NVIDIAの新技術「DLSS 5」でさらなるグラフィックの境地へ──AIがレンダリング済みのフレームに、フォトリアルな光と質感を加える仕組みとは【特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

ハードコアゲーマーのためのWebメディア

NVIDIAの新技術「DLSS 5」でさらなるグラフィックの境地へ──AIがレンダリング済みのフレームに、フォトリアルな光と質感を加える仕組みとは【特集】

影の描写一つでここまでフォトリアルに進化

連載・特集 特集
NVIDIAの新技術「DLSS 5」でさらなるグラフィックの境地へ──AIがレンダリング済みのフレームに、フォトリアルな光と質感を加える仕組みとは【特集】
  • NVIDIAの新技術「DLSS 5」でさらなるグラフィックの境地へ──AIがレンダリング済みのフレームに、フォトリアルな光と質感を加える仕組みとは【特集】
  • NVIDIAの新技術「DLSS 5」でさらなるグラフィックの境地へ──AIがレンダリング済みのフレームに、フォトリアルな光と質感を加える仕組みとは【特集】
  • NVIDIAの新技術「DLSS 5」でさらなるグラフィックの境地へ──AIがレンダリング済みのフレームに、フォトリアルな光と質感を加える仕組みとは【特集】
  • NVIDIAの新技術「DLSS 5」でさらなるグラフィックの境地へ──AIがレンダリング済みのフレームに、フォトリアルな光と質感を加える仕組みとは【特集】
  • NVIDIAの新技術「DLSS 5」でさらなるグラフィックの境地へ──AIがレンダリング済みのフレームに、フォトリアルな光と質感を加える仕組みとは【特集】
  • NVIDIAの新技術「DLSS 5」でさらなるグラフィックの境地へ──AIがレンダリング済みのフレームに、フォトリアルな光と質感を加える仕組みとは【特集】
  • NVIDIAの新技術「DLSS 5」でさらなるグラフィックの境地へ──AIがレンダリング済みのフレームに、フォトリアルな光と質感を加える仕組みとは【特集】
  • NVIDIAの新技術「DLSS 5」でさらなるグラフィックの境地へ──AIがレンダリング済みのフレームに、フォトリアルな光と質感を加える仕組みとは【特集】

NVIDIAは「gamescom 2026」にあわせて開催したプレスブリーフィングにて、3月のGTCで発表した新技術「DLSS 5」の技術的な詳細を公開しました

3D-Guided Neural Rendering」と銘打たれた本技術は、ゲームのリアルタイムレンダリングにおける長年の課題であった「フォトリアリズム(実写のような質感)」の実現に向けた、新たなアプローチとなります。

本稿では、NVIDIAの応用ディープラーニング研究ディレクターを務めるエドワード氏、そしてクリエイティブ・ディレクターのギャブ氏によるプレゼンテーションの内容をもとに、DLSS 5の技術的な背景と特徴をお伝えします。

GeForceが追い求めてきた「聖杯」

エドワード氏はまず、GeForceというブランドが創業以来目指してきたのは「リアルタイムレンダリングにおけるフォトリアリズムの実現」であると説明します。

過去25年の間には、2001年のプログラマブルシェーダー(GeForce 3)、2006年のCUDA(GeForce 8800 GTX)、2018年のRTコア/Tensorコアの統合(RTX 2080 Ti)、そして2026年のパストレーシング(RTX 5090)と、数年ごとに飛躍的な技術革新が起きてきました。この間、演算性能は実に375,000倍にまで向上しているといいます

しかし、本来の目標である「リアルタイムでのフォトリアリズム」には、まだ大きな隔たりがあるといいます。従来のグラフィックスは、光の反射を物理法則に基づいてシミュレーションする「物理ベースレンダリング」によって画像を構築します。

ただ、真のフォトリアリズムを得るには、逆光で髪が輝く現象や、皮膚の内部で光が透過する(太陽に手をかざしてみるとオレンジ色に光る)「サブサーフェス・スキャッタリング」など、現実世界の無数の細部を再現しなければなりません

映画「アベンジャーズ」のハルクの描写では、1フレームの生成に40時間を要したとのことですが、ゲームに許された時間はわずか数ミリ秒。単純な計算能力の向上だけでは、この溝を埋めることはできないというのが、NVIDIAの現状認識です。

生成AIが抱える「ゲーム向きではない」という課題

そこで近年成熟してきたのが、物理シミュレーションではなく現実世界のデータから直接学習する「生成モデル」です。十分な学習を積んだモデルは、「逆光のキャラクター」と指定するだけで、髪のリムライトや赤みを帯びた耳たぶといった細部を、経験則として再現できます。

しかし、こうした生成AIはこれまでゲームに導入されてきませんでした。理由は大きく2つあります。

ひとつは「制御性・決定論」の問題。既存の生成モデルはテキストなどの抽象的な入力に基づいて動作するため、同じ入力を与えても毎回異なる結果を出力してしまいます。ゲームでは、毎フレーム寸分違わず正しいキャラクターと物語を描画する必要があるため、この不確実性は致命的です。

もうひとつは「時間的整合性」の問題。従来の生成モデルは巨大かつ低速で、30~60フレームをまとめて一括生成する仕組みになっています。しかしゲームでは、プレイヤーの入力によって次のフレームが決まるため、1フレームずつリアルタイムに生成しなければなりません

DLSS 5の仕組み──「Pixel Space Diffusion Transformer」という専用モデル

DLSS 5は、こうした課題を踏まえてゲーム専用に設計された生成モデルです。その中核をなすのが「Pixel Space Diffusion Transformer Model」と呼ばれるアーキテクチャです。

