狂気と優しさが共存する『void* tRrLM2(); //ボイド・テラリウム2』開発者の頭の中はどうなっているの?心理学の専門家に訊いて本人にも訊いた | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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狂気と優しさが共存する『void* tRrLM2(); //ボイド・テラリウム2』開発者の頭の中はどうなっているの?心理学の専門家に訊いて本人にも訊いた

ぜったいに性癖を暴いてやるスパ

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狂気と優しさが共存する『void* tRrLM2(); //ボイド・テラリウム2』開発者の頭の中はどうなっているの?心理学の専門家に訊いて本人にも訊いた
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トリコちゃん…… かわいいスパねぇ……

おや?スパくんがねっとりとした笑顔を画面に向けたまま恍惚としていますね。どうしたのでしょうか?こっそり画面をのぞいてみましょう!!あらあら……どうやらスパくんはvoid* tRrLM2(); //ボイド・テラリウム2であそんでいるようです。でも、なんだか様子が変……

『ボイド・テラリウム2』では、ユーザーはロボット(画像左)となり
人類最後の生き残りである少女トリコ(画像右)をお世話する

いつまでもなでなでしていたいスパ。どうしてトリコちゃんはこんなにかわいいんでスパ?ボクがあげたごはんをたべて儚く光るその笑顔を見ていると、だんだん不思議な気分になってくるスパ……

病気になってしまうととても悲しいスパ……でも、でも……なんだかその姿から目が離せないスパ……どうして?かわいそうだから? それとも……?

ううーもう我慢できない!!もっと色んな病気の姿が見たいスパ!!トリコちゃんはかわいくて儚いのに、どうしてボクはこんなことを思ってしまうのでスパねぇ……疲れ果ててトリコちゃんが弱っている姿……あれ、はじめて見た時……なんていうか、その……下品なんですが……フフ……ゾクゾク……しちゃいましてね……スパ……

void* tRrLM2(); //ボイド・テラリウム2』は、人類が滅びてしまった世界で自我を持ったロボットとなり、なぜかひとり生き残っていた少女「トリコ」を守り育てていく作品です。前作『void tRrLM(); //ボイド・テラリウム』の基本を踏襲し、より幅広く・じっくり遊べるタイトルとして2022年6月30日に登場します。

人類が滅んだ原因のひとつとなった汚染菌類からトリコを守るため、プレイヤーはテラリウムを構築していくことになります。守るといっても、そこはすでに滅んでしまった世界。守るべきはトリコが生きていくための環境そのものであり、その環境を整えるためにこそ戦う必要がでてくるのです。

お世話のためにダンジョンで資源集め!
ダンジョンでは個性的なエネミーやトラップが立ちはだかる

挑む度に形を変えるランダムダンジョン・ローグライクな探索システムを採用しています。特徴的なのは、いわゆる「空腹度」にあたる時限的なシステムが二重に存在していること。操作するロボットのバッテリーを維持しつつ、テラリウムで待つトリコのために食べ物を持ち帰ってあげましょう!

管理は大変ですが、そのかわりダンジョンで倒れてしまってもペナルティはありません。拾ったアイテムは共通資源として変換されるので無駄にはならず、再び挑む時にはレベルが初期状態に戻ってしまいますが、テラリウムを充実させていくことでロボットの基本性能も強化されていきます。

トリコちゃんの体が溶けている……!?
ゲーム中にはほかにも多様な病気が充実しているようだ……

やっt……大変だスパ!!まだ見たことない病気が当たったスパ!!!!探索に熱中していたらテラリウムが汚れてトリコが病気になってしまったんでスパよ!!!……本当だスパ。熱中していただけなんだスパ。こっち見んなでスパ。

ぐぬぬぬ……かわいいトリコちゃんが病気になるのが気になって仕方ないスパ。なんてことスパか?このようなゲームを作るなんてぜったい開発者はヤベー奴に違いないスパ!!もっとやれ……じゃなかった、どんな奴か暴いてやるスパ!!!

作ったのはこんなひとスパ!!

