アメリカの不動産・都市デザイン情報サイトCurbedは、およそ3000人からなる『マインクラフト』内でニューヨーク市を実物大で再現するチームの2年以上に渡る継続中のプロジェクトについて報じました。
これは『マインクラフト』内で現実の建造物群を再現する「Build the Earth」プロジェクト内の1つで、NY市再現チームにはプロジェクト内で最大規模の2731人が参加しています。
ニューヨーク市チームのリーダーはドイツ・フランクフルト市出身のMinefact氏。現在21歳の同氏は元々、自身が開発したGoogleマップのデータを使ってゲーム内に大まかな建物の輪郭を作成するジェネレーターを用いて地元であるフランクフルト市を再現しようと計画していました。その中で、気まぐれでNY市のデータでテストを行ったところ、フランクフルト市のものより非常に高品質なマップデータを得られたため、地元の再現建築を一時延期して「Build the Earth」のNY市再現チームに合流しました。
しかし、便利なプログラムや多くの人員を用いたとしても、現実と仮想空間上の間に存在する様々な問題の発生に苦しめられたそうです。
チームは最初の一歩として、茂みを挟んで正方形のプールが2つ並んでいる911メモリアルの再現建築を目標に定めました。しかし、マップデータを『マインクラフト』上に落とし込む際にどうやっても正方形のプールがひし形に歪んでしまう問題によって、いきなりプロジェクト中断の危機に陥ります。
様々な試行錯誤の結果、メルカトル図法による歪みが問題の発生源であると突き止められ、地図投影法に詳しい数学者Daniel Strebe氏の協力の下で地図投影法をメルカトルからダイマクション(空海一体世界地図)に変更することで問題を解決するに至ったそうです。
『原神』のモンド地方の1/1スケール再現や、『DOOM』の世界観とゲームプレイを再現したアドベンチャーマップなど、ジャンルを問わず様々な試みが行われ続けている『マインクラフト』とゲーマーの探究心のコラボレーションはこれからも様々な可能性を我々に見せてくれそうです。
なお、NY市再現プロジェクトリーダーのMinefact氏は実際のNY市を訪れたことは無いそうです。しかし同氏が「誰もが家の中に閉じこもらざるを得なくなったので、新しい生活様式の中で人々はゲーム内での出会いを始めました。こういった新しい現実の中だからこそ、人々は外で知っていた世界を作り出すことが出来ました。メタバース、とはちょっとだけ似ていますが、まぁ控えめな別のスタイルです」と語ったように、NY市再現プロジェクトもまた、ゲーム上の空間を用いた様々な交流が加速する現在を象徴するひとつのエリアと言えるでしょう。