なぜ『ボーダーブレイク』は国際的成功の好機を逃してしまったのか―結局日本限定でしか遊べなかった、理想的な「海外ゲーマー向け」作品【オリーさんのロボゲーコラム】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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なぜ『ボーダーブレイク』は国際的成功の好機を逃してしまったのか―結局日本限定でしか遊べなかった、理想的な「海外ゲーマー向け」作品【オリーさんのロボゲーコラム】

ロボゲーにおいて、ゲームが規定するプレイヤーの立ち位置が操作系に与えるべき影響とは。

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なぜ『ボーダーブレイク』は国際的成功の好機を逃してしまったのか―結局日本限定でしか遊べなかった、理想的な「海外ゲーマー向け」作品【オリーさんのロボゲーコラム】
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先日、『アーマード・コア』シリーズへの独自の視点からの言及をきっかけに、多くの日本人から「ロボゲー・ロボアニメ詳しすぎな外国人」として知られるようになったオリー・バーダー氏。実は、氏はゲームやアニメを中心として日本サブカルを海外に長年伝えてきた記者であり、様々なタイトルにかかわってきたゲームクリエイターでした。


弊誌の取材に対して、そんな氏がこぼした最近の悩みと言えば「ロボゲーを作らせてくれるスタジオが見つからない!」ということなのだそう。そこで、本稿では、氏の文章を通じて、氏のもつ「ロボゲー・ロボアニメ」への視点や美学の一端をお伝えしていきたいと思います。


近年のメカゲームの中でも、特に優れた作品のひとつが、日本のアーケードで展開されていた『ボーダーブレイク』です。しかしながら、PS4での家庭用リリースは、巨大な国際メカゲーム市場を活かすという点において、非常にもったいない、機会を逃したものだったと言わざるを得ません。

その話に入る前に、少し過去を振り返ってみたいと思います。今から20年以上前、私はエレクトロニック・アーツにて、認証テスターとしてゲーム業界でのキャリアをスタートさせました。

この業務は、一般的に言われる「品質保証(QA)」テストとは少し異なり、パブリッシャー側で行われるものでした。ソニー、マイクロソフト、任天堂といったプラットフォーマーに提出する前段階として、比較的短期間で集中的に行い、製品が提出基準を満たしているかを確認する役割です。

当時、私が関わる中で印象に残っていたタイトルのひとつが、『バトルフィールド』シリーズでした。これらの作品は、さまざまな近代戦争を題材としており、プレイヤーは一人称視点で兵士を操作し、マップ上のエリアを制圧していきます。また、多彩なビークルも用意されており、全体として非常に奥行きのあるゲーム体験が提供されていました。

ここで『バトルフィールド』に触れたのは、単にシリーズとして大きな成功を収めてきた――そしておそらく今なお成功し続けている――という理由だけではありません。各マップにおいて、拠点を制圧し、そこを新たな攻勢の足がかりとして戦線を広げていくという構造が、『ボーダーブレイク』のゲームデザインと非常によく似ていると感じたからです。

アーケード向けに生まれた、唯一無二のメカゲーム

私が初めて『ボーダーブレイク』をプレイしたのは、2009年に日本のアーケードでした。その完成度の高さには、強い印象を受けました。グラフィックが優れていただけでなく、ゲームとしての手触りも非常に良好だったのです。

メカのデザインも秀逸でした。これまでにも触れてきたとおり、国際的なメカ市場は非常に大規模である一方、その嗜好はきわめて明確です。特に、『太陽の牙ダグラム』や『装甲騎兵ボトムズ』といったメカアニメの影響から、軍事色の強いメカが好まれる傾向があります

その点において、『ボーダーブレイク』の工業的で無骨なメカデザインは、国際的なゲーマー層に訴求するうえで、すでに非常に適したものでした。

しかし、『ボーダーブレイク』を本当に特別な存在にしていたのは、その操作体系です。

アーケード版は一見すると専用の独自操作系を採用しているように見えましたが、実際の操作構成は、PCにおけるFPSやTPSのマウス+キーボード操作と、ほぼ同等のものでした。

そのため、『バトルフィールド』シリーズとの共通点は非常に明確であり、とりわけ、マップ上の拠点を制圧しながら敵チームを追い詰めていくゲーム構造には、強い既視感を覚えました。

