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Modが消えるとき―事例からみる課題点、ModのDLは見つけたときがタイミング?【年末年始特集】

PCゲームをプレイしているとModという言葉を必ず聞いたことがあるでしょう。事例別にModにまつわる問題を見ていきましょう。

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Modが消えるとき―事例からみる課題点、ModのDLは見つけたときがタイミング?【年末年始特集】
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PCゲームをプレイしているとModという言葉を必ず聞いたことがあるでしょう。「Modification」を語源に持つModとは、ゲームの内容を変更する、第三者によって作られたデータのことを指します。

古くからあり、現代にもその血を残すのは『DOOM』や『Quake』のエンジンを利用して大きなシステムを付け加えたり、別のゲームにしてしまうものでしょう。Steamでもそこから派生した作品をいまでも多く見るだけでなく、2016年版『DOOM』『Doom Eternal』では「Brutal DOOM」などからの影響を強く見ることができます。そして、『HALF-LIFE』でお馴染みのSourceエンジンから生まれた『Counter-Strike』、『Warcraft III』から生まれた『Dota』、『Arma 2』から生まれた『DayZ』、『Arma 3』から生まれた『PUBG: BATTLEGROUNDS』はいずれもその後のゲーム業界の様子が書き換わるほどのきっかけを作り出した成功者と言えるでしょう。

しかし、「Modification」を日本語で書くと「改造」。一気に胡散臭い、ともすれば不法行為のように見えてきました。そこで、多くのゲームが参考にする(せざるをえない)アメリカの状況を見てみましょう。同国ではフェアユースという著作権における考えがあり、非営利であれば著作物の流用には比較的寛容だという通説が根底に流れています。さらには、作品のModを製作することで実際の開発者としてスカウトされたり、逆にその作品自体が企業に買収されることで形を変え販売に繋がるというパターンもよく見られた光景です。最近であれば『The Elder Scrolls V: Skyrim』のModでもあった『The Forgotten City』などもそうですね。近年ではMod開発者は元作品のメーカーに行く代わりにインディーで自身のオリジナルゲームを出すケースもよく見られますが、これもその類似例でしょう。メーカー自身がMod開発用のツールを提供する例が近年絶滅の危機なのか、と言われればそんなこともありません。多くのModderや、もちろんユーザーたちもModは正当な権利であると認識して使っているのではないでしょうか。

一方で、フェアユースは言われているほどには万能の免罪符ではありません。ゲーム自体のModサポートも常に完璧なものではないでしょう。そしてなにより、Modを作っているのは他ならぬモニターの前の人間です。一般に思われているほどには「Mod」は盤石ではないのです。本記事ではModにまつわる様々な「利用不可」ケースを見ていきましょう。

アップデートで使用不可となる

こちらは以前の記事でも紹介した『スカイリム アニバーサリーエディション』でも起きた事例です。アニバーサリーエディションと同時に行われた本体アップデートの内容がゲームの根幹構造に及んだため、定番と言われたModが使えなくなってしまうことがありました。このケースでは起きませんでしたが、特に日本ではゲーム本体に対するアップデートが行われた場合、本体自体に何らかの手段でパッチなどを施すような日本語化Modが使えなくなるパターンが多いのではないでしょうか?


この事例の場合は、Modの利用者も多い人気タイトルだったこともあり、旧バージョンの本体に差し戻す仕組みが作られたほか、定番Modの新たな本体への対応も進みました。ただし、これは好例であって、他の作品の例では、本体の更新に取り残されてしまったModが声明もなく公開を終えてしまったことがあります。ただ、同じような事例でも後述するような事例が重ならなければ、公開停止の直接の原因となることは少ないでしょう。(使えなくなるのには変わりませんが……)

訴訟されてしまう

ただアップデートで非公開になるだけや、作者が更新を停止しただけなら誰かが引き継いだり後継がでることもありますが、メーカーが鉄槌を下した場合は話が変わります。古くからのコアゲーマーならばまだ覚えている方も多いでしょうが、『Grand Theft Auto: San Andreas』のとあるModは、当時、各国の議会も巻き込んだ大問題となりました。

当時のRockstar GamesはModには割と寛容であると見られており、本作品以前にもかなりの数のModが公開されていました。そんなところ大問題となったのは、本体にもともと収録されていた「没データ」を復活させる、ただそれだけのModでした。その没データとは「セックスミニゲーム」。完全に一から作られたものではなく、本体に含まれた没データであったことも事態の大炎上に拍車をかけたのか、本作品のESRBレーティングが成人指定に引き上げられる事態にまで発展しました。

当時はオンライン販売がまだメジャーでないこともあり、特に『GTA』クラスの超人気タイトルともなれば広告規制や販売方法がアダルトショップに限定されてしまうレーティング変更の影響は計り知れず……この致し方ない状況に、公式が当初、「Mod製作者が勝手に作ったコンテンツ」としたことは、後々まで続く禍根を抱えることになってしまいます。最終的に、このModに絡んだ大騒動は訴訟問題にまで発展した後、コミュニティも巻き込まれたことでModは公開停止の憂き目とあうことになりました……。

その後、Rockstar Games側は該当データ自体をパッチなどで削除、後のパッケージ版でも最初から関連データを削除することで沈静化を図りました。なお、この事例は後にも様々なゲーム内での性交渉描写にまつわる議論において、該当Modの名前を取った「Hotcoffee」という言葉や、「あの大騒ぎをまた引き起こしてしまうものではないか?」といった文脈で触れられることがあります。


