
個人サークル・法螺会が開発したPC向けタイトル『奇天烈相談ダイヤル』が、ケムコのパブリッシングにより2025年12月12日にコンソール向けにリリースされました。
物語や基本的なゲーム内容は原作となるPC版と大きく変わりません。しかし、操作環境やプレイスタイルが異なるコンソールで遊ぶことにより、体験の印象には少なからず変化が生じます。
本記事では、スイッチ版を実際にプレイして感じた体験を軸に、本作の特徴をご紹介します!記事制作にあたっては、ケムコよりキーの提供を受けています。
怪異に悩む相談者を電話で救う、怪異判定アドベンチャー

口裂け女やトイレの花子さんといった怪異たちが実体をもって人間の日常に侵食し、怪異によるトラブルや犯罪被害が常態化した1994年の日本が本作の舞台です。
プレイヤーは、そんな怪異に怯える人々を救うために設立された無料電話相談サービスである「奇天烈お悩み相談室」の新人スタッフとなり、1週間のお試し活動に臨みます。面倒見のいいパートのおばさんや、優秀だけど素っ気ない先輩たちのサポートを受けながら、じゃんじゃんかかってくる相談者からの電話に応えていきましょう!
やることは非常にシンプル。怪異の被害に遭わんとしている相談者から様々な証言を引き出し、怪異の情報が網羅された資料と照らし合わせて、それが本物の怪異であるか、そうでないかを見極めることが本作の唯一にして最大の目的です。
怪異と遭遇した場所、時間、状況や姿形など、あらゆる角度から聞き出した情報を精査し、エリート先輩・オーモリさんから貰った資料をくまなくチェックしながら該当する怪異を見極めます。

相談者の証言と資料に1つでも矛盾があれば「怪異の仕業ではない」と判断する必要があるのですが、うっかり誤った判断をしてしまえば、新聞に悪評をタレこまれたり、怪異の餌食になった相談者の悲惨な末路を知らされたりという最悪のケースも……。たいへん後味が悪いので、判断は慎重に。
相談者から証言を上手く聞き出し、相談内容が本物の怪異なら然るべき専門家にバトンタッチ、怪異でないなら根拠を示して不安を取り除いてあげるなど、適切な対話で相談者を怪異の魔の手から救いましょう!
より遊びやすくなったスイッチ版で怪異判定に没頭できる!

ゲームの物語や基本的な内容はPC版と変わらないので、原作からのファンも違和感なく移植版を楽しめるはずです。
スイッチ版の主な変更点として、マウスからコントローラーへの変更における「操作性の改善」が挙げられます。PC版ではマウスで選択、キーボードで怪異の名前を入力する仕様でしたが、スイッチ版ではコントローラーでの操作のため、データベースからの選択式に変更されたり、相談中もLRボタンで文献をめくれるようになりました。
あの膨大な資料や選択肢を限られたボタン操作に落とし込む作業は、決して簡単なことではなかったのではないでしょうか……しかしそうした制約を感じさせないほど操作は直感的に設計されており、各機能が無理なく割り振られている印象を受けます。マウスからコントローラーへと大きく操作体系が変化したスイッチ版ですが、その結果として快適さが高まり、プレイヤーはより怪異判定そのものに集中できるようになっています。

また、「PC版で実装したかったけれど工数の関係で泣く泣く諦めた」と開発者が語る「相談者ごとの口調バリエーション」が、スイッチ版でタッグを組んだケムコの協力により追加要素として実装されています! かねてよりユニークだった相談者たちですが、口調にも個性が宿ったことで、よりキャラクターが際立ち魅力的になりました。

人気インディーゲームとの「コラボ怪異」が追加された点も、スイッチ版ならではの注目ポイントです。PC版の時点でも、『8番出口』をはじめとした話題作とのコラボによって関心を集めていましたが、スイッチ版では新たなコラボ怪異が加わり、その幅がさらに広がっています。

なかでも、同じく都市伝説や怪異を題材とする『都市伝説解体センター』とのコラボは印象的です。X(旧Twitter)上でコラボイラストが公開されるなど以前から両作の交流はたびたび話題となっており、そうした流れを経て、今回ゲーム内で実際にコラボ怪異として登場したことに注目した人も多かったのではないでしょうか。
オカルトやホラーをテーマとしたインディーゲーム同士が作品の枠を越えてつながっていくことでシーン全体が盛り上がっていく様子を感じ取れた点も、本作の大きな魅力と言えそうです。