方向性を誤った家庭用リリース

しかしながら、『ボーダーブレイク』が家庭用向けに展開された際、いくつか大きな判断ミスがあったと言わざるを得ません。まず第一に、ゲームパッド操作を前提としたPS4でリリースされたこと(この時期、すでにセガは『PSO2』などをリリースしており、PC展開へのハードルは同業の他大手と比べても特別高かったわけではありません)、そして第二に、日本国内限定での展開にとどまってしまったことです。

さらに言えば、『ボーダーブレイク』のマネタイズ設計はやや強引な印象があり、『Fortnite』のように、外見要素を中心としたコスメティック寄りの方向性を採るべきだったと感じます。

この点については、私自身がWargamingでの勤務経験を持つ立場から述べていますが、『ボーダーブレイク』の全体的なゲーム設計は、直感的な操作を備えた大規模な基本プレイ無料のPC向けタイトルとして、非常に適したものでした。

戦闘の流れという点でも、すでに触れてきたとおり、『ボーダーブレイク』は『バトルフィールド』シリーズにかなり近い構造を持っていました。また、メカ同士の相対的な移動速度を考慮すると、手動照準は十分に現実的であり、これはFPSやTPSにおいて、国際的なゲーマーの多くが好む操作方式でもあります。

加えて、河森正治氏のようなクリエイターによるメカデザインを『Call of Duty』に導入する支援を行った経験から言っても、この種のメカデザインをFPSやTPSのフレームワークに落とし込むことは、まさに国際的なゲーマーが求めている要素そのものだと断言できます。

そうした背景を踏まえると、『ボーダーブレイク』がPC向けに適切な形でグローバル展開されなかったことは、今振り返っても非常に残念に感じられます。セガは、適切なサポートと、より理にかなったマネタイズ方針さえ採っていれば、間違いなく「勝てるタイトル」を手にしていたはずだったのです。

『ボーダーブレイク』に訪れるかもしれない、二度目のチャンス

その後の年月において、スクウェア・エニックスは『フィギュアヘッズ』の扱いを誤り、またバンダイナムコは『ガンダム エボリューション』において、ガンダムのブランドを『オーバーウォッチ』風の作品へと無理に当てはめる結果となりました。いずれも成功には至らず、『ボーダーブレイク』で見られたようなマルチプレイの洗練さを捉えることはできませんでした。

近年では『Mecha Break』のようなタイトルも登場していますが、その「ヒロイック」なメカデザインや非常に高速なゲームテンポは、主な支持層をアジア圏に限定してしまう可能性があると感じています。もっとも、国際的にも成功してほしいという期待は持っています。

こうして振り返ってみると、『War Robots』が大きな成功を収めている現状を踏まえても、『ボーダーブレイク』のようなタイプのメカゲームには、いまだ十分な余地があると感じます。セガは、ほんの少しの調整と、より広い展開さえ行っていれば、本当に特別な作品を世界に届けることができたはずです。

実際、『War Robots』の成功や、『World of Tanks』『World of Warships』、そして言うまでもなく『バトルフィールド』といったビークル主体のシューターが支持されている事実を見れば、日本発のメカゲームがグローバルな観客に届く現実的なチャンスが存在していることは明らかです。

もしかすると、そろそろセガが『ボーダーブレイク』を改めて見直し、機能的に過度な介入をしない、より穏健なマネタイズ設計とともに、PC向けの本格的な国際展開を行う時期に来ているのではないでしょうか。


オリー氏とともに「ロボゲー」を作ることに興味のあるスタジオや団体は、この記事の末尾にある氏のプロフィールから個別に問い合わせていただけますと幸いです。

ライター:オリー・バーダー,編集:Akira Horie》



ライター/ゲームデザイナーであり、Forbes の寄稿者、そしてどうやら「日本のメカ専門家」。 オリー・バーダー

オリー・バーダーは、日本のゲーム業界やポップカルチャー全般を取材・執筆しており、日本のクリエイターへの数多くのインタビューも行っています。また、メカ系ゲーム専門サイト「Mecha Damashii」を創設し、パブリッシングおよび開発の両分野において、20年以上にわたるゲーム業界での豊富な経験を有しています。

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Akira Horie

編集/『ウィザードリィ外伝 五つの試練』Steam/Nintendo Switch好評発売中! Akira Horie

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