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“須田ゲーっぽさ”って一体何?『ROMEO IS A DEAD MAN』に見る、グラスホッパー・マニファクチュア独特の作家性

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“須田ゲーっぽさ”って一体何?『ROMEO IS A DEAD MAN』に見る、グラスホッパー・マニファクチュア独特の作家性
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2月11日に発売されたグラスホッパー・マニファクチュアの完全新作『ROMEO IS A DEAD MAN』。

ひょんなことに巻き込まれて死にかけになってしまった主人公の「ロミオ・スターゲイザー」は、強烈なテクノロジーによって半死半生の「デッドマン」として復活。FBIの「時空警察捜査官」として時空を駆け巡りながら凶悪犯と対峙し、姿を消してしまった謎多き恋人の「ジュリエット」の行方も追っていく、三人称視点のアクション・アドベンチャーゲームです。

「ウルトラ・バイオレント・サイエンス・フィクション」というジャンル名がぴったりなくらい、視覚的にも内容的にもバイオレンスでありながら、ガンダムや特撮など様々なカルチャーネタがごった煮のまさに「カオス」な本作は、須田剛一作品に詳しくない方でも、トレイラーなどを観て「須田ゲーっぽい」と感じたのではないでしょうか。

ただ、「須田ゲーっぽさ」というものは、具体的にどんなものなのでしょうか。なんとなく“それっぽい”イメージはありつつも、明確に説明できることはあまり多くないように思います。

そこで本記事では、グラスホッパー・マニファクチュアおよび須田剛一ファンからの視点で『ROMEO IS A DEAD MAN』を通して感じる「須田剛一らしさとは」を掘り下げ。ネタバレは控えつつ、まだ本作をクリアしていない方や興味のある方、『ROMEO IS A DEAD MAN』から過去作に興味を持った方でも読めるような内容でお届けします。

「須田ゲーっぽい」というイメージはどこから?

みなさんは「須田ゲーっぽい」と言われた時に何を思い浮かべますか?尖ったアートスタイル、ゴア要素、テンションの高いキャラクターや台詞、ふざけた感じ…などなど、なんとなくイメージするものがあると思います。

ですが、「須田ゲー」っぽいと言われているゲームを遊んでみると、全然そうとは感じなかった……というケースが多々あり、世間の「須田ゲー」のイメージと実際の「須田ゲー」には乖離があると筆者は感じています。というわけで、まずは「須田ゲーっぽい」というイメージはどこから来ているのか。どの辺りに「須田剛一・グラスホッパーらしさ」を感じているのか、ファン目線から分析していきます。

『ROMEO IS A DEAD MAN』はかなり第一印象「須田ゲーっぽい」

筆者が思うに、世間の「須田ゲー」のイメージは殺し屋アクションの『ノーモア★ヒーローズ』シリーズや、ゾンビアクションの『ロリポップチェーンソー』から来ているのではないか、と感じます。

『ノーモア★ヒーローズ』(2007)
『ロリポップチェーンソー』(2012)

激しい暴力・ゴア要素が満載」で、ちょっとメタっぽい「ふざけた台詞や展開」が多く、キャラクターも「ノリが良くぶっ飛んでいて全体的にコミカル」……というのがこの2つのざっくりとした共通点です。こちらの要素は、ほぼ全ての作品に含まれているものでもあるのですが、この2作品ではよりわかりやすく出ているといえるでしょう。

もう少し知っている人からすると「スタイリッシュで尖ったアートスタイル」と「話の難解さ」のイメージとして多層人格アクションアドベンチャーの『killer7』も含まれているかと思います。

『killer7』(2005)

『killer7』にも上記の要素は含まれていますし「アートスタイル」と「話の難解さ」も、ほぼ全ての作品に含まれているものといえます。「話が難解」か、と言われるとまたそういう訳でもないのですが…そちらに該当しない作品も、もちろんあります。