このほかにも、やり込み要素の強化や、パートのノブ子さんによるチュートリアルが追加されています。原作を遊び込んだ人には新たな手応えがありつつ、スイッチ版で初めてプレイする人にも配慮された作りになっており、どちらの層にも向けた調整が感じられます。
ここまで本作の仕組みやスイッチ版ならではの要素を紹介してきましたが、実際に遊んでいて強く印象に残るのは、仕様やシステムなど目に見える要素だけでは語りきれない「感覚」の部分でした。
怪異そのものが直接画面に現れる場面は多くないので、ホラーが苦手な人も安心……と言いたいところですが、相談者の話を聞き、情報を整理して判断するという過程の中で少しずつ染み込むように立ち上がってくる静かな恐怖は侮れません。基本的なプレイ感覚はクイズゲームに近く、最初は軽い気持ちで相談に応えていたはずなのに、気づけば会話の端々に滲む不穏さが頭から離れなくなっていく怖さは、狂暴な怪物やゾンビといったパワータイプの恐怖よりも後を引くのではないでしょうか……。

プレイするうちに、子どもの頃に感じた恐怖の記憶がふとよみがえってきます。口裂け女やトイレの花子さんの噂を聞いて学校のトイレに行けなくなったこと、放課後の帰り道で背後の気配に振り返ってしまったこと、それらを夜に思い出して頭まで布団をかぶって震えながら眠ったこと……。繊細かつ純粋な幼少期の感性だからこそ感じた恐怖を、本作は我々の記憶の奥底から引きずり出してくるのです。
グロテスクな描写や大音量の演出はありませんが、シンプルなドット絵や緻密に調べられた怪異の情報が想像力を刺激し、日本のホラーならではの湿り気を帯びた怖さを確かに感じさせてくれます。
大人になった今だからこそ味わえるノスタルジーと結びついた恐怖が、本作の大きな魅力だと感じました。
開発者の法螺会・笹森さんにインタビュー!
スイッチ版『奇天烈相談ダイヤル』をプレイする中で感じた様々な工夫や魅力について、スイッチ版が発売されたこのタイミングで開発者である法螺会の笹森さんにお話を伺ってみました。
演出面で意識していることやスイッチ版制作の裏側など、あらためてお話を聞いていきます!
――PC版『奇天烈相談ダイヤル』をリリース後、想定以上だった反響、あるいは意外だったユーザーの声があれば教えてください。また、その反応はスイッチ版の開発にどのような影響を与えましたか?
法螺会 笹森氏(以下、笹森):『奇天烈相談ダイヤル』リリースから想定外のことばかり起きています(笑)
そもそも、本作は「過去作ファンの方に楽しんでもらえたらいいな」という気持ちから作り始めたゲームだったので、奇天烈から法螺会を知ったという方のほうが多くなっている現状に一番驚いています。
意外だったのは、『オーモリ』というベテラン相談員のキャラクターが異様に人気だということですね。「いいキャラしてるなぁ」とは自分でも感じていましたが、たくさんのファンアートをいただけるほど人気が出るとは思っていませんでした。
スイッチ版の開発では、前述の反響も踏まえ、より奇天烈の世界を楽しんでいただこうと考え、PC版の開発時に工数の関係で泣く泣くカットしてしまった要素の実装をケムコさんにお願いしました。
活動開始前にチュートリアルを挟んだり、相談者によって口調が変化したりなどがそうですね。より個性が出て面白味が増したと思います。
――本作がコンソールへ移植されることになった決め手は何だったのでしょうか。ユーザーからの声や、ご自身の中での転機があればお聞かせください。
笹森氏:家庭用ゲーム機への移植は、いつか叶えたい夢のひとつでした。最初に移植のお話をくださったのがケムコさんだったのですが、昔から存じていた会社でしたので、ほとんど二つ返事でお願いすることにしました。
ユーザーの中には「実況を見て気になったけどパソコンがない」という方も多くいらっしゃいましたので、そういった方に触れていただくためにも、ケムコさんのお力をお借りすることにしたんです。
――スイッチ版では相談者ごとの口調バリエーションが追加され、各相談者のキャラクター性や人間味がより際立った印象を受けました。そうした追加要素によってより魅力的になった相談者たちの中で、開発者として特に思い入れのあるキャラクター、もしくはお気に入りの相談者がいれば、理由とあわせてお聞かせください。

