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医者でありながらeスポーツ関係者…独自のライフスタイルを築いた“医師ゲーマー”に直撃【ハードコアゲーマー・インタビューズ】

医者でありながら、どっぷり競技ゲーマー。医師というライフスタイルと向き合いつつ、ハードコアゲーマーを貫いている方にインタビューを行いました。

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――“ハードコア”。この単語は「中核」「核心部」「(集団などの)強硬派」、または「過激」「危険」、ときには「攻撃的」だったりするモノを指すときに使われます。

Game*Spark読者の皆さまも、多くは「ハードコアゲーマー」であるでしょう。ゲームをやるために、“ゲームは一日一時間”なんて言葉を疎ましく思うほどにゲーム漬けになった経験もあるはず。“ハードコアゲーマー”なライフスタイルを貫き通しているのではないでしょうか。

本企画「ハードコアゲーマー・インタビューズ」では「ハードコアな趣味やバックボーンを持つゲーマー」に焦点を当てた独自インタビューを不定期で実施しています。今回は医者という仕事の傍ら、独自のライフスタイルを確立し、“ハードコアゲーマー”を貫いている方に直撃してみました。

今回インタビューさせていただいたのは、医者として働きつつ、競技シーンでも活躍中なeスポーツ関係者の医師ゲーマー・Aさん(仮名)。昨今では社会問題になるほど多忙である「医者」という職業の彼は、「訪問医」というスタイルで働きながら、練習時間を確保してゲームの競技シーンでバリバリ活躍されています。

今回はプライバシーの観点から、匿名かつ「競技としてプレイしているタイトル」も伏せる形になりますが、医師という職業と競技ゲーマーの両立を成り立たせているハードコア「医師ゲーマー」に、その“ゲーム愛”や医療事情を伺いました。


――本日はよろしくお願いします。今回は匿名形式ですので「本職のゲーム」に関わる点は少なめとなりますが、まずは「医師ゲーマー」の「医師」の部分から簡単な自己紹介をお願いします。

医師ゲーマー・Aさん(以下、Aさん): 現在、医者をして6年目になります。最初の2年間は研修医として初期研修を行っていました。内科から外科から、色んな診療科を回ってざっくりと学んだうえで、3年目から別の病院に移り、内科医として働き始めました。

そして入った先が「救急総合診療科」というところです。救急車で来るような急病の患者さんが入院して、それを自分が見るということを、3年間行っていました。その中でも特に、集中治療室で重症の患者さんの対応をするということが比較的多かったかなと。ですので、「集中治療医」という立ち位置になるのかなと、自分では思っています。

――集中治療室というのは、ドラマなどでよく見るような「ICU」と呼ばれるものでしょうか?

Aさん: そうですね。いわゆる一般の病棟ではなくてICUと呼ばれるもの。点滴がいっぱいぶら下がっているような、そういう場所ですね。時には人工呼吸器だったりだとかの機械設備も扱ってました。最近コロナの関係で知られるようになった「エクモ」という、人工心肺みたいなものも使用してましたね。

――内科医として、集中治療室では手術など外科的なこともされたのですか?

Aさん: 外科の先生みたいに大きな手術はしなかったのですけども、ベッドサイドで行える簡単な処置などはしました。首に太いカテーテルを入れたり、人工呼吸器を長期間繋がなきゃいけない人に、喉を切開して人工呼吸器を接続する穴を作るだとか。

※参考イメージ

――今回は「ハードコア」なゲーマーへのインタビューとして、お話を訊かせてもらえればと思います。いちゲーマーとしては、どのようなゲームがお好きでしょうか?また、最近のゲームではどのようなモノをプレイされましたか?

Aさん: もともとゲームをやるタイプではあったんですが、がっつりやるようなタイプではなくて。自分には6歳年上の兄がいて、基本的にはおさがりで遊んでいたことが多くて。自分は今31歳なんですけど、自分より少し上の世代の人たちのゲームをやることが多かったですね。

――ということは、どっぷりハマったのは今活躍されているゲームが初めて?

