
多くの日本人から「ロボゲー・ロボアニメ詳しすぎな外国人」として知られるようになった、サブカル記者のオリー・バーダー氏。海外フォーブス誌などだけでなく近年では機動戦士ガンダム公式でも記者として名前を見る氏は、『フォートナイト』や『Gears of War: Judgment』など様々なタイトルにかかわってきたゲームクリエイターでもあります。
そこで、本稿では、氏の文章を通じて、氏のもつ「ロボゲー・ロボアニメ」への視点や美学の一端をお伝えしていきたいと思います。
『機動戦士ガンダム ターゲット イン サイト』が発売された後、その後継作となる『機動戦士ガンダム戦記』の新作(以下、PS2版との区別のため、 副題の一部を含めて『機動戦士ガンダム戦記 U.C.0081』と表記)がPlayStation 3向けに発売されると知り、とても興奮したことを覚えています。それ以前のPlayStation 2版と同様に、『ガンダム戦記』シリーズならきっと楽しく遊べるゲームになるだろうと思っていましたし、その予想は間違っていませんでした。
今回の作品には、非常に優れたクリエイターたちも参加していました。キャラクターデザインは川元利浩氏が担当し、メカニックデザインはカトキハジメ氏が手がけ、RX-81やガンダム7号機といったさまざまなMSVの機体が新たにデザインされました。
また、ゲームにはアニメーションのカットシーンも収録され、イフリート・ナハトも登場することになっていました。私は『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』の三部作が大好きだったので、当然ながら、この機体の登場を素晴らしいことだと思いました。
ただ、一つだけ小さな問題がありました。それは『機動戦士ガンダム戦記 U.C.0081』が海外では発売されないということでした。
『機動戦士ガンダム ターゲット イン サイト』が残した影響

先週のコラムでも説明したように、『機動戦士ガンダム ターゲット イン サイト』は海外では『Gundam: Crossfire』というタイトルに変更され、非常に厳しい評価を受けました。
その結果、後継作は前作と比べてゲームプレイもグラフィックも大幅に改善されていたにもかかわらず、海外での発売が検討されることすらありませんでした。
具体的には、操作性がより滑らかになり、フレームレートもはるかに安定していました。さらに、アニメのキャラクターやカットシーンが追加されたことで、作品全体の完成度が高まり、ビジュアル面でも非常に印象的な仕上がりになっていました。
というのも、「機動戦士ガンダム0083」や、特に「カウボーイビバップ」のようなアニメは、アメリカなどで当時から非常に人気が高く、現在でもその人気は衰えていないからです。そのため、川元利浩氏が本作のキャラクターデザインを担当したことは、当時の多くのアニメファンにとって非常に大きな魅力でした。
しかし、この時期の海外ではガンダムのゲームに対する偏見が極めて強く、ソニー・インタラクティブエンタテインメントヨーロッパのような企業の内部でさえ、そうした偏見が根強く存在していました。
「ネット上の動画を見れば、これがひどいゲームだとすぐわかる」そう言い放った、とあるプロデューサー

その数年後、私は『Strike Suit Zero』の開発に携わっていました。当初はPlayStation 3向けのゲームとして開発していたため、開発キットを適切に使用するために必要なプロダクトコードを取得するべく、初期の承認プロセスを経る必要がありました。
そのため、ソニー・インタラクティブエンタテインメントヨーロッパのプロデューサーに提出するための、さまざまな資料やアートアセットをまとめた一式を用意しなければなりませんでした。
しかし、そのプロデューサーに資料を送り最初に返ってきたのは、「ロボットゲームは売れない」という言葉でした。さらに、日本で発売されたばかりの新しいガンダムのゲームが、その「証拠」だとまで言われました。
実はこの時点で、私はすでにその「日本で発売されたばかりの新しいガンダムのゲーム」であるところの『機動戦士ガンダム戦記 U.C.0081』をクリアしており、実際のゲームプレイを収録した動画を何本も自分のYouTubeチャンネルにアップロードしていました。
当然ながら、私は彼にそのゲームを実際にプレイしたことがあるのか尋ねました。すると彼は、かなり傲慢な態度で「プレイする必要などない。ネット上の動画を見れば、ひどいゲームでプレイする価値がないことは分かる」と答えました。
そして、そのゲームがいかにひどいものかを示す「証拠」として、YouTubeの動画を私に送ってきたのです。
ところが、何とも皮肉なことに、その動画は先ほど説明した、私自身がプレイしYouTubeチャンネルにアップロードしたものだったのです。
当然ながら、私はそのことを件のプロデューサーに説明し、自分が実際にそのゲームを徹底的にプレイしており、しかも非常に良いゲームだったことを強調しました。
最終的に、私の担当はロボットゲームが実際に好きな別のプロデューサーに引き継がれました。プロダクトコード自体もその後、無事に取得することができています。
当時はこのようなことが頻繁に起きていました。欧米においては、日本市場と関係が深い企業で働く人々の間でさえ、日本のゲームは出来が悪いものだと見なされることが多かったのです。
非常によく作られたゲーム
いずれにせよ、私はすでに本作を存分に楽しんでおり、モビルスーツの操作性が大幅に改善されたと感じていました。新たにアレンジされたMSVのデザインも素晴らしいものでした。
また、パーツをアンロックしてモビルスーツの性能を向上させることができる、非常によくできたカスタマイズシステムもありました。
とはいえ、ガンダムのゲームとしては、ビーム攻撃をチャージする仕組みに少し違和感を覚えました。しかし、十分にアップグレードを重ねれば、まったく問題にはなりませんでした。
一つだけ細かい点を挙げると、当時の私の日本語能力はかなり低かったので、単に私が何かを見落としていただけかもしれませんが、一部のミッションでは強化パーツを使用できませんでした。これは少し奇妙に感じましたし、ゲーム後半では多少やりづらくなる原因にもなりました。
それを除けば、フルアーマーガンダム7号機や重装フルアーマーガンダム7号機などを使用するゲーム終盤の数ステージは、本当に楽しかったです。何より、これらのモビルスーツはどれも非常に強力で、機動性にも優れていたからです。
新たにアレンジされたガンダム7号機やRX-81がROBOT魂として商品化されることを期待していたのですが、実際に発売されたのは一部のプラモデルだけでした。
またしても失われたチャンス
これまでにも優れたガンダムのゲームが海外で発売されなかったことがありましたが、『機動戦士ガンダム戦記 U.C.0081』も海外で発売されなかったため、アメリカなどでは「ガンダムのゲームはどれも出来が悪い」という認識が、ごく最近まで根強く残ることになりました。
私としては、本作は前作から大幅に進化した作品だったと強く感じています。また、著名なクリエイターが数多く参加し、アメリカのファンにもきっと喜ばれたであろうキャラクターデザインが採用されていました。
私にとって本作は、また一つの素晴らしいガンダムのゲームでした。隅々までプレイして楽しんだだけでなく、当時のゲーム開発の同僚たちにも見せて楽しんでいました。同僚たちも全員、とてもよくできたゲームだと評価していました。
このゲームを酷評していたあのプロデューサーがその後どうなったのかは知りませんし、正直なところ、今では名前すら覚えていません。ただ、おそらく今もゲーム業界のどこか別の場所で、当時よりもはるかに存在感が大きくなった「日本的なもの」に不満を抱えながら過ごしているのではないかと思います。
なお、オリー氏はロボゲーを作るためのスタジオないし協力者を探しているそう。オリー氏とともに「ロボゲー」を作ることに興味のあるスタジオや団体は、この記事の末尾にある氏のプロフィールから個別に問い合わせていただけますと幸いです。







