最新ゲームが毎日大量にリリースされる昨今。メーカーやストアのゲーム紹介だけでは「どんなゲームかわからない!」とお嘆きのGame*Spark読者も多いのではないでしょうか。そこで“なるべく早く”ゲームの生の内容をお届けするのが本企画「爆速プレイレポ」となります。
今回は2021年1月27日にAssemble EntertainmentよりSteam向けに配信された新作アドベンチャーゲーム『ENCODYA』について、生の内容をお届けしたいと思います。
『ENCODYA』とは
『ENCODYA』は、もともと映像監督のNicola Piovesan氏と映画製作会社Chaosmonger Studioによる、クラウドファンディングプロジェクト『Robot Will Protect You』からスタートしました。開発は同作のクラウドファンディングのストレッチゴールである、19,000€(約230万)の出資を達成したことでスタートし、先日の1月27日にリリースが実現。そういった意味ではクラウドファンディングの理想的な一例と言えそうです。
そんな『ENCODYA』を一言で表すとすれば「サイバーパンクでバンドデシネなポイント&クリック型アドベンチャーゲーム」といった感じです。バンドデシネとはフランス・ベルギーなどを中心とした地域の漫画のこと。独特の色彩と線画で漫画と絵画の中間としての立場を確立しており、アニメやデジタルコミックなど様々な分野に進出しています。本作ではこのバンドデシネのような質感で世界が表現されています。
本作に登場する人物は多く、Steamストアページによれば34人以上が登場するようですが、主人公かつ操作キャラクターは以下の1人と1体です。
1人は9歳の孤児であるティナ。両親と死別しながらも、2062年の荒廃したネオベルリンをストリートチルドレンとしてごみを拾い廃品を回収しながら、たくましくかつ明るく生活しています。声優はLizzie Freeman氏が担当しています。
もう1体は護衛ロボットのSAM-53。この世界では子供の誕生とともにロボットが与えられるようで、彼はそうしたロボットの内の1体です。声優はゲームやアニメ作品で500人以上のキャラクターの声を担当してきたRichard Epcar氏。英語版「攻殻機動隊」のバトーや『モータルコンバット』のライデンなどを担当しています。
この1人と1体を任意に切り替えながら物語を読み進めていくのが、本作の基本的な構成となります。
『ENCODYA』の実内容に迫る!
ニューゲームの際は難易度の選択が可能。EASYを選んだ場合はパズルでティナかSAM-53がヒントを言ってくれる他、スペースを押せばアイテムをハイライトしてくれるので、物語を楽しみたいプレイヤーにとっても優しい設計です。なので今回はEASYでプレイしていきます。
物語を開始すると、漫画のコマ割りと映像を掛け合わせた世界観の説明が始まりました。本作ではチャプター間にこのような映像が挟まる場合があります。早速「サイバーパンクなバンドデシネ」の世界観に浸るとしましょう。
さて、物語はストーリーpart1、ネオベルリンのとあるビルの屋上から始まります。この屋上はティナが隠れ家にしているのです。
ゲームは基本的にティナかSAM-53のどちらかを選択しながら、画面内のオブジェクトやバッグ内のアイテムをクリックして進行させていきます。本作はポイント&クリック型アドベンチャーゲームですので、気になった小物やジャンクはクリックして使用したり拾ったりできます。どんどんクリックしてみましょう。
もちろん、様々な人物に話しかければ世界に関する知識やアイテムを手に入れられます。登場するのは個性的で興味深い人物ばかりなので、手当たり次第に話しかけていきましょう。
登場人物の中にはティナとだけしか話せない人や、逆にSAM-53とのみ話せる人が存在します。
例えば浮浪ロボと話したい場合、ティナでは「0110011……」という二進数で表示されてしまい理解できない言語も……
このようにSAMならば意思疎通ができます。逆に人間と話すことに関してSAM-53は少し不得手なようです。
他にも拾ったペンチでワイヤーを切り、日本料理店でもらった魚を怒ったロボット猫にあげて立ち退いてもらう、なんてことも。このように、本作では会話やアイテム、さらにアイテムとアイテムの組み合わせを用いて物語を進めていきます。中には意外な物が組み合わさることも……。頭を柔軟にして楽しみましょう!
ゲーム冒頭のストーリーpart1では、SAM-53のオイルを見つけたり食事にありついたり、といったミッションの達成を目指していきます。ミッションはいつでも確認できますが、直接的ではない方法で達成することも多く、少し難しい印象です。目立つ箇所はクリックして、積極的に会話してみましょう。
悩みつつミッションをすべて達成し、ビル屋上の隠れ家に戻ってみると警察が押し入った後でした。
やっとの思いで隠れ家を片付けたその夜、彼女は父親がとある重要な「コード」を自身に託していることを知ります。そして夜明けとともに、そのコードをめぐって物語が動き出していきます。
といったところでストーリーpart1は終了。もちろん記事では書いていない登場人物も多く、会話量に加え謎解きに挑んでいる時間も加味すると、思ったよりもボリュームがあります。ゲームのプレイ時間に個人差はあると思いますが、筆者はpart1の完了までに2時間30分ほどかかりました。
本作の魅力はなんと言ってもそのビジュアル。バンドデシネ的な質感と3Dゲーム的なライティング表現やエフェクトにより、独特の雰囲気が作りあげられています。トレイラーを観て本作のビジュアルを気に入ったならば買って損は無いはずです。ゲーム中に見つけられるボーナス要素として、本作を作るにあたってのインスパイア元などが閲覧できるのも嬉しい点です。
もっとも、ベルリンというサイバーパンクの舞台としては珍しい都市をロケーションである点は興味深いものの、そのビジュアルはありきたりなアジア的雰囲気やネオンが多く、世界観そのもののオリジナリティーは薄いと感じるかもしれません。
ゲーム性としては一般的なポイント&クリック型アドベンチャーゲームとして手堅くまとまっており、ポイント&クリック型ゲームの初心者にも分かりやすいようにメインメニューから確認できるチュートリアルもあり親切です。
主人公たちの歩く速度がゆったりとしている点(ダブルクリックで多少は速くなる)やロードを挟む回数が多い点が少し気になるものの、全体的に優等生的な仕上がりと言えそうです。
非英語話者の視点からすると作中の会話の多さに比例して多くなった英文量が負担になりますが、主人公が子供のためか比較的単純な会話文が多く、筆者の貧弱な英語能力(英検準2級)でも辞書があれば何とか読み進められました。
一方でポイント&クリック型という「気づき」を基幹にしたゲームなため、一度謎解きに躓くとドツボにはまることも多かったです。これは、英文を読んだだけでは直感で答えにたどり着くといったことが難しかったというのも影響しているとは思いますが、なかなか苦戦させられました。
しかし現時点では日本語をサポートしていないものの、公式ツイッターによれば最初のパッチで日本語化が実装されるとのこと。こうした言語に関する問題も近い内に解決する見込みなので、実装されれば日本人としては安心してプレイできそうです。
Yes! Japanese is coming with our first patch
— ENCODYA (@encodya) January 25, 2021
価格は2,699円と少々割高なものの、2月3日まではスペシャルプロモーションが開催されており20%オフの2,159円で購入できます。日本語化されたらいち早く遊びたいという方や前もって触っておきたいという方は、この機会にチェックしてみてもよいでしょう。
対応機種:PC(Steam)
記事におけるプレイ機種:PC(Windows)
発売日:2021年01月27日
記事執筆時の著者プレイ時間:3時間
価格:通常価格:2,699円