ゴールデンレトリバーと暮らす穏やかな日々を描く『ゴールデンレトリバーと過ごす日々』。
本作は実在する愛犬ピチューを撮影した映像を用いるFMV(フルモーションビデオ)形式のペットシミュレーションです。食事や散歩、ボール遊びだけでなく、気まぐれないたずらや思わぬ行動までゲームになっています。
Game*Sparkでは開発者のPablo氏にメールインタビューを行い、愛犬を主役にした理由から開発の裏話まで聞きました。
「ピチュー」はポケモン由来。愛犬をゲームの主人公にした理由

――愛犬のピチューを主役にしたゲームを作ろうと思ったきっかけは何でしょうか?
Pablo氏:妻と私は犬を飼い始めてからSNSで犬の動画をよく見るようになり、いつも驚いたり笑ったりしています。自分たちもピチューの動画を大量に撮っていたので、ある日、これを集めてゲームにできないかと思いついたんです。それにピチューはとてもかわいくて、散歩中に撫でたいと声をかけられることがよくあります。だったら、もっと多くの人がピチューと一緒に過ごせるようにしよう、と考えました。
――「ピチュー」という名前の由来と、普段の性格を教えてください。
Pablo氏:名前はポケモンの「ピチュー」からです。私も子供たちもポケモンが大好きですし、ゴールデンレトリバーの金色の毛並みもピチューの黄色を連想させます。
私たちは子供にも優しい家庭犬が欲しかったのですが、ピチューはまさに理想通り。ほかの犬に吠えられても、ほとんど吠え返さないほど穏やかです。何より好きなのは食べることと散歩。何でも食べたがるので太らないよう気をつけています。あと、取り上げられそうな物を見つけると、その上でゴロゴロ転がる癖があります。自分の匂いをつけて「これは僕のもの!」と言っているんでしょうね。
――実際のピチューの性格は、ゲームにも反映されていますか?
Pablo氏:もちろんです。卵のパックや帽子、モップなど、持ってはいけない物をピチューがくわえて逃げる場面がありますが、どれも仕込みではありません。いたずらの瞬間を撮り、取り返そうとすると、返すよう言わない限り逃げてしまうんです。
ゲームには「これはピチューらしくない」と思う場面は一つもありません。ボール遊びが始まるとわかったときの、本当にうれしそうな様子もそのままです。そこがこの作品の強みですね。台本に従うキャラクターではなく、本物の犬を見てもらえるんです。

3DCGではなく実写で描く、台本のない犬との暮らし
――なぜ3DCGではなく実写映像を使うFMVゲームにしたのでしょうか?
Pablo氏:ゲームを思いつく前からピチューの動画が大量にあり、最初の構想はそれらをまとめてインタラクティブにすることでした。だからFMVは自然な選択だったんです。画質を上げるため最終的には全映像をカメラで撮り直しましたが、発想は変わりません。
実写なら現実に根ざした体験になります。ピチューは演技ができないので、感情も反応も本物。3Dモデルの動きにはアニメーターが作ったものだという認識がありますが、ここでは本当の反応を目撃できるんです。
――撮影時にはピチューの自然な行動を待つのですか? それとも状況を作るのでしょうか?
Pablo氏:大半は日常で自然に起こることを撮っています。遊びやトレーニング、庭のトンネルの場面などは状況を用意し、あとはピチューに任せます。庭用のトンネルを開封していたら、ピチューが興奮して開封前に飛び込み、中でつかえてしまったことがありました。どうにか向きを変えて戻ってきた、かわいい映像はトレーラーにも使っています。
私の絶対的なルールは、ゲームのためにピチューが嫌がることを決して強制しないこと。朝は普段1時間ほど散歩しますが、行き先はいつもピチューが決めます。撮りたい場所へ行ってくれなくても無理強いせず、別の日に行けばいいんです。
――録画済みの動画を選ぶだけでなく、一緒に暮らしている感覚を生むために、どういったことを目指しましたか?
Pablo氏:十分な選択肢と映像の種類が必要だと思っています。たとえばボール投げでは、力が弱すぎてピチューが自分で遊び始める、弱めに投げられる、しっかり投げられる、強すぎて遊び場の外まで飛ぶ、という4種類の結果があります。多くの結果について複数テイクを撮りました。異なる映像が豊富にあることが、ピチューと暮らしている感覚につながります。

――予想外の行動で制作が変わったこともありますか?
Pablo氏:何度もあります! 大きな音の鳴るボールで遊ぶ場面を考えていましたが、ピチューはそのおもちゃが大嫌いで、近づけると顔を背けるんです。そこで予定を変え、ゲームでもそのおもちゃを嫌がるようにしました。犬がどんなおもちゃも好きなわけではない、という現実らしさが出ています。物を盗むいたずらの場面も元々は予定していませんでした。
ある散歩では、突然地面に寝転がって動かなくなりました。いつもカメラを持っているので撮影でき、その結果、ゲームでも日によって散歩を拒否することがあります。今思えば、ピチューは俳優だけでなくゲームデザイナーとしても私を助けてくれています。彼の行動から生まれた機能がたくさんあるんです。

