【新作続報記念】『Fable』シリーズの軌跡を振り返る―今思い出す、善悪と自由をプレイヤーに委ねたRPG | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

ハードコアゲーマーのためのWebメディア

【新作続報記念】『Fable』シリーズの軌跡を振り返る―今思い出す、善悪と自由をプレイヤーに委ねたRPG

善と悪とは表裏一体、物語には決して記されない世俗にまみれた英雄の姿がここにある。

連載・特集 特集
【新作続報記念】『Fable』シリーズの軌跡を振り返る―今思い出す、善悪と自由をプレイヤーに委ねたRPG
  • 【新作続報記念】『Fable』シリーズの軌跡を振り返る―今思い出す、善悪と自由をプレイヤーに委ねたRPG
  • 【新作続報記念】『Fable』シリーズの軌跡を振り返る―今思い出す、善悪と自由をプレイヤーに委ねたRPG
  • 【新作続報記念】『Fable』シリーズの軌跡を振り返る―今思い出す、善悪と自由をプレイヤーに委ねたRPG
  • 【新作続報記念】『Fable』シリーズの軌跡を振り返る―今思い出す、善悪と自由をプレイヤーに委ねたRPG
  • 【新作続報記念】『Fable』シリーズの軌跡を振り返る―今思い出す、善悪と自由をプレイヤーに委ねたRPG
  • 【新作続報記念】『Fable』シリーズの軌跡を振り返る―今思い出す、善悪と自由をプレイヤーに委ねたRPG
  • 【新作続報記念】『Fable』シリーズの軌跡を振り返る―今思い出す、善悪と自由をプレイヤーに委ねたRPG
  • 【新作続報記念】『Fable』シリーズの軌跡を振り返る―今思い出す、善悪と自由をプレイヤーに委ねたRPG

2023年6月12日、Xboxの関連情報を配信する「Xbox Games Showcase」にてXbox Game Studios販売、Playground Games開発のファンタジーアクションRPG『Fable』シリーズの新作映像が発表されました。

公式サイトによれば、対応コンソールはXbox Series X|SとPCで、リリース初日からXbox Game Passに対応予定となっています。本作についての情報は2020年にアナウンストレーラーが発表されてから大きな動きはなく、今回の発表はそれから約3年ぶりとなる続報となりました。『Fable』公式Twitterは2020年の開設年に行った初ツイート以来、長らく沈黙を貫いてきましたが、今回ようやく2回目のツイートが行われた形です。

現在のところ、本作のタイトルはナンバリングや副題の付かない『Fable』となっており、2005年の初代『Fable』と同様のタイトル名です。こうしたシンプルなタイトルが付けられる場合、概ねこれまで続いたシリーズのリブート作品であることが多く、公式サイトでも「伝説のフランチャイズの新たな始まり」と銘打たれるなど、シリーズの仕切り直しとして製作されていることが伺えます。

スピンオフタイトルを除けば、実に10年以上続編が途絶えていた『Fable』シリーズにとって本作は待望の新作です。本稿ではこの新たな『Fable』の登場に先立ち、そもそも『Fable』とは一体どんなシリーズだったのか、これまでリリースされたタイトルを紹介し、その足跡を辿っていきます。

『Fable』

『Fable』は2004年(日本では2005年)にXbox向けにリリースされたファンタジーアクションRPGです。『ポピュラス』や『Black&White』といったヒット作を手がけ、ゲームデザイナーとして著名なピーター・モリニュー氏が関わったRPGとして注目を集めました。古代イギリスをモチーフにしたファンタジー世界「アルビオン」を舞台に、苛烈な境遇に巻き込まれた主人公が「英雄」となり、冒険するうちに自身の運命を知っていくという物語を持っています。

なお『Fable』の世界の「英雄」とは字義通りの意味ではなく、「英雄ギルド」と呼ばれる組合に所属する傭兵、何でも屋のような職業を指して使われています。英雄は「ウィル」と呼ばれる魔法と剣や弓といった武器を駆使し、アルビオンの民から仕事を請け負って生活しています。本作の特筆すべき点は、使い古された言葉で言うなら高い自由度にあります。といっても本作の物語は一本道な進行で、かつ『Grand Theft Auto』(『GTA』)シリーズのようなシームレスなオープンワールド型のゲームでもなく、エリア切り替え方式のマップとなっています。