(本作のディレクターは日本一ソフトウェアの古谷優幸氏。古谷氏は『ディスガイア』シリーズにデザイナーとして関わった後、キャラクターデザインも担当した2014年リリースの『htoL#NiQ -ホタルノニッキ』にてディレクターデビューしています。)

このひとがトリコちゃんをいじめるためにトリコちゃんを生み出した人間スパか??きっと恐ろしい奴に違いないんだスパ……これまでもきっと恐ろしいことをしてきたに違いないスパ……調べてやるスパ!!

古谷氏初ディレクションタイトル『htoL#NiQ(ホタルノニッキ)』
少女ミオンを導き、廃墟を進む

htoL#NiQ(ホタルノニッキ)』は古谷氏が最初にディレクションしたタイトルです。

廃墟の奥深くで記憶を失ったまま目覚めた少女「ミオン」を脱出させるため、プレイヤーは「光と影のホタル」を切り替えながら、さまざまな障害を乗り越えていきます。広がる廃墟には危険な場所や怪物が待ち受けていることも……そんな非力な「ミオン」が巻き込まれてしまうと……

『ロゼと黄昏の古城』では、ロゼと巨人をそれぞれ操作して脱出を目指す
危険を回避するだけでは荒れ果てた古城を進むことは難しい

また2016年には『ロゼと黄昏の古城』を発表しました。呪いの茨を背負った主人公ロゼと、不思議で大きな巨人は、古城の奥深くで訳もわからず目覚めます。赤く色づいたモノ以外は止まってしまう世界で、少女はその「血」を移し換え、巨人は少女を守りながら脱出を目指していきます。移し換えるだけでは足りない場面がやってきた時、少女は自らの血を捧げることになるのです。

……こ、これはなんだか見えてきた気がするスパ!!なにかあるに違いないスパ!!ぜったいヤベー奴スパ!!知りたい……知りたいスパ……もっとトリコちゃんの多様性を知るためには、ヤベー奴の心理を知らねばならないスパ!!

だから専門家に聞いてみるスパ!!そこでボクと編集部は知識を得るため我が国の最高学府である大学で心理学を研究する専門家を探し求めた。「トリコちゃんをいじめるためにトリコちゃんを生み出すような人間について教えてください」──そのようにして私達は何日も彷徨ったが、どうしたことか協力者はなかなか現れなかった。そして本日、ついに我々の前に強力な味方が手を差し伸べてくれたのである。その人物こそ、東洋学園大学で認知心理学を専門に研究し続ける中村哲之准教授その人なのである!!……んだスパ。

先生!!このゲームの開発者、ヤベー奴ですよね?

──本日はお時間をいただきまして、ありがとうございます。ゲームの製作者の心理について専門家のご意見を頂戴したく存じます。早速ですが、まずは自己紹介をお願いします。

よろしくお願いします。私は心理学を専門として大学教員をしております。
心理学というと人によっては一種類のように思われるかもしれませんが、実際はたくさんの種類があります。心の働きというのは非常に複雑で、性格や状況によっても心の働きが大きく変化するため、かなり細分化された中で私は認知心理学を専門としています。

認知心理学は一言にすると、日常生活の様々な心の働きを明らかにしようという学問領域です。誰かとのコミュニケーションの中で人の心をどれだけ認識できるのかという問題もあれば、表現への感性……またその感性を生み出すような行動を対象としています。これらは人だけに限らず、私は動物も含めて研究対象としていて、その差をみることも認知心理学に入ります。

他の領域と比較して認知心理学の大きな特徴のひとつは、人を含めた動物の心の働きを考える際に「脳の中でコンピュータのように情報処理の結果として心の働きが出ている」といった視点をとることです。心の働きは複雑で難しいものですが、少しずつでも明らかにしていければ……という研究になります。


──「ゲームクリエイター」を仕事とする人を心理学の視点で分析することは可能でしょうか?どのような人たちなのでしょうか?