笹森氏:過去作から登場した相談者は、やはり過去作のストーリーがある分思い入れがありますね。本作のみの登場で言うと…アイカップでしょうか。中年男性の相談者なのですが、初見の人は必ず驚くニックネームですよね。でも、これにはちゃんとした理由があるんです。
それに気付いたときのユーザーの反応も含めて、アイカップは特にお気に入りですね。
――法螺会の他作品である『孵道』では、ゲーム内の出来事が現実のプレイ体験に干渉するようなインタラクティブな演出が印象的でした。『奇天烈相談ダイヤル』にも現実世界へ侵食するようなメタ的演出が見られますが、こうした表現に対するこだわりや考え方はありますか?
笹森氏:第四の壁を破るホラー演出は、自分が好きだったこともあり、いつか取り入れたいなと思っていました。娯楽として楽しんでいた作品が、突然こちらに牙をむいてくる瞬間がたまらないですよね。
ただ、やりすぎてしまうとユーザーが興醒めしてしまうので、塩梅が難しかったです。メタをメタとして受け取られてしまったら失敗になるため、そう気付かせないための没入感を大事にしました。
――本作はケムコさんによるパブリッシングを経てスイッチ版が実現しました。個人制作として活動されてきた法螺会にとって、今回の協業で印象に残っている点や、制作面で助けられた部分はどこでしょうか?
笹森氏:やっぱり、一人でやり切れる工数を超えられることがありがたかったです。PC版で実装できなかった数々の要素を実現していただけて、本当に嬉しく思っています。
――法螺会ではホラー要素の強い作品を中心にゲームを制作されていますが、ホラーというジャンルに向き合う上で、作品ごとに変わらず大切にしている「これは外せない」という考え方や指針があれば教えてください。

笹森氏:「自分がちゃんと怖いと思うかどうか」でしょうか。自分はホラーが苦手なので、指標になるんですよね。
企画立案時には、自分が「なにを怖いと思うのか」「どうして怖いと思うのか」をバーッと書き出して、どの『怖い』を採用するか決めるところから始まります。
実際にゲームを開発するときには、自分が作り出した『怖い』が、ちゃんと自分が『怖い』と思ったものになっているか確認しながら、軸がズレないように注意しています。
――スイッチ版でのコラボが実現する以前から、墓場文庫さんのX(旧Twitter)では『奇天烈相談ダイヤル』と『都市伝説解体センター』のコラボ動画(GIF)が公開されるなど、両作品の交流がうかがえる場面がありました。こうしたやり取りは、どのような経緯で生まれたものだったのでしょうか。また、そこから実際にスイッチ版でのコラボ実現に至るまで、印象に残っているやり取りや出来事があれば教えてください。