『Fable』における自由度とは、社会に対する主人公の振る舞いに幅があるということを指します。本作のイベントやクエストは必ずしも勧善懲悪ではなく、善と悪のいずれかを選ばせるようなものが多くを占めています。また、多彩に用意されたアクションを用いてNPCたちと交流することができ、その都度さまざまな反応が返ってくることも本作の特徴のひとつです。

たとえば人助けや寄付といった善行で名声を得て、かっこよくポーズを決めてみれば、彼らは「いいぞ!」「素晴らしい!」という風に英雄を称賛し、反対に犯罪で悪名を轟かせ、公衆の面前でおならやゲップをすればブーイングを食らわせてきたり、恐れおののくようになります。なお、NPCは交流を重ねるうちに英雄に対する好感度が上がっていき、指輪をプレゼントすることで結婚することもできます。

街の秩序を守る衛兵たちは英雄の行いに目を光らせていますが、彼らは賄賂や罰金を渡すことで少々の悪事には目をつぶってくれます。他人の家にあるタンスをどうしても調べたいときには、こっそり忍び込むか、あらかじめ衛兵に袖の下を握らせておきましょう。あるいは民家に住むNPCを亡き者にして空き家を購入すれば万事解決。家を貸し出すことで家賃収入を得るといったこともでき、お金さえあれば街中の家を全て購入し尽くすといった不動産王プレイも可能です。

英雄に設定された善悪のゲージの増減に応じてその容姿は変化し、聖人ならば頭上に天使の輪が現れて蝶が舞い、邪悪に染まれば頭にツノが生えてハエがたかるようになります。また、イベントの中には善悪の値がクリア条件となっているものも存在します。

画像は『Fable Anniversary』より

筆者が本作について最も面白いと感じている部分は、英雄に影響されたNPCが様々な行動を取る点です。彼らに対してビールを与えて泥酔させたり、旅に同行させて山賊と素手で戦闘させたり、そうこうしているうちにNPC同士の殴り合いに発展したりと、NPCの行動がドミノ倒しのように連鎖し、混沌とした状況が発生していく様が見られるのが本作の魅力だと思います。

少し下品で愛らしいアルビオンという箱庭世界にプレイヤーはどう働きかけ、英雄はどのように生きるのか。RPGでありながらライフシム的でもあるのが『Fable』というゲームなのです。

画像は『Fable Anniversary』より

本作の日本語版が登場した2005年当時は、『GTA』シリーズが流行の兆しを見せつつあったものの、まだまだ海外のゲームがコンシューマー向けとしてリリースされることは多くありませんでした。しかしXboxというハードは、その出自ゆえに海外のゲームが多くリリースされ、『Fable』のように日本のRPGではまず見ることのできない海外ゲーム独特の表現に触れることができました。また、当時のXboxはそもそもRPGが少なかったこともあり、本作は日本のXboxユーザーにとって非常に大きい存在感を放つタイトルとなりました。

画像は『Fable Anniversary』より

なお、本作に追加要素を加えてWindows PCに移植した『Fable The Lost Chapters』(『TLC』)が同年にリリースされたほか、2014年には『TLC』の内容を含んでXbox 360向けにリマスターした『Fable Anniversary』がリリースされており、現在はMicrosoft StoreSteamで配信中。いつでもシリーズの原点に触れることができます。

『Fable II』

続く『Fable II』はゲームハードがXbox 360に移行した2008年にリリースされました。前作から500年後、一部の地名を残しつつも産業が発展を遂げたアルビオンでは銃火器が登場し、かつての剣と魔法の時代や英雄の存在は伝説となっています。英雄の末裔である主人公は姉とともに貧しい暮らしをしていましたが、その出自に目を付けた権力者に姉を殺され、過酷な運命を歩むことになります。

今作からは主人公の性別を選べるようになったほか、配偶者との間に子どもが生まれるようになりました。フィールドがエリア切り替え方式であることは変わりませんが、プラットフォームが新しくなったこともあって、それぞれのエリアはより広大になり、オープンワールドのような趣が加わっています。

前作から500年経過したこともあって、城が建ち、街は都市へと変貌を遂げ、鬱蒼としていた森は切り開かれるなど、アルビオンの地形は様変わりしています。筆者も本作を初めてプレイした際には驚きと感慨深さを憶えました。その一方で時代の連続性を見て取れるイベントや描写も数多く、長い時を経たアルビオンの地の変遷を感じられるようになっているのも見逃せないポイントです。