私自身はゲームに詳しくないので個人的な意見となってしまいますが……

ゲームクリエイターのかたは、認知心理学が研究対象とするような心の働きを最大限に活かすような特性の方が多いのではないかと感じました。

ゲームは画面や音を含めて、プレイヤーがどのように反応するのかという部分に敏感であるという能力が求められるのではないでしょうか。最近は画面や音だけではない要素をたくさん持つゲームもあるでしょうし、そうしたことが分からなければヒットする作品を作るのは難しいですよね。

これは認知心理学だけのお話ではありませんが、その中ではまず「自己理解」が重要だと言われます。そして同時に「他者理解」についても重要視されます。ただ、そこが苦手なかたもいらっしゃいますので、心理学を学んで活かしていきたいという人もいますね。

ゲームクリエイターのかたはこのような「他者理解」がかなり優れているのかな、と思います。そのようなベースを持った上で、ヒットする作品を作るための「斬新な視点」や「意外性」といった発想力も富んでいるのではないでしょうか。つまり、多くの人にとっての常識的な視点・心理をしっかり踏まえた上で、あえて少しずらした発想を出せる特徴を持つ人ではないかという印象です。


苗に水やりするトリコちゃん
前作よりも表情や行動が増えているので、じっくりと眺めてみよう

──ただ奇抜なことができるということではなく、きちんと「一般的な感覚」が見えているからこそ尖ったことを狙って行えるということなんですね。他者理解への感受性は一般の人と比べると敏感ということなのでしょうか。

認知心理学には「注意」という重要なテーマがあります。

同じものや体験でも、人によって分析する時の方法が違ってくるんです。特にその道の専門家であれば、同じものを見ていたとしても更に細部へと注意が向いていく傾向があるという研究もあります。そのような意味でクリエイターの方々は「注意」の向け方が違うのかもしれません。


──そうした特性は生まれながらの先天的なものの影響が大きいのでしょうか?

心理学の歴史の中では「生まれか育ちか」が重要なテーマとして長年議論されていましたが、最近はどちらか一方というより両方とも重要とされてきているのではないでしょうか。

幼い頃からある面について他の人よりも細かく分析できるといったような、生まれによる才能などは少なからずあるとは思います。ですが、そうした能力を仮に持っていたとしても、極端な例をあげれば──「ゲーム」の先天性を語ろうにも平安時代に生まれた人についてはそもそも語りようがない、なんていう問題がでてきますよね。

そうした意味では、経験を積むことで自身の特性に気づいていくということの方が実際ではないかと思いますし、ゲームクリエイターのかたに限りませんが、自身の持ち味と、様々な文化や便利なものの影響を受けながら能力を発揮できていくようになるんじゃないかな、という印象です。


かわいいトリコちゃんが病気でひどい目に合う……というのも本作の特徴

──ゲームクリエイターの方々も、様々な経験の上に制作の特徴が現れてくるということですね。それでは改めて本作『ボイド・テラリウム2』について伺います。かわいいキャラクターを育成する中で、痛々しい描写も含まれるような尖った設定ですが、映像などをチェックした印象はいかがでしたか?

「尖った内容」ということでしたが、日常現実ではあまり体験できなさそうという意味で確かにそのように思います。

一方で少し広い見方をすると、心理学では「協力」と「競合」というテーマがあります。その点で見れば『ボイド・テラリウム』は「協力」の要素が強いのではないかと感じました。また、育成系のゲームという意味ならば、これまでも筋としては似たような作品があったかと思います。

そう考えたとき『ボイド・テラリウム』シリーズは、ベースの部分に王道な面があるのではないでしょうか。そのような、多くのプレイヤーが面白いと素直に思える土台を整えている上で、強めのスパイスを加えているかのようにして魅力を出しているのではないかと思います。


トリコちゃんを守るため今日もロボットは進んでいく!
ダンジョンは探索のたびにランダムで姿を変えるので、毎回違う冒険が楽しめる

──さきほどご説明いただいた「他者理解」のベースがあるからこそ……という視点ですね。確かに『ボイド・テラリウム』はローグライトと呼ばれる、古くから親しまれる探索の方式を取っていますし、トリコとテラリウムの育成もじっくりと少しずつ整えていく形なので、激しく複雑なものではありません。

──すると、より「トリコへのバイオレンスさ」が悲しさと共に際立ち、カタルシスに繋がるような要素も持ち合わせているように感じます。なぜ、クリエイターやプレイヤーはこうした作品を作り、求めるのでしょうか。

研究者によって意見は変わってしまうかもしれませんが……

ゲームを拝見した時に感じたこととして、心理学では「カリギュラ効果」と呼ばれるものがあります。禁止されたことほど興味を惹かれてしまうというものです。これをうまく活用しようとしているのかもしれないなと思いました。

カリギュラ効果は「カリグラ」という名のローマ皇帝のひとりがもとになっていて、このカリグラを題材にしたその名も「カリギュラ」という映画がありました。その過激さから内容が規制されてしまったものの、その規制がかえって話題を呼んでしまったことからきています。


今作では湿度と温度を調整可能!
ただし、高温多湿なところにナマモノを放置してはいけません!絶対にいけません、絶対!!

