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アフター『サイバーパンク2077』のゲーミング読書――プレイ後の思索を深める本や映画を紹介

サイバーパンクの世界にもっと浸かりたい人のために、次に読むべき本を紹介します。

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アフター『サイバーパンク2077』のゲーミング読書――プレイ後の思索を深める本や映画を紹介
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テクノロジーから経済格差、人間の本質、スピリチュアルの領域まで様々な示唆に富んだ『サイバーパンク2077』。「興味ないね」と黙々と傭兵に徹するのもいいですが、バッドランドに山積みになった廃棄物や、死体の山の上を悠々と通り過ぎるトラウマチーム、待ちに蔓延る下賤な広告など、ナイトシティ目にした光景から何かを感じたプレイヤーも多いと思います。

Relicが実現したらどうなるだろう。企業の支配とはどういうことだろう。そんな『サイバーパンク2077』の世界をもっと深く知りたいプレイヤーのために、文字通り「履修」しておきたい本と映画をセレクトしました。社会主義から資本主義へ移行したポーランドの事情など、バックグラウンドを読んだ上でプレイするとまた新たな発見があるかもしれませんよ。

冲方丁「マルドゥック・スクランブル」シリーズ――サイバーパンク入門に最適!

ナイトシティを隅々まで歩き尽くしたら、次はマルドゥック市に行ってみませんか? 2003年にスタートしたこのシリーズは、ギブスンなど古典の雰囲気をベースにしつつ、冲方丁らしい最新のエンタメとしてスピード感のある読み応えです。

事件に巻き込まれてサイボーグ化したされた少女ルーン=バロットと、彼女を守るネズミ型万能兵器ウフコック、二人の熾烈な戦いを描くハードボイルドアクションですが、なんと言っても彼らのやりとりが素晴らしい。ネズミが喋るだけでも満点なのですが、ウフコックはボディガードの任を果たすため、置かれた状況に戸惑うルーンにとても親身になってくれます。今すぐ黙らせたいロッカーボーイナンバー1のアレとは大違いですね。

2010年にはアニメ化されていて、こちらはなんとR-18指定の徹底ぶり。PC版の刺激に慣れた人なら観る価値ありです。

100分de名著「資本論」「ディスタンクシオン」――格差はなぜ拡大するのか

100分de名著 カール・マルクス『資本論』 2021年1月 | NHK出版

主人公Vに取り憑いたジョニーがことあるごとに「企業による搾取」について語ってきますが、これについて具体的に考察したのがかの有名な世紀の大著、マルクス「資本論」です。産業革命によって社会が混乱に陥った時代に書かれ、資本家が労働者を使役するときにどのようなメカニズムが働くかを明らかにしました。ここ最近では、現在起きている問題から改めて見直す動きも出てきています。

「資本論」自体はあまりにも膨大な分量なので、おすすめなのがNHK「100分de名著」で1月に取り上げたときのテキストです。水道や図書館の民営化、ブラック企業、過労死など身近な話題を切り口から資本主義の原理を読み解いていきます。晩年のマルクスはエコロジーを踏まえて論考を続けており、第4回ではその観点から「コモン」の意味について解釈しました。

昨年の12月はブルデュー「ディスタンクシオン」を取り上げていて、こちらは経済でなく「文化」によって人々の格差が固定化されるという論考です。人間は階級によってアクセスできる文化の範囲が決まっていて、それが階級ごとの慣習や考えを形成するというものです。こちらも併せて参考にしてください。

ウィル・バッキンガム「哲学大図鑑」――人間が「人間」について考えた歴史

哲学大図鑑(三省堂)

『サイバーパンク2077』の中ではサイボーグ化やレリックについて様々な見解が提示されており、宗教的な意義にも踏み込んでいます。本書では仏教やキリスト教も含め、古代から現代に至るまで主要な哲学についてざっくりとまとめてあり、細かいところは飛ばしてとにかく様々な考え方に識るには最適な1冊です。

