ミリタリーRTS『サドン ストライク 5』の1行レビューは「これがリアルなWWII 塹壕で会おう」、メーカー公式キャッチコピーのとおりです。この1文は本作概要だけでなく詳細、そして批評も含んでいます。この言葉はメーカーの自画自賛ではありません。本作の長所/短所も告げています。リアリティを楽しめるかどうかはプレイヤー次第だということです(メーカーに倣い第二次世界大戦をWWIIと略す)。
もちろんビデオゲームにおけるリアルさは興味を引くのに役立ちます。本作も例に漏れずキャッチーな見どころとなりました。ビジュアルとサウンドが醸す没入感はFPSのAAタイトル級だと請け合いましょう。戦場もリアル志向で、ヨーロッパ戦線の有名な作戦にもとづくキャンペーン・ミッションを用意しました。プレイアブル陣営の枢軸軍(ドイツ)、連合軍(イギリス・アメリカ)、ソ連軍で合計300種類以上の兵器が登場するのですから、ジェーン年鑑をハンドブックにしたくなります。

特に効果音がすばらしいです。戦車の走行音や野砲の砲声、銃声が鳴りやまず、隣の部屋のお母さんに「どこかで工事してる?」と聞かれました。もちろん「戦争してる」と答えました。サウンドトラックもゲーム画面を思い出すほど聞き心地が良いです。ブダペスト・アート・オーケストラが演奏するメインテーマをはじめ、シンフォニックで緊張感のあるマーチが、祖国のために戦う兵士の活躍を飾ります。

こうした画面のリアルさだけでなく、本作はもっとディープにヨーロッパ戦線をつくりこみました。それが戦車とそれに随伴する歩兵・野砲の戦闘―― 装甲戦(Armoured Warfare)のリアリティです。撃ち合いと占位。偵察と陣地。そして刻々と変化する戦局。戦闘・戦術の2層で勝敗に直結したリアリティがあるのです。筋金入りのミリタリーファンはユニット操作に喜びを見いだすでしょう。ストラテジーファンはマイクロ管理を強いられて面倒臭いと感じるでしょう。

「利口で怠惰は指揮官に向いている。利口で勤勉は参謀に向いている」ドイツ軍人ことわざ(ゼークトの組織論)でプレイヤー層を区分したなら、本作は参謀向けのゲームといえます。ジャンル:ウォーシミュレーションですから利口は必要条件として、戦車の戦闘姿勢までも操作する勤勉さが求められます。過去のウォーシミュレーションゲームでは満足できないほど“勤勉”な人なら、『サドン ストライク 5』で願望を満たせるでしょう。これが本作の長所/短所です。一般人でも購入できる士官用戦術シミュレーターから何を得るかはプレイヤーの資質にかかっています。
諸君、やつらに装甲戦を教育してやろう
『サドン ストライク 5』の魅力はプレイ中に発見する戦場のリアリティです。戦車・機械化歩兵・自走砲の混合部隊――装甲部隊の運用から気付きを得るのが面白いです。タクティカルポーズ(ゲーム時間一時停止)で考えて操作する時間を設け、自動チェックポイントセーブとクイックセーブ/ロードで試行錯誤をうながしました。勝利するまで挑めば、その苦労を迫力のビデオ体験が報いるでしょう。

本作のゲーム内容やプレイングはすべてWWIIの戦闘教義にもとづきます。これを知らないと本作を楽しめないので概要を説明します。当時は電撃戦(Blitzkrieg)として知られる(※)装甲部隊・砲兵・航空支援の複合兵科攻撃が主流でした。この戦闘教義は大きく3つの要素があります。戦車とそれに随伴する歩兵・野砲の機械化、現場指揮官による近接航空支援の要請、指揮官への作戦権限委譲です。
※ 本稿は電撃戦を戦術以下とするが、日本では戦略も含めるケースがある。そのケースでは複合兵科攻撃による敵前線の一点突破と、突破後の機動戦(敵陣奥地まで進軍し要所・補給を断ったのち敵前線への包囲戦へ展開する)までを指す。

つまるところ、キャプチャーポイント制RTSと同じルールです。マップに点在する軍事拠点を確保して援軍ポイントを稼ぎ、増援購入または航空支援を活用して敵防衛線を突破、作戦目標を達成します。作戦目標や軍事拠点がある陣地は塹壕が構えます。その塹壕をどう破るか、または塹壕で敵の進軍をいかに防ぐか、装甲部隊と塹壕の戦いに焦点を置きました。それにあわせ、戦車と野砲の射程距離は視界範囲より広い、という調整で視界が広く隠蔽力が高い歩兵の有用性を高めています。

