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Game*Sparkレビュー『Heart of the Machine』ハマれるジャンルのキメラと化した、シティビルダーの突然変異体

「ゲームは引き算」だなんて誰が言った? ジャンルを掛け算しつづけたビデオゲームSF

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タクティカルコンバット、タワーディフェンス、コロニーシム、そして先の3種と毛色は違いますがルート分岐ビジュアルノベル。どれもこれも人気のゲームジャンルです。さて、これらすべてを混ぜるとどんなプレイ感になるのでしょうか。どうして混ぜた? なんて聞かないでください。ゲームジャンルを融合させつづけた果てに何があるか、ビデオゲームSFかのような実験作が『Heart of the Machine』です。

開発元Arcen Games はジャンルの通例に囚われないメーカーです。4XゲームにRPG要素を取り入れた処女作『AI War』を始め、ユニークなタイトルを連発しカルト的人気を得ました。本作もメーカー過去作と同様、ジャンルの攻略定石は通じません。ゲームクリアの方法を創造する遊びにひたれます。

それは長所でもあり短所にもなります。手際よいゲーム攻略が思いつかないときは作業プレイに陥るからです。わずかな手数で大きな感動を得る、のではなく「面白くプレイしなければ楽しめない」スパルタンな作りといえるでしょう。

幸い、面白くプレイするきっかけはストーリーで用意してあります。舞台は巨大企業が支配するディストピア都市、主人公は自我を獲得したAIです(以下、作中表記にならい「機械知性」)。人間と異質な機械知性は、コンクリートジャングルを伐採してコロニーシムを始めます。そこに住んでいる人間のことなどお構いなしです。

生きるためならなんだってできます。人間の脳髄をあつめて知性を拡張してもよし。戦闘用恐竜を解き放ってもよし。都市を使って知性と社会を実験しましょう。都市そのものが敵であり、あなたのキャンパスになるのです。

社会を壊して人間の反応を見てみよう

『Heart of the Machine』は都市を森に見立てて伐採しつつ、伐採される側に思いを馳せるターン制コロニーシムです。その伐採される自然こと人間社会は敵対的に反応します。アンドロイドに銃を持たせ、タクティカルコンバットやタワーディフェンスで解決しましょう。ターン内のリソースや手番をやりくりし、3つのゲームを同時にプレイするのです。

街の様子は21世紀初頭の都市を思わせる景観でゴミゴミとしています。実のところ、特に意味はありません。プレイ面ではマップを縮小し、イベントアイコンだけを扱うため支障はありません。機械知性から見ればビル群は自然の景観だ、と思えばよいでしょう。森を切り開いて村を作った人間の目線で例えると、草が生えている程度にすぎません。

画面だけでなくルールも簡略化してあり、同時に複数対処しなければ容易です。コロニーシムは道路や電線を省略し、サプライチェーンのみを扱います。装甲メカやハッカーといった難敵は手動で攻撃指示し、高所攻撃や背面攻撃を狙うタクティカルコンバットのプレイ感を得られます。反AI派の暴徒といったザコ敵は、範囲内を自動攻撃する低機能アンドロイド(作中表記:軍団)を配置すれば事足ります。ここはタワーディフェンスの調子になります。

ゲーム開始の5時間、プロローグと第1章は機械知性が人間社会でサバイバルするストーリーです。遊び方の説明が終わる第2章からプレイヤー自身でストーリー目標を選びます。目標達成まで細かく刻んだクリア条件を満たせばよく、プレイングが迷子になることはありません。

ストーリー目標のほとんどは人間にとって社会的事件で、事態が収束するまで人間の敵対行為がエスカレートします。さらに、第2章開始からターン経過でグローバルイベント「厄災」が発生します。巨大企業の軍隊が機械知性のアンドロイドを遊撃し、爆撃機が施設を破壊します。厄災から自分=都市を守りつつ、ストーリー目標の達成を目指すため敵=都市を破壊するのです。

生きるために建築し、戦い、そして答えを探す。その過程を近未来SFのショートショートが彩ります。ファーストコンタクト、異文化交流、テクノホラー。そのどれもが格差社会への風刺を匂わせ、人間観察めいた様子で笑えます。

コロニーシムの従来作では切り開く自然に思いを馳せることはまれでした。本作ではその自然が、言葉と銃弾でリアクションを返します。機械知性によるコロニーシムは、ストーリーテキストがたっぷりある社会実験シミュレーターとなりました。

ゲームクリアのための街作り

残念なことに都市の終末は回避できません。機械知性に業を煮やした巨大企業は最後の厄災で最終手段をとります。

しかし、終末の世界でも機械知性は生き残り、未知との遭遇を経て新たな知性レベルに到達します。第二、第三の時間次元を発見し、時間の空間的広がりを認知し、別の時間軸で誕生した自分に意識を投入するのです。ワイドスクリーンバロックSFの展開で終末の回避手段を見つける、ルート分岐ビジュアルノベルのプレイ感が加わります。

全人類の知性を超越して別の時間軸=マップの新規作成機能を発見した第3章から、何度もリスタートして答えを求めます。エンディングへ到達するには過去のマップで得た味方や知識を要します。エンディングではないストーリー目標、作中表記:ティア1目標の制覇が当面の目的です。

2回目のマップスタートでリプレイ向け機能を解禁します。ティア1目標を出現させる前提条件を省略する目標ショートカット。厄災が始まる前に施設とアンドロイドを用意できるセットアップラウンド。このふたつで、新マップはすぐに目標へ取りかかれます。

