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Game*Sparkレビュー:『ファークライ6』

シリーズで最も面白いFPSともいえる戦闘の楽しさはあるものの、シナリオなど各所の詰めの甘さも感じざるを得ません。

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あなたはカリブ海の中心に位置する国で広大な森、市街地、浜辺で宝捜しをします。そしてお宝は100メートルごとに埋まっていて、それらを得て強くなります。移動手段は車はもちろんヘリコプターや飛行機もあります。しかしその国「ヤーラ」は大統領の「アントン・カスティロ」が独裁政権の圧政をしいており、それに対抗する革命の炎が立ちのぼっています。

そして、あなたは「ダニー・ロハス」という元軍人として能力を活かし革命を牽引する者となります。

私はこれまで「ファークライ」シリーズのすべてを遊び、近年では(他誌で恐縮ですが)「IGN Japan」誌にてファークライ5』レビュー『ファークライ ニュードーン』レビューをフリーランスライターとして執筆してきましたが、今回は縁あってGame*Sparkにて本作のレビューを担当することになりました。

なぜ『ファークライ』シリーズにこだわるのかについて先にお話ししておくと、シリーズが提示してきたアンチゲームとも呼べる、ゲームでありながらゲームプレイを拒むような作風に強く関心を持っており、シリーズがどこへ行くのかを見届けようとしているからです。そのうえで先に本レビューの結論を簡単にまとめるならば、本作はトレイラーなどで政治的なアングルを用いてプレイヤーを引きつけてはいるものの、シナリオに問題を持つ作品といえるでしょう。本作の本質的な楽しみはコンバットドリブンともいえる戦闘の楽しさに尽きるともいえます。この点において、常にストーリーでプレイヤーを驚かせてきたシリーズ作品としては異質な作りとなっています。


目次
  1. シリーズで最高のFPSの面白さ(本ページ)
  2. 大きな課題を抱えたシナリオ、総評
Game*Sparkレビューのおやくそくはこちら

舞台となるヤーラ、そして今作のヴィラン

男女を選べます。

今作はキャラクターメイキングが廃止されましたが、性別を男女から選んではじめられます。主人公の名は男女問わず前述した「ダニー・ロハス」で、これまで多数用いられてきた「喋らない主人公」ではなく、旺盛に発言していく人格を持ったタイプの主人公です。時間的制約により男女両方でストーリーを完遂することはできず、男性主人公でプレイを済ませましたが、オープニングシーケンスでの発言はまったく一緒なので男女どちらを選んでもおそらく変化は少ないでしょう。

舞台となるヤーラはカリブ海の中心にある島国で、1967年のゲリラ革命でさまざまな「ゲリラの抜け道」が存在している状態です。しかしゲリラ革命は47年にわたる経済制裁を招き、貧困が深刻化しました。そんな中“楽園再建”の鍵を握るリーダーが選ばれました。それが今作のヴィラン、ヤーラ大統領「アントン・カスティロ」。

今作のヴィラン「アントン・カスティロ」。

彼は人類史上もっとも有効的なガン治療薬「ヴィヴィロ」を生産し、楽園を再建するといいます。ヴィヴィロは特殊な肥料を施したヤーラ自慢のタバコから生まれる、しかし楽園再建は代償を伴う、なぜならヴィヴィロの生産に「真のヤーラ人」が無作為な抽選で選出され強制労働を強いられるからです。アントンいわく強制労働は息子である「ディエゴ」でさえその対象といいます――しかしそれは表向きの発言で、実際には孤児や貧困層が強制労働にかり出されています。つまり、奴隷制度の復活なのだと革命サイドは反旗を翻しました。そこに加わるのが主人公のダニー・ロハスという構造です。

“いつもの”「ファークライ」ではない

ファークライといえば「同じことの繰り返し」だとイメージする人もいると思いますが、今作のゲームプレイにおいては従来とかなり違うデザインになっています。コンバットデザインでは、たとえばサプレッサーはオーバーヒートするメカニクスが導入されています。このサイレンサーのオーバーヒートメカニクスはおもしろいです。ステルス状態で撃てる回数に制限が設けられており、エイムの正確さ、どの順番で敵を倒すかといった戦略性をもたらしており楽しみを与えてくれます。オーバーヒートは時間経過で直り、またストレスにならない程度には撃てるので安心です。回数制限があることでちょうどよい緊張感をもたらしてくれます。

