『NEEDY GIRL OVERDOSE』で知られるにゃるらがシナリオ・ディレクターを務める新作ビジュアルノベル『妹、他者、パラノイア』が2026年8月15日に発売されます。アートワークにはお久しぶり、音楽にはAiobahn+81と、『NEEDY GIRL OVERDOSE』にも携わったスタッフが再び集結した作品です。
本作の主人公は、他人の感情に敏感すぎるあまり、いつしか他人の思考が読めるようになってしまった引きこもりの新人ラノベ作家です。他人や社会に強い不信感を抱く彼にとって唯一の心の拠り所は、共に暮らすギフテッドの妹の存在。そんな兄妹の歪な共依存と、主人公から見た「他者」との関わりを描くのが本作『妹、他者、パラノイア』です。

今回、発売に先駆けて本作のテストビルドをプレイする機会を得ました。今回プレイできたのは、4つのルートをそれぞれ途中まで収録したバージョンです。 本記事では、その範囲で感じた本作の魅力や、強く印象に残った部分を紹介します。
他人の思考を覗きながら進むビジュアルノベル
ゲームは、主人公の視点からテキストを読み進めていく比較的シンプルなビジュアルノベルです。システム自体は古典的なビジュアルノベルに近い一方で、画面演出は動的な部分もありました。

もちろんプレイの大部分はビジュアルノベルの定石をなぞるようにテキストと立ち絵中心です。しかし、シームレスに画面が移動したり、イージングを効かせながら視点が大きく動いたりと、ただテキストを眺め続けるだけではない演出が随所に盛り込まれていると感じます。静かな画面から突然大きく動きを見せる場面もあり、プレイ中に意表を突かれることもありました。
作品冒頭では、相手の内面をついて飛び降りを実行させるという強烈なシーンが出てきます。この際の内面を覗き見る演出はこれまでのビジュアルノベルから特に逸脱した表現だと感じます。相手の考えがダイアログからはみ出てきて、それを実際にクリックして突く。こういった現代らしいダイナミックな表現があるのも本作の特徴でしょう。



内面を覗かれるようなおぞましさ
本作をプレイしてまず嬉しかったのが、にゃるら氏らしいどす黒くて露悪的な文章を存分に浴びられたことです。
嫉妬や自己嫌悪、被害意識や他人に対する勝手な決めつけ、友人への劣等感など。人間があまり表に出したくないような感情が生々しく描かれています。主人公を含めた登場人物たちも等身大に描かれており、いわゆる「キャラクター然」とした人物造形ではありません。

キャラクターの中に伊草という人物がいます。彼は主人公の昔馴染みの友人なのですが、一足先にラノベ作家として成功を収めようとしている主人公への嫉妬や劣等感、焦りを読み取ることができます。彼に対して物を奢ったりするという、善意を以てして上下関係を叩き込む主人公といったストーリーを体験できます。友人関係でありますよね、こういう見えないマウントの取り合い。
主人公側にも伊草側にも「こういう感情の時あるな~!」と感情移入しやすく、自分のおぞましい部分を見せつけられるような気持ちになりました。最高です。いい意味でとにかく気持ち悪い文章を読み進めていく感覚は独特で、心地の良い不快感を与えてきます。

また、本作の構造として主人公の認知を通して他者を見ている点が特徴的です。主人公は他人の思考を読んでその言動の裏側にある本心や悪意を見抜いて言語化してくれます。しかし、彼自身も社会や他人に対して強い不信感を抱いているため、どのくらい本当のことが読めているのかが不安になります。提示されている相手の感情がどこまで信用に足るものなのかがわかりません。
向けられる悪意は少なからずあるかもしれませんが、妹以外全員敵だと感じているような、疑い深い見方をしている部分もあるように感じました。

また、プレイを終えてこのプレイレポを書くにあたり、書くこと自体が少し怖かったです。主人公が他人の些細な言動から内面を推し量る本作を遊んだ後だからこそ、自分が何を面白いとおもったのか、どこに共感したのかを書くことでこちらの内面まで読まれてしまうような気がしてしまいました。
文章や言動から他人の心を勝手に類推する。あるいは自分の文章から他人に心を想像され、決めつけられるかもしれないという居心地の悪さを含めて『妹、他者、パラノイア』という作品を体験しているような気分です。
総評
今回プレイできたのは、4つのルートをそれぞれ途中まで収録したテストビルドでしたが、それでも『妹、他者、パラノイア』が持つ独特の空気感は十分に感じられました。
古典的なビジュアルノベルをベースにしつつ、動的な画面演出を取り入れた見せ方も印象的ですが、やはりプレイ後に強く残るのは、人間の嫉妬や劣等感、被害意識といった暗い感情を容赦なく描く文章だと思います。
今回触れられなかった物語の先で、主人公と妹、そして「他者」との関係がどのような結末を迎えるのか、製品版で確かめるのが楽しみです。
『妹、他者、パラノイア』はPC(Steam)で2026年8月15日発売予定です。公式のDiscordではデモ版も配布中とのことです。