専門性は薄くしてあるものの、デカルトやアリストテレスなど、メジャー級の哲学者はおおよそカバーしてあるので、この1冊があれば調べるのに困ることはありません。名前だけは知っている哲学者も、思想に触れてみると結構納得できるものも多いので、本棚の隅に置いてみてはいかがでしょうか。

ミチオ・カク「フューチャー・オブ・マインド 心の未来を科学する」――サイエンス・ノンフィクションで考察する「自我」

フューチャー・オブ・マインド 心の未来を科学する | NHK出版

技術の発展によって人間の精神観はどう変化していくのか?気鋭の物理学者ミチオ・カク氏による、テクノロジーと「心」の関係性を徹底的に科学の点から考える一冊です。脳科学のかなり専門的な話になるのでハードルは高い方ですが、SFにも造詣があるミチオ・カク氏らしく、エイリアンの心理にも科学的にアプローチしています。

用語は違うものの、ブレインダンスやRelicに近いものにも言及があるので、『サイバーパンク2077』のプレイヤーなら興味深く読めるはずです。

メル・ギブソン監督「パッション」――十字架を背負うことの重みを知る

ゲーム内で物議を醸したブレインダンスの元ネタがこれです。あまりにも痛々しい拷問シーンのため、観客がショック死してしまったという曰く付き。内容としてはキリストが捉えられて拷問を受け、磔刑にかけられるまでの場面を緻密に映像で表現したもので、例の釘打ちもしっかりやっています。補足説明などはなく、予め聖書の内容を把握した上で観ないといけません。

救世主キリストの受難について、その過酷さを正面から描写したものはあまりありません。拷問の上市中引き回し、そして処刑。キリストが覚悟を持って受けようとした痛みとは如何なるものか、それを映画で追体験するのですから、普通に考えれば心穏やかに観られるものではないでしょう。肉体の痛みのみならず、人間の残酷さをその一身で受け止めるキリストの姿は、ローマに実在したイエスその人に肉薄したと言えます。

また、死からの復活というモチーフは神の奇跡そのものであり、キリストその人を指します。Relicによって死の淵から蘇ったVは救世主を暗示させる存在になるのです。

押井守監督「イノセンス」/ ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督「ブレードランナー2049」――「自分」をどこまで信じられる?

自分の記憶が信じられない、自分が見ている景色は現実ではないかもしれない――電脳が普及し、記憶も意識も自在に改変できるようになったら、それは切実な問題として現実に登場するかもしれません。サイバーパンクと相性が良い「自我」について扱ったこの2作は、『2077』の世界を読み解くには欠かせません。

特に「イノセンス」は演出面において「直系」と言えるほど、サイバー空間の表現や「山車」と「荒城の月」の場面など、本作に大きな影響を与えた作品です。最新の4Kリマスター版では、オープニングに登場するHADALYの瞳に映っているものもはっきり見えるとか?

「ブレードランナー」の続編となる「ブレードランナー2049」は監督にドゥニ・ヴィルヌーヴを迎え、前作よりも内省的な物語へとシフトしました。主人公のレプリカント「K」は謎めいた記憶があり、あるきっかけでその記憶が本当のものだと疑念を抱き始める―その過程で前作の主人公デッカードに関わる大きな秘密を暴くことになります。約3時間の長丁場ですが、自分の存在意義についてたっぷり思索する贅沢な時間となるでしょう。


ゲームの面白さというのは、システム面での「遊び」が優れているかという部分ばかりに目が行きがちですが、未知の世界に降り立って自由に見て回れる、それが何よりも一番の魅力ではないでしょうか。そこで起きている出来事やトラブルを見聞きし、主人公と共に日常では出会えない状況に身を置いてみる。そこから得た新鮮な知見は、あなたの人生をきっと豊かなものにしてくれるでしょう。

《Skollfang》

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