Aさん: そうですね。ここまで生活の構成要素としてどっぷりプレイしたのは、そのゲームが初めてです。今のところ最初で最後という感じかなと。

――本気でやったはじめてのゲームで、一線で戦う競技者にまで上り詰めたと。

Aさん: トップのトップっていうわけではないので、今後も精進はするつもりではあるんですけど……「大会に出た」のはそのゲームが初めてです。

それまで、自分の中では今までのゲーム以上に遊んでいたつもりだったのですけど、大会などで自分よりもっと熱量を持ってやっている人たちに出会って、自分もさらに本腰を入れてやっていこうと思いました。

――それまでの認識としては、普通のゲーマーだったということですね。ですが、今振り返ると「結構、周り追いついてなかったぞ?」と思うことはありましたか? 「自分はのめり込むタイプ」と気付くような体験をされたりなど。

Aさん: 元々凝り性なところはあって、「自分が普通だ」と思ってる基準が他の人から見たら変態的な領域だったこともあるのかなって(笑)。

たとえばゲームのセリフを一言一句覚えていたりとか。普通のライトゲーマー的な感覚で友達と話していると「なんでそんなこと覚えてんの?」と、ちょっと引かれたりもしました。

――なるほど(笑)。そのときはどんなゲームをプレイされていたのですか?

Aさん: 兄貴の影響で『ドラクエ』を遊んでましたね。

――競技シーン含め、昔と比べて、今のゲーム文化は大きく変化していると思います。ネットの普及はもちろん、コロナ禍によってオンラインゲームやeスポーツが普及している現状について、どのようなことを感じていますか?

Aさん: ネットの普及を受けた変化は、良いことだと思っています。昔は手探りだった部分が、今の時代ではインターネットやYouTubeなどを通じて「こんな技や方法があるんだ!」という発見できたりしますし、メジャー・マイナー関わらずゲーム仲間を見つけられるようになったのは良い点だなと。

――個人的には、ゲーマーには「こうなりたい」という理想像があると思っています。例えば、ゲームのキャラメイク方針だったり、競技シーンでの目標など。Aさんにとっての「理想像」について訊かせていただけますか?

Aさん: 今までひとりでゲームを遊んでいたのですけど、最近は配信プラットフォームも増えてきて。人がやってる様子を観る機会も増えて、やってる本人も楽しそうにやっていると見てる側も楽しくなるというか……。

ただ楽しむだけじゃなくて、本気でやってるとブチギレるところもあると思いますけど(笑)。そういうマイナスな感情も表に出してやるというのが、全部ひっくるめて楽しんでいけるのかなと思います。

楽しむところは楽しめる・ブチギレるところはブチギレる、そういう全てを包括して楽しんでいけるのが「理想的なゲーマー像」になるかなと。

――医者でありながら競技シーンに関われている理由に、「訪問医」であることが挙げられると伺っています。まずは、Aさんの医療現場での一般的なワークスタイルについて伺っても良いでしょうか。

Aさん: 医者は割と自由な職業だと思うのですけど、最初にちょっとお話ししたように、研修医を終えてからはしばらく病院の勤務医を続けていました。そこで自分の専門領域の知識をつけながら技術も身につけていって、その過程で「専門医」などの資格取得だとかを続ける方は多いと思います。

それをしばらく続け、体力的にきつくなってきた頃に、「病院のお医者さん」から「町医者」になる……例えば開業したり、自分のように訪問医の道を選ぶ、というのが王道ですね。それまでは病院に籍を置きつつ、いろいろなことに手を出すという形です。それこそ……進む診療科によっては「調査兵団」という感じなものもありますけど。

――「調査兵団」!? 「調査兵団」というと死人がバンバン出るようなイメージが……!

Aさん: まぁ世間的にも話題にはなってますけど、過労問題ですよね。暗い話になっちゃいますけど、過労死してしまう人もいたりだとか。なぜか医者の世界って労働基準法の影響を受けてないようなところも……正直、大いにありますので。

――素人考えではありますけど、患者さんが急変するというのは時間を問わないし、主治医などとなると休日でも関係なく稼働されますよね……。

Aさん: 関係ないですね……。自分も病院勤務中はそういうことがありました。患者さんの急変というのは、日常茶飯事というか。帰りの車に乗ってる最中に電話がかかってUターンするとか、休日に呼び出されることも多々ありましたね。自分が3年目から4年目にいた急性期病院が無い地域は、いわゆる医療過疎地と呼ばれるところでした。