『ペルソナ5』から着想を得た育成システム。ペナルティは一切なし
――愛情、幸福、服従、敏捷性、社交性、信頼の6つのパラメーターを採用したのはなぜでしょうか?
Pablo氏:基本的な発想は『ペルソナ5』を遊んでいたときに生まれました。あのゲームでは行動によって人との関係を深め、社会的なパラメーターを上げることで新しい行動を解放できますよね。それを、一匹の犬というたった一人の中心人物のために応用したかったんです。犬との暮らしにふさわしい要素を考えて、この6つにしました。
――「服従」と「幸福」は相反することもありそうです。正しいしつけを学ぶゲームなのでしょうか?
Pablo氏:いいえ。犬の世話やしつけの手引きではなく、ただリラックスして楽しんでもらうためのゲームです。ペナルティは一切ありません。いたずらを許しても「服従」は下がりませんし、拾ってきた物で遊ばせ続けても、次に取り返そうとするとき不利にはなりません。何をするかはプレイヤーの自由です。ただ、上昇するパラメーターが変わり、それによって解放される行動は異なります。
――効率を追い求めるプレイヤーと、のんびり過ごしたいプレイヤーの両方をどう考えていますか?
Pablo氏:最も重要なのはリラックスできる体験です。効率のいい行動はもちろんありますが、新しい発見を促したい。ゲームオーバーもネガティブなフィードバックもなく、能力値は下がらず、時間制限もありません。行動したときの最悪の結果は「何も上がらない」だけ。最適化する理由はほとんどないんです。私自身、ゲームでは何でも最適化したくなるタイプですが、同じような人にも息抜きとして楽しんでもらいたいですね。
――散歩で場所を発見したり、ほかの犬を「Nosebook」に記録したりできる理由は何でしょうか?
Pablo氏:犬同士の交流は犬の社会化に大事ですし、出会った犬へのピチューの反応を見るのは面白いものです。とても元気な犬もいますからね! 『nintendogs』と違って、本作で迎えるのは必ずゴールデンレトリバーなので、散歩では別の犬種も紹介したいと思いました。撮影を許可してくださったご近所の皆さんにも感謝しています。
新たな場所の発見はゲームプレイ上も重要で、解放できる要素が増え、同じ場所でも季節ごとに異なる映像を楽しめます。大都市で暮らす人が新鮮に感じられるような、ベルギーの素朴な田園風景も見せたい。私は田舎暮らしで、大型犬に理想的な環境だったことが撮影にも役立ちました。

家族の思い出として残すゲーム。そして日本のプレイヤーへ
――このゲームは、ピチューと過ごした時間の記録にもなっているのではないでしょうか?
Pablo氏:まさにそうです。発表する前は、こんなに変わったゲームに興味を持ってもらえるかわからず、仮に誰も興味を持たなくても、家族にとって素敵な思い出になると思っていました。今もピチューと過ごした時間を記録するつもりで作っています。
私が実際にゲームのコードを書き、そばでピチューが眠っている様子まで撮影して、仕事の場面に入れています。日常をそのまま使えるので少し楽をした面もありますが、プレイヤーがゲーム内で、今遊んでいるゲームそのもののコードを書くという入れ子構造も気に入っています。
いつかピチューが私たちのもとを去ったときには、このゲームは特別な意味を持つでしょう。ずっと先のことであってほしいですが。ピチューはまだ3歳ですから、これからの毎日を精いっぱい楽しみたいです。
――日本から大きな反響が届いています。どんな部分が響いたと思いますか?
Pablo氏:とてもうれしいです。私も家族も日本の文化や漫画、アニメが大好きで、犬の名前もポケモン由来。数年以内には初めて日本を訪れる予定です。何が響いたかは確信がありませんが、やはりかわいらしさでしょうか。
実写をかわいさの表現に使ったことが本作の革新的な部分だと思います。実写ゲームはホラー、探偵もの、大人向けで使われることが多いですが、こういう使い方はほかに知りません。何よりピチュー自身がかわいい! ゲームを好きになれない人はいるかもしれませんが、ピチューを嫌いになるのはほとんど不可能だと思います。
――最後に、日本のプレイヤーに注目してほしいピチューの魅力をひとつ教えてください。
Pablo氏:ピチューがただ自然体でいることです。指示に従ってカメラの前で特別な芸をする俳優犬ではなく、普通の犬なんです。ブラッシングやボール遊びが始まるとわかったときの喜びは、見ればすぐに本物だとわかるはず。その幸せがプレイヤーの皆さんにも伝わって、心を温められたらうれしいです。
――ありがとうございました!
『ゴールデンレトリバーと過ごす日々』は、PC(Steam)向けに2027年2月発売予定です。デモ版は現在無料で配信中です。