戦闘面では剣戟がよりスピーディーになったほか、前作でポイント消費制だったウィルが使い放題になり、新たに銃が登場するなど、全面的にブラッシュアップされ快適性が増しています。特に剣を振るった際の挙動は、前作までの叩きつけるようなアクションから斬りつけている感覚が味わえるものに変化し、見た目にも格好よく、爽快感が向上しました。

本作でもプレイヤーがNPCと交流できる要素は健在で、NPCひとりひとりにプロフィールが設定されるようなりました。前作までは基本的にどのNPCも好みが均一になっていましたが、本作からは個々人で好みのアクションや好きなものが異なっているため、彼らと親しくする(あるいは嫌われる)ためにはプロフィールに合わせて英雄の側から歩み寄らなければなりません。「浪費家」「要求が多い」などという風に人々の属性が記されたプロフィールからは、『Fable』シリーズ特有の皮肉混じりのユーモアが漂っています。

本作の新要素のうち最も注目すべきもの、それは「犬」です。プレイヤーのお供として付いてくる犬は、戦闘で敵にとどめを刺したり、宝のありかを知らせてくれる頼れる相棒です。その動きは現実の犬を思わせるリアルなもので、時には可愛がったり遊び相手になったりして英雄の心を和ませてくれます。孤独な旅を続ける英雄に付き従う犬は、戦友であるとともに、いつしかかけがえのない家族になっていることでしょう。

前作の時点でも勧善懲悪ではない、テンプレ化した英雄譚をおちょくるような作風となっていましたが、本作はそれがメインストーリーの面にも色濃く反映されています。本作のあらすじは「かつての英雄の末裔たちが集結して宿敵の打倒を目指す」という既視感のあるものです。しかし、その末裔として登場するキャラクターは「巨大なハンマーを振り回して戦う修道女」や「狡猾な銃使い」といった、いずれも癖のある人物造形となっており、しかも全員が団結するわけではありません。定型化された物語と思わせて、プレイヤーの隙を突く。そんな痛快な演出が『Fable II』のメインストーリーに散りばめられています。

本作がリリースされた2008年は、前年に日本語版『Gears of War』や『The Elder Scrolls IV: Oblivion』、同年に『Grand Theft Auto IV』といった海外の大型タイトルが多数リリースされるなど、日本のコンシューマーゲームにおいて一気に海外のゲームの存在感が増してきたタイミングでもありました。このように海外のゲームが徐々に普及してきたことに加え、国内ではXbox360がXbox以上に普及していたこともあり、本作から『Fable』シリーズを始めたというプレイヤーも多いのではないでしょうか?

『Fable II』はMicrosoft Storeにて配信中です。


『Fable III』

2010年にリリースされた『Fable III』は、前作から50年後、産業革命を迎えたアルビオンが舞台となっています。『Fable II』の物語の後、英雄は王としてアルビオンを統治、彼亡き後の現在はその息子ローガンが王として君臨しています。ローガンは圧政を敷き、民衆は王への不満からデモを起こすようになっていました。ローガンの弟もしくは妹である主人公は、ある日兄の命で王政に抗議する民衆か自身の恋人、そのどちらかを処刑するよう選択を迫られ、やむなく決断を下すことになります。こうしたローガンの仕打ちへの悔恨から、やがて主人公はアルビオンの民衆とともに革命への道を歩んでいくことになります。

本作は基本的には前作で登場した銃や犬といったシステムを引き継ぎつつ、「手をつなぐ」といったNPCに対する新たなアクションが追加されたほか、オンラインでのマルチプレイに初めて対応しました。システムメニューは従来のようなインベントリ画面ではなく、「聖なる間」という部屋を模したメニュー画面に一新され、その中を主人公が歩くことで各項目にアクセスする形式に変更されています。スキルやアクション習得までの経過が実際に道として表現されるなど、視覚的に凝った演出がなされているのが特徴です。

『Fable III』はこれまでのシリーズ以上に何かを選択する際の「決断」とそれに伴う「責任」が重くのしかかるテーマを持っています。選択は過去の『Fable』でも大きなテーマでしたが、それらが二元的な善悪の選択だったのに対し、本作はストーリー上で必ずしも善悪に分け難い状況での決断を迫られます。