これらの要素をまとめると、

  • 激しい暴力やゴア要素が満載

  • ふざけた台詞と展開に、ノリの良いぶっ飛んだキャラクター

  • 奇抜で尖ったアートスタイル

が主な「須田ゲーっぽさ」のイメージになるのではないでしょうか。そこに+αでストーリーが変わってる、というところも入るかもしれません。

こちらを並べてみると『ROMEO IS A DEAD MAN』はトレイラーの時点で、ゴア要素満載でぶっ飛んだ展開に様々なアートの融合が見られ、かなり「須田ゲーっぽい」印象です。本人が作っているんだから当たり前じゃないか。と思うかもしれませんが、今までプレイした事が無い方でもひと目見て「須田ゲーっぽい」と感じたのではないでしょうか。

筆者が発表トレイラーを最初に見た時は、ゴア要素の強いアクションゲームでコメディ寄りなノリ、最後の様々なアートが目まぐるしく変わる映像から『ノーモア★ヒーローズ3』っぽい感じになるのかな?という印象を受けました。実際『ROMEO IS A DEAD MAN』をプレイしてみるとかなり『ノーモア★ヒーローズ』の系譜を感じます

なので、現在「須田ゲーっぽい」と言われている要素を多く占めていると考えられる『ノーモア★ヒーローズ』に近い本作は、ぱっと見でも「須田ゲーっぽい」と感じる方が多いのではないかと思います。

先程挙げた要素は、須田剛一・グラスホッパーのファンである筆者からしても、決して間違っているとは思いません。ですが、筆者が実際にプレイしている時に一番「須田剛一らしさ」を感じる部分はこの中にはありません。

では一体、どこに「須田剛一らしさ」を感じているのか。それは「テキスト」です。そして、その他に「独特な死生観を持ったキャラクターと、世界のシステム・自己について言及したシナリオ」「激しい暴力やゴア要素」「プロレスやガンダムに特撮、巨大な月など共通して引用するモチーフ」があると感じています。

奇抜で尖ったアートスタイルや、作品のトーンを反映したUIや画面デザインなどの「アート・デザインの格好良さ」や「様々なカルチャーとの融合」が「グラスホッパーらしさ」であると捉えています。

ここは亜空間 もしくは異空間 はたまたウ空間

筆者が最も「須田剛一らしさ」を感じるテキストは『ROMEO IS A DEAD MAN』でも存分に発揮されています。

冒頭で時空警察からも重要な存在となった「ジュリエット」に近付いた存在として、ロミオは「濃厚接触者となった」とされるのですが、ここに「濃厚接触者」というワードを使う面白さと、この後一切「濃厚接触者」という単語が使われない所に、いい意味でその場の勢いで書いている言葉の選び方を感じます。

他にも、死んだはずの祖父「ベンジャミン・スターゲイザー」が背中の刺繍から「ロミオ」に語りかけた時「いま爺ちゃんの声が…もう千の風になったのか?」と聞いたり、テレビから謎の男が語りかけて来た時に「ここは亜空間 もしくは異空間 はたまたウ空間」と説明したりと、思わず笑ってしまう台詞が多く出てきます。

また、超常的な現象や殺意に満ち溢れたことを淡々と語る雰囲気に、会話のテンポ感、台詞に挟むスペースの使い方に「テキストでのらしさ」が現れていると感じます。軽快なやり取りの端々に覗く、刺すような冷たさが癖になります。

このようなテキストは、須田剛一氏がシナリオを手掛けた『シルバー事件』『シルバー事件25区』『killer7』に多く見られます。筆者としても、非常に好きなタイトルです。

『シルバー事件』(1999、リメイク版2018年)
『シルバー事件25区』(2005、リメイク版2018年)
『killer7』(2005)

我はハーマンの名の下に…」と一度見たら忘れない印象に残る台詞や「教育的指導促進委員会会長(ヘッドマスターニートガール)」という凄い当て字など、他にも魅力やらしさはありますが、筆者が須田剛一のテキストに感じる面白さのひとつには「突拍子もなさ」があると考えています。

