Game*Sparkレビュー:『Detroit: Become Human』【年末年始特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー:『Detroit: Become Human』【年末年始特集】

今年からオリジナルレビューを開始したGame*Sparkでは「2018年の話題作」を振り返りながら、複数本のゲームレビューを年末限定の集中連載記事として掲載します。第1本目は、『Detroit: Become Human』です。

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Game*Sparkレビュー:『Detroit: Become Human』【年末年始特集】
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ゲーム業界も大賑わいとなった2018年。皆さんはこの年に、何本のAAAゲームや注目のインディー作品などをプレイしてきたでしょうか。今年からオリジナルレビューを掲載し始めたGame*Sparkでは、「2018年の話題作」を振り返るゲームレビューを集中連載として年末までお届けします。第1本目は、PS4向けアドベンチャー『Detroit: Become Human』です。



愉快なロボットたちが右往左往している様を眺めていたいのなら、『Detroit:Become Human』はうってつけです。特にプレイ開始して最初の数時間は、とても面白く新鮮で、まるで魔法のような体験をすることができました。不気味の谷を超えたリアルなキャラクターの表情による感情表現や、ディテールの細かい凝った世界観、先の気になるストーリー展開やマップの作り込みなどに誰もが熱中するでしょう。

R2と△ボタンを押しながら右スティックを倒す、というような不思議な操作感も、Quantic Dreamの過去作の実験の成果なのか、ほとんど違和感を覚えることがありません。筆者も初回プレイでは細かいことはあまり気にせず、物語の先を早く見たい!と、コントローラーを持つ手に汗が滲むほどにのめり込みました。

「ロボットは人間なのか」…シリアスなテーマは徐々に薄味に



体験版でも用いられた最初の「人質交渉」のシークエンスはやはり出色の出来で、このゲームのほぼすべての要素が詰まっています。このシークエンスでは「アンドロイドは差別されている」という物語根幹のテーマをさらっと説明しつつも、時間制限付きのシチュエーションによって緊張感とジレンマのある選択が連続し、プレイヤーの行動でダイナミックに結末が変化します。結論めいたことを先に言うと「ジレンマのある選択」こそが、このゲームの根幹であるいっても過言ではないでしょう。

殺すのか、逃げるのか。騙すのか、正直に話すのか。様々なジレンマが生み出す物語のバリエーションはかなり多様なので潜在的なリプレイ性は(こういったゲームでは珍しいほどに)高くなっています。

「人間の魂のこもった音楽が、なんと1ドルで!」

「ロボットは人間なのか」というテーマはSFでは古典的なもので、人によっては「使い古されている」と感じる場合もあるかもしれません。『Detroit』で語られる物語は(少々のツイストはありますが)プレイヤーの予想を大きく超えた展開にはならないので、後半になるにつれて、最初に感じた魔術的な感動は薄れていってしまいます。

弁護するわけではないのですが、このような「王道」なテーマは、私たちの住む世界に置き換えてもかなりホットであったと言えますし、こんにち語り直す意味は大いにあるでしょう(もちろん我々日本人にとっても他人事ではないように思えます)。作中に登場する「反アンドロイド団体」の訴えの主軸が「雇用機会」になっているのは、欧州での移民排斥デモを想起させました(Quantic Dreamはパリのデベロッパーです)。

カーラ編の「移民や被差別者的な属性をもったキャラクター2人が、擬似親子関係を築きながらも、アメリカから逃れカナダを目指す」という物語は、「ローガン」という映画でも見られたストーリーラインでした。「ローガン」と同じように、本作もある程度時代の空気を反映していた作品ということなのでしょう。

とはいえ、最終的にはそういった重めの現代っぽいテーマはどんどん薄まっていったので、あくまで「エッセンス」なんでしょうね。食い足りなさを感じましたが、『Detroit』はご立派なテーマを上から目線で説教をしてくる……といった「偉そう」な作品ではないですし、その「軽さ」や「エンターテインメント性」もこのゲームの大いなる魅力でしょう。

「実況プレイ」にもマッチするソーシャル的要素



魅力といえば、このゲームのソーシャル性ということにも言及したいところです。本作は完全にシングルプレイのゲームですが、全世界の選択を参照できたりなど独特なソーシャル性を持っています。また、筆者の友人間などで「ゲーム実況動画を見て『Detroit』に興味をもった」ような人たちが、後追い的に本作を購入するようなケースが散見されたのですが、それは本作が、「自分だったらこうしたい」「こうした場合を見てみたい」というような興味を非常にそそられる性質を持っているからでしょう。

筆者はそのころからバーチャルYouTuberに激ハマりしていたのですが、彼ら/彼女らもこぞって本作をプレイしていました。個人的な分析なのですが、本作はすこし性格診断テスト的なところがあり、ゲームプレイを通してプレイヤー自身のキャラクター性が立つので、とても実況動画や配信に向いているんですよね。また、友達や家族と一緒にとワイワイプレイする……というスタイルにも案外適しているんじゃないでしょうか。

『Detroit』は古典的なシングルプレイアドベンチャーのようにも見えますが、その反面、現代的なソーシャル性を潜在的に持ち合わせていたのだと思います。一度自分でクリアした後で「他の人の実況動画を見る」というはかなりオススメな楽しみ方ですので、ゲーム実況にアレルギーのない人はぜひ試してもらいたいです。