最大の特徴は、テキストプロンプトではなく、レンダリング済みのフレームそのものを入力条件として受け取る点にあります。レンダリングフレームには、キャラクターの肌の色や位置といった情報がピクセル単位で含まれており、DLSS 5はこれをもとに、アーティストが意図した画づくりを尊重しながら、よりフォトリアルな映像を生成します。

このモデルがアーティストの意図を維持するための入力条件には、テキストプロンプトではなく、ピクセル単位の正確なキャラクター情報や位置情報を持つ「Rendered Frame(レンダリングフレーム)」が直接用いられています。さらに、時間的整合性を保つため、ゲームエンジンから取得した「Motion Vector(モーションベクター)」を活用してピクセルの動きを追跡していると語られました。

これにより、キャラクターの同一性(顔・シルエット・衣装)、シーンの意味(オブジェクト・素材・関係性)、ライティングの意味(方向・強度・雰囲気)、カメラ・構図(視点・フレーミング・パース)といった要素を保持したまま生成できる設計になっているとのことです。

単純なフィルター処理とは異なり、DLSS 5は画面内の意味的な要素(顔と背景、服と肌など)を理解した上で、局所的な編集をリアルタイムに実行する「意味理解型の局所編集(Semantic-aware local editing)」を行います。

時間的整合性の課題については、ゲームエンジンから取得できるモーションベクターを活用し、フレームをまたいで動くピクセルの位置を正確に追跡することで解決しているとのことです。

プレゼン内では「Zorah Demo」と名付けられた技術デモが披露され、ターバン姿の男性の肌や衣服、背景の植物などが極めてリアルに描画される様子が示されました

アーティストに委ねられる、きめ細かなコントロール

続いて登壇したクリエイティブ・ディレクターのギャブ氏は、映画(「トイ・ストーリー3」、「ライフ・オブ・パイ」)とゲーム(『メタルギアソリッドV』、『Horizon Zero Dawn』)双方でキャリアを積んできた人物。同氏のチームは、最新の研究成果と実際のゲーム開発現場を橋渡しする役割を担っているといいます。

ゲーム開発の現場において、最終的に出力される画像は、常に「アーティストの理想」と「パフォーマンス・予算の制約」の妥協点にならざるを得ません。DLSS 5は、そのギャップを埋めるツールとして、開発者に以下のようなコントロール手段を提供します。

まず「モデル選択」機能では、異なる重みで学習された複数のモデルを、場面に応じて切り替えられます。さらに「グローバルスライダー」として、コンタクトシャドウや反射といった高周波ディテールを調整する「Structure Intensity(構造強度)」と、色味やライティングの応答を調整する「Tone Intensity(トーン強度)」の2種類が用意されており、Tone Intensityを0に設定すれば、エンジンが元々出力していた配色をそのまま維持することも可能です。

また「オートマスキング」機能により、DLSS 5は顔・背景・服・植物といった画面内の要素を自動的に意味理解し、適用範囲を判別します。開発者側からアセットごとにカスタムマスクを渡すことで、特定のオブジェクトだけにピンポイントでエフェクトの強度を指定することもできるとのことです。

レイトレーシングを置き換えるものではない

エドワード氏とギャブ氏は、DLSS 5がレンダリングスタックの最上位に位置する技術であり、レイトレーシングやパストレーシングを置き換えるものではないと強調しました。入力の質が高いほど(レイトレーシング・パストレーシングを有効にするほど)、DLSS 5が出力する画質も向上するという関係性にあるといいます。

パフォーマンス面では、当初GTCにてRTX 5090の2枚刺し構成でデモされていたものが、わずか6ヶ月の間に5倍にまで高速化。3月のデュアルRTX 5090構成を基準に、8月のRTX 50シリーズでついに5倍を達成という推移をたどっており、9月以降もさらなる性能向上が見込まれているとのことです。

具体的なベンチマーク数値も公開されています。『NBA 2K27』では、DLSS 5・レイトレーシングを有効にした状態で、以下のフレームレートが計測されました。

4K解像度
1440p解像度
1080p解像度

ミドルクラスのRTX 5060/5060 Tiでも十分なフレームレートが確保されており、幅広いユーザー層への普及が見込まれる内容です。

質疑応答では、「画面内の特定のグループ(例えばブドウとリンゴのように、似た被写体が混在する場面)をどう個別に制御しているのか」という質問が挙がりました。

これに対しては、ゲームエンジン内のアセットにタグを付与し、開発者が特定のアセットマスクをDLSS 5に渡すことで、指定したオブジェクトごとに異なる強度のAI補完を適用できる、という回答がありました。


NVIDIAは今回の発表を「DLSS 5はアーティストの手作業を置き換えるものではなく、計算能力やVRAMの制約から解放し、本来のビジョンを実現するための拡張ツールである」と位置づけています。

開発者向けにはStreamline、またはUnreal Engine 5用プラグインを通じて、既存の開発パイプラインへ容易に統合できるとしており、今後どのタイトルへの実装が進んでいくのか、続報が待たれます。

MSI GeForce RTX 5080 16G GAMING TRIO OC グラフィックスカード VD8975
¥304,771
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
ライター:タナカハルカ,編集:みお




ライター/気さく タナカハルカ

インディーゲームデベロッパー・よんとんトマチンのメンバー(ヤムニャン学園)として『ふりかけ☆スペイシー』を開発。著書『海外ゲーム音楽ガイドブック ビデオゲームからたどる古今東西の音楽』『楽曲派アイドル・ガイドブック ももクロ以降のアイドルソング再考』。寄稿『ユリイカ2025年12月臨時増刊号 総特集=大貫妙子』『DAWN N°2』など。毎週新高円寺で会える。

+ 続きを読む

編集/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

+ 続きを読む

編集部おすすめの記事

特集

連載・特集 アクセスランキング

アクセスランキングをもっと見る

page top