「急性期病院」というのは、救急の患者さんも受け入れつつ、そこで治療を行う……という場所ですね。対極としては、「慢性期」病棟。最近、慢性期病棟という言い方はあまりしないんですけども。リハビリや社会的サービスを目的とする病院・病棟より、即座の治療をしないといけない患者さんが多い。

――急性期病院というのは、割と喫緊な事態の患者さんが多いのですね。激務について何かエピソードがあれば伺いたいです。

Aさん: いわゆる「当直」という業務があるんですけど、朝出勤して通常の業務をして、定時過ぎた時間から「当直」という業務に切り替わります。それで……病棟の患者さんの管理だったりとか、救急車の受け入れとかを次の日の朝までやって、また朝からの通常業務が始まっていきます。

救急車とかが少なくて、病棟が落ち着いているときは仮眠をとれたりするのですけど……忙しくて一睡もできないときは、30時間以上は連続勤務みたいな感じで(笑)。自分ひとりしかいない夜に、救急車が13台来たこともありました。

――13台ですか!? 一晩で……。

Aさん: 一晩です。救急隊から電話があって「こういう人なんですけど」と言われて「あぁ、じゃあ来てください」と受けて、到着を待っている間に次の救急車から連絡が来る。最後の方になると、もうわけがわからなくなっていましたね。

あと、忙しさで言うと心臓関連の患者さんって急変がとにかく多いので、あんまり目を離せない。先ほど話した「エクモ」、つまり人工心肺をつないでる患者さんは分単位で状態が変わるんです。そういう患者さんを主治医として受け持っていると、当直じゃなくても帰れなかったりはしました。まぁ、それはあまり苦じゃなかったのですけどね。

※参考イメージ

――激務に加えて「命に対する責任」という重荷がありますよね。

Aさん: そうですね。それは切り離せないところです。大きい病院だと交代制とかで管理できるところもあるんですけど、日本中の病院がそう潤っているわけではないので、マンパワーと……あとは技量とかの問題も関わってきます。

当直をするにしても、同じ内科でも心臓の先生がいたりお腹の先生がいたりと専門が違うわけで。自分の範疇を越えた状況に出くわしたら、それに対応出来る先生が出てこなきゃいけないというのも、充分あります。

――「訪問医」というお仕事の働き方について詳しくお聞かせください。また、いわゆる「王道」の勤務医から訪問医になられたというのは、激務も理由なのでしょうか?

Aさん: 急性期の病院が激務で……それが理由で訪問医になったという面もゼロではないんですけど。どっちかというとポジティブな理由も多いです。

例えば、患者さんが救急車なり外来なりで病院に来て、集中治療室に入る。そこから処置をして、病状がちょっと落ち着いたので一般の病棟に移り、退院する……。そういった「入院から退院までの一連の流れ」に向き合うことが、勤務医時代は出来ました。

でも、それはあくまで「入院から退院」のみであって、その患者さんが退院した後の健康管理だったりとか日常生活には、勤務医というポジションだとあまり触れられないんですよね。そこで今度は、病院以外に焦点を当てて経験を積んでいきたいなと。

――なるほど。

Aさん: 今までは「病院のみ」で患者さんと向き合っていたんですが、訪問医では、ご自宅での生活や健康管理という側面をふくめた経験が積める。病院でとっかえひっかえ患者さんたちを治療するという形よりかは、ひとりの患者さんにじっくり時間をかけたいなと考えていました。

勤務医時代に良い師匠に恵まれて……「主治医になるのであれば、相手となる患者さんのことを世界で一番よく知っている人間にならなければいけない」と言われたことが印象に残っています。患者さんが具合悪くなったときに、その人の生活スタイルがヒントになることもあるんですよね。

――「訪問医」というライフスタイルがゲームへ及ぼした影響はどうでしょう?

