タイピング×物語という新領域に挑む『Pain Pain Go Away!』―元『ドラクエ』シリーズディレクター・藤澤仁氏が語る“本作に込められたインディー精神”【BitSummit the 13th】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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タイピング×物語という新領域に挑む『Pain Pain Go Away!』―元『ドラクエ』シリーズディレクター・藤澤仁氏が語る“本作に込められたインディー精神”【BitSummit the 13th】

物語制作会社・ストーリーノートが挑戦するのは、少女たちのトラウマと向き合う心理カウンセリングとタイピングゲームの融合。

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タイピング×物語という新領域に挑む『Pain Pain Go Away!』―元『ドラクエ』シリーズディレクター・藤澤仁氏が語る“本作に込められたインディー精神”【BitSummit the 13th】
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国内最大級のインディーゲームイベント「BitSummit the 13th(以下、BitSummit)」の開催日である7月18日に、ストーリーノートは新作ゲーム 『Pain Pain Go Away!』の体験版をSteam向けに配信。ならびにBitSummitにてブース出展しました。

本作を手掛けるストーリーノートは、堀井雄二氏のアシスタントとして『ドラゴンクエストVII』以降の同シリーズのシナリオ制作に参加し、『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』などでディレクターを務めた藤澤仁氏が立ち上げた会社です。

マレと共同でクリエイティブユニット「第四境界」を設立し、VTuberライクなキャラクターたちが、SNS上でリアルタイムに物語を紡ぐ『Project:;COLD』や、オンライン試験というアプローチでホラーエンタメに新たな風をもたらした『事故物件鑑定士試験』を手掛けるなど、“ユーザーにどう物語を届けるか”という視点でそのアップデートに挑み続けてきました。

『Pain Pain Go Away!』は、そんな同社が新しく立ち上げたADV専門ブランド「Lorebard」の第1弾目となる作品。「心療タイピング型アドベンチャー」と称する通り、プレイヤーは心療内科医として「P2GA」というカウンセリング機器を用い、患者である少女たちの心を蝕むトラウマを、文字通りタイピングで打ち消していきます。

Game*Sparkでは2025年5月に開催された「東京ゲームダンジョン8」で、一度本作の試遊レポートをお届けしていますが、今回はプロデューサー兼ディレクターを務めた藤澤仁氏(以下、藤澤氏)よりお話を伺うことができたので、その内容を交えながら改めて体験版のインプレッションを紹介します。


タイピング×物語という新領域

「改めて考えてみるとアドベンチャーゲームの世界は、まだ組み合わせられていない“型”がいっぱいあるなと思ったんです。そのひとつとして、タイピングとストーリー性を組み合わせたゲームは見たことがないなと。そこは僕たちが挑戦すべき領域なんじゃないかと考えました」

ゲームのジャンルとしては非常にプリミティブとも言っていい“タイピング”。そのシステムを採用した理由について藤澤氏はそう話します。

ゲームの舞台となる診療所にやってきたのは、家出癖のある少女「櫻井風々香」。プレイヤーはざっくり3つのプロセスをタイピングゲームで経ることで、彼女の内に秘められたトラウマの治療を目指します。

難易度は「EASY」「NORMAL」「HARD」の3種類から選択できるのですが、普段からキーボード入力に親しんでいる人であれば、問題なくNORMALでクリアすることができるはずです。

はじめは“問診”の形式で、主人公から風々香への短い質問が画面右から左に流れてくるので、タイピングを繰り返して彼女が心の内に秘めたものを解き明かしていきましょう。後半になるほど質問が核心を突いたものとなっていき、必然的に文字数も増えて、風々香の様子もどんどんと変化。このコンセプトについて、藤澤氏は下記のように話しています。

「ニコニコ動画のコメントのように右から左に文字が流れていくというのは、僕たちは文法的に見慣れていますよね。それを頭の中に思い浮かべた言葉という形に表現して、タイピングで消していくという型はずっとアイデアとして持っていたんです。それに物語性を持たせてゲームにするとどうなるのかと」