出会ってすぐ生死についての会話を始めたり、真面目に話していると思ったら突然くだけた喋り方をしだしたり、いきなりガンダムのネタを突っ込んできた上に登場人物全員がネタを理解していたり……と、台詞も展開も突拍子がないため、まるで高速で動く車から振り落とされないように必死にしがみつくような感覚を覚えます。本人がどのような思いで書いているのかは分かりませんが……。

『Killer is Dead』(2013)

そして、これらの「突拍子もなさ」はゲームにも現れています。突然今までのジャンルとは違うゲームが始まったり、いきなり今までと違う画風のムービーが流れたり、戦闘中にスロットで特定の柄が揃ったら一定時間虎になったり……と台詞や展開だけでなく、ゲームでもこちらを振り回してきます。

『シャドウ オブ ザ ダムド』(2011)
『ノーモア★ヒーローズ3』(2021)

『ROMEO IS A DEAD MAN』でも「突拍子のない」ものが多く出てきますが、そのひとつとして「タイム・ショッキング ラビリンス」があります。こちらは、船内で医療や捜査官の健康管理をしている「ワーストピンク」に話しかけると挑むことの出来る、恋愛ゲーム風のミニゲームです。

一見、普通の相性クイズに見えますが、なんとこちらは全99問のクイズに連続で正解し続けないとクリアする事ができません。楽しげな音楽と共に謎のクイズが始まり、間違えた瞬間に即終了。繰り返し挑戦して10問を超えたあたりで「これ、一体何問あるんだ…?」と先の見えない道に迷い込んだ感覚に襲われます。ゲーム本編には関係ないものの、自力で解こうとすると途方もない時間がかかります。

過去には『シルバー事件』で「百問組手」という似たようなミニゲームがありました。その名の通り百問の問題に答えるミニゲームで、事件について先輩の刑事と話している時にいきなり始まります。

『シルバー事件』(1999、リメイク版2018年)

事件とは何の関係もないクイズが続き、「一体何をやらされているんだろう?」と気を抜いたタイミングで、事件に関する質問が差し込まれます。こちらは「タイム・ショッキング ラビリンス」とは違い、解答の正解不正解に関係なくそのまま話が進みます。『シルバー事件』をプレイした方は、「タイム・ショッキング ラビリンス」の問題数について予想出来たのではないでしょうか。

このように、須田剛一氏の「突拍子もなさ」を表すかのように、ゲームでも「突拍子もない」事をプレイヤーに突きつけてきます。台詞や展開などテキストでの突拍子のなさが「須田剛一らしさ」であり、ゲームプレイやビジュアル面での突拍子のなさが「グラスホッパーらしさ」なのです。

『Travis Strikes Again: No More Heroes』(2019)

須田剛一氏は、ファミ通.comで連載していた「須田寓話」に代表されるように、テキストだけでも十分に面白いものを書くクリエイターです。しかし、それがゲームとしてまとめられるとき、クールなビジュアルのキャラクター・UIなど含めて格好良いデザインの画面が須田剛一氏のテキストと合わさる事によって「カッコいいものがいきなり変なことをやりだした」という独自の面白さが生み出されているのだと思います。この「カッコいいのに変」という面白さは、小島秀夫氏の『メタルギアソリッド』シリーズなど、方向性は違えど他のゲームにも通ずるものがあるのでは、と筆者は感じています。

『メタルギアソリッド』(1998)

「生と死」と「日常」の境界線

次の「独特な死生観を持ったキャラクターと、世界のシステム・自己について言及したシナリオ」ですが、こちらは激しい暴力やゴア要素」と切っても切り離せない関係にあります。

「鶏が先か、卵が先か」というように、独特な死生観や世界観を持っているから激しい暴力が含まれるゲームが出てくるのか、激しい暴力が含まれるゲームを作るから独特な死生観のキャラクターや世界観が出てくるのか…両方を持ち合わせているとは思いますが、どちらかというと、死生観や世界観が先にあるのでは。と筆者は考えています。