メインのゲームプレイは小さな島から大きな島へ渡り各地のゲリラを決起させていくというもの。このためややリニアな印象を与えますが、それでも広大な土地は探索において役立っています。そう、本作は銃器の改造などに使う物資不足に陥ることが多々あるので、100メートルごとに配置された物資をきっちりと回収していく探索が必要なのです。意外にもこれは煩雑な要素となっておらず気軽に回収していけるものとして成り立っています。

この広さで全体の4分の1ほどです。

いつも通り敵の基地はありますが、今作はアグレッシブで死体が見つかっただけで警報を鳴らされます。よってアサルトスタイルで攻め込むことも多くなりますが、それがまた楽しく作られていて、自然な気持ちでアサルトへ移行できるので高評価です。FPSの基本原則、狙って、撃って、当てる、この喜びが大きいです。思ったところに弾が飛んでいく。そういったFPSの快楽はシリーズ中で今作が1番といえます。

シリーズ中1番となったFPSとしてのおもしろさ

そういったFPSの喜びを支える、銃器が増えていくおもしろさがあります。銃器の入手はクエストクリアや基地に眠っているものを掘り起こして入手、もしくは金銭で購入するという手段がありますが、ほとんどの銃はカスタマイズでき、お気に入りの1本を思いのままに使って戦える喜びがあります。なにしろ銃には10種類近くのペイントがあり、なおかつ数十種類からなるアクセサリのチャームを自由に付け替えられます。しかも、改造はできないものの独自の効果を持つユニーク武器まで存在します。

今作において銃器へのこだわりはシリーズの中でも最も高く仕上がっているといえるでしょう。ノーマルの銃器から固有武器、そしてオーバークロック武器という課金によって買える武器の3種が存在しています。また改造では弾種も変えられますが、アーマーなしの敵に大ダメージを与える「軟目標弾」が機能していません。アーマーなしの敵が少ないですし、アーマーありの敵へのダメージが増す徹甲弾だけで充分戦えるからです。そういった不足を補ってなお、改造できる項目はサイレンサーに留まらずスコープ、また照準中はダメージアップなど特殊な能力を施せて楽しめます。

これらの改造をになうのが各種の物資で、特に「火薬」は重たい素材となっておりなかなか手に入らず、スコープを付けるのに3つ使うこともざらです。

『ファークライ5』ひいては『ファークライ ニュードーン』のころから悪目立ちしてきたUI/UXの課題ですが、パーツの改造時に確認画面がでないために誤クリックして選択をしても素材を消費してアンロックされてしまいます。

また文面ではまったく同じ性能のスコープが2つあり、どちらがどう違うのかは貴重な素材を消費して作って、付けてみるまでわからない点、これはシンプルに動画プレビューなどで解決できる問題のはずなのに、それをしていないの怠慢だとも取れます。テストプレイヤーの声を吸い上げていないのではないかとすら勘ぐってしまいます。

そしてトレイラーなどでも宣伝されていたバックパックからミサイルを撃てる「スプレーモ」ですが、事前にトレイラーを見たときにはすぐに飽きそうだと思ったというのが正直なところです。しかし、それを覆すように、スプレーモには飽きを遠ざけるように多数の種類がありました。ステルスでいきたいときには「EMP」を出せるスプレーモでセキュリティを無効化できヘリですらEMPで撃墜できます。さらには、毒ガスを出して敵を同士討ちさせるものさえ準備されているのでかなり戦闘の幅を広げることに寄与している要素だといえるでしょう。

また、スプレーモは敵を倒すとゲージが溜まっていき、マックスになればようやく使えるという仕様なので、そのクールタイム自体も飽きを遠ざけるよう働いています。

クエストを通じて入手する特殊なスプレーモで透視ができる。

スプレーモと同じ素材で買える「リゾルバー武器」はユニークで、大きなボウガンであったり火炎放射器であったりと個性豊かなのですが、普段使いするには癖が強すぎるのが難点で、プレイヤーの創発性によって活きる武器といえるでしょう。

また今作はなんと「武器の装備変更がインベントリからいつでもできる」仕様となっており、数々の銃があることの意味を大きくしています。好きなときに好きな銃器で戦えばいい、そういったスタイルを許容するのです。対空拠点を落とすときだけロケットランチャーに持ち替えるプレイだってありです。あらためて過去作をプレイし直してみたのですが、わざわざショップなどに行かないと武器を変えられないのはもはや煩雑だとすら思ってしまいます。

本作のコアループは探索、物資集め、武器の収集および強化。そしてさらなる探索あるいはクエスト、といった風にデザインされています。武器の比重が大きいのが今作のポイントでしょう。とりわけFPS部分の操作感の良さはかなりよいです。

