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(ネタバレあり)『MHR:サンブレイク』キュリアはなぜ血を吸うのか? 吸血する生物の実態とモンスター狂暴化現象の考察【ゲームで世界を観る#28】

吸血はタフな生物にのみ許された禁断の果実。

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文中の動画には実際の出血場面が含まれます。苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

『モンスターハンターライズ:サンブレイク』でモンスターの暴走を引き起こす原因となっているのが、不気味に飛行して獲物にまとわりつく「キュリア」という小型生物です。当初はメル・ゼナが宿主と目されていましたが、メル・ゼナ討伐後に新たな宿主を求めて周辺の生物を食い尽くし、本当の宿主であるガイアデルムを呼び覚ましました。他の生物にとってははた迷惑な存在ではあるものの、吸血行為は種の生存戦略としてとても合理的な手段なのです。

吸血生物といえばヒルや蚊などほとんどが虫系ですが、イメージとして真っ先に上がるのがコウモリではないでしょうか。吸血鬼とセットで出てくるのでそうなるのも仕方ありませんが、実際は吸血を行うコウモリはほとんどおらず、しかも南北アメリカにいる3種類しか確認されていません。そもそも欧州に吸血コウモリは存在しないのです。本来は植物食であり、果物を主な食料としています。

ただし、吸血はしないものの狂犬病の宿主でもあるため、発症したコウモリが凶暴化して人間を含む他の動物に噛みつくことはあります。「噛みつかれる」と関連付けられる吸血鬼や狼人間は狂犬病がイメージの元とされており、ニンニク臭や月光などの知覚刺激を嫌うという点で狂犬病の症状と一致します。そのため、噛みつくコウモリは恐ろしいという伝承が生まれるのもごく自然なことでしょう。

その一方で、生きていくための行動として実際に“吸血”を選択した種もあります。コウモリの他にはガラパゴス島に生息する「ハシボソガラパゴスフィンチ」という鳥がおり、カツオドリに噛みついて流れ出た血を飲むことが知られています。

吸血行為は狂犬病をはじめとする病原菌や寄生虫に感染するリスクがありますが、それでも吸血にはメリットがあり、それは「栄養を安定して入手できる」という点です。

前述の通りコウモリは本来果実を主な食料源としていますが、他の動物とも奪い合いになる上、季節によっては見つからない場合もあります。それに対して動物の血であれば年間を通して得られる上、タンパク質、ミネラルなどの果実から摂りにくい栄養もあります。

ほとんどが水分で決して栄養豊富とは言えませんが、肉食動物のように仕留める必要も無く、ヒットアンドアウェイでいいので生存率も高い。寝込みを襲えば反撃される危険さえありません。しかも体格差が大きいほど気づかれにくく多く吸える。戦う牙と爪を持っていない草食、昆虫食の生き物がより確実に栄養を多く得る手段として、吸血は有効であると言えるでしょう。

吸血する哺乳類として唯一コウモリが成功した理由は、その免疫力の高さにあります。ガラパゴスフィンチはカツオドリのみをターゲットとするためリスクは最小限ですが、ナミチスイコウモリは哺乳類全般から血を吸うため、相応に多種多様な病原に感染します。しかしコウモリは飛行機能によって恒常体温がかなり高く、高熱による炎症を抑制する体質を持っているので、免疫反応による症状を弱く抑えられます。

つまり、他の生物には危険な病原を受けても衰弱することなく、そのまま活動を続行することが可能なのです。コウモリの寿命は約50年ともいわれ、体の大きさや環境から考えるとその強靱さはずば抜けています。

マラリアなどを媒介する蚊も含め、吸血生物には危険な病原への耐性があるからこそ、感染しても死なずに他の生物へうつせます。ですが吸血する側にとっても、病気の拡散で獲物が死んでしまうのはむしろ困ること。ノミやシラミなどの寄生するタイプにしてみれば、宿主となる大型動物の迷惑にならない程度にとりついて、いつでも吸えるようにできるだけ長く生き続けてもらった方が得です。

そのため、病気の媒介は攻撃的にわざとうつしているのではなく、自身が病気に強くなった結果そうなってしまったと見た方が良いでしょう。うつされる側には迷惑な話ですが、生物がタフに生き残る過程で手に入れた強さだと考えると、単に怖い、不気味という見方も多少は変わるのではないでしょうか。

キュリアは見た目からフルフルやギギネブラと祖を同じくし、それらの幼体がする吸血行動に特化して進化したものと考えられます。捕食機会の少ない地下空間でガイアデルムのような大型古龍に出会えたならば、成長して捕食するよりも小型化して寄生した方が生存には有利でしょう。

古龍を母体にしつつ他のモンスターの血液も集めながら繁殖、同時にガイアデルムの餌となって宿主の維持、成長を促した。その際にゴア・マガラの狂竜ウイルスなどを持ち帰ります。これをガイアデルムに媒介することによって古龍の血と混ざり、劫血やられを引き起こす新たな病原体が発生し、地上モンスターを凶暴化、傀異化。そこで偶然耐性を持っていたメル・ゼナは逆にそれを利用できた。

要するに、「T」とか「G」とかどこぞの傘屋さんが関わっていそうな生物災害が、様々な病原体を古龍に運ぶキュリアによって自然発生した――という仮説です。今のところキュリアのみが感染源であることから、古龍の血を直接吸っていることが変異を起こすのに関わっているのかもしれません。

物語はガイアデルムを倒して一応終結しましたが、傀異化の脅威はその後も続きます。モンスターを狩り続けても、無数のキュリアを根絶しない限り事態は収束しない。ガイアデルムを倒したことで事態を悪化させたとしたら……?そう考えるとなんだか後味が悪いですね。

ちなみに、コウモリは新型コロナウイルスの発生源だとも言われていましたが、保菌していても平気だったその免疫力から、新薬開発の手がかりを探す研究が進められています。危険な病気を媒介する害獣から医療発展の立役者に変貌……コウモリにもそんな日がいつか来るかも?



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