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Game*Sparkレビュー:『Europa Universalis V』兄弟作品のシステムが一堂に会し、見事に連携している

中世末期から近代初頭までの全世界を舞台にした大規模歴史ストラテジー『Europa Universalis V』。前作を4,000時間以上プレイした筆者によるレビューをお届けします。

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『Europa Universalis V』
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プレイレポート「カスティーリャ年代記」

このページでは実際のプレイの様子を歴史小説風にレポートします。個々のシステムには触れませんので、システムに興味のある方は1ページ目と併せてお読みください。

黄金色の国

今回プレイしたのは「おすすめ国家」にも指定されているカスティーリャ王国です。カスティーリャはスペインの前身となった国で、お菓子のカステラの語源としても知られています。マップ上の色もカステラと同じ黄色なので分かりやすいでしょう。

ゲームが開始される1337年、カスティーリャの南部はイスラム教を信仰する国々に支配されています。カスティーリャはキリスト教を信仰する国で、現在はレコンキスタ(再征服運動)の真っ只中。イスラム教の国々は征服すべき異教徒にあたります。中世末期のこの時代、他の宗教を尊重するという考えはまだ人々の間に定着していません。

画面中央の黄色の国がカスティーリャ(Castile)。南部のイスラム教国家と対立している。

現在のカスティーリャ王は弱冠25歳のアルフォンソ11世。復讐王とも呼ばれる彼は生後わずか1歳で国王に即位しました。普通ならそのままお飾りの王様で終わるところですが、邪魔な後見人を次々に排除すると王権の強化に成功。南のイスラム教国家にも攻め込み、レコンキスタを推し進めました。西の隣国ポルトガル(マップ上の青緑)とは婚姻関係にあり、背後の備えもバッチリです。

カスティーリャ王アルフォンソ11世。能力値は統治69、外交58、軍事80の武闘派。

再征服

このように順風満帆なカスティーリャですが、その国土の広さに比べて王の支配が及んでいるのは首都の周辺に過ぎませんでした。貴族の支配が強い土地からは国庫に十分な税金が納められないため、街道の整備を進め、王の支配を国の隅々まで浸透させることに注力します。同時に、地方の農場や鉱山、都市のギルドに資金を投じて国力の底上げを図ることも怠りません。

街道マップ。茶色がゲーム開始時に街道のある地域で、国土の大部分はまだ支配が及んでいない。

そうこうするうちに、イングランドとフランスの間で王位継承を巡る戦争が勃発しました。のちに百年戦争と呼ばれる長い戦いの始まりです。カスティーリャも負けじとレコンキスタの準備を進めます。議会を召集して貴族と聖職者の支持を取り付けると、南部を支配するモロッコ(マップ上の茶色の国)に対する開戦事由を獲得しました。

モロッコの本国は地中海を渡ったアフリカにあります。幸いカスティーリャは海軍力でモロッコを圧倒していたため、敵本国からの増援を海上でことごとく撃破。陸戦を有利に進めることができました。

アフリカからの増援は阻止したものの、モロッコ側で参戦したグラナダとは陸上で何度も交戦した。

初めての戦争はカスティーリャの勝利に終わり、モロッコはヨーロッパの領土を失ってアフリカに撤退しました。レコンキスタは一歩前進です。残るイスラム教国家はグラナダ(マップ上の白色の国)だけですが、グラナダはモロッコの属国なので、戦争になれば今度こそモロッコと全力で戦わなければなりません。

征服した土地の統治も重要です。モロッコを追い出したまでは良いものの、そこに暮らす文化や宗教の異なる住民はそのままなので、新領土を上手く治められなければ反乱を招くことでしょう。

戦争後。茶色のモロッコはアフリカに後退し、カスティーリャの南には白色のグラナダが孤立している。

黒き災厄

向かうところ敵なしのカスティーリャでしたが、北イタリアでルネサンスが産声を上げたその頃、大災厄が音もなく忍び寄りつつありました。

最初の異変が起きたのはカスティーリャ北部の港町です。異国から帰ってきた船乗りが次々と謎の病に罹り急死。未知の疫病は爆発的な勢いで国中に広まり、未曾有の国難が幕を開けました。中世最大のパンデミック、黒死病です。

感染爆発を起こした黒死病の「局面」マップ。マップ上の緑色がすべて感染地域。まさに世界の終わり。

港町からの急報を受けた国王は即座に治療薬の確保と病院の建設、国境の閉鎖を命じました。しかし、時すでに遅し。最初の患者が確認された翌年、黒死病は首都に飛び火し、国王は王宮の隔離を命じて姿を隠すほかありませんでした。カスティーリャ全土に拡大した黒死病はそれまで順調に増加していた人口を減少に転じさせ、成人を目前にしていた後継者ペドロ王子の命まで奪ってしまいます。