過去のファミ通.comでの対談インタビューではこのように答えています。

須田 キャラクター先行の場合が多いですね。『ノーモア★ヒーローズ』や『ロリポップチェーンソー』は、最初に主人公のイメージがバーンとあって、そこからストーリーを作り上げていきました。逆に『シャドウ オブ ザ ダムド』や現在開発中の最新作は世界観が先ですね。こういう世界観を描きたいので、それに合う主人公を……という形で制作しています。

更に「アドベンチャーゲームは世界観や設定から考えて、シナリオを書いていく中でキャラクターが生み出てくる」とも答えています。

そして「血が出るゲームが大好きな人に向けて作っています」と言っていることから、グラスホッパーとしては、こちらのニーズに応えてゴア要素の激しいゲームを作っている事が伺えます。ですが、暴力要素が必ず含まれるアクションゲームではなく、グラスホッパー設立以前のヒューマン在籍時に制作したアドベンチャーゲームや、須田剛一氏が原作を担当し、竹谷州史氏が作画を担当した漫画『暗闇ダンス』でも、死が隣り合わせの日常を生きる人とその世界を描き続けています。

『暗闇ダンス』(2016) 壱 151ページより引用。

このように、ゴア要素が好きな人に向けてゲームを作ってはいるが、キャラクターや世界観から企画を考えており、グラスホッパー以前の時代・ゲームでない媒体でも同じように死が近い世界を描き続けていることから、激しい暴力やゴア要素は目的ではなく、登場人物や世界観から付随して出てくるものなのです。その登場人物や世界観こそが須田剛一氏の特徴であり「らしさ」なのだと思います。激しい暴力やゴア要素は「須田剛一らしさ」に欠かせないものではありますが、「グラスホッパーらしさ」でもあるのかもしれません。


では「独特な死生観を持ったキャラクターと、世界のシステムや自己について言及したシナリオ」とは具体的にどういう事なのか。それらが顕著に現れている『シルバー事件』や『killer7』『ノーモア★ヒーローズ』の3つを主な例として説明します。

まず『シルバー事件』や『killer7』だけでなく、複数の作品に「残留思念」という概念が存在しています。こちらは、簡単に言うと「死んだ人の思念・情念」です。現世への強い思いや伝えたい事を持って死ぬと、その意思が残留思念として残ります。残留思念を感じ取れる人もいて、そちらに直接的な干渉はしてきませんが、何かを訴えたり、導いたりしてきます。幽霊に近い印象を受けるかもしれませんが、大事なのはあくまでも「存在」ではなく「意思」です。

『killer7』(2005)

そして、「殺気」という単語も複数の作品に出てきます。「残留思念」と同じように、基本、殺しの世界に身を置く人は「殺気」を感じ取れるので、殺し屋が多く登場する『killer7』と『ノーモア★ヒーローズ』ではほとんどのキャラクターに「殺気」が存在し、その強さや臭いによって相手の強さを測る描写が多く見られます。

『ROMEO IS A DEAD MAN』でも「残留思念」や「殺気」の単語が使われていました。

独特な死生観は『ノーモア★ヒーローズ』のキャラクター達に多く見られます。「殺し」という我々にとっての非日常が「日常」な殺し屋達は、「殺し合い」を通じて相手を理解し、死をもって己の存在を相手に刻みつけます。そこに死への恐怖はなく、あるのは存分に力を振るい渡り合える高揚感に酔いしれる姿です。戦闘前後に交わされる、殺し屋同士にしか理解できない会話は、危険でありながらもどこかロマンチックで非常に惹きつけられます。

『ノーモア★ヒーローズ』(2007)

余談ですが、『シルバー事件』に登場する刑事達は「殺人や犯罪」を徹底して「非日常」に留めるべきという考えが徹底しているのも興味深いところです。これは『シルバー事件』の大きなテーマが「犯罪」であり、「犯罪」という存在は「非日常」でなければいけない。という所から来ているためなのですが。