心理現象は無意識な状態の方が効果的だと思うので、発売前の作品に今からこんな解説をして良いものかわかりませんが(笑

通常、例えばお化け屋敷やジェットコースターのようなエンターテインメントは危険性を楽しむものですが、もちろん安全管理をされた上で体験するものです。普通なら危険で禁止されるような内容だからこそ惹かれるという心理を活用しているのではないでしょうか。

また、別の切り口では「記憶」も認知心理学の領域にあります。

平穏な事態よりも、感情が刺激されるような事態のほうが記憶に残りやすいと言われています。さきほどの「注意」も、同様に危険さのあるほうに向きやすいのですが、これは動物としての自然な特性で人間も同様です。過激なものは注意を惹きやすいですよね。

もちろんゲームクリエイターがこのような観点を、知識として扱っているかはわかりませんが、少なくとも感覚的には活用しているのではないか……というのが、認知心理学を専門とした上での私の認識です。


──そうした効果を狙って制作したという考え方ですね。すると、クリエイターはしっかりと心理的な設計も冷静に組み立てていることになります。「トリコ」をお世話したい!と思ってしまうような心理も、そうした効果などがあるのでしょうか。

コミュニケーションのひとつと捉えられるかもしれません。

今回は親子関係ではありませんが、「アタッチメント」とよばれる愛着行動が重要だという話がありまして、多くの場合は親子関係について語られます。親が抱く愛情は、その後の行動により子供の社会的影響へ大きな影響を及ぼすことから、というものです。これによって日常の中で愛着を持ち「なにかしてあげたい!」と思う、というものに近いのではないでしょうか。

また、危険・不安な状況に陥ったときには、身近な人との距離を近づけようとする、という心理があります。そのようにして安全を確保しようとするわけですね。ゲームの状況は危機的な状況ですので、こうした面が愛着行動を促しやすい土台となっているのではないでしょうか。

また、これは学問的で楽しくない話かもしれませんが(笑

学習心理学の視点としては「オペラント条件づけ」と言うのですが、何らかの環境で自発的な行動をすると環境が変化する……ゲームの状態ならば、危機的な状況にある女の子にプレイヤーが何かをしてあげることで改善が起こり、こういう体験を得られると、より自発的な活動を促すというものです。育成ゲームとしてはこうした説明もできるかもしれませんね。


──「トリコ」を守ってあげたいと思う感情は自然なものだったんですね。では、こうした幼い子が残酷な目にあってしまうという要素を押し出すクリエイターの心理状態を見るとすればいかがでしょうか?

繰り返しになりますが、先程の「アタッチメント」や、注意を向けやすいといった要素が最も生じやすい対象を選んで配置したのではないかと思います。

「トリコ」は多くの方が自然にかわいいと感じるでしょうし、そうした対象が危険な目にあえば、自分が助けられるならばやはり助けてあげたいと思いやすいのだと思います。そこで実際に行動に移せば状況が改善するというフィードバックを得ていける……そうした、ゲームに入り込みやすい土台を整えていると言えるかもしれません。


──クリエイター本人の趣味趣向というよりも、ゲームの設計・計算でしょうか?

もちろん、本人の趣向もあるとは思いますが……

小さい子、特に女の子であれば力も弱かったりといった事実もありますし、より多くの人が助けたいなと考えることを活用したのではないかと思います。


──制作にはしっかりと「クリエイターの緻密な設計」が反映されているということなのですね。先生、本日は大変にありがとうございました。最後に、心理学について今後の展望などをお聞かせください。

そうですね、心理学はとても面白い学問なので、興味を持っていただける方が増えたら嬉しいなと思います(笑

「心を読む」というイメージの強い学問だと思いますが、なかなかそんな簡単に人の心は読めるものではありません。そうした心をいろいろな観点から切って見つめていって、流行っているゲームを分析的に捉えるということも可能かもしれませんね。そうするとゲームの楽しみ方も変わってくるかもしれませんし、日常生活の色々な場面で活用できるかと思います。

自分が遊ぶゲームだけではなく、見て楽しむゲームも出てきていますよね。コロナ禍で心理的にも苦しい人がいるなかで、明るい話題を作り出せる力があるという意味では、ゲームも心理学もお互いに盛り上げられたらいいですね。

ゲームも面白いかと思うのですが、心理学もとても面白いので……日本には世界的に著名な先生もたくさんいますし、ゲームと心理学の相性もいいと思いますので、ぜひ興味を持っていただけたらと思います。


大学の先生はマジメなんだスパ!