KEMCO 上田氏:2024年の東京ゲームショウで『奇天烈相談ダイヤル』の試遊版を出展した際、当時の集英社ゲームズさんのブースで『都市伝説解体センター』が大々的に展示されておりました。
その際、担当の方にご挨拶させていただき、「怪異を扱う作品同士、何かしらご一緒できたらいいですね」といったお話をさせていただきました。その後、『都市伝説解体センター』のリリース時にコラボイラストのご提案をいただき、笹森さんも「ぜひ進めたい」ということで制作が実現しました。私は笹森さんとおでーんさんのやり取りを見守る立場でしたが、お二人とも一発OKの仕上がりで、実に見事でしたね。
ゲーム内でのコラボは、システムや世界観の違いもあり簡単ではありません。しかし『奇天烈相談ダイヤル』は、PC版(原作)の段階ですでに『8番出口』や『青鬼』などとのコラボを実現していましたので、今回はその施策を拡張する形で、”トシカイくん”など、他クリエイター様の作品と「怪異コラボ」をさせていただきました。
新しく登場させる怪異については、当然ながらネタ作りから始まります。「この怪異のネタはどうしようか」と、楽しくもありつつ大変な作業でした。改めて対象作品をプレイしてネタをまとめるのはもちろんですが、例えば「トシカイくん」は公式Xのポストを中心に構成を考えました。ゲームシステム上の矛盾探し以前に、「この正解が本当に正しいのか」という精査も難しかったです。
原作段階でこれを100体以上作られていた笹森さんの労力が身に染みました……。怪異=悪しき者というイメージもあるかもしれませんが、コラボ怪異については元ネタをご存じの方々にも喜んでいただける内容になったと思います。元ネタを知らなかったという方も、これを機に興味を持っていただけると嬉しいです。
――笹森さんは本業を持ちながら、継続的に作品を発表されています。限られた時間の中でゲーム制作を続けるために、意識している工夫や習慣があれば教えてください。
笹森氏:『自分が健康であること』これを一番意識しています。
個人制作は、自分の手が止まってしまったらそこですべてがストップしてしまいますから、動き続けるために健康には特に気を使っています。日付が変わる前に寝て、仕事前にはラジオ体操にストレッチ、適度な運動、栄養が偏らないような食事などなど…。
それでもやる気が出ない日もありますが、そういう日は無理に動かず、休むことに注力して、翌日からがんばれるように英気を養っています。
――笹森さんは小説や舞台など、様々な媒体でシナリオ制作に携わっていらっしゃいますが、そうした経験は法螺会での活動にどのような形で影響していると感じていますか?
また、商業的な制作と、法螺会として個人で手がけるゲーム制作とでは、シナリオづくりや物語との向き合い方にどのような違いがあるのでしょうか。
笹森氏:シナリオ制作のスタンスは昔から変わっていません。今のところ、自分で一からシナリオを考える仕事しかしていないので、自分の好きなように、自分の好きなものを書かせてもらっています。向き合い方も同じですね。法螺会の作品でも、別のお仕事でも「自分が好きなものを書けているか」を大事にしています。
――作中に登場するオーモリさんについて、『奇天烈相談ダイヤル』という作品世界の広がりや、今後も物語が続いていく可能性を感じさせるキャラクターだと感じました。オーモリさんは本作の中で、どのような位置づけの存在として設計されたのでしょうか。また、本作を通して得られた手応えや反響が、今後の作品展開や新作の構想に影響しそうな部分があれば、お話しできる範囲で教えてください。

笹森氏:最初、オーモリはただ『主人公に寄り添わないぶっきらぼうなベテラン』という設定で作っていました。主人公にとって雲の上の存在のような、『目指すべきベテラン像』みたいなイメージにしようと思っていたんです。でも、それではダメだと途中で気付いたんですよね。
本作は『怪異の同定』をテーマにしていますが、出題するのは相談者なので、自ずと相談者が敵ポジションになります。そのため、相談員側のキャラクターは主人公の味方である必要があると考えました。
オーモリが前述した設定のキャラだと、味方キャラがノブ子だけになってしまうと思い、徐々に『主人公に寄り添わないけど気にはしてくれるぶっきらぼうなベテラン』に調整していったんです。たぶんこれがファンの方の心を掴んでしまったんですよね(笑)
実は、オーモリの人気ぶりにお応えするために、PC版の大型アップデートでエンディングを増やしたり(コンソール版にも実装済)、フリーゲーム投稿サイトのグッズ企画でアクスタ化もしたんです。今後も何かしらの形で、相談室のストーリーを展開できたらいいですね。
――PC版から本作を遊んでいる方、そして今回のスイッチ版で初めて『奇天烈相談ダイヤル』に触れる方へ、本作をどのような気持ちで遊んでほしいか、開発者としてのメッセージをいただけますでしょうか。
笹森氏:おかげさまで、この『奇天烈相談ダイヤル』は法螺会の代表作とも言えるタイトルに成長いたしました。PC版からプレイしている方は、スイッチ版で新しく追加されたコラボ怪異の同定をぜひ楽しんでください。スイッチ版で初めて触れたという方は、いろんなツッコミどころに片っぱしから突っ込んでください。そしてすべてのエンディングをご覧ください。
今後開発を予定している後続作品が、『奇天烈相談ダイヤル』を超える人気作となるよう、構想を練っておりますので楽しみにお待ちくださいね。
――ありがとうございました!
コンソール版『奇天烈相談ダイヤル』は、2025年12月12日よりPS4/PS5/ニンテンドースイッチ向けに配信中です。













