Game*Sparkレビュー: 『サイバーパンク2077』拡張パック「仮初めの自由」―ゲーム全体を再定義する”ストーリーファースト”の大型追加コンテンツ | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

ハードコアゲーマーのためのWebメディア

Game*Sparkレビュー: 『サイバーパンク2077』拡張パック「仮初めの自由」―ゲーム全体を再定義する”ストーリーファースト”の大型追加コンテンツ

密度の高い新ロケーション「ドッグタウン」を中心に展開する新ストーリー、パークツリーのリワークなど、新規要素が多数。『サイバーパンク2077』初プレイ時の楽しさを思い出す、素敵な拡張パックです。

連載・特集 Game*Sparkレビュー
Game*Sparkレビュー: 『サイバーパンク2077』拡張パック「仮初めの自由」―ゲーム全体を再定義する”ストーリーファースト”の大型拡張
  • Game*Sparkレビュー: 『サイバーパンク2077』拡張パック「仮初めの自由」―ゲーム全体を再定義する”ストーリーファースト”の大型拡張
  • Game*Sparkレビュー: 『サイバーパンク2077』拡張パック「仮初めの自由」―ゲーム全体を再定義する”ストーリーファースト”の大型拡張
  • Game*Sparkレビュー: 『サイバーパンク2077』拡張パック「仮初めの自由」―ゲーム全体を再定義する”ストーリーファースト”の大型拡張
  • Game*Sparkレビュー: 『サイバーパンク2077』拡張パック「仮初めの自由」―ゲーム全体を再定義する”ストーリーファースト”の大型拡張
  • Game*Sparkレビュー: 『サイバーパンク2077』拡張パック「仮初めの自由」―ゲーム全体を再定義する”ストーリーファースト”の大型拡張
  • Game*Sparkレビュー: 『サイバーパンク2077』拡張パック「仮初めの自由」―ゲーム全体を再定義する”ストーリーファースト”の大型拡張
  • Game*Sparkレビュー: 『サイバーパンク2077』拡張パック「仮初めの自由」―ゲーム全体を再定義する”ストーリーファースト”の大型拡張
  • Game*Sparkレビュー: 『サイバーパンク2077』拡張パック「仮初めの自由」―ゲーム全体を再定義する”ストーリーファースト”の大型拡張

注意: 本記事には発売前の『サイバーパンク2077: 仮初めの自由』に関するネタバレを含みます。
閲覧の際にはご留意ください。


『サイバーパンク2077』が発売されてから約3年が経過し、ようやく初の大型拡張パックである「仮初めの自由」が発売されます。本記事ではこの『サイバーパンク2077: 仮初めの自由』レビューをお届けします。


発売前ではありますがいわゆる「事前プレイレポート」ではなく、筆者が撮影したスクリーンショットを含むレビューですので、性質上ネタバレ的な要素を含みます。もちろん直接ストーリーの核心に言及するようなことはしませんが、閲覧の際にご留意ください。筆者はGoG版をPCで遊びましたので、スクリーンショットはPC版のものとなります。

「仮初めの自由」のレビューに取り掛かるにあたって、この数年間の『サイバーパンク2077』の動きを思い出してみましょう。2018年のE3で鳴り物入りでトレイラーが公開され、幾度かの延期を経て発売。当初はバグの多さやコンテンツの不足からか、一時的にPlayStationストアから削除されるなど「期待外れ」という評価をされることも多かった本作ですが、アップデート/コンテンツ追加を経てSteamレビューが改善し「非常に好評」となりました。観測範囲内では特にアニメ「エッジランナーズ」の人気によって、本作の人気も盛り返したような印象があります。

そしてようやく、本当にようやく初の大型拡張パックである「仮初めの自由」が登場することになるわけです。元々、より多くの拡張やマルチプレイモードまでも企画されていた『サイバーパンク2077』ですが、エンジン変更などの様々な事情や開発リソースの問題などから、この「仮初めの自由」が最後の拡張となることも決まっています。少し寂しいですが、つまりもうこれ以上『サイバーパンク2077』に関して、やきもきして気を揉んで待ったりする必要はないということです。

