発売のアクションアドベンチャーゲーム。「ゼルダの伝説、はじまりの物語」のキャッチコピーが示唆するように、同シリーズの中でも時系列的に最古の「マスターソード」の誕生の物語が描かれた作品です(残念ながら現在のRTAでは「マスターソード」を手にすることはありません)。

『スカウォ』RTAにおいては、スタイリッシュな剣戟アクションもさることながら、見た目の強烈なグリッチも大活躍します。最も特徴的なのは、タイトル画面を開いたままのプレイを可能にする「Back in Time(BiT)でしょう。BiTを駆使する本作のRTAでは、プレイ時間の多くをタイトル画面のまま進めます。

同様のグリッチは『風のタクト』や『トワイライトプリンセス』でも実行可能ですが、作品ごとにその発動方法や応用範囲は異なります。『スカウォ』におけるBiTのやり方は非常にシンプルで、ゲームオーバー後に冒険を「つづける」を選んで、リセットをするだけ。

これだけ簡単に発動できるにもかかわらず、その応用先は非常に幅広く、『ゼルダ』シリーズのスピードランの情報まとめサイト「ZeldaSpeedRuns」における『スカウォ』のページでは、BiTの派生技として11種類ものグリッチが列挙されています。

Back in Time (BiT) - ZeldaSpeedRuns

まずは、BiTの派生技として最も基本的な2つを紹介しましょう。BiT中のタイトル画面でもモニュメントでセーブできるのですが、セーブ後にファイルをスタートすることで、元々いたエリアからセーブをしたモニュメントへ移動することが可能です。これが「BiT Save」と呼ばれるグリッチです。

では、セーブと同時にファイルをスタートすると何が起こるでしょうか。この場合、座標の情報だけがタイトル画面内でセーブをした場所の情報に置き換わることとなり、元々いたエリアの中で異なる座標にワープします。こちらは「BiT Warp」と呼ばれます。

BiTを応用すれば、エリアや座標だけでなく、ゲーム内のフラグを操作することも可能です。例えば、ファイル内で木にぶつかって隠しルピーを出す、モニュメントを調べるといった行動を取ることで、BiT中の環境に変化を及ぼすことができます。「BiT Magic」と呼ばれるこの技は、主にスカイロフトの門を開くために使われます。

ファイルからフラグを読み込んでBiT中の環境を変化させるのが「BiT Magic」でしたが、その逆は出来ないのでしょうか?その答えが見つかったのは、2019年でした。「Reverse BiT Magic(RBM)」は、BiT中にタイトル画面で立てたフラグをファイルに適用します。RBMを使うと、例えば「スカイロフト」の墓地にある小屋を開くというフラグを使って、「オルディン火山」で大地の神殿の扉を開くことが可能です(このような現象が起こるのは、これらのフラグが「5x02」という共通のアドレスを使っていることが背景にあります)。

RBMの発見によりゲーム内のフラグを操る自由度が上がったことで、数多くのイベントスキップが可能になりました。中でも「空の塔」の攻略を含む「勇者の詩」のスキップは、それ単体でも約80分の短縮に貢献する大きなものでした。結果として、2019年始に4:50:59であった世界記録は、9月には2:09:22まで縮むこととなりました。

本節で紹介したグリッチは、HiST氏による日本語の解説記事でも詳しく紹介されています。

タイトル画面のリンクを操作!Back in Timeってどんな技? #スカウォ流行れ(RTAGamers)

ボスラッシュモードを抜け出してラスボスへ。「Ghirahim 3 Escape」の発見

革命はまだまだ止まりません。RBM発見の翌年には、「ラネール渓谷」における「雷龍の荒修行(ボスラッシュモード)」に早い段階でアクセスする「Early Boss Rush」が確立されました。物語のクライマックスに繋がる「時の扉」を開くには「封印されしもの(2回目)」を倒すことが必要ですが、そのフラグがボスラッシュモードを経由することで早々に手に入るようになったのです。

この発見は「ラネール渓谷」到着後のストーリーを大幅に短縮しただけでなく、終盤のダンジョン攻略に必要だった「パチンコ」や「ビートル」、「バクダン」といったアイテムの取得をも不要にしました。その結果、Any%の攻略ルートは大きく最適化され、2020年内だけで20度の世界記録更新を経て、1:22:27にまでタイムが縮まりました。