時間いっぱいまで散策したくなる世界観


アンドロイドは手書きのメッセージもフォントとしてアウトプットされる場合がある

このゲームを語る上で筆者的に欠かせないのが、気の利いた小道具や舞台設定など細かく書き込まれた世界観です。マーカス編の最初に登場する「未来の画材屋さん」は見ているだけでかなりテンションが上がりましたし、街中に貼ってある映画のポスターまで細かく作り込んであります。筆者もプレイ中「シナリオの進行を無視して都市のディティールを楽しみたい」という願望に襲われることが何回もありました。

残念ながらこのゲームではほとんどの場面において何らかの理由で急かされているので、あまり悠長にぶらぶらしてはいられないんですけどね。あと、これは本当にわがままでしかないですが、「これくらい詳細度の高いSF的なマップで、オープンワールドのゲームとして自由に遊べたら最高なのになあ」と思いました。我々ゲーマーとしてはアンドロイドよりもむしろそっちの技術がどんどん進歩していってほしいものですね!

「それはアリなの?」と思ってしまうシナリオ展開



こういうマルチシナリオのゲームではある程度仕方がないことだと思いますが、特に後半、首をひねるような展開が多くありました。前述の通り、物語の後半にはある「ちょっとしたどんでん返し」が仕掛けられているのですが、筆者としては「え、それがそうだったら、今までの話全部おかしいことにならない!?」と、いろいろなことを考え込まされてしまいました。アンドロイドと人間を区別する「こめかみのリング」をアンドロイドが自発的に外せるというのも良くないと思いますし、リングを外せば最後、基本的にはアンドロイドであることがバレないというのもおかしいのです。

これは重箱の隅をつつくような話、かつゲームの根幹に関わってきてしまうことなのですが、本作のアンドロイドは人間を殺そうとすればいとも簡単に殺せてしまい、そんな危ないものをあんな規模で実用化しないのでは……と、どうしても感じてしまいます。あまり古臭いことは言いたくないですが、「ロボット三原則」は偉大なんだなあと再発見しました。


アンドロイドが葛藤を乗り越えるときに「壁」のようなものを破壊する描写があり、あの「壁」がロボット三原則的なものを表現しているんだと思われますが、詳しくは説明されません。というか、いつエラーを起こして暴走するかもわからないんだから、少なくとも所持者は遠隔からアンドロイドを強制的にシャットダウンする方法を持ってなければならないのでは、と思います(もしかしたら、そういう設定もコレクタブルアイテムの「雑誌」の中などにあったりするんでしょうか……)。

本作において、アンドロイドが人種差別や移民差別のようなものを象徴しているということは重々承知しているのですが、それにしても本作のアンドロイドは単に奴隷労働をさせるためにしては不必要に人間らしく作られすぎており、というか、プレイしているわたしたちはおそらく全員人間なので、「アンドロイドを人間と認められるのかどうか」というテーマはなんとなくボヤっとしてしまったように感じられます。

ゲームプレイ自体も、「再プレイが快適でない」など多くの問題があるように思いました。フローチャートがあるので過去作よりは改善されているとは言えるのですが、どのみち一度見た長々としたくだり(しかも分岐が存在しない)を再度見るのは苦痛ですし、技術的に実現可能かどうかはともかく、早送り機能などが実装されていたらもっといろいろすぐにやり直せたのにな、とも感じました。とは言え、潜在的なリプレイ性はかなり高いはずです。

総評



『Detroit』は、2018年における「アドベンチャーゲーム」のカタチをよく知ることができる作品です。まるで魔法のように面白いゲームでしたが、魔法はいつか解けてしまいます。『Detroit』は、魔法が解けるまでの時間がかなり短いゲームでした。最初の10時間ほどは無類に楽しいのですが、そこを超えると、プツリと情熱が途切れてしまいます。現代アドベンチャーゲームの可能性と限界を同時に示したような、興味深い一作であると感じました。

どんなゲームでも長くプレイしているうちに飽きてしまったり、ディテールが気になってきたり、ストレスを感じるようになってきますが、それでも「初回プレイ」が抜群に面白ければ、個人的にはアリと考えます。(どんなに優れた映画だって何回も連続して観たら退屈になるでしょう?例外はもちろんありますが)。ちなみに、本作の初回プレイは個人的に動画として残していました。初プレイのときに感じたことを言葉に残しておくというのは、筆者がゲームレビューをする上でとても重要な試みとなりました。


また、これを期にアンドロイドもののSFに興味を持たれた方がおられましたら、アイザック・アシモフの「鋼鉄都市」を強く推薦します。「鋼鉄都市」はロボット嫌いの刑事とエリートロボットの凸凹コンビによるミステリー小説で、おそらくコナー編の元ネタでしょう。筆者としても『Detroit』全体で最もお気に入りだったのがコナー編で、「コナーだけで一本のゲームを遊びたい」とも思いました。アドベンチャーとミステリーの相性が良いことは歴史が証明していますしね。

総評: ★★☆

良い点
・美麗なグラフィック、人物の表現
・初回プレイ時の楽しさ
・世界観やマップの作り込み


悪い点
・シナリオ上の諸問題
・周回プレイの面倒臭さ
・楽しい時間が短い




「Game*Sparkレビュー」では、読者の皆さまのゲームの感想も募集しています。下記リンクにて質問にお答えください。回答期間は2018年12月29日から2019年1月5日まで。また、集計終了後には「Game*Spark読者レビュー」として記事を公開し、回答やコメントを取り上げる場合があります。

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