注意:以降から『サイバーパンク2077: 仮初めの自由』に関するネタバレを含みます。
閲覧の際にはご留意ください。

「ストーリーファースト」

細部のネタバレへ配慮するために、まずおおまかな全体の話から始めましょう。「仮初めの自由」はナイトシティの一区画である「ドッグタウン」と大型クエストに加えいくつかの依頼やサイドジョブを含む追加コンテンツです。

筆者が遊んだ感じでは、すべての依頼をこなしてだいたい20時間前後のボリュームといったところでしょうか。もちろんまだ何か隠し要素のようなものが含まれている可能性はありますが、少なくとも目に見えるクエストをすべてこなした段階で、ということです。

本筋と直接関係のないサイドジョブにすら様々な解決方法がある場合があるため、約4,000円の拡張パックとしては充分な内容だと思います。

本拡張パックの最大の魅力は、「ストーリーが面白い」ということに尽きます。物語が興味深いという意味だけではなく、演出やゲームプレイを含めて、主人公の視点で物語を追体験するということ自体がなにより面白いのです。そしておそらく『サイバーパンク2077』が本来目指したかった姿も、そこにあったのでしょう。『サイバーパンク2077』という作品が、ストーリーが面白いということに集中して密度の高い冒険を用意したらどうなるのか。それが提示されているのが本作「仮初めの自由」だと思います。

本拡張パックをプレイしている間「そういえば『サイバーパンク2077』とはこういうゲームだった」ということに、何度も気付かされました。良くも悪くも本作の持ち味というか、思想のようなものがより先鋭化して表現されていると感じます。その思想とは何かというと、「ストーリーファースト」ということです。

「ストーリーファースト(物語優先)」とは、筆者が以前CD PROJEKT RED Japan・西尾氏にインタビューを行ったときにも出た言葉です。その時はなんとなくしか理解してなかったのですが、時を経て「仮初めの自由」をプレイしていると「なるほど、たしかにこれはストーリーファーストのゲームだ」と納得しました。


たとえば、この間発売されたばかりの『Starfield』と『サイバーパンク2077』は見た目上(そしてシステムの一部が)類似しています。雑な括りかもしれませんが、まあ「同ジャンルのゲームである」と言い切ってしまって問題ないかと思います。

筆者はどちらも好きなゲームですが、前者が「オープンワールドゲームとしての自由さの間にフレーバーとして物語がある」という質感であるのに対して、『サイバーパンク2077』は「物語の合間にオープンワールドゲームみたいなことができる」という作品なのだと思います。「仮初めの自由」ではその方向性が更に強化され、戦闘の演出や物語はまるでリニアなストーリーFPSをプレイしているかのような豪華さで、手に汗を握ります。2.0アップデートで戦闘面がかなり強化されたのも相まって、まず、単にシングルプレイFPSとしてかなり面白いです。

本拡張コンテンツでは、多くのプレイヤーが望んでいた「New Game+」は実装されず、また、同じく待望されていた「生活要素の充実」もほぼ行われていません。その代わり、「一回きりの体験」にフォーカスした極めてスリリングなメインストーリーが搭載されています。

プレイヤーはドッグタウンにおいて「誰が味方かわからず、本当のことを言っているかどうかもわからない、しかし、その中で極めて重大な決断を迫られる」という強烈な体験をすることになります。今回の拡張パックは、追加部分の直前からニューゲームを開始できるようなシステムもあって複数回遊びやすいのですが、まあ初回が一番面白いというのは間違いないでしょう。これは本編にも言えることですが。

その「一回きり性(造語です)」は主人公であるVの境遇とも重なります。『サイバーパンク2077』とは、“サイバーパンク”が自由気ままにナイトシティライフを満喫するゲームではなく“今まさに死にかかっているV”という人間がどのように生きるのか、そしてどのように死ぬのかの選択に否応なく晒されるという体験なのです。もちろんそれは元々技術的な問題で用意された設定なのかもしれませんが、本拡張パックはその体験にこそフォーカスしており、生活要素や「New Game+」が排除されたのであろうと推察されます。