そして2022年7月、『スカウォ』RTAはもう一段階進化を遂げます。ボスラッシュモード内の「ギラヒム(3回目)」戦を抜け出す「Ghirahim 3 Escape」が発見され、「時の扉」を開くことなく実際の「ギラヒム(3回目)」戦に突入でき、そのままラスボスへ直行できるようになったのです。

「Ghirahim 3 Escape」では、ギラヒムを特定の方法で繰り返し下の足場に突き落とすことにより、本来はバリアの外にあって到達できない「ハイリアの地」のモニュメントでセーブ&ロードを行います。ロード後は透明な壁に囲まれていますが、そこから上手く抜け出すことでラスボス直前の正規の「ギラヒム(3回目)」戦に挑めるのです。

この発見により、「時の扉」を出現させるための「女神のハープ」が不要になったほか、「ギラヒム」の元に向かうまでの大群との戦いをスキップできるようになりました。発見の翌月までに記録は12分強更新され、冒頭でも紹介した1:09:37というタイムが現在の世界記録となっています。

ちなみに、2021年にSwitchでリリースされたHD版でもモニュメントにアクセスするところまでは実行可能ですが、セーブ&ロード後に透明な壁を抜ける方法が見つかっておらず、未だ実用に至っていません。現在、HD版の世界記録は3:59:33となっており、こちらも新たな発見による今後の大きな更新が期待されています。

(ここまでの記事内画像はゼルダの伝説 スカイウォードソード - RTA in Japan ex #2よりスクリーンショットを引用しました)

「RTA in Japan ex #2」走者・HiST氏ミニインタビュー

本記事の最後に、「RTA in Japan ex #2」で最新の『スカウォ』RTAを披露したHiST氏へのインタビューをお届けします。

──本番お疲れさまでした。ご自身の走りはいかがでしたか?

HiST:ボス戦でのミスはあったのですが、ブラッシュアップされた新しい『スカウォ』RTAを披露できて満足です。BiTが絡む技を失敗して詰んでしまうとリカバリーデータを使うことになる可能性もあったのですが、それが起こらなかったのも何よりでした。

──6年前の「RTA in Japan for #C4LANJP」と比べて、今回のプレイ環境はいかがでしたか?

HiST:前回はBYOCエリアでの開催ということもあり、今回ほど広いスペースが用意されていたわけではありませんでした。Wiiのセンサーバーとの距離を十分確保できず、普段とは全く違う感覚でのプレイになって大変でしたね。事前練習ではヌンチャクを振ってもアタックが出ず、Wiiリモコンの故障を疑ったほどでした。今回はとても快適な環境で走れました。

──今回、特に見てもらいたかったところはどこですか?

HiST:「ギラヒム(3回目)」戦ですね。「Ghirahim 3 Escape」を決めた後に、正確なWiiリモコンさばきを要求されるポイントなので、速いパターンを決められて良かったです。

──走者カメラでは高速に動く手元が映っていたのも印象的でした。しっかりパターン化されたスタイリッシュな戦闘も見応えがありました。

HiST:元々7年前にAny%のRTAを走り始めたのは、ラスボス戦が格好良くて真似してみたいと思ったからなんですよね。戦闘面の面白さも伝わったようで嬉しいです。

──1時間10分切りが達成された『スカウォ』RTAですが、ここから1時間を切るためにはどんな発見が必要だと思いますか?

HiST:「Ghirahim 3 Escape」のおかげで「ラネール地方」に行ければ勝ち、という状況になりましたが、そこに至るまでに短縮の余地があります。「フィローネ地方」はBiTに使うフラグの都合上飛ばせそうにありませんが、「オルディン地方」で何かしら大きなスキップが発見されると良いですね。

──最後に、HiSTさんご自身の今後の目標を教えてください。

HiST:最終的には1時間10分を切ることが目標ですね。最近Wii U版とのタイム差を検証し直した結果、実はWii版よりも10秒ほど速いことが分かりました。今後は以前使っていたWii U版に戻って、まだまだ記録を詰めたいと思います。


《とんこつ》

RTAプレイヤーです とんこつ

福岡県出身。東京大学卒業後、2018年にRTA(リアルタイムアタック)に出会い、現在に至るまでTwitch & Youtube Partnerとして活動中。主なプレイタイトルはスーパードンキーコングシリーズとマリオ&ルイージRPGシリーズ。RTA in JapanやGames Done Quickへの出場多数。

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