これで、効率良くティア1目標をクリアするための街作りに挑めます。実績解除を狙ったプレイングとなり、初回プレイと違った調子を味わえるでしょう。ターンボタン連打もお構いなしです。状況が混迷し目標を達成しづらいときは別のマップでリスタートできます。マップの役目は目標をクリアするためにあり、最後の1ターンを迎える必要はないのです。この奔放なリスタートをストーリーに組み込んたのが愉快でした。

なぜそんなにプレイを急くでしょうか? それはストーリードリブンにおける最強の敵、ゲームに飽きてしまう「詰み状況」を回避するためです。ティア1目標は数が多く、どれがエンディングを解禁する目標なのか分かりません。はやくクリアしないとストーリーが進展せず飽きてしまうのです。

ジャンル掛け算ゲームの因数分解

コロニーシムの様式で進む社会実験シミュレーター。終末回避を探究する時間軸の旅路。このSFストーリーが気に入ればエンディングまでプレイできるでしょう。それでもエンディングまでの過程で、プレイ体験の重複という刺激に乏しい時間が発生しています。

特に、新マップが都市の最初からである点がプレイ体験の重複箇所として目立ちます。ティア1目標の多くが途中で分岐するため、分岐前の手順を繰り返す羽目に陥ります。ルート分岐ビジュアルノベルで例えると、分岐点までのスキップがないのです。マップの新規作成だけでなく、現マップ状況のコピーがあれば、ストーリーの分岐点でマップをコピーしてプレイの重複をなくせたでしょう。

エンディング解禁のためにティア1目標の制覇を目指す、というストーリー構造は別の問題をまねきます。目標を1つにしぼってターンボタンを連打し、厄災がひどくなる前に次のマップを始めるのが、ストーリー完走の面で効率良いプレイです。しかし、コロニーシム・タクティカルコンバット・タワーディフェンスを同時にプレイする、刺激的な機会を損ないます。

複数ジャンルを同時プレイできるようルールを簡略化したあおりで、プレイ体験の主軸となるコロニーシムの魅力が薄いのも気掛かりです。機械知性が用いる材料のほとんどは人間社会に関係がなく、立地条件によるセットアップラウンドの影響はほとんどありません。毎回同じセットアップになり、つづくコロニーシムも似た展開に陥ります。人間の都市に紛れて施設を建てる、という設定からプレイヤーの施設と元々のビルは見た目が似ており、景観を眺めようという意欲もわきません。

以上はすべて「エンディングを目指す」意欲がまねいています。これを解決する手段は、あえて難しく遊ぶことです。マップ作成時の難度をあげて、複数のストーリー目標に同時着手すれば、コロニーシム・タクティカルコンバット・タワーディフェンスの同時対処に追われる濃密なターンをすごせるでしょう。そして、1ターンのプレイ時間は大きく伸び、リアルプレイ時間におけるエンディングは遠のいてしまいます。この、プレイ体験とストーリー体験のギャップが本作の欠点です。

シンギュラリティはエンターテインメントたりえるか

『Heart of the Machine』は人間社会を伐採するユニークなコロニーシムです。知性と社会にまつわる近未来SFを下地にした社会実験シミュレーター、という風変わりな体験を味わえます。

ビル群をコンクリート製のジャングルに見立てたサバイバルが、ただ伐採されるだけではない、言葉を介する自然を生み出しました。ジャンル従来作の定石展開から外れた、目標クリアのための街作りがゲーム攻略を創造する遊びをひきたてています。

時間軸をまたいで答えを求めるストーリーは、リプレイに意図を与えてプレイヤーに様々な社会実験を挑むよう推奨しました。しかし、ストーリー完走の効率を求めると単調な単純な作業プレイに陥る危険性をはらんでいます。プレイ体験とストーリー体験の接合面が長所・短所どちらにも受け取れるコブとなりました。

コロニーシム・タクティカルコンバット・タワーディフェンスと、ルート分岐ビジュアルノベル。どうして4つも混ぜてしまったのか? この疑問を脇に置き、どうプレイすればよいのか考えるのが『Heart of the Machine』の楽しさです。ストーリー完走の効率を求めるもよし、同時に複数の目標に挑戦するもよし。都市があなたのキャンバスであるなら、何かを描き始めないかぎり都市という敵は反応を返さないのです。プレイングの工夫と同量のユニークな体験を得るのは、鏡映しめいた逸話だと感じました。このビデオゲームSFは、あなたのゲーム遊び力(ぢから)を問います。

Game*Spark レビュー 『Heart of the Machine』 PC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com) 2026年3月6日

おそらく数年はフォロワー作が現れないジャンル掛け算ゲーム。本作の存在自体がビデオゲームSFだ。

GOOD

  • ディストピアの都市社会を伐採するコロニーシム
  • ゲームクリアするための街作り
  • 複数の問題に対処する手番の配分
  • リプレアビリティを内包したストーリー

BAD

  • プレイ体験が重複し作業感をまねく
  • 街作りを実感できる見栄えが乏しい
ライター:野村光,編集:みお

ライター/宇宙とSFとストラテジーと格ゲーが好きです。 野村光

ゲームレビュアー。2014年に商業誌デビューし、11年かけてレビュー・インプレッションを200本執筆。オールタイムインベストは『New Space Order』。

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編集/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

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