異星人の襲撃の前に母なる星はすでになく、生き残った同胞もわずか…SDFカタリナ号はそれでも希望を捨てず、はるか宇宙のかなたフォーエバースターへ…! 日本時間で2023年8月22日(火)から早期アクセスが始まる宇宙船活劇シム『Jumplight Odyssey ジャンプライトの冒険』のメディア向け早期アクセス版の先行プレイレポートをお届けします。先行プレイゆえ早期アクセスや製品版と一部異なる表記があるかもしれませんので、ご了承ください。
『ヤマト』を思わせる70年代アニメ風コロニーシム
本作は異星人ズトパン艦隊の攻撃で母星を失ったカタリナ号が、ユーフォラ王女の指揮の下で航海する様を描くローグライトシミュレーションです。日本の往年の名作『宇宙戦艦ヤマト』を彷彿とさせるビジュアルと設定ですが、母星を失ったうえでの片道航海であることや、カタリナ号の「SDF」という型番は『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』のオマージュであるようにも思えます。(筆者はマクロスファンなのでこちらがツボでした)
今回はゲームの基礎をひと通り学べる「ユーフォラの旅」をプレイしました。本作は船長、宇宙船、プレイスタイルなどを自由に設定して遊べる新規オデッセイ(≒フリープレイ)モードも用意されており、星と星の間隔(距離)を短く設定したり、スタート時の備蓄品を豊富にしたり、ズトパン軍に追い立てられることがなくなる「平穏」スタイルを選んだりと難度を抑えたプレイも楽しめますが、こちらのモードはチュートリアルがありません。まずは「ユーフォラの旅」をプレイするのがよいでしょう。
序盤からやれることが多すぎて新米艦長はてんてこ舞い!
本作は、連続使用ができないジャンプ(いわゆるワープ)で星から星へ航行し、行く先々で生き残った同胞や各種資源/水を回収しつつ船内のインフラや軍備を充実させながら航海を続けるのが基本的な流れになります。
作中ではジャンプを使用できるようにすることを「ジャンプライトを“校正”する」というように表現されますが、これはおそらく英語での表記が「Calibration」なのであって、実際のところは何らかの「測定」を伴う作業なのではないかと思われます。もしかしたらSF小説「月世界最初の人間」におけるケイバーライトのように、ジャンプライトはワープをするために生成する(≒測定が必要となる)物質なのかもしれません。
閑話休題。カタリナ号は「ブリッジ」、「遊歩甲板」、「船尾甲板」、「格納庫」、「下甲板」、「エンジンルーム」の6区画で構成されていて広大なうえ、「船尾甲板」の大半と「下甲板」のほぼ敵の攻撃で瓦礫の山と化していますので、広大なスペースをどう活用するかはプレイヤー次第。クルーもスタート時ですでに80人いるので、プレイは序盤からかなりの歯ごたえです。
筆者は完遂に時間がかかるアウェイミッション(同胞の生存者探索、資源回収などの船外ミッション)を最優先で行い、彼らが帰艦するまでの間に限られた資源でどの区画に何を作るかをトライアル&エラーで模索していきました。
プレイ中は「戦闘元帥」、「主任科学者」、「兵站将校」、「主任技術者」という各部門のトップがあれこれ進言してくれるのでそれがプレイの指針となりますが、「言われてからやる」ようでは早晩ジリ貧になります。カタリナ号に求められているものは「言われる前にやる」自律型艦長なのです。なんだかサラリーマンの心得みたいになってきた……。
また、プレイ中は常に背後からズトパン艦隊の魔の手が迫っており、これが制限時間として機能しています。追いつかれてしまうと戦闘になりますが、戦力差が絶望的なので勝つ手段はありません。戦闘は「次の星にジャンプするまでの時間稼ぎ」でしかないことに留意する必要があります。
自らの経験だけを武器に苦難の航海を完遂しよう
筆者は、電力確保を重視しすぎて水が足りなくなった(水を生成する給水設備の構築をあとまわしにしすぎた)、水を確保したと思ったら今度は食糧の配給が追い付かなくなった、エンジンルームの増強が間に合わず次の最寄りの星までジャンプできずに足止めを食らう、万事うまくいっているかと思えば大規模な船内火災で深刻な電力不足になりズトパン艦隊に追いつかれてめでたく全滅(消火器をもっと設置しておくべきだった)…などなど数々のやらかしをしましたが、何度プレイし直しても同じ展開はほとんどなく、退屈はまったくしませんでした。
また、ある時には強い孤立感に苛まれているクルーがいるとの報告が上がってきて、該当者を見てみるとそれが『ヤマト』に登場するアナライザーのような見た目をしたロボットだった時は「誰だロボットのAIをそんなところまで作り込んだのは!」と画面にツッコミを入れてしまいました。他のクルーともっと交流させてあげればいいのかしら……。
電力・食料・水・医療のインフラをしっかり構築・維持する、効率よくジャンプできるようエンジンルームの強化も適宜行う、シャワーや浴室の設置などクルーの衛生面にも気を使う、不慮の火災発生に備えて各所に消火器を設置しておく…あれもこれもやらなければいけないのが艦長の辛いところ。クルーを導く覚悟のほどが試されます。
ゲームの挙動、ロードの長さ、翻訳の精度など気になる箇所がなかったわけではありませんが、早期アクセスゆえにこれからのアップデートで解消されていくでしょうし、何より日本の往年の名作アニメをモチーフにした世界観やデザイン、歯ごたえのあるバランス、自らのプレイングの向こうに透けて見える人間ドラマ(濃密なストーリー描写があるというよりは、起きたことからドラマを想像して楽しめるという意味です)など、『Jumplight Odyssey』は長所が短所を補って余りある1本だと感じました。
あなたも、無限に広がる大宇宙へ苦難と希望に満ちた船出をしてみてはいかがでしょうか。あぁ、また水の生成が追い付かなくなってクルーが渇きに苦しんでいる……。