先生は「カリギュラ効果」とか「アタッチメント」とか言ってたスパ……なんてことだスパ……自己も他者も客観的に捉えられる能力に優れた特性の土台があるからこそ、プレイヤーが感じるであろう表現をいざという場面で採用でき、それらを心理学的な知識と同様に計算的にも感覚的にも活用している……ということなんでスパか!?つまりどーゆーことだってスパよ??

そんなハズはないスパ!!やっぱりヤベー奴と思うんだスパ!!

中村先生は優しくてマジメなんだスパ。こうなったら本人に突撃してボクが見極めてやるんだスパ!!!

やっぱり本人に聞くっきゃねーっ!!

いくらボクだって「おめーはヤベー奴でスパか?」などとはきかねーんでスパよ。こーゆーときは知恵を使うんだスパ!!いろんな質問をしているウチにボロが出るって寸法だスパ!!関係ないけど家電屋でバイトしてた頃にまだ日本語がカタコトの外人さんがやってきて、商品を見ながら「コレ、ドンナ塩梅デスカ?」とか「ドノヨウニ、ツカウ寸法デスカ?」とか不思議な語彙で質問してくるお客さんがいたんだスパ。

さっそく質問攻めだスパ!!覚悟するんだスパ!!

──この度は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。早速なのですが、これまでのお仕事について教えてください。

日本一ソフトウェアでディレクターをしている古谷です。出身としてはデザイナーだったのですが、とあるタイトルでディレクターを代行する時期がありまして、そのままいくつかのタイトルのディレクターを続けて担うことになりました。

正確にはディレクターという肩書ではなかったんですが……ゲームの企画立案などは以前から継続していたんです。正式にディレクターになった、ということであれば2013年ごろから続けていることになります。


──前作『ボイド・テラリウム』について教えてください。尖ったタイトルだなという印象がありますが、どのような経緯で開発をするに至ったのでしょうか。

開発の経緯……そうですね、まず尖っているゲームという話から触れると、ディレクターを代行することになったタイトルは「人の生き死に」を扱うような内容で、結果としてうまくいきました。ならば、同じような「世界のシビアさ」で作っていこうか……というのが今も続いている感じです。

前作を制作するまでの流れとしては、『htoL#NiQ(ホタルノニッキ)』と『ロゼと黄昏の古城』とで2回連続、当時としては厳しい世界観を出していました。個人的には色々なジャンルに興味があるので、その後はもう少し明るいタイトルにも挑みましたが、伸び悩むところがあったんです。すると会社から「もう一回厳しい世界観のゲームつくれ!」と言われたんですよね(笑

それで『ボイド・テラリウム』につながるんですが、実はアイデアのもとは僕から出したわけではなく、開発メンバーから色々と募ったものです。その中で「近未来」「女の子の生存環境を整える」というアイデアが良いと感じ、ここに「汚染菌類」という発想を加えて制作をはじめました。


前作での治療シーン
最初にトリコちゃんをどろどろに溶かしてから病気を治します

──『ボイド・テラリウム』にはどんな感想が寄せられましたか?

トリコの病気や治療に関する部分には特にリアクションが多かったですね。「人の心がないなあ!」なんて言われたり(笑

あとは、ダンジョン部分へのインフレが楽しいなんて意見もありました。


ダンジョン内でレベルアップするたびに新しいスキルを覚える
ロボットの強化には運の要素も絡む

──やはり残酷な描写が強く印象に残ります。古谷さんの趣向として押し出した作風ということなのでしょうか?