この判断自体には賛否両論あるでしょうし、もちろん今後そういったコンテンツが追加されることが無いと決まったわけでもないのですが、ひとまず現段階では好ましいと感じました。本拡張パックでは『サイバーパンク2077』というゲームがどのようなゲームであるかが再定義されており、その結果プレイヤーも『サイバーパンク2077』というものを格段に飲み込みやすくなっています。

繰り返しになりますが『サイバーパンク2077』とは「初回の体験にフォーカスした、シングルプレイFPSにオープンワールド要素がおまけ的についているもの」であって、本拡張パックはその方向性を更に強化するように振り切って作られ、その上でとして“良く出来ている”と感じました。

ストーリーの内容/キャラクター

ではそのストーリーの内容とはどのようなものかを、ネタバレにならないように注意して説明していこうと思います。

本作は「謎のネットランナーである“ソングバード”の依頼によって、新合衆国大統領である“マイヤーズ”を助ける」というところから物語が開始します。全体のトーンとしてはいわゆる「スパイもの」で陰謀、裏切り、信念のようなものが描かれます。スパイものなので当然ステルスの比重が高く、ストーリーを通して難度は高めです。

ゴリ押しでなくきれいにプレイするためには、システムに対する理解が必要不可欠と思われます。「死にゲー」的にめちゃくちゃゲームオーバーになるということはなかったですが、楽だと感じる場面は少なく、かなりギリギリの戦いを強いられることになります。

誰が嘘をついていてどのような思惑があるのかを想像しながら遊ぶことになるので、選択の一つ一つに緊張感があり、ヒリつきます。この体験の面白さが本作の最大の魅力、かつ白眉だと思います。メインストーリーだけでもおそらく10時間以上の体験があり、かなり満足させられるボリュームと内容です。イドリス・エルバ演じる“リード”や、軍人上がりの大統領である“マイヤーズ”、謎多きネットランナーである“ソングバード/ソミ”など登場するキャラクターもみな魅力的で、話に引き込まれます。筆者は途中で出会うことになる“アレックス”というキャラクターが好きでした。

物語は混迷を極めていき、とてつもなく大掛かりなクライマックスを迎えることになります。ストーリーを通して緊張感とプレッシャーが極めて高く、「どのような選択をしていいかわからない度合い」も本編の比ではありません。そして、その強烈なプレッシャーがゲームとしての面白さにも直結しています。ルートによってはステルスゲームというより明確にホラーゲーム的な演出も見られ、苦手な人は覚悟しておいたほうがよいかもしれません。

グラフィックが美しくストーリーがよいゲームを「映画のような体験」と表現することがよくありますが、本拡張にはまさにスパイ映画に迷い込んでしまったかのような、映画の登場人物になってしまったかのような臨場感があります。先がものすごく気になるので、筆者はほとんど休むことなく遊んでしまいました。冗談や比喩ではなく実際に「さっきまで早朝だったのに、気づいたら夜になっている」というようなことを体験しましたよ。

不満点としては、ストーリー進行上「ゲーム内での時間経過」を要請されることが多く、どうしたら物語が進むのかわからない時が何度かあったことです。本編発売時はミッションが進行不可になることも多かったゲームですから、「バグってスタックしたのではないか?」とヒヤヒヤすることになりました。本筋を一旦ストップし、ドッグタウンに散らばるサイドジョブを体験させたいという意図なのでしょうが、もうちょっとなんとかならんかなと思います。

ドッグタウン/サイドジョブ

本拡張のもう一つの魅力は新ロケーションである「ドッグタウン」です。ナイトシティの一部なのでマップとしてそこまで広いわけではないのですが、その分だけ建物の密度が濃く、見た目以上にボリュームがあります。

「ナイトシティ」自体も近年のオープンワールドゲームでは他に類が無いほどの密度の濃さ/情報量の多さを誇りましたが、ドッグタウンは追加コンテンツということもあってか、桁外れの建物の密集具合です。上下の階層がある部分も多く、今までのナイトシティよりも「実際に歩いて行ける部分」が体感的に多く感じられるのも特徴です。散歩しているだけで結構楽しいです。

