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【特集】Valve担当者を取材―Steamはどう進化し、この先どこへ向かっていくのか

Steamは一体にどのような成長を遂げたのでしょうか?今回は、E3 2017にあわせて、ロサンゼルスに滞在中だったVavle、Steam担当のRicky Uy氏、並びにBusiness DevelopmentのDJ Powers氏を直撃。お話を伺いました。

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■世界最大規模のPC用ゲーム配信プラットフォームに

――このように成長と発展が続いているSteamですが、10年以上前のSteamサービス立ち上げ当初は、動作が重いといった経験もありました……。

Uy氏: ……それは我々の責任だね。とにかくバグを潰していきました。

Powers氏: 特定パーツとの互換性問題があったとしても、結局はバグを潰していく必要がありました。だから常に主要企業とコミュニケーションをとり、問題が起こらないよう気を付けています。また、NvidiaといったGPUメーカーをはじめ、様々な企業から技術マップを出してもらったり、事前にサンプルをもらったりして新技術に対応するための情報を早くから入手するようにしています。またValveからもリリース予定のサービスを共有してきました。

――そのような努力もあり、ロシアをはじめとした、コンソール機が販売されていない国々にとって、Steamが最も重要なゲームプラットフォームとなっていますよね。

Uy氏: これらの地域に対しては、現地貨幣を電子決済で使用できるようにするのに加え、サーバーパフォーマンスの向上、現地経済にマッチした価格での提供、ゲームのローカライズなどあらゆる手を尽くしています。

Powers氏: これはあらゆる国に言えることがですが、可能な限りのたくさんの作品を彼らが望むタイミングで、且つ彼らの望む価格帯で提供さえすれば顧客は必ず喜んでくれます。逆にこの要素のうちのひとつでも欠ければ顧客は満足しないでしょう。

Uy氏: カスタマーサポートも同様で、現地の言葉で対応できるスタッフを準備しています。

――週末セールなど、それまでになかった取組もすすめましたよね。

Powers氏: 特別セールやディスカウントセールは、導入してから随分時間がたっています。これも最初は、ゲームを割り引いたらどんな影響があるかを見てみたかったという軽い動機から始まったものです。期間を短くしたら、または長くしたら、大きなイベントにあわせてプロモーションをしたらなど、いろいろ試しています。つまり、Steamそのものを新しい販売形態を実践するための実験場みたいに扱っているっていうことになります。まだ明確な答えはでていませんが、パブリッシャーやデベロッパーのゲーム販売に対する意識に変化をもたらしたのは確かだと思います。単に開発が終わって派手に初動を動かし、2か月後にはもう1本も売れないという従来の販売形態を崩壊させたのです。作品の質さえよければ、5年前のものでも10年前のものでもしっかりと売れるという形態。新しい顧客も大規模ディスカウントセールスイベントで参加し、これらの優れた作品を「発見」することだってあります。 だから、ゲームをはじめたばかりの人たちには面白いゲームを見つけるチャンスをあたえ、デベロッパーにとっては収益を増やすチャンスを与えているのです。

Uy氏: サマーセールとか大規模なセールスのときは、デベロッパーのほうで、それらにあわせた遊び心ある特別フィーチャーを準備することもあります。だから、ゲームを買わない人たちにも何らかの楽しみを提供していて、サービスの付加価値を高めていると考えています。

――レコメンド機能も優れたものになっていますね。

Uy氏: 最近導入したDiscovery Updateというフィーチャーは、顧客の志向にあわせて、ストアの表示内容がパーソナライズされる機能です。例えば、過去の購買傾向からフレンドのプレイ傾向、プレイヤーがフォローしているキュレーター、ユーザーレビュー、現行の人気タイトルと、様々な要因を統合化するアルゴリズムを用いて、レコメンドするようになっている。したがって、ストアのフロントページにリストされるゲームは顧客ごとにまったく違ったものになるのです。理想的に各自の趣向と合致したものが表示されているはずですよ。

Powers氏: いろいろなデータを吸収して、顧客にとってもっとも重要な情報を正しい形で提供するようにデザインされています。ただ我々としてはまだまだだと思っているので、もっと改善していきたいです。

Uy氏: 事実、先週おこなったアップデートで、アルゴリズムの明文化を進めました。たとえば、ストアのフロントページに何らかの作品が表示されているとき、それがどんな経緯で表示されるようになったかも分かるようになったのです。

筆者のアカウントでのストアにてレコメンドされた『Downwell』
その根拠となった以前のゲームプレイ経験について言及がされている

■Steamが進化する先に行き着くのは常により強力なゲームコミュニティを生み出すこと

――では、Steamの今後について教えてください。まずはVR関連の展開から。

Uy氏: 現在、Steamworks VR APIをデベロッパーに提供していて、HTC ViveはそのAPIと互換性がある最初のHMDでした。でも現在、Oculusにも対応しているのに加え、先日発表されたLGによるHMDもSteamへの対応を前提にしている。AppleコンピュータもSteamに既に対応しているし、これらに合わせてSteamのインターフェイスもいっそうVRコンテンツに対応するように変えていく予定です。

Powers氏: これからもデベロッパーにとって有益なツールを開発していきます。これはソフトを提供する会社の場合も、HMDのようなハードを開発する会社にとっても同様。前回発表したTracking 2.0を実践することでプレイフィールドの拡大も可能になり、コンテンツもより優れたものになっていくでしょう。VRは時間がかかるもののさらに普及していくはず。我々Valveと同じように、E3に来ているたくさんのデベロッパーもそれに向けて努力していますね。

――VR用インターフェイスの点ではどうでしょう?

Powers氏: ソフト面では、Steam VR Homeを先日発表したばかりです。これまでHMDを装着すると、単にグレイ色の空間しか見えませんでしたが、今回のアップデートで欧米風住宅の屋内のような空間がスタートアップ画面として現れるようになりました。ソーシャル機能も追加されていたり、バーチャルアイテムでその空間のカスタマイズもできたりします。まさに自分の家、Homeという感じ。そこが今後のVR世界へのエントリーポイントになるのです。同時に誰かが特定の空間素材をアップロードしていれば、それを利用して空間のカスタマイズも出来、まさにプレイヤー独自のHomeを創り上げることができるのです。

――Valveのプラットフォームでまだ展開していないのがモバイル空間なのですが、そちらについてはいかがでしょうか?

Powers氏: 常に頭の中にあります。Valveのカルチャーは、プロジェクトにおいて何らかの気運がないと本格的に進めないことがありますが、まだその気運があるようには感じられないということです。その瞬間が来たとき、確実にやるでしょうね。

――では、Steamの将来を語るうえで何が一番重要なのか何か教えてもらえますか?

Uy氏: コミュニティを創り上げることです! Steamでリリースされたすべてのゲームから、ストアページに表示されるゲームタイトルまで、コミュニティのハブをつくることを意識してデザインされてきました。友達とファンアートやゲーム内スクリーンショットを共有したり、一緒にプレイしたり。さきほど紹介したVR Homeというスタートアップ時の空間デザインも、コミュニティを意識してデザインしたものです。Steam Workshopや、課金体系、並びに互いにフィードバックをあたえられるシステムまで、その全てがコミュニティを中心にしてはじめて成り立っています。Steam Directも、より多くのインディースタジオが自らの才能を世に示すために作られました。コミュニティこそがSteamの未来そのものなのです。

――分かりました。Uyさん、Powersさん、本日はありがとうございました。

※本文の内容を一部修正しました。
《中村彰憲》
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