そういう描写が好きかと言われればかなり好きですし、作るのも見るのも抵抗はないですね。それに会社からのプッシュもあって「やっていいんだ」という感じでやってます。


──ということは普段からホラー的なタイトルには多く触れているのでしょうか。

よく触れる……?そう言われると答えるのが難しいですね(笑

答えていいのかわかりませんけど、実際のショッキングな映像だとかは見に行ったりしますよ。


──好奇心の方が強いということでしょうか。

そういうことですね。その意味で、映画などの「作りもの」よりも実際に起こったできごとを好む、ということだと思います。なのでホラー映画といった例を出されると「そうではないな」と答えることになってしまいます。この話が倫理的にマズくてカットされちゃうと、何のインプットもしてない人ってことになっちゃいますね(笑

ゲーム制作への影響という意味で答えるなら、身近な体験で僕が興味をひかれるものを見ているというところです。


ちょっと重い話が続いたので、テラリウムを楽しむトリコちゃんをお届け
自分好みにテラリウムを形作るのも本作の魅力の一つ

──あらかじめ古谷さんには心理学の中村先生とのインタビューをご覧いただきました。古谷さん的にはどのように感じられましたか?

心理学というよりはゲームデザインの分析をしていただいた印象です。専門用語で説明されていた部分はもちろん知識として持っていたわけではなかったのですが、チームメンバーから意見を募っていくなかで「いける!」と思ったときの僕の分析に、中村先生のご指摘はとても近いと感じました。

か弱い女の子を世話するという構造は自動的にプレイヤーの動機づけになるはず、といったことです。更に「プレイヤーを共犯者にしたい」という狙いもありました。ゲームの中ではトリコを病気にさせてしまうと大変だよと案内するわけですが、プレイヤーは病気になってしまったトリコをむしろ見てみたいという、表向きに提示されている目標とは相反する気持ちを抱いてしまう……と。

そうした感情を出させるのも、このテーマなら面白くできるんじゃないかと考えて制作にあたっていましたので、この点を指摘されたのは流石だなと思いました。


──中村先生のお話では「一般的な自己と他者の視点」を正確に把握することで、そこからズラした発想を取れる、またそうしたことを伝える特性の強さに触れられていました。

チームのみんなとゲームを作っていくなかで、ビジョンとして出したいものがあります。それは、僕が受けた感動みたいなものを「僕なりの方法で味わってほしい」というのがあるんです。ゲームなどで感銘を受けると「なぜこう思ったのだろう」と分析するんですよね。そしてその分析の結果を「別のアプローチ」でやってみようと決め、制作をすすめていきます。

そういうことなら「受けた感覚をうまく伝える能力」は確かに必要だと思います。ゲームの仕様を決めて、ゲームが出来上がったその先で、一体何を体験させるのか、というところまでイメージするんです。むしろ制作としては、そこから逆算で仕様の策定などを行っていくので、ここは重要な能力かもしれないですね。


ちょっと豪華だったかな?トリコちゃんも驚いているご様子……

──逆算の計算として「あえて残酷な描写を入れる」ということに?

うーん……うーーん??ちょっと長考させてください!!

少し広い範囲の話となりますけど、ゲームを作る上では「プレイヤーにとって新しい体験」をしてもらいたいと考えています。僕は大きい体験にしても小さい体験にしても、ファミコン時代からゲームの表現にとても驚かされてきました。それを他の人にも体験してほしいという思いがあるんです。

異なるジャンルで似たようなものがあったとしても、ゲームならまた違う体験になったりします。その中のひとつの手段として「残酷な描写」がある、というところでしょうか。


──古谷さんの趣向に沿いやすいものではあるとしても、あくまでひとつの手段ということなんですね。新しい体験を届ける上で、今後の作っていきたい方向性はいかがでしょうか?

難しいですね。僕はゲームがめちゃくちゃ好きなので、なんでも作ってみたいとは思っています。パッと今答えるならシューターを作ってみたいかな……音ゲーも作りたい。なんでも作ってみたいです。

世間的には「女の子にひどいことをする奴」というイメージですし(笑 でも、思っきり違う世界観にしちゃうというのも、ただの反発行動でしかないってなってしまうし。なので、色んなジャンルには興味がありますから、自然に受け入れてもらえるような形で挑戦していきたいと思います。

僕のイメージを払拭したいとは全然考えていません。その立ち位置そのものは趣向にあっているとも思いますし。なので、ぜんぜん違うジャンルの制作をするときには、あからさまではないにしても、僕のタイトルだと強く感じられるようなものができたらいいと思います。


手を振るトリコちゃん!
病気だけでなく、かわいい行動もたくさん増えている……??