Aさん: やっぱり、急性期病院時代に比べればプライベートな時間っていうのはかなり持てるようになりました。練習に割く時間とかゲームのことを考える時間っていうのは、相対的にかなり増えたかなって思いますね。

――今後、訪問診療をベースにした方やプロゲーマーが増える可能性はありますか?分かりやすいところで言えば、歯医者ロックバンドの「GReeeeN」のような……。

Aさん: 最近では、世の中的にも「自分の時間を大事にする」という流れがありますよね。まだ時間はかかると思うのですけど、仕事と趣味を両立する医療関係者も今後増えてくるのではないでしょうか。


――さて、「ハードコアゲーマー」であるということで、少しゲーム側に話題を戻して質問させていただきます。職業病として、ゲーム内の負傷やダメージ演出が気になることはありますか?たとえば『モンハン』で崖から飛び降りたり、格闘ゲームで殴りつけられたり……。

Aさん: いや、ゲームはあくまでゲームなんで、そこにマジレスするということは無いんですけど(笑)。「リアルだったら今のダメージを受けたら動けないな」とか「頭から落ちてるから、今は立ち上がれても後で頭痛とか嘔吐とか出てくるのでは」とか……そういうことを無意識に考えたりはしますね。

たとえば『モンハン』のドスファンゴなんかに突撃されたら、きっとトラックに轢かれたくらいの衝撃を受けるので、救急的な考え方だと「高エネルギー外傷」を負ったと言えます。正面からお腹に突っ込まれたら、脾臓破裂などのダメージがあるでしょうね。

――突進一発で救急治療室行きですね……。

Aさん: 他には……『ELDEN RING』での「発狂」というステータス。言葉は違うけど、「せん妄」と言って患者さんが錯乱してしまうことがあります。重症の怪我や病気など体にストレスがかかる状態で、ICUなどに長期間いると起こりやすい。高齢者などに特に多いです。

そうなると自分がどこに居るかわからなくなる。見当識障害が起きたりとか、幻覚とかが見えたりもするといった、精神機能の障害が起こったりします。

――目が光ったりは……?

Aさん: 目が光ったりはしません。レーザーも出ません。だけど暴れることはありますね。やむを得ず、数人がかりで押さえつけたりすることもあります。

――RPGなどでの状態異常で一番気になるものはなんでしょうか?

Aさん: 今の日本で、いわゆる毒状態になることは極めてまれな事態です。それでも救急の現場でたまにあるのは農薬だったり、あとは薬物過剰摂取、つまりオーバードーズです。

――そんなとき、薬草を飲むわけではないですよね?

Aさん: 胃洗浄といってチューブから水を入れて、胃の中を洗います。もし、時間が経っている場合は血の中にある毒の成分を薄めるため、点滴でひたすら水分を打ち込んでいきます。よっぽどひどい場合には、人工透析ですね。透析は体から血液を抜いて浄化して戻すので、腎臓のかわりになります。

薬で打ち消すということもありますが、かなりケースが限られてきますね。

――よくミステリーなどでも、毒の種類がわからないと対応できない、といった展開があったりしますからね。

Aさん: ほかにも『ELDEN RING』では「出血」というステータスは興味深いと思いました。不整脈を持っている人の中で、血をサラサラにする「抗凝固剤」を飲んでいる人もいて、そういう方は出血が止まらなくなったりもする。

「出血傾向」という状態がありまして。抗凝固剤を飲んでる人もそうなのですけど、血液が固まりにくい性質を持った方などは、観血的な処置の際……つまり血を出す処置を行う場合に、注意が必要です。

――なるほど。

Aさん: あとはやけど。医療用語では「熱傷」と言います。『モンハン』ではリオレウスのブレスを食らうとやけどですね。ブレスで吹っ飛ぶから、「高エネルギー外傷」も含まれるんじゃないかな?

やけど、熱傷も1度から3度までの区分があって、それで重症度合いが決まります。2度3度になると自然治癒では治りません。火にさらされた時間などが影響してきますので、一瞬の火球ではそこまでならないかもしれませんが。

――ということは、ドスファンゴはせいぜい「高エネルギー外傷」のみで済むところを、リオレウスはそれに「熱傷」を加えてくると……。『モンハン』では溶岩などもありますがそちらは……?

