気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Draw Me A Pixel開発、PC向けに6月11日にリリースされた引っ張り系メタ探偵アドベンチャー『Crushed In Time』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、メタ要素満載の探偵アドベンチャーゲーム。シャーロック・ホームズとワトソン博士の新作ゲームから登場人物が消えて進行不能となってしまい、このままでは低評価爆撃を受けてしまうため、2人がゲームの世界を捜査して正式リリース前にゲームを元に戻す…というメタな展開のストーリーのほか、画面上の様々なオブジェクト「引っ張る」ことで多彩な影響を及ぼすことができるのも特徴です。日本語にも対応済み。
『Crushed In Time』は、3,150円で配信中。


――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
Pascalこんにちは、『There Is No Game』や『Crushed In Time』のシナリオライターとディレクターを務めているPascal Cammisottoです。ゲーム業界で25年間働いており、開発におけるクリエイティブ面を中心に、いわゆる「何でも屋」として活動しています。
好きなゲームを1つだけ挙げるというのは、私には無理です…あまりにも多すぎますからね!
――本作の特徴を教えてください。また、そのアイデアはどのように思いついたのでしょうか?
Pascal『Crushed In Time』は、一風変わったタイムトラベルの物語を描いています。プレイヤーが訪れるのは、異なる歴史の時代ではなく、自分が今まさにプレイしている「そのゲームの様々な開発段階」なのです。ゲームそのものの枠組みを超え、第四の壁を打ち破る、完全に「メタ」なアプローチとなっています。
前作『There Is No Game』では、多様な環境や体験を生み出すための手段として「次元移動」を用いました。今作の意図もそれにかなり近いのですが、今回は「ゲームの開発プロセスを通じてタイムトラベルを掘り下げる」という形で、ゲーム体験に多様性を持たせています。
もう一つの新しい要素は、核となるゲームシステムです。本作はポイント&クリック形式のゲームですが、クリック可能な箇所や会話、アイテム画面に頼った、よくある普通のアドベンチャーゲームはもう作りたくありませんでした。そこで私は、「もし任天堂がポイント&クリックゲームを作るとしたら、一体どんなアプローチをとるだろう?」と自分に問いかけたのです。
その問いから生まれたのが、「伸縮システム」です。ゲーム内のあらゆるインタラクションが「引っ張って、離す」という操作になっているのです。これにより、ニッチになりがちな本ジャンルに、より遊び心のあるアプローチをもたらすことができました。ただその反面、パズルをデザインする上では、たくさんの制約も生まれることになってしまいましたけどね。
――本作の開発にあたって影響を受けた作品はありますか?
Pascal本作はある意味で、かつてルーカスアーツが手がけたポイント&クリック形式のゲームに対する、私個人のオマージュでもあると思っています。私の一番好きなポイント&クリックゲームは『Day of the Tentacle』なので、その影響は『Crushed In Time』を見れば一目瞭然でしょう。
また、1980年代の冒険映画の空気感をどうしても再現したいとも思いましたので、音楽もその目標を念頭に置いて作り、ジョン・ウィリアムズの作曲を彷彿とさせるオーケストラ・スタイルを採用しました。本作のいくつかのシーンを見ていると、「ウォレスとグルミット」のようなイギリス風ドタバタコメディのスタイルも感じられますね。シャーロック・ホームズとワトソン博士のコンビは、このドタバタの中で素晴らしい掛け合いを見せてくれます。

――本作の開発中に一番印象深かったエピソードを一つ教えてください。
Pascal開発当時を振り返る時、よく頭に浮かぶことがあります。それは、あの「伸縮エフェクト」を作るのに、本当に信じられないほど苦労したということです。一見するとそれほど複雑には見えないかもしれませんが、私たちはシェーダーを開発し、それをゲームプレイに適応させるための研究開発に、ほぼ丸1年を費やしました。
本作は元々2Dで開発される予定だったのです。しかし最終的には、数々の技術的な問題に加え、演出や映画のような映像表現をより細かくコントロールしたいという私の強いこだわりもあり、すべてを3Dで開発することに決定しました。
――リリース後のユーザーのフィードバックはどのようなものがありましたか?特に印象深いものを教えてください。
Pascal全体的に皆さんからは好意的なフィードバックをいただいています。現在、Steamでの評価も90%が好評となっています。ほとんどのプレイヤーが本作での体験を楽しんでくれているようです。
ただその一方で、本作が『There Is No Game 2』ではなかったことに落胆している人たちがいるのも肌で感じています。しかし、『Crushed In Time』はあくまでスピンオフ作品であり、続編ではありません。私たちはリスクを背負ってでも、新しいことに挑戦するのが好きなのです。それこそが創造性の根幹ですからね。
個人的には、今回のストーリーは特に自信を持っている部分だったので、フィードバックの中であまり言及されていないのが少しだけ残念ではあります。
――ユーザーからのフィードバックも踏まえて、今後のアップデートの方針について教えてください。
Pascal一部のパズルや時間制限のあるアクション部分の難易度を下げました。また、ゲームクリア後に好きなチャプターをいつでもリプレイできる機能など、いくつかの快適性の改善も導入しています。そしてもちろん、引き続きバグの修正にも取り組んでいきますよ!
――本作の日本語対応について教えてください。
Pascalまず最初に、ゲームの音声は英語のままとなります。この点についてはよく批判を受けるのですが、私たちのような非常に小さなスタジオにとって、ローカライズは単に音声ファイルを差し替えれば済むという問題ではないのです。言語ごとに、タイミングの再調整やリップシンクの修正といった、膨大な追加作業が発生してしまいます。そのため、私たちはテキストと字幕の翻訳に集中するアプローチをとっているのです。
本作にはリリース当初から日本語に対応しています。これは『There Is No Game』でも一緒に仕事をさせていただいた架け橋ゲームズさんに制作していただきました。彼らは素晴らしい仕事をしてくれますし、原作をしっかりと尊重してくれています。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Pascalもちろんです!コンテンツクリエイターの皆さんに対して、私たちが著作権侵害の申し立てを行うようなことは絶対にありません。それどころか、むしろ彼らのサポートを必要としているくらいです!
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Pascal日本のゲームや文化は、私のクリエイティビティ、ゲームへの愛、そして日本という国そのものに対する愛着に、本当に大きな影響を与えてくれました。皆さんが『Crushed In Time』の冒険(そしておバカさ加減)に共感し、楽しみ、そして心を動かされることを願っています。
――ありがとうございました。


◆「注目インディーミニ問答」について
本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に1,000を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。