──『ボイド・テラリウム2』を楽しみにしているプレイヤーへコメントをお願いします。

『ボイド・テラリウム2』は前作が進化したという立ち位置を目指したものです。

前作ではやることが比較的シンプルでした。一緒に暮らしているという感覚をもっと長く味わってもらえるようにしたかったので、今作ではその点を強化しています。テラリウムの環境は変化していきますし、探索での出来事も増やしています。

前作に物足りなさを感じられたプレイヤーさんには手にとっていただければと思いますし、前作を遊んだことがなくても問題なく遊べるように作ってありますので、ぜひ楽しんでほしいです。


先生の言う通りだったスパ……

なんてことだスパ……すべて中村先生のいうとおりだったスパ……

ヤベー奴だと思っていたのに「受けた感動を自分なりの方法で体験させたい」という明確な指針を持ち、更に「その体験がプレイヤーにとって新しいものであるように」というクリエイターとしての目標も掲げられ、その実現のためにはある面で冷静とも言える計算された表現を配置するという、まごうことなきプロの仕事を遂行する人物だったと言えよう、なのでスパ!!

ハッ……!!つまり「もっと病気のトリコちゃんを見たい」と暴れていたボクは古谷さんの手のひらの上で転がっていたんだスパか!?ヤベーのはボクの方だったスパ!!うわーん!!

もはや自分の性癖は隠さないスパ

こうして、トリコちゃんへの抑えきれない想いを溢れさせたスパくんは編集部を置いて夕陽の向こうに走り去っていってしまいましたとさ。その胸に滾る情熱はもうスパくんを苦しめることはなくなったのです。性癖の開放の先には重責の解放……それは自分を認めるための解法、読者と繋がるための財宝Ah Yeah.

きっとスパくんはもっと色んなトリコを見たくなっていることでしょう。安心して!!もうすぐ『ボイド・テラリウム2』でまたトリコちゃんに出会えるよ!!

今度の「おせわっち」はごはんをあげられる!?

『ボイド・テラリウム2』では探索中にトリコのごはんを用意できます!!これでもっと探索に集中できますね。これならもう、黒く輝くアレに頼らなくても……??

武器の熟練度システムで更に探索がおトクに!

新たな装備やスキルでより多彩な戦闘が可能に

さらに武器やスキルの種類も多彩になりました!!よりハデになった戦闘を楽しもう!!

装飾だけではない!効果のあるテラリウム装飾が登場

トリコがアプローチするものの中には育成要素もあります。一緒にお水やりしたいね……

増築した別のテラリウムに移動できる!!

前作では一種類のテラリウムだけでしたが、今回は様々な環境のテラリウムを用意して、お引越しさせてあげましょう!!

そしてトリコを襲う新たな病の数々……

うわー!!干からびてしまった!!水でもどしてあげよう!!

やべー奴だってやばくねー奴だっていいんだスパ。いろんなトリコちゃんに出会えるのなら……それにボクはもう迷わないんだスパ。中村先生に教えてもらった分析を使って、古谷さんのようにボク自身が「残酷な描写」になって読者へ新しい体験を届けるんだスパ!!あれ……なんだか身に覚えがあるような気がするスパね……??思い出せないスパ。ボクの見ている先*は、いくら実行しても虚無しか返さな//Segmentation fault.

まあこまけーことはいいんだスパ!!はやく『ボイド・テラリウム2』を買いにいくんだスパーーーーー!!! ~完~

お世話ダンジョンRPG『ボイド・テラリウム2』は、PlayStation 4、ニンテンドースイッチにて、通常版・ダウンロード版ともに6,980円(税込7,678円)で2022年6月30日に発売予定。

  • タイトル     :void* tRrLM2(); //ボイド・テラリウム2

  • ディレクター   :細野裕矢

  • 企画・キャラデザ :古谷優幸

  • 音楽       :杉江一

『ボイド・テラリウム2』公式サイトはこちら!
《Trasque》

一般会社員 Trasque

会社員兼業ライターだけどもうすぐ無職になりそう

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