気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Simon Boxer氏とTwice Different開発、PC/Mac/ニンテンドースイッチ向けに10月16日正式リリースされたローグライトダンジョンクロウラー『Ring of Pain』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、カードを選択してダンジョンの最深部へと進んでいくローグライトダンジョンクロウラー。ランダム生成されるリング型のダンジョンが舞台。冗長な行動は極限まで取り払われ、シンプルながらもプレイヤーの各選択がとても重要になってきます。日本語にも対応済み。
『Ring of Pain』は、2,050円(10月23日までは10%オフの1,845円)でSteam/ニンテンドースイッチにて配信中。
――まずは自己紹介をお願いします。
Simon Boxer氏(以下Boxer氏)こんにちは。インタビューをしていただきありがとうございます。Simon Boxerです。本作のクリエイティブ・ディレクターを努めており、メルボルンでTwice Differentというインディースタジオを運営しています。コンセプト・アーティストとしてゲームのキャリアをスタートさせ、12年以上ゲームアーティストとして活動し、次第になんでも自分でやる様になっていきました。本作では、デザイン、ライティング、アートを担当しています。
――本作の開発はいつどの様にして始まったのでしょうか?
Boxer氏本作は元々、私個人のプロジェクトとして始まりました。規模も当初はかなり小さく、限定的なものでした。私はローグライクとダンジョンクロウラーという2つのジャンルにイノベーションを起こしたいと思い、イノベーションは主にシンプル化することで成し遂げることができると思っていたのです。ダンジョンクロウラーでは何もない通路をただひたすら歩く必要があったりしますので、それがなかったらどんなゲームになるだろうかと考えました。もし無駄な動きが必要なく、即座にエンカウントしたらどうなるだろう?と思ったので、私はすべての行動に意味を持たせることとし、プレイヤーにはすべての情報を渡すことで、プレイヤーは戦術的な部分に集中することができるようにしました。とはいえ、プレイヤーには計算してもらうようなことはないようにしました!手軽にプレイできるゲームにしたかったので、本作は「計算不要ストラテジー」と呼びたいと思います。だからと言って、本作が簡単という意味ではありません!本作のタイトルに「Pain(痛み)」という言葉が入っているのにも、もちろん意味はあるのです!
何はともあれ、このカードゲーム/ローグライク/ダンジョンクロウラーのハイブリッドゲームは、まずプロトタイプから始まりました。それからFilm Victoria(オーストラリア政府による支援金)を少し得て、プログラマーのThomas IngramとサウンドデザイナーのDamion Sheppard、そして作曲家のBelinda Coomesを雇いました。それからデモ版を作り、昨年のgamescomでは本作を披露することができました。そこでHumble Gamesからスカウトされ、契約することとなったのです。それからまた3人新たに雇用し、今に至ります!