この事件の影響か、チート対策が密に求められるオンライン要素の隆盛が原因かは定かではありませんが、その後はシリーズ作品以外でもRockstar作品のMod対応は昔ほど寛容ではなく、Modの公開に関わるトラブルが続いている印象が拭えません。

そもそも第三者の権利も侵害している

画像は『ベルセルク無双』より。「ドラゴン殺し」の参考であり事例とは無関係。

『スカイリム』だけでなく、Modが使えるようなゲームだと、アイテムやゲーム内のオブジェクトを追加・改変するのは定番です。特に中世ファンタジー作品であれば「ベルセルク」の主人公ガッツが振り回すドラゴン殺しなどは、見た目のインパクトも強く、多数のゲームModでその姿を見ます。他には『Left 4 Dead 2』などゲームのプレイヤーモデルを好みに改変してしまうものもよくみます。

ただし、自分で作った3Dオブジェクトやテクスチャをゲームに取り込んだならまだしも、中には他のゲームからテクスチャやオブジェクトを拝借し、手を加えたものを使ってしまっていることがあります。言うまでもなく他者の著作物を許諾なく流用するのは違法行為、もしくは不法行為です(有名所では『S.T.A.L.K.E.R.』のデータなど、幅広い流用が認められているケースはあります)。そもそも、元のリソースが自作であったとしてもこの種の二次創作行為そのものが、こと日本においてはPCゲームコミュニティを離れた途端に議論の対象となり得るでしょう。

実際のところは、一見無法地帯にも思える海外でも、完全にその手の議論や視点が排除されてしまったわけではありません。特に別Modderの作品の無断流用・転載などのケースを中心に日々、大小様々な議論が巻き起こっていることでしょう。いずれにしても、個々のケースにおいてコミュニティが「酷い」と一度判断すれば対象となったModが排斥されることは珍しくはありません。


なお、Modとも無関係といえないのが、アセット(販売素材)の正当性です。前述したように、正当な権利のある素材であればModに利用することは問題ないでしょう。昨今では思わず使いたくなるほどのハイクオリティなアセットも日々増え続けています。ですが、アセット自体が違法なものであったら……?

少なくとも、違法なアセットの製造者が購入者のことを心配することはないでしょう。これは商業ゲームでも度々問題となり、『7 Days to Die』や『ファイナルソード』は一時販売が取り下げられるほどの騒ぎとなりました。

金銭や倫理的問題が絡む

2022年には、既に寄付や投げ銭という形でクリエイター側も報酬を得られるようなプラットフォームが多数存在しています。日本でも「note」や「PixivFANBOX」といったようなサービスが既に一般化したと言っていいでしょう。

「Patreon」のような同様の大手サービスが先行して盛況の海外では、既に、Mod製作者がサブスクリプションでの登録と引き換えに優先的に最新Modを公開していたり、ニッチなゲームのModを専売的に細々と公開しているような例もあります。

ですが、アメリカにおけるフェアユースの概念は非営利であることが前提であり、Modが根付いている『Sims』のような作品では発売元のEAからも「(最終的に一般向けに無料公開するなら)課金者向けの先行配布は許すが販売は許さない」といったような声明がでています。同様のルールを定めているようなModコミュニティも珍しくありません。

合法性を前提としてもなお答えを出すことが難しい領域ではあるものの、開発元であるBethesdaだけでなくValveをも巻き込んだ『スカイリム』の有料Modの事例は記憶にあたらしいものです。当時、リターンを求める一部製作者とユーザーコミュニティとの軋轢が生まれたことを考えれば、これから大きなバックラッシュが起こるのか、それともなし崩し的に有料Modが一般化してしまうのか、先行きはまだ不透明です。

Ludovic Bertron from New York City, Usa(CC BY 2.0)

別件では、昨今ポリティカルコレクトネスが絡む倫理的議論を引き金としてModの公開状況に影響が出たケースも観測されています。例を挙げると、『スカイリム』の定番Mod「SSE Engine Fixes」もNexusModの対応への抗議として、公開が一旦取り下げられる事態となりました。これら以外でもユーザーと開発者とのトラブルを原因とした公開停止事例なども少なくはありません。

ユーザーコミュニティは健全たれ

もはや、一部ゲームにおいてModは、無くてはならない物になっています。今ではSteamワークショップなどで簡単に導入できるようになり、なかにはコンシューマー機でもModが適用できるようなゲームも出てきています。しかしながらメーカーとの関係もそうですが、ユーザーがある程度健全にルールを守ることでModは成り立っています。日本では改正著作権法の影響もあってかプログラム自体を改変するようなModを出すことが難しくなりましたが、ユーザーの柔軟な思考などでも日々色々なModが出てきています。

必要不可欠でありながらも、Modは少なからず微妙なパワーバランスのもとに成り立っているのを事例からわずかでも感じ取ってもらえたら幸いです。Modはいつまでも安泰ではなく、かといって消えてしまったものを責めるのも誰も幸せになれないでしょう。ダウンロードは必要に応じてお早めに。

一方でMod製作者側にあっては、どのようなModであれ、何かを作って公開するのがクリエイターへの第一歩です。一方で先人の事例を見ることで、より多くの人々がより長く楽しめるModの世界を広げていく一助となると思います。


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《rate-dat》

面白そうなことに頭を突っ込んで火傷してます rate-dat

本業はデザイナー。 印刷物やWeb、写真加工など色々とやっています。

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