「一般人」や「悪人」とされているキャラクターなど、例外はありますが、どのキャラクターも死に対して妙に潔く、さっぱりとした印象を受けます。そこには、常に死と隣り合わせであるが故の「覚悟」が存在し、それが「日常」であるからではないか、と考えられます。殺し屋や刑事などの職業が多いのも、それが理由なのではないでしょうか。

そんな須田剛一氏の描くキャラクター達の言動は、多くの人が遠くに感じている「死」というものが、物凄く近い存在である。という忘れてしまいがちな事を改めて思い出させてくれるように思えます。そこが筆者の「須田剛一らしさ」を感じる所であり、好きな所のひとつです。

『シルバー事件』(1999、リメイク版2018年)

世界のシステム・自己について言及したシナリオ」についてですが、須田剛一氏の描く世界には、先程から何回か出ている「日常」という存在無しには語れません。「世界」の中には「日常」が存在し、その「日常」が「世界」のひとつでもあるのです。

そして「日常」を表すような表現や行動が、多くの作品の中に繰り返し見られる事も特徴です。まるで「繰り返し」こそが「日常」であるかのように。

『花と太陽と雨と』(2001)

例えば『ノーモア★ヒーローズ』では「殺し屋ランキング」に挑むお金を稼ぐために「トラヴィス」は「アルバイト」でお金を稼ぎます。その一瞬の輝きともいえる戦いのために、ココナッツを運んで、お客さんの注文通りに肉を焼いて、芝刈り機で庭を綺麗にしてコツコツとお金を貯めます。この「アルバイト」の部分が「日常」で「殺し屋ランキングで行われる死合」が「非日常」です。繰り返し、というのはゲームをプレイする上で避けては通れないものなので、「日常の表現としての繰り返し」はゲームと相性がいいのかもしれません。

『ノーモア★ヒーローズ』(2007)

『ROMEO IS A DEAD MAN』にも「日常」の象徴として描かれているのではないか、と感じる描写がいくつか存在します。その象徴や繰り返しが何なのかを考えてみるのも、須田剛一氏の話の描き方を見る上でまた面白い所ではないかと思います。

また、特に『シルバー事件』や『シルバー事件25区』、『killer7』で描かれる世界のシステムや政治的背景、人々は「"シルバー事件徹底解剖"(※ネタバレ注意)」で答えているように特定のものをモチーフにしている訳ではありません。しかし、そこには「現代」を想起させる事が多く、須田剛一氏の考える「世界のシステム」を見ると「もしこのまま、このような人々の流れが進んでしまったらこうなるのではないか…」と考えさせられます。須田剛一氏の作家性が現れる非常に魅力的な要素のひとつですし、筆者の考えにも大きな影響を与えています。

『シルバー事件25区』(2005、リメイク版2018年)

そして、「世界のシステム」を知るというのは、今までの「日常」が変貌し、崩壊していく前兆でもあります。終盤に明かされる大きな事実に、突き落とされたような感覚のまま駆け抜けて精算していくシナリオは、他にはない読後感を与えます。

ですが、「世界のシステム」を知ることで終わるのではなく、最後は「自己」についての話へと戻ってきます。「世界」がどうあろうと、プレイヤーが操作し寄り添ってきた「主人公自身」の存在と選択で物語は終わるのです。「世界」が揺らぐ事によって「自己」すらも揺らぎ、導かれるように辿り着いた結末は、たとえその選択で今までの「日常」に戻れなかったとしても、それを受け入れたいと思えるのです。

『killer7』(2005)

世界のシステムの話から自己に戻って来るというシナリオの構造にも「須田剛一らしさ」を感じており、筆者が強く須田剛一氏のシナリオに惹かれる理由でもあります。

こうした物語の描き方は須田剛一氏だけでなく、主に『シルバー事件』の「[Placebo]」や『花と太陽と雨と』の一部を担当した大岡まさひ氏のシナリオにも反映されています。これらは須田剛一氏の執筆ではないものの、「須田剛一らしさ」を支える重要な柱となっています。

『シルバー事件』(1999、リメイク版2018年)