――本作の特徴を教えてください。
Boxer氏私は本作を可能な限り多くの面でユニークなものにしたいと思いました。本作のビジュアルは、様々なイラストレーション、コンセプトアート、写真、さらには医療用画像なんかからもインスパイアされています。ビジュアルにおいて最も大きな影響を受けたのは、アファンタジアです。これは頭の中でイメージを視覚化できないという状態です。頭の中で何かをイメージしようとする時、あなたはそれをはっきりと「見る」ことができますか?頭の中でイメージをどれだけクリアに描けるかは、個人差があります。そして、私は何かを思い描こうとしても、まったくはっきりとしないのです。私は自分が頭の中で見えているものを描くアートスタイルを、本作において採用しようと思いました。とても大雑把で、ディテールはあったりなかったりし、眩しい色がアクセントとして使われています。この様にして、本作のアートスタイルが作り上げられていったのです。
ゲームデザイン面では、すでに述べた様に、私は複雑な部分をシンプルにすることで、プレイヤーにユニークな体験をしてもらいたいと思いました。各カードがエンカウントとなり、各アクションがはっきりとした影響を与えます。ある意味、パズルの様なものになったのではないかと思っています。カードはリングの様に並んでいるので、プレイヤーはすべて見ることができます。ゲームの流れとしてはアクションパズルの様な感じです。生きているダンジョンの中で、どの様に動き、どの様に戦うか、という戦術が重要になってくるのです。
また、本作では他のローグライクとは異なり、デイリーダンジョンモードがあります。日によって条件が異なるので、プレイヤーにはいつもとは異なるプレイが要求されます。このデイリーダンジョンでは、よりパズル的な攻略が求められ、このモードは今後も改良と拡張を続けていく予定です。
他に本作の特徴的な点は、物語です。ゲームというのは、システム以外にもしっかりとしたストーリーがあることで、より面白くなると思っています。ですので、本作では小規模の新鮮なストーリーを採用しました。本作のメインキャラクターとなるフクロウと影が、ミステリアスな物語を届けます。私たちはストーリーというものが好きなプレイヤーに楽しんでもらいたいと思いながらも、ただダンジョンクロウラーを遊びたい人たちには邪魔にならない様に配慮しましたので、ストーリーは最低限ですし、プレイヤーから話しかけた時にしか語られません。
――本作が影響を受けた作品はありますか?
Boxer氏本作はたくさんのものから影響を受けています。小さなインディーゲームで『I Am Overburdened』というものがあるのですが、本作のインベントリシステムはこの作品から影響を受けています。このインベントリではいるものといらないものをシンプルに選択でき、そのシンプルさがとても気に入りました。開発当初はほとんど同じインベントリだったのですが、後にアクティブアイテムスロットなどの追加を行いました。スペルブックやスクロールを入れることができ、きついシチュエーションからの脱却に役立つでしょう。
他に有名なゲームで影響を受けたものですと、
『Binding of Isaac』:ステージ進行
『DARK SOULS』:生々しくダークな世界観とミステリアスなストーリー
『Dead Cells』:ストーリーとの関わり方(読みたくなけれな読まなくてもいいという点)
『Slay the Spire』:プレイヤーへの情報の伝え方
他にもたくさんあります!見るもの、触れるものすべてが何かを作るときに影響を与えるのではないでしょうか。
――新型コロナウイルスによる開発への影響はありましたか?
Boxer氏残念ながら、ありました。特にメルボルンはひどく、3月からほとんどロックダウンしています。3月の中旬からはオフィスを離れ、自宅から作業をしています。幸いにも私たちは小さなチームなので、コミュニケーショントラブルというものは起きていません。しかしチームのみんなとランチを食べたり、休憩時間に雑談したりできないのがとても寂しいです!また、外部の会社とのやりとりには遅れが生じており、結果として本作のリリースも遅れてしまいました。とはいえ、本作も無事リリースできましたし、プレイヤーの皆さんには楽しんでいただけているので嬉しいです!
――本作の配信や収益化はしても大丈夫でしょうか?
Boxer氏どなたでも配信していただいて結構です!収益化も問題ありません!私たちのゲームを世界中に紹介していただいているコンテンツクリエイターの皆さんには、大変感謝しております。Twitch向けには、視聴者がクリーチャーの絵を描いたり、アイテム選択の投票をしたりといった機能を開発中です。詳細はこちら(英語)をご確認ください。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Boxer氏このインタビューを読んでくださった日本の皆様、そして本作を遊んでくださった日本の皆様、ありがとうございます!皆様からのサポートには大変感謝しておりますし、ご支援があるからこそ、本作のコンテンツはこれからも増え、規模もより大きくなり、本作はより面白くなっていきます!本作について周りの人に共有していただいたり、レビューを書いていただけることで、私たちの開発モチベーションも上がります。まだまだたくさんのアイデアがありますので、今後もご期待ください!
――ありがとうございました。
◆「注目インディーミニ問答」について
本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に300を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。
※ UPDATE(2020/10/19 11:52):対応ハードを追記しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございます。
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