このオーソドックスなミリタリー・ストラテジーを土台に、本作はユニット操作のリアリティを追及しました。興味がなければあきれるほど細かい話なので例をしぼって紹介します。戦車は歩兵より視界が狭いのですが、ハッチを開けると戦車指揮官が上半身を出して視界がほんのわずかに広がります。当然、そのまま戦闘すると戦車指揮官が真っ先に倒れます。先の例は特殊用途ですが、「野砲は牽引しなければ移動できない」といったプレイングに関わるリアリティが多数あります。初見のプレイヤーは部隊移動すら思い通りにいかず苛立ちを募らせるでしょう。

そのリアリティにまつわるもどかしさを味わうゲームです。シリーズ新要素「スマート分隊」がもどかしさの克服に役立ちました。グループ化したユニット群の主要ユニットを認識し、アイコンとして画面に常時表示します。車両種類ごとにグループ化すれば火砲や対戦車車両を即座に選択できます。歩兵部隊は救護兵を含めてグループ化すれば生存率が多少あがります。スマート分隊の活用が兵科特徴の把握をうながし、ユニット操作のディティールを覚えていくという構図です。

スマート分隊を通じて兵科の役割とシナジーを知れば、次は正しく運用しようと考えるでしょう。知って、考えて、実行する、モチベーションの連鎖がリアルさを遊ぶためのカギとなるのです。そして、プレイを通じての発見が装甲戦への興味をかき立てるよう、圧巻のビジュアルとサウンドで成功と失敗を飾りました。自走砲で塹壕の歩兵を削り戦車で陣地を制圧する喜び。目を離した部隊が視界外から砲撃されて失う悲しみ。その感動のどれもがWWIIの装甲戦なのです。
ちくしょう!スターリン・オルガンだ!
本作の醍醐味、装甲戦の理念にもとづいたリアリティは戦闘・戦術の各層にあります。戦闘面は前章で述べたユニット操作の細かさが該当します。戦術面では次の2つです。采配の自由度が高い巨大マップ。プレイヤーの采配に反撃を試みる敵軍AI。この2つが合わさったサンドボックス型ミッションで、采配を立てる遊びは前作から大きく進歩しました。
シリーズ新要素、サンドボックス型ミッションの特徴を説明します。ひとつ目の特徴は巨大マップです。前作比で規模4倍のマップが進軍方向を大きく広げました。ミッション中の目標進展で発生するスクリプト型イベントを除けば自由に進軍できます。

進軍先の目安はマップに点在する陣地です。占領時のメリットから取捨選択できます。援軍ポイントを得る軍事拠点。戦闘継続に役立つ弾薬・燃料・修理資材。航空場を占領すれば敵軍の航空支援を無力化し、敵司令所を排除すれば敵の増援を封じることができます。それら陣地をどの方向から攻撃するかもプレイヤーが選びます。高所に野砲を並べてから敵を誘い込むもよし。川に仮設橋を架けて迂回し、塹壕が薄い方向を攻めることもできます。

2つ目の特徴はドクトリン・システム、プレイヤーの采配を補強する司令官+スキル選択です。ミッション開始前に選ぶ司令官がプレイングの大筋となります。スロットに装備するスキルでプレイングの長所を伸ばし短所を補います。スキルとスキル装備用ポイントはミッションのクリア報酬です。キャンペーンを進めるごとにプレイヤーの戦い方を強化でき、広大なマップを思い通りに攻略する遊びを引き立てます。ミッションごとに司令官とスキルを選べるのでひらめいた戦い方を試しやすいのも助かります。

3つ目の特徴は敵軍AIです。プレイヤーが考えた采配の出来映えを試します。敵軍AIは防衛志向ですが、プレイヤーが陣地を占領すると奪還すべく周囲の拠点から反撃します。反撃の頻度と強度はキャンペーン進行にあわせて高くなります。塹壕の位置も連携を取りやすい距離となります。塹壕を突破した後も周囲の砲撃がやまず、防衛線の厚さを表現します。進むにしろ止まるにしろ、周囲の視界を確保しておかないと敵の自走砲に手ひどく罰せられるでしょう。