須田剛一氏のシナリオを難しいと感じている方は「世界」についての言及で躓いているのかと思われます。もちろん、その「世界」についての設定や理解も大事なのですが「主人公自身」が何を選んだのかに目を向けてみると、どのような話だったのか少し理解しやすくなるかもしれません。

逆◯ャアには体調を改善させるサイコフレームがテレビからも放出される

最後の「プロレスやガンダムに特撮、巨大な月など共通して引用するモチーフ」は、今までのらしさとは違い、須田剛一氏の趣味からくるものです。特にプロレスやガンダムに関する小ネタは非常に多く、しかもほとんどが特に本編の話とは関係ない「突拍子もない」要素です。

『ノーモア★ヒーローズ3』(2021)
『シルバー事件25区』(2005、リメイク版2018年)

『ROMEO IS A DEAD MAN』の公式サイトにも「果たして因果の果ての果てに、ロミオは刻の涙を見ることができるか? じゃ!」とあるように、ガンダムネタはしっかりと挟まれています(今回はプロレスを封印したようですが……)。

他にも「ジョイ・ディヴィジョン」や「ニュー・オーダー」、「サカナクション」などの楽曲の引用も多く見られますが、趣味とは別によく登場するものとして「巨大な月」があります。こちらは様々な作品で用いられるモチーフなので、他のゲームで「巨大な月」があると「須田剛一のゲームに出てくる月みたいだな」と思う事があります。そもそも、初期に制作したタイトルに『ムーンライトシンドローム』がありますしね。

『ムーンライトシンドローム』(1997)
『シルバー事件』(1999、リメイク版2018年)
『ノーモア★ヒーローズ2 デスパレート・ストラグル』(2010)


改めて筆者が「須田剛一らしい」と強く感じる部分をまとめると、

  • テキスト

  • 突拍子のなさ

  • 独特な死生観を持ったキャラクター

  • 世界のシステム、自己について言及したシナリオ

の4つになります。前述した「須田ゲーっぽさ」の「激しい暴力やゴア要素が満載で、奇抜で尖ったアートスタイル。ふざけた台詞と展開に、ノリの良いぶっ飛んだキャラクター」は、あくまで表面的な部分であり、筆者としてはこの4つこそが「須田剛一らしさ」だと思います。なので「須田ゲーっぽい」と言われているゲームを遊ぶと、そうだと思えないケースが多かったのです。

「グラスホッパー・マニファクチュア」の作家性

では、「グラスホッパーらしさ」とはなんなのか。という話に移りますが、実はタッグを組む人や会社によって色が違うのです。

近年の『Travis Strikes Again: No More Heroes』と『ノーモア★ヒーローズ3』、『ROMEO IS A DEAD MAN』の3作にはディレクターに同じグラスホッパー在籍の山﨑廉氏が関わっており、全体的にカラフルな色合いで様々なアートスタイルを採用しているのが特徴です。複数のアーティストとのコラボや、パロディなどの小ネタも豊富で、良い意味でのごった煮感があります。元々、グラスホッパーは画面全体のUI含めデザインにこだわりを感じていましたが、この3作には今までの作品の蓄積がこれでもかと詰まっているように感じます。

『Travis Strikes Again: No More Heroes』(2019)
『ノーモア★ヒーローズ3』(2021)
『ROMEO IS A DEAD MAN』(2026)

killer7』や『シャドウ オブ ザ ダムド』では『バイオハザード』シリーズに携わった三上真司氏がプロデューサーを務めています。こちらの2作はダークな雰囲気で銃を扱うという共通点を持ちますが、どちらも『バイオハザード4』の影響が相互に見られます。

『バイオハザード4』には「キラー7」というマグナムが登場しますし、クリーチャーの「リヘナラドール」のデザインは「ヘヴンスマイル」を想起させます。さらに、頭部から寄生体が露出した「ガナード」を撃破する際の弾けるような効果音も、『killer7』で「ヘヴンスマイル」を倒した時の音と似ています。

『バイオハザード4』(2005)
『killer7』(2005)