さらに問診を進めていくと、今度は彼女の心の叫びを入力する“ダイブモード”へと移行。ネガティブなものだったり感情的なものだったり、言葉が一気になだれ込んできます。ここからゲームはライフ制となり、タイピングを完了できないと風々香がダメージを受けてしまうので注意しましょう。

一般的なタイピングゲームは、プレイヤーがお題に集中するために画面上の文字情報や演出を控えめにしがちです。しかし本作は風々香のリアクションなど、物語に紐づく変化が多様なので、考察を深めようとするほど画面から目を離せず、ブラインドタッチを強いられます。藤澤氏はこの点について「狙ったものではない」と話していたものの、筆者が面白さを感じたポイントのひとつです。

物語だけでなく、あらゆる要素を“自分たちで手掛ける”

ちなみに体験版の範囲では風々香のほかに、プレイヤーの操作をサポートしてくれる「牧凛音」という助手も登場するのですが、個性豊かな彼女たちのキャラクターデザインを担当したのはストーリーノートの社内スタッフです。

「遊ぶ側が“もしかしたら自分でも作れるかもしれない”と思えるような、クリエイティブとして手が届きそうな作品にするというのが目標のひとつだった」と話す藤澤氏を含めて、本作の開発チームは4名で構成されているとのこと。「まだゲームを手掛けたことのない人間が、本当に面白いと思う知恵を寄せ集めて作っている」と、あらゆる要素が内製であることを強調しました。

さてゲームに話を戻しましょう。ダイブモードをクリアするとボス戦へと突入します。風々香のトラウマが形となったものなのか、おぞましいビジュアルの「かほちゃん」が突如として現れると、上から降ってくるのは生々しさに満ちた台詞の数々。それらをタイピングすることでボスの体力を減らし切れば、風々香の心を蝕んでいる元凶・トラウマワードへと辿り着くことができます。

トラウマワードのタイピングは長文&時間制&タイプミスが許されないという、それまでの集大成的なゲーム性となっていますが、失敗してもまたボスの体力を減らして再チャレンジすることができる親切設計になっています。おどろおどろしい演出を乗り越え、見事トラウマワードと共にかほちゃんを打ち消して、カウンセリング大成功!

……とは物語上ならないのがストーリーノートの妙技。衝撃的な展開を迎えて体験版は終了します。ちなみにBitSummitのブースでは、試遊後に「櫻井風々香」「かほちゃん」のアクリルスタンドやステッカーなどのノベルティが貰えるので、そちらもお見逃しなく。

小規模でも「ゲーム作りは面白い」

既記のとおり、この数年においてはビデオゲームではなく主にARG(代替現実ゲーム)関連のコンテンツ制作に注力してきたストーリーノート。藤澤氏は「一周回ってゲーム開発に戻ってきた感じがするのですが、やっぱりゲームを作るのは面白い。規模の大きいゲームであるほど表現できるものもあるけれど、クリエイターひとりひとりの意識が端々まで届かなかったりする。これくらいの規模のゲームは細かい挙動のひとつひとつまで携わることができます」と最後に述べます。

ディレクターを10年以上務めた『ドラクエ』からのゲーム制作に対する規模感の変化について伺っても、全く意を介さない様子で「ゲーム作りは面白い」と即答しました。


物語の制作会社・ストーリーノートが新たなチャレンジを示す、インディー精神に満ちた心療タイピング型アドベンチャー 『Pain Pain Go Away!』。リリース予定日は未定で、現在Steamで体験版が配信中。そんな本作を試遊できる「BitSummit the 13th」は、7月20日まで京都・みやこめっせにて開催中です。

【UPDATE】2025年06月05日17時15分:一部、本文中のゲームタイトルの誤記載を修正しました。


ライター:矢尾 新之介,編集:八羽汰わちは

編集/多趣味オタク 八羽汰わちは

はちわたわちは(回文)Game*Spark編集部員、デスク担当。特技はヒトカラ12時間。

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