Aさん: 溶岩レベルでは処置云々でなく、溶けてなくなります。

――ですよね……! 火山地帯に居るモンスターなんかと戦う場合は、露出度の高い衣装など危険そうですね。

Aさん: いえ、火山地帯においては露出度の高い装備より、むしろ甲冑で身を包んでる方が危険。熱中症のリスクが高まるので、そこが心配ですね。

火山地帯に行くハンターには、クーラードリンクなんかよりポカリやアクエリを飲んで欲しいです。熱中症対策は、重要です。

――なるほど(笑)。医療現場で培った技術とゲームにおける技術に、共通点はありますか?たとえば機器操作のテクニックなど。

Aさん: 直接的にはあまり影響が無いんですけど、医療現場においては、「ゲームをやってる人間」の方が機器の扱いが上達しやすくなる……というのはあるかもしれませんね。たとえば胃カメラって、モニターを見ながら指先のボタンなどで操作するので、やってることはゲームと同じなんですよ。ボタン操作を理解する速度が全然違うということもありますね。

――特にハードコアゲーマーだと、様々なコントローラーやキーボードを使用するのでボタン配置に対応できるのかも。

Aさん: そうですね。ゲーマーの方が飲み込みが早いかも。何なら、本当にゲーム用コントローラーで操作させろと思うぐらい(笑)。それこそ、医療機器を扱い始めたころは「自分の馴染みのコントローラーで操作させろ!」と思ってました。

※参考イメージ

――患者さんとのやりとりで、「ゲーム好き」であることが役に立った経験はありますか?

Aさん: 「ゲーム」という趣味が、そういう意味で役に立ったことはあまりないですね……!内科って、ご高齢の患者さんが多いんですよ。ただ、患者さんの中には『ドラクエ』大好きなお爺ちゃんもいたりして……ちょっとだけゲームの話ができたり、ということはありました。

――先ほど「ゲーマーのほうが機器をすぐに扱えるかも」とお話しされてましたが、そのほかにゲームと医業の共通点はあるのでしょうか。

Aさん: ゲームに限らないかもしれないですけど、目標とか結果に向かってパフォーマンスを発揮するという、シンプルな構図は似ています。対戦ゲームだったら「勝つ」、競技シーンなら「優勝する」、『モンハン』なら「討伐完了する」。それを達成するために、逆算的にここをどうすれば突破できるかっていう攻略方法を組み立てていくやり方は、同じかな?ちょっと無理やりな話かもしれないですけど……。

――いえ、わかります。やっている作業の成果が目に見えるのはかなり先になるような、長期的な趣味や仕事は多くあると思います。その一方で「医療」や「ゲーム」は、結果がはっきり出てくるものですよね。

Aさん: そうですね。数ある「趣味」の中でも、音楽鑑賞やガーデニングなどと違って、先ほどのスタンスの話は「医療」と「ゲーム」の共通点と言えそうです。

――ゲーマーとして拡がっていく人間関係、医者として広がっていく人間関係。その中で、空気感の違いを感じたことはありましたか?

Aさん: プレイするゲームによって違うと思いますけど、対人だと「相手が嫌がることをやる」という点に頭を働かせることが多いですよね。医療だと……『モンハン』とかに近いのかな?「同じ目標に向かってチームで取り組む」という考え方が求められます。自分がこうすると、他の人がどう動きやすくなるとか。

――なるほど。対人だと全く違う……!

Aさん: 対人ゲームだと、むしろ逆かもしれないですね(笑)。

――「ゲーマーが注意した方がいい病」というものはあるでしょうか? たとえば「生活習慣を見直せ」とか、「軽い運動はしておけ」といったような。

※参考イメージ

Aさん: 何もないって言うとウソになります(笑)。たとえば座る姿勢ひとつにしても、腰痛に繋がりますし。あとは意外と侮れないのが、「深部静脈血栓症」。一般には「エコノミークラス症候群」として知られていますね。

同じ姿勢でずっと座ってると、脚の静脈の血の流れが鬱滞(うったい)して、血の塊が出来ちゃうんです。その血の塊が、運悪く心臓から肺に飛んじゃったりしたら、場合によっては命にかかわるような状況になったりする。そのため、座りっぱなしのときは時たま脚を動かしたり体操したりと、気をつけたほうがいいですね。

――ゲーマーだけでなく、デスクワーカーにも刺さりますね。

Aさん: そうですね。デスクワークの人は気を付けた方がいいです……!脚って「第二の心臓」とも言われてますから。脚の筋肉が動くことで血を心臓に送り返しているわけですし、筋肉を動かさないと一部分に血が鬱滞してるままになっちゃうんです。

人間って、絶対に重力の影響を受けながら生活してるじゃないですか。そのため、身体の下のほうから血液を運ぶというのは、重力に逆らうということ。それを実現する器官として、脚の筋肉は本当に重要なんですよ。