PERKの撤廃と「アミーゴ」、服装システム、ゲリラキャンプ

本作はPERKがなくなったために武器への依存度が上がっています。そして武器の種類は多く、また、改造できる余地も広がったことが本作の特徴です。つまり武器という選択肢をメインに戦うわけですが、戦闘には「アミーゴ」という4種の動物のお供を連れていけます。彼らは思っている以上に強く、攻撃目標としてマークすると鮮やかにステルスキルしてくれますし、アミーゴの種類によっては大暴れしてくれるものもいます。全作では多すぎた仲間もこの動物のアミーゴに留まっておりちょうどよいバランスで戦えるためプレイヤーの腕を試されて奮い立てます。

これはサブの要素ではありますが、ステルスキルがナイフでグサリを彷彿とさせるマチェーテキルになっていて(『5』では棍棒などで叩くでした)爽快感が増していますし、正面から“奇襲”ができます。主人公の立ち位置、ゲリラであることからコンバットデザインは“奇襲”をテーマに据えている印象です。それが主人公の立ち位置であるゲリラ戦との相対性があり成り立っていて好印象です。

「装備」というのが服装。

また『ニュードーン』でもあった服装の概念が見直され、装備として防御力が上がったり入手できるクラフト素材が増えたりと特殊な効果がついています。装備できる箇所は頭から足までと多く、それぞれに効果があります。アパレル装備の種類が豊富なだけに、たとえばステルス用、アサルト用といったように、プリセットを作れるようにしてほしかったと思わされました。これもUI/UX部分の問題ですが痒いところに手が届いてない点についてはなんとか次作以降での改善を期待したいところです。

他方、ゲリラのキャンプという建設要素があります。それぞれ「隠れ家ネットワーク」であればヤーラ各地のゲリラの隠れ家からファストトラベルが可能になり、空を滑空できるウィングスーツが使用できるようになります。建設要素をざっとまとめると……

  • 「ゲリラ駐屯地」なら強力な武器を販売してくれるようになる。

  • 「海賊団兵舎」なら本作のユニークな要素「海賊団」における新兵を増やすとともに服装の装備を売ってくれる。

  • 「狩猟小屋」は狩りの地図を買えてより稀少な動物を狩れるようになり、狩猟に特化した装備、武器、永続バフも付けられる。

  • 「釣り小屋」では釣り場が書かれた地図と装備と永続バフ。

  • 「食堂」では得た肉を持っていくと一時的なバフを得られる食事が手に入る。

といった感じです。

コマンド選択式で進める海賊団。

課題となるのが「解除できるのは1つのゲリラ拠点につき2つまで」という縛りでしょう。自分にとってのプレイスタイル、重要度を見極めて解除する施設を選びたいところですが、アンロックは取消が効かないので場合によっては難易度にほかのプレイヤーと差が生じる可能性をはらんでいます。そのため武器販売所は別に用意した方がよいのでは、という懸念があります。

昨今のUBI作品に通底するアクセシビリティへの配慮は好印象

最近のUBIゲームは色覚障害者などへのアクセシビリティへの配慮がなされています。それは本作でもそうでさまざまな人が遊びやすいよう配慮されているのは好印象です。たとえば聴覚障害者でも遊べるよう音が鳴っている方向から「銃声」などの文字を出せますし、これは一般のプレイヤーにとってはある種のイージーモードというか、どこに監視カメラがあるのかなど画面に表示されるので難易度が下がり遊びやすくなる効果もあります。

アクセシビリティの項目は「視覚、聴覚、運動機能、認知機能、モーション、色」と数が多く、視覚メニューでは「メニューナレーション」をオンにするとフォーカスした項目を読み上げてくれますし、「認知機能」では字幕のサイズやレティクルやカメラのぶれなどを変えられます。さまざまなプレイヤーに対する配慮は本作をひらかれたものにしており高く評価できます。


次ページ:本作のシナリオが抱える問題とは?
《SHINJI-coo-K(池田伸次)》

FPSとADVを偏愛しつつネトゲにも造詣のあるフリーライター SHINJI-coo-K(池田伸次)

「Game*Spark」誌に寄稿しつつも「IGN JAPAN」誌と「GAMERS ZONE」誌にも寄稿。「インサイド」誌にも寄稿歴あり。今はなき「Alienware Zone」誌や「週刊Steam」誌にも寄稿していたフリーライター。 そしてヒップホップビートメイカー業も営む音楽家兼ゲームライターの兼業家。通称シンジ。

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