本作の構成は、英雄が兄王を打倒し革命を成功させる第一部と、英雄自らが王となってアルビオンを統治し、問題解決や脅威への対処に当たる第二部に分かれています。第一部が個人の選択というこれまでの『Fable』の延長線上にあるものだとすれば、第二部はより大きな影響を及ぼす一国の統治者としての決断をするものとなっています。ストーリー上で人々に誓った公約を実現するのは道徳的に正しいものの、それらを果たすためにはお金が掛かり、アルビオンの財政を圧迫します。脅威が迫るアルビオンのために、あえて公約を破棄して財政再建を図るという選択も、王たるプレイヤーの手に委ねられています。王の決定はゲームシステム上では「国策」として表現され、規制緩和や施設建設といった事業によって社会に大きな変化をもたらします。こうした「広範囲に影響を及ぼす決定を主人公が下せる」という点は、同じデザイナーによる『ポピュラス』を彷彿とさせるものとなっています。

『Fable III』は国家という大きな単位で物事に関われるようになった一方で、国民であるNPCとの関わりは薄れ、前二作とはその方向性が大きく異なっています。具体的にはその場にいる不特定多数のNPCを対象にしていたアクションが、一人を対象とするものに変更され、その内容も実質3種類程度に簡略化されてしまっていることが挙げられます。ゲーム自体のクオリティは決して低くなく、単体として見れば面白いゲームではありましたが、NPCとの交流に『Fable』特有の面白みを感じていた筆者にとっては、この点はどうしても残念に思える箇所でした。

なお、前作までの英雄は掛け声や笑い声くらいしか声を発しませんでしたが、本作の英雄はカットシーンでよく喋るようになり、その印象は大きく異なるものとなっています。システムと演出双方に変化をもたらそうとした『Fable III』はこれまでのシリーズとは一線を画したタイトルだったといえます。

『Fable III』はMicrosoft Storeにて配信中です。

『Fable』新作には何が引き継がれ、何が変わるのか?

今回はナンバリングタイトルのみを振り返りましたが、このほかにもベルトスクロールアクションの『Fable Heroes』や、Xbox 360のKinect用タイトル『Fable: The Journey』デジタルカードゲームの『Fable Fortune』といったスピンオフタイトルも数作存在しています。振り返ってみると『Fable』シリーズ各作品には「物語には残らない、英雄の人間臭い側面」というテーマが共通していると筆者は感じました。そして余白の多いゲームという形式だからこそ、英雄の俗な部分が垣間見え、それが本シリーズ独特の可笑しみとなっているのでしょう。

『Fable: The Jorney』Kinectでプレイヤー自身が馬を駆り、魔法を操ってアルビオンを旅していく。レールシューター的な趣を備えた異色の一作。
『Fable Heroes』は最大4人でプレイできるベルトスクロールアクション風味の乱戦ゲーム。『Fable II』の設定をモチーフにしたパペットキャラを操作します。

新作となる『Fable』のティザームービーではユーモア溢れる雰囲気が醸し出されており、シリーズの特徴が引き継がれていることが確認できます。その一方で、映像内に現代人風の男性が登場する部分は3年前のティザームービーにも、これまでのシリーズにもなかった点です。『Fable III』の舞台が産業革命期のアルビオンだったことを踏まえて、次作では現代のモチーフが入るのか、それとも全く異なるものになるのか、未だ謎に包まれています。

これまでシリーズを手がけてきたLionhead Studiosは2016年に閉鎖され、今作は『Forza Horizon』シリーズを製作したPlayground Gamesが開発を担当していますが、開発チームの違いは『Fable』にはどのような変革がもたらすのでしょうか。『Fable』の今後の期待しながら続報を待ちたいと思います。


Fable Anniversary 初回生産版 【CEROレーティング「Z」】 - Xbox360
¥6,680
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《林與五右衛門》

林與五右衛門

2023年4月よりゲームライターとしての活動を始めました。『Fable』や『シェンムー』といったゲームから影響を受けてNPCに強い関心を抱き、彼らがゲーム内でどう息づいているのか観察しています。演劇集団ゲッコーパレードのメンバーとしても活動中。

+ 続きを読む
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集

連載・特集 アクセスランキング

アクセスランキングをもっと見る

page top