――急性期病院での勤務医として働く中で、特に「キツい」と感じたエピソードについてお聞かせください。

※参考イメージ

Aさん: やっぱり、いろいろありますね。重症の人を相手にすることが多かったので……。もちろん、医師としては出来ることを毎回全力で行っていくのですけれど。本人に「まだまだ生きたい」という気持ちがある中で、状態がどんどん悪くなってしまい、もう助けられない……なんてケースもあります。そういう、精神的にきついことは結構ありました。

集中治療室は「人を助けるための場所」であって、「容態の悪い方を静かにお見送りする場所」ではありません。医療リソースをすべてつぎ込んで助けようとしている状況で仕事を全うできないと、強い悔しさを感じます。

あと、患者さん本人とご家族の間で意見の乖離があるときも、結構辛くて。患者さんは「これは天命なんだ。静かに見送ってくれ」と仰っていても、ご家族は「どうしても助けてあげてほしい」と言うこともあります。その板挟みになるのは、辛いことです。もちろん患者さんとご家族の話し合いが最も重要で、その中で生まれた意向を尊重するのですけれども……やっぱり自分としては「何をどうするのが正解なんだろう」と悩むことはありました。

――勤務医というスタイルから、競技ゲーマーも含めての訪問医というライフスタイルに切り替えられて……。失礼な質問と思われたら申し訳ありません。今って、幸せですか?

Aさん: 今、すごい幸せですよ。こうやって「すごい幸せです」と即答できる余裕って、勤務医時代は無かったんです。訪問医になってから、そんなに月日は経っていないのですけど、それでも間違いなく「今の仕事に切り替えて良かった」と思いますし、幸せですね。

当時は、飼っていた猫に救われていたというのが大きくありました。愛猫と会うのが救いといった感じ。しかし今はなんというか、猫に対して「ようっ!」というフランクな間柄になったような……。相変わらず最高に可愛いんですけどね。

――猫との関係性が変わったのですね。「救い」から身近な存在になったと。

Aさん: そうですね。あとは「競技ゲーム以外のゲームを遊ぶ時間」が出来たのも、幸せです。コロナの時代だったというのもあるんですけど……勤務医時代は疲れきって、「たまに外に出る」という発想もなかったんです。ですが今はよく外出するようになって。色々なものを見る余裕が出来ました。

当時は「医者としてやるなら王道の勤務医」という考えしか持てなかったのですが、色んな意味で視野が広まった感じです。

――心にゆとりが出来たのですね。

Aさん: でも、大変な思いをしながら勤務医をしていた時期があったからこそ、今こうやって自立して仕事が出来ているのもあるし、病院勤務をしていたことに後悔は全くないですね。もちろん、そこでずっと働き続けて、精進し続けてる方には凄いリスペクトを持っています。

「勤務医は大変な仕事」という言い方になってしまいましたが、もちろんそれを苦にしてる人ばかりではなくて……。ストレスなく、万全のライフスタイルを築いている方も多くいらっしゃいます。

――勤務医も含めて、色んな生き方がある中で……「訪問医」という生き方にスイッチして、よかったと。

Aさん: 仕事の中でもゲームの中でも、追い詰められている時こそ広い視野を持って臨むことが大事だなと、思っています。対戦中でも自分がやられそうになっていくと、視野が狭まっていく。そんな中で試合全体を見ることが重要だと思ってます。

昔は人間関係などで悩むことも多かったのですが、そういう“しがらみ”もなくなったりしたので。今はすごく良い気持ちで「仕事」にも「ゲーム」にも取り組めている気がしますね。

――本日は“ハードコア医者ゲーマー”ならではのお話を聞かせていただき、ありがとうございました!


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《高村 響》
高村 響

多義的に面白いことが好きです 高村 響

兵庫県生まれ。子供の頃からゲームを初めとしたサブカル全般にハマっていたものの、なぜか大学にて文学研究で博士課程まで進むことに。本が好きで、でも憎い。純文学を中心とした関係性の中で生きていたが、思うところあってゲームライターに転向。その結果、研究のさなかゲームをしまくっていたことが恩師にバレつつある。 読んでくださっている皆様、どうぞよろしくお願いします。

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