本作のサンドボックス型ミッションはプレイヤー自身で答えを探す楽しみがありました。塹壕の位置や陣地の敵編成は固定なので失敗から学びやすいです。速力を使い防御の薄い箇所を攻撃する装甲部隊の強みを活用できます。そこから敵軍の反撃があり、迎撃のち進軍と応酬を繰り返し、戦局が形になるのも面白いです。装甲部隊が活躍する脚本を自分で書くかのような体験でした。だからこそ毎回驚かされます。砲声と銃声、爆発と土煙、そして既知と未知の情報がどっと押し寄せる戦局のリアリティに圧倒されます。
新兵だろうが最前線
以上でリアルなWWII、装甲戦のリアリティと述べてきた内容は、一般的な言葉で訳すと遊び方のコツです。ゲーム難度ノーマルでキャンペーン中盤の難関ミッション、実プレイ5時間強(+リトライで6時間)にもわたる激戦を生き抜くことができたならコツはつかんだといえるでしょう。コツをつかむまで失敗続きとなりますが、問題はその失敗の内容です。ユニットの操作や必要な情報を知る手段がなく、基本知識だと思えるような項目すら失敗から学ぶしかありません。士官学校を卒業する前に前線へ送られるのです。
本作の欠点は訓練場がない、この一言につきます。
タクティカルポーズの存在でギリギリセーフですが、融通の利かないユニット操作と付き合わなければいけません。基本操作は実戦中に初回説明があるものの、本作がプレイヤーに求めるリアリティへの順応を考えればヘルプページの熟読は必須です。補給車の資材再補充に専用コマンドを要すのですが、それも実戦で学ぶことになります。さらに車両の後退、野砲の砲撃位置指定、歩兵の手榴弾など、ユニット個々のコマンドは使い道の説明すらありません。ミリタリーの素養を求められます。

知りたい情報を得づらいUIも、タクティカルポーズの時間をいたずらに延ばしています。Altキー押下時のユニット詳細情報はアイコンの説明がなく推して測るしかありません。兵科やユニットの概要説明がないのもマイナスです。アイコンの意匠を知らないうちは、目的に沿うユニットを探すのに困ります。援軍ユニットを購入する場所は画面上の施設のクリックを要すため、施設の見栄えを覚えるまでは見つけるのに苦労しました。戦場でブリーフィングの再読ができない点は慣れないうちの大きな壁になるでしょう。こうした情報の欠落はミッション失敗に直結しないものの、考えを実行にうつすまでの時間がかかりすぎます。

以上の言及は一度覚えてしまえば以降のプレイで「あたりまえ」として扱える内容です。実戦で痛みを通じて学ぶからこそ、忘れようがないリアルなWWIIとなります。知ろうとする、使おうとする、勝とうとするモチベーションで強烈な学習体験を作りあげました。その結果、新兵を最前線に送り込んで生き残れば使い物になる、という大戦末期で敗色濃厚な枢軸軍めいたシチュエーションを味わいます。初陣で多くのプレイヤーが「訓練場で試したかった」と臨終の言葉を残すことになるでしょう。

細かな不満点として兵器の歴史的背景説明、フォトモードの未実装を述べておきます。本作は戦車、野砲、そして歩兵が主役です。その主役のプロフィールが分からないままでは戦場の没入感が削がれます。本作を通じてWWIIが好きになるのはとても難しいでしょう。フォトモードは筆者の好みゆえ批評点に含みませんが、本作の豪華なビジュアルを戦場写真として残したかったので残念です。
だから戦車はロマンになる
『サドン ストライク 5』は初回ゲーム起動時に迷うことなくオプション設定で枢軸軍シンボルを黒十字から鉤十字に変更するような、史実と戦闘の描写を重視する人向けゲームです。ビジュアル・サウンドだけでなく、ゲームプレイでもリアルなWWIIを作りあげました。その結果、ビデオゲームとしては面倒臭いと感じる操作が多々あります。その面倒臭さをロールプレイとして受け取れたなら、ミニチュアゲームやサバイバルゲームの根底にある「ごっこ遊び」をトコトン味わえます。

ゲーム初回プレイの印象は非常に悪いものの、プレイ時間が20時間を越えると楽しくなるでしょう(個人差はあります)。装甲部隊の運用を学ぶ努力を重ねた結果、戦車だけでなく野砲、兵士の兵器に愛着を持てるからです。その愛着はどれかひとつが欠けても勝てません。だからこそ、兵器が好きになるまでの時間を短縮できなかったのが惜しまれます。ヨーロッパ戦線に詳しくない人が本作を遊ぶなら他媒体での予習を強く勧めます。推奨書として『黒騎士物語』『カンプグルッペZbv』を挙げておきます。

シリーズ未経験で本作に挑むなら、いかなる形であれ真摯に向き合ってください。なぜならそれが、兵士が司令官に求める資質だからです。取っつきの悪いゲームをひたむきに挑むのは多大なモチベーションを要するでしょうが、戦車への興味あれば大丈夫です。ヨーロッパ戦線は戦車が最高に輝いた戦場です。プレイで戦車だけでなく野砲や兵士の活躍を知れば、戦車が輝いた理由を実感できるでしょう。それこそが戦車に抱くロマンです。
Game*Spark レビュー 『サドン ストライク 5』 PC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S 2026年4月23日
この戦場に真摯さの欠如は許されない
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GOOD
- 戦場のビジュアルとサウンド
- 戦局と兵器のリアリティ
- 兵科の学習をうながすスマート分隊
- プレイヤー主体のサンドボックス型ミッション
- 歴史的シンボルのON/OFF機能
BAD
- 兵科座学なし
- 戦闘訓練なし
- 士官教導員なし/li>
¥6,536
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)












