【特集】スタートダッシュ大失敗の西部開拓シム『Wild West Dynasty』。原因は「壮大な荒野を再現し過ぎた」せいか? | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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【特集】スタートダッシュ大失敗の西部開拓シム『Wild West Dynasty』。原因は「壮大な荒野を再現し過ぎた」せいか?

Toplitz ProductionsとMoon Punch Studioが先ごろ公開したアメリカ西部オープンワールドシム『Wild West Dynasty』。主人公はガンマンになり、壮大な荒野に自分のテリトリーを建設するという内容です。

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【特集】スタートダッシュ大失敗の西部開拓シム『Wild West Dynasty』。原因は「壮大な荒野を再現し過ぎた」せいか?
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Toplitz ProductionsとMoon Punch Studioが先ごろ公開したアメリカ西部オープンワールドシム『Wild West Dynasty』。主人公はガンマンになり、壮大な荒野に自分のテリトリーを建設するという内容です。


このタイトルの発売前の期待度は非常に高く、シネマティックトレーラーも素晴らしい出来栄えでした。しかしいざ蓋を開けてみると……日本時間2月22日朝の時点で、774件のレビューのうち好評はわずか32%。全てのレビューは「やや不評」と出ています。一時は「非常に不評」の表示が躍り出ていた有様です。

こ、これじゃ記事書けねぇよ!

アメリカが確立された時代

実はこの記事を書くにあたり、編集部とは「アメリカの名作西部劇と話を絡めた『Wild West Dynasty』の時代背景の解説」というテーマを取り決めていました。

アメリカが良くも悪くも「今現在のアメリカ」になったのは、西部開拓時代があったから。19世紀は科学の大進歩により、人間の行動範囲が格段に広がりました。鉄道、電信、エンジン付きの船。欧米各国は強大な工業力を生かしてアフリカ、アジアへ進出し、植民地を拡大します。

それと同時に、アメリカ合衆国の白人たちは「未開の地」の開拓を本格的に開始しました。もちろん、ここで言う「未開の地」とはあくまでも白人の側から見た状況に過ぎません。西部開拓時代は、先住民をその土地から追い払う行為でもありました。

ローラ・インガルス・ワイルダーの文学作品「大草原の小さな家」はテレビドラマになっていますが、この作品は原作とドラマとでは価値観の異なる部分がありました。原作の1作目「大きな森の小さな家」が出版されたのは1932年。しかしドラマが制作されたのは70年代後半です。その頃には有色人種の公民権運動が社会的ムーブとして浸透し、それまでの西部劇のように「先住民はいきなり駅馬車を襲う野蛮人」という描き方はできなくなりました。

ドラマ版「大草原の小さな家」では、黒人差別や先住民との和解、ユダヤ人や圧政を逃れてやって来たロシア人との交流も描かれています。そして当時の西部劇には珍しく、銃はあまり出てきません。マイケル・ランドン演じるインガルス一家の大黒柱チャールズが、ウォールナット・グローブの農場や製材所でひたすら働いています。実はこの部分だけは『Wild West Dynasty』にも共通しています。

言い換えればこのゲーム、西部劇なのに銃がなかなか登場しないということです。

荒野を歩行するゲーム

もちろん、シナリオを進めればいずれ銃は出てきます。しかしチュートリアルを兼ねた最初の段階では、主人公はまったくの丸腰。建築やサバイバルのイロハを教えてくれる親切な農場主の家を勝手に物色しても、ホルスターは出てきますが銃はナシ! 筆者が見落としているだけなのでしょうか? そうだとしても、せめて銃はホルスターと同じところに置いてほしいなぁ……。

これは非常にもったいない。チュートリアルでガンアクションを体験できるようにすれば、もっと面白くなるはずなのに。

レビューでは「グラフィックの安っぽさ」も指摘されていますが、筆者の場合はそのあたりは重要と捉えません。たとえセガサターンのようなカクカクポリゴンでも、面白ければそれで良し。しかし『Wild West Dynasty』は「西部の荒野」を下手に再現しているからこそのテンポの悪さがあります。

メインシナリオを進めるために隣町へ移動しようとしても、マップがあまりにも広いため人間の2本足では時間がかかります。シフトキーのダッシュは、スタミナが尽きればそれで終わり。いや、確かにアメリカ内陸部は今もこんな感じですよ? アメリカで生きるのにクルマが絶対不可欠なのは、そうした地理的理由もあります。しかしそれをゲームで再現すると、プレイ時間の大半を「オッサンの歩行」に費やされる内容になってしまいます。しかもこのオッサン、丸腰で馬にも乗ってないからカウボーイでもなんでもない……。

その上、岩が迷路のように立ちはだかっている部分もあるため、余計に時間がかかります。あまりモタモタしていると飢えや渇き、体温低下がオッサンの命を脅かすため、できるだけ早く目的地へたどり着く必要があります。

せめて野生動物くらいは出てくれ!

壮大な荒野をトボトボ歩いているうちに、筆者はこんなことを考えました。

「そういやこの荒野、野生動物がいないよな……」

町や農場に行けば家畜を飼っている家を見かけることができますが、野生のバッファローやコヨーテの姿はまったくありません。このゲームは狩猟もできるため「野生動物は一切出てこない」というわけでもないのですが、「狩りをしていない時にふと野生動物に出くわす」なんてことは、どうやらないらしく……。

荒野を歩いている最中に通りすがりのバッファローにエンカウントしてもいいはずで、不用意に近づくと頭突きを喰らって大ダメージ……という要素もあればもっと楽しいゲームになるでしょう。

しかし実際は、オッサンが町の住民のパシリになりつつも果てのない荒野をいつまでもいつまでも歩いている「ウォーキングゲーム」になっています。なら街づくりをすればいいじゃないかと言われそうですが、正直こんな環境で街づくりに臨んでもワクワク感がまったく発生しません……。


ドラマ版「大草原の小さな家」は、インガルス一家がまさに西部の大地を開拓する物語です。そこには家族の絆、友人との協力、そして家屋を建てた時の達成感がありました。しかし『Wild West Dynasty』には……何だろう、そうしたものがほとんど見当たらない……。

眼力だけは微妙に強い無表情のキャラが、ただただハンマーを振り回すだけで家が建つ……というシーンが淡々と繰り広げられます。ウォールナット・グローブの製材所で楽しそうに働いていたマイケル・ランドンの演技がいかに素晴らしかったのか、改めて感じることができました。せめてあのくらい元気よく動いてくれよ、オッサン!

大きな期待と共に配信が開始されつつも、問題が山積みな状態の『Wild West Dynasty』は、Steam/GOG.com/Epic Gmaesストアにて通常価格3,499円/26.99ドルで配信中(リリース記念の20%オフセール実施中)です。


《澤田 真一》

ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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