2005年の1月27日に『バイオハザード4』が発売、『killer7』が6月9日に発売していることから、ある程度制作時期が重なっている事が伺えます。レオンが突然プロレス技を使い始めたのも、三上真司氏が須田剛一氏や『killer7』の影響を受けていたからではないか……と密かに思っています。

『シャドウ オブ ザ ダムド』は道中やボス戦の設計が『バイオハザード4』にかなり近く感じます。怪しい街の雰囲気も、トーンは違いますが似ていますよね。また、主人公の「ガルシア」を支援する悪魔の商人「クリストファー」の周囲には青い花が咲いていますが、『バイオハザード4』の「武器商人」の隣にも、青い炎を灯す燭台があります。

『バイオハザード4』(2005)
『シャドウ オブ ザ ダムド』(2011)

角川ゲームスが開発・発売に関わった『ロリポップチェーンソー』と『Killer is Dead』は雰囲気こそ違いますが、どちらもアクションゲームで他のタイトルよりもお色気要素が強めです。

『ロリポップチェーンソー』(2012)
『Killer is Dead』(2013)

『ノーモア★ヒーローズ』シリーズなどにもセクシーなキャラクターは登場するのですが、この2作にはそれとはまた異なる雰囲気を感じるので、角川ゲームスと組んだ事で表現されたものだと思われます。

他にもガンホーと組んだオンラインゲーム『LET IT DIE』やレベルファイブが発売元の3Dシューティングゲーム『解放少女』などがありますが、このようにどれもタッグを組むクリエイターや会社によって雰囲気や特徴がそれぞれ違うのです。

では、何故どのゲームを見ても「グラスホッパーらしい」と思えるのか、それは前述した「アート・デザインの格好良さ」や「様々なカルチャーとの融合」そして「激しい暴力やゴア要素」があるからです。特に「アート・デザインの格好良さ」が一番大きいのではないかと筆者は感じています。

『killer7』(2005)

様々なアーティストとコラボした音楽や激しい暴力も「グラスホッパー」のゲームに多く、それらも大きな魅力のひとつです。しかし、どのタイトルもトーンや題材は違えど、どれも他では見ない目を引くビジュアルのキーアートや、フォントやUIにタイポグラフィなど細部までこだわったデザインが共通しています。「ゲーム」自体には関係ない部分かもしれませんが、この見ているだけでワクワクするようなデザインをこだわり抜いて「ゲーム」にする表現こそが「グラスホッパーらしさ」なのです。

遊べば遊ぶほど面白い、須田剛一・グラスホッパーワールド

「須田ゲー」と形容されるグラスホッパーのゲームは、このように暴力的なものが多くを占めながらも多種多様で、どこを見てもカッコいいアートと須田剛一氏のテキストや世界観を存分に楽しむことができます。もし『ROMEO IS A DEAD MAN』やこの記事から興味を持った方は、『シルバー事件』か『killer7』、『ノーモア★ヒーローズ』から入ることをオススメします。そこから他の作品を遊んでいくと、記事では紹介しきれなかった魅力や好きな所が見つかると思います。もちろん『ROMEO IS A DEAD MAN』から遊ぶのもオススメですよ!

「あの作品のキャラクターがこんなところに……」という「スターシステム」的な楽しみもあり、遊べば遊ぶほど須田剛一氏とグラスホッパーの世界に浸れます。実は、『ROMEO IS A DEAD MAN』にも過去作キャラクターが何人か登場しているので、そのキャラクター達を見つけてみるのも面白いかもしれません。

唯一無二の世界とアートを表現し、作り続ける須田剛一氏とグラスホッパー・マニファクチュア。ぜひみなさんも、このゲームの世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。一度走り出したら止まらない、血が駆け巡るような強烈な刺激に満ちた体験が待っているはずです。



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ライター:もぐ水,編集:みお

ライター/カントウ25区 もぐ水

主にアクション・シューター・ADVなどジャンル気にせずいろいろ遊びます。 サウンドがカッコいいゲームやロボットが出てくるゲーム、血みどろなゲームが特に好きです。

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編集/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

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