数年前の作品の拡張とはいえ、グラフィックスは現代の基準からしてもかなり美しく、というか、これほどグラフィックがきれいなゲームって他にやったことないかもしれないです。筆者環境ではパストレーシングがまともに動きませんでしたが、ハイスペックなPCを持っている人は試してみてください。レイトレーシングをオフにしたとしても、息を呑むような美しさのあるロケーションがあり、まるで本当にドッグタウンにいるかのようです。このあたりは先ほど言及した臨場感にも直結していますね。

本編とは関係のないサイドジョブ/依頼は全体で20個弱という感じでしょうか。(発見できる範囲で)全てを終えてしまった今となっては「もうちょっとくれよ……!」と思わなくもないですが、贅沢なことを言わなければおおむね満足できるボリュームかと思います。

多くのサイドジョブ/依頼が、「場所に行って敵を倒して終わり」というようなシンプルなものではなく、ちょっとひねりの効いた展開になっているのもサイバーパンク的で好印象です。このあたりも、やはり「ストーリーが面白いゲーム」だと再認識しました。サイドジョブを通してドッグタウンのさまざまなロケーションに行くことになるので、「入れる建物」のような「ゲーム上意味のあるロケーション」の密度が高く感じました。

2.0アップデート/繰り返し遊べるコンテンツ

拡張パックによるストーリーと場所の追加に加え、『サイバーパンク2077』全体にも2.0アップデートによる広範な調整が施されています。一番の目玉となるのはパークツリーのリワークでしょう。かなり直感的にわかりやすくなっており、戦闘AIの改善もあって、また最初から遊びたいなという気持ちにさせてくれるものです。

前述した部分と重なる点ですが、こういったリワークも含めてFPSとしての面白さは初期版から比べると段違いに上がっていると思います。拡張パック購入者は新たに追加されたRelicツリーをアンロックすることも可能で、マンティスブレードやモノワイヤーなど、見た目がかっこいいわりに使用頻度が低めだった武器に強い効果が追加されます。

追加コンテンツの目玉となっている「繰り返し遊べるコンテンツ」である、「投下物資」そして「車両配達」ですが、特に「投下物資」は(こういうコンテンツの常ですが)作業感が強く、極めてシンプルなのでそんなにめちゃくちゃ何回もやるようなものではない、という感想です。

「車両配達」は新コンテンツである車上戦闘の出番があり、報酬も豪華なため新鮮でしたが、これらはあくまでゲーム上にある乗り物をすべて収集しなければ気が済まないようなやりこみプレイヤー向けの「おまけ」として捉えておいたほうが良いかと思います。とはいえ、コンテンツが尽きたあとは閉店後の遊園地のように味気ない場所と化してしまうナイトシティですから、いつまでもエディーや武器が稼げる余地があるということ自体は嬉しいことではあります。

繰り返し本作を遊びたい人にとっては「New Game+」の代わりにはなりませんが「仮初めの自由までスキップ」機能が地味に嬉しい追加だと思います。特に序盤は眺めているだけの場面が多く、何度も遊ぶのが結構大変な作品なので、Act 1終了後から遊べるってのは結構嬉しいです。各ライフパスのオープニングだけはちゃんと見て、それからスキップして遊ぶのがオススメです。

総評

総評:★★★

良い点
・ストーリーが面白い
・一筋縄ではいかないサイドジョブ
・追加コンテンツとアップデートにより刷新されたゲーム性
・FPSとしての楽しさ

悪い点
・New Game+や生活要素の欠如など、割り切った作り
・“ゲーム内時間進行”を要求されるメインストーリーの進行
・おまけ程度の「投下物資」「車両配達」
・やっぱりもうちょっとサイドジョブがほしい

「仮初めの自由」は『サイバーパンク2077』を締めくくるにふさわしい、ゲーム全体の再定義とも言えるような拡張パックです。2.0のリワークも含め、本作のファンにとっても、新規プレイヤーにとっても新鮮な体験となっています。なにより『サイバーパンク2077』を初回プレイしているときって楽しかったなあ、という気持ちを思い出させてくれました。どんなゲームでもやり込むと尽きてきて、尽きてくると空疎に感じるものですが、一回きりの体験として面白いということもやはり大切なのだと思い返すきっかけにもなりました。


《文章書く彦》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集

連載・特集 アクセスランキング

アクセスランキングをもっと見る

page top