ヨーロッパ全土を飲み込んだ黒死病が完全に終息するには5年の歳月を要しました。時を同じくして空に現れた彗星にカスティーリャの人々は世界の終末を感じ取り、国内は急速に不安定になっていきました。

シリーズおなじみの彗星イベント。問答無用で国の安定度を下げ、様々なトラブルを引き起こす。

破滅の序曲

黒死病の惨禍から立ち直りつつあるカスティーリャに不穏な空気が流れ始めました。国王の愛妾の子エンリケが王に不満を抱く貴族を集め、王位を狙っているというのです。

史実では、国王アルフォンソ11世は黒死病で死亡。その子ペドロとエンリケが王位を争い、第一次カスティーリャ継承戦争が勃発しました。この世界の国王はまだ健在で、代わりにペドロ王子が黒死病で命を落としましたが、どうやら内戦が起きるのは避けられないようです。

専用の局面「カスティーリャ内戦」がスタート。反乱派の準備度が100%に達すると内戦に突入する。

エンリケは反乱を企てていましたが、即座に行動を起こすのではなく、着実に自分の味方を増やしていきました。貴族や商人は国王とエンリケのどちらにつくべきか迷い、両者を両天秤にかけ始めます。貴族たちは国王への支持と引き換えに特権の拡大要求を繰り返しました。国王に対する事実上の脅迫です。

貴族が特権を要求するイベント。要求を無視する選択肢や首謀者を処刑する選択肢もある。

最初は不満を持つ者たちを買収して味方に繋ぎ止めていた国王でしたが、国庫が底をつくと反乱勢力に加担する者が増えていきました。危機感を持ったアルフォンソ11世は百年戦争に巻き込まれることを承知でフランス(マップ上の青色の国)と同盟を締結。婚姻関係のあるポルトガルにも支援を求めます。

動乱の果てに

エンリケ派との間で一触即発の緊張が高まる中、南部の征服地で住民反乱が起きました。この反乱を支援してカスティーリャに宣戦布告したのがグラナダです。予期せぬ敵の登場に、国王は軍を緊急召集するとグラナダ軍との一大決戦に及びました。

戦闘の勝敗は多くの要素を総合して決定されるが、質が同じであれば数の多い方が勝つ。

幸いにも、海の向こうのモロッコは中立を守り、援軍を送りませんでした。決戦に勝利したカスティーリャ軍はその勢いでグラナダを滅亡に追い込み、南部の完全征服に成功します。時に1362年、レコンキスタは史実より130年早く完成されたのでした。

史実でレコンキスタが終結したのは1492年。コロンブスの新大陸発見と同じ年だ。

しかし、喜んだのも束の間、ここぞとばかりに不肖の息子エンリケが反旗を翻しました。精一杯の懐柔も及ばず、カスティーリャ全土の4分の1がエンリケに味方し、反乱に加わります。

虫食いのように出現した灰色の地域がすべて僭称者エンリケに味方する反乱勢力。

アルフォンソ11世は即座にフランス、ポルトガル両国に使者を送り、救援を要請しました。両国は盟約を守り要請を受諾。フランス諸侯の奮戦によって反乱勢力はたちまち鎮圧され、翌年のエンリケの死で内戦は終わりを告げました。まさに外交の勝利でした。

フランス諸侯の援軍(右上)はマップを覆い尽くす勢いでカスティーリャになだれ込んだ。

しかし、貴族を味方に繋ぎ止めるために国王が与えた特権の数々は貴族の権力を大幅に強化していました。相対的に王権は弱体化し、国王は貴族の意向を無視できなくなっていったのです。


ここまでレコンキスタに黒死病に国を二分する内戦にと盛りだくさんの歴史をご覧いただきましたが、実はまだゲーム開始からわずか四半世紀しか経過していません。本作のプレイ期間は約500年。最後までプレイすればこの20倍の歴史が紡がれることになります。

ここからは操作を自動化して世界の行く末を見守った結果を駆け足でお届けします。ゲーム中盤以降にどのような展開が待ち受けているのか、この世界のカスティーリャ王国がその後どんな歴史を辿ったのかをご覧ください。

苦難の時代

内戦終結から20年後、アルフォンソ11世は75歳で世を去りました。

2年後、カスティーリャを再び大規模な貴族反乱が襲います。偉大な王の跡を継いだのは28歳の若き王。権力を持ち過ぎた貴族たちをまとめるには力不足だったのでしょう。時を同じくして南部の征服地でも反乱が勃発。一度は滅亡したグラナダがまさかの再興を果たします。

再びカスティーリャを襲った国を二分する大反乱(水色)。前回とは規模が違いすぎる!

王都に進軍した反乱軍は王位を簒奪。前王朝は滅び、カスティーリャに新たな王朝が誕生しました。さらに、15世紀に入るとイスラム勢力の反撃が始まります。キリスト教国家は団結して戦ったものの敗北を喫し、カスティーリャはセビリアなど南部の都市を奪われてしまいました。

新大陸

レコンキスタが頓挫したカスティーリャは大西洋の島々への植民に活路を見出します。しかし、イスラム勢力との戦争に明け暮れる中で次第に国力は疲弊。探検家への支援も植民地の建設も滞り始めました。

そうした中、1492年にヨーロッパで初めて新大陸を「発見」したのは、カスティーリャの探検家コロンブスではなく、なんとローマ教皇庁が派遣した探検家でした。この世界のローマ教皇庁(教皇領)は植民地の建設に熱心で、各地に宣教師を派遣しては布教に努めていたのです。

マップ上の黒い部分は未知の領域。ローマ教皇庁の探検隊が発見したのは西インド諸島ではなくブラジルだった。

新大陸発見の翌年、ブラジルに初の植民地が築かれると先住民の間に疫病が蔓延。瞬く間に南米全域に広がっていきました。史実でもヨーロッパから持ち込まれた疫病が免疫のない先住民の間に広まり、大規模な人口減少をもたらしたとされています。おそらく、それを再現したシステムなのでしょう。

ブラジルの植民地に端を発し、南米全体を覆い尽くした大疫病(褐色)。

中興の祖

16世紀に入り、ヨーロッパではルターによる宗教改革が活版印刷を通じて急速に広まっていきました。16世紀末には宗教戦争(三十年戦争)が始まり、ヨーロッパ各国はカトリックとプロテスタントの二派に分かれて争い始めます。

宗教改革が進行中のヨーロッパ。カトリック(黃色)とプロテスタント(青色)が入り乱れている。

内戦以来、長らく暗愚な王が続いたカスティーリャでしたが、16世紀半ばにわずか7歳の女王が誕生すると状況が一変します。生まれながらの才能に恵まれた彼女は即位直後の反乱を退けると、イスラム勢力との戦争にも勝利。さらにカリブ海への植民事業を本格化させました。

カスティーリャ中興の祖となった女王。すべての能力値アイコンが金色という名君。

そんな女王の最大の才能は結婚相手を見定める目でした。彼女が結婚したのは南フランスにある小国の伯爵。能力値こそ高いものの、本来伯爵で終わるはずの人物でした。ところが、この夫が偶然親戚筋から北イタリアのミラノ王国を継承(史実ではミラノ公国)。二人のもとでカスティーリャとミラノは同君連合(複数の国が同じ君主を戴く状態)となり、その子孫は代々両国の王として君臨することになりました。この同君連合は最終的に4カ国にまで発展します。

この世界のカスティーリャとミラノは新大陸進出に熱心で、両国の連合は世界に大きな影響を与えた。

革命の時代

17世紀に入ると世界は絶対主義の時代に入ります。カスティーリャには凡庸な王が続きますが、統治は安定し、メキシコや中南米にも順調に植民地を拡大していきました。

そして、ゲームも終盤の18世紀。啓蒙主義思想が波及した植民地では独立の機運が高まりを見せ始めます。1750年にアメリカ独立戦争フランス革命が同時に勃発すると、カスティーリャの植民地も次々と独立を宣言しました。

フランス革命が勃発し、フランスは王党派(青色)と革命派(薄緑色)に二分された。

しかし、新大陸の独立戦争はいずれも本国から派遣された軍隊により鎮圧されて失敗。フランス革命も不発に終わってしまいます。それでも独立を求める植民地住民の声は抑えきれず、南米植民地の一つが独立を勝ち取ったのを皮切りに、独立運動はさらなる高まりを見せていくことになるのです。


すべての要素は紹介しきれませんでしたが、本作で堪能できる歴史体験の一端が伝わったでしょうか。最後のページでは本作に感じた不満を取り上げ、最後に総合評価を行います。



ライター:FUN,編集:Akira Horie》

ライター/遊ぶより創る時間の方が長いかも FUN

元ゲームプログラマー。得意分野はストラテジーゲーム。ゲームライターとして活動する傍ら、Modの制作や有志日本語化に携わっています。代表作は『Crusader Kings III』の戦国Mod「Shogunate」。

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Akira Horie

編集/『ウィザードリィ外伝 五つの試練』Steam/Nintendo Switch好評発売中! Akira Horie

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