編集部に届いた一通の手紙には、誰からも顧みられることないまま剣を振い続ける褪せ人の物語があった【プレイヤーインタビュー】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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編集部に届いた一通の手紙には、誰からも顧みられることないまま剣を振い続ける褪せ人の物語があった【プレイヤーインタビュー】

『エルデンリング』のとあるプレイヤーに話を訊きました。

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編集部に届いた一通の手紙には、誰からも顧みられることないまま剣を振い続ける褪せ人の物語があった【プレイヤーインタビュー】
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ある日、編集部に一通の手紙が届きました。

「自分は『エルデンリング』のマルチプレイで大谷翔平クラスの功績となるやりこみをしているので、自分を取材して欲しい」

このような趣旨の文章が、挑戦的な文体で書かれていました。手紙の主は「ヒツギ」さん。文によれば「ミケラの刃、マレニア(本作の裏ボス的存在)」を21,420体、さらに「約束の王、ラダーン(DLCのラスボス)」を10,000体、見ず知らずのプレイヤーために協力プレイで倒してきたというのです。あまりの数字に戦々恐々とした編集部でしたが、ついにインタビューが実現いたしました。

『エルデンリング』のマルチプレイのマッチングを彷徨う最強の褪せ人は、一体どのような人物なのか。インタビューの一部始終をお伝えいたします。

※記事内の記録はインタビュー時(2025年1月下旬)のものとなります。

誰にも顧みられることなく、英雄は剣を振るい続けた…

――まずは自己紹介をお願いできますでしょうか。

ヒツギ:ヒツギと申します。28歳、男性です。

――ヒツギというハンドルネームの由来を教えていただけますか?

ヒツギ:ツイッターを始めた時につけた名前なんですが、「棺担ぎのクロ」という漫画からとりました。ゲーム内の名前は『エッジランナー』を使っています。

――ゲーム歴について教えていただけますでしょうか?

ヒツギ:有名なゲームは一通りプレイしてきました。最近は『エルデンリング』と『ヘルダイバー2』をメインにプレイしていて、『エルデンリング』は発売から2ヶ月ほど経ってから始めました。

――マルチプレイでの支援活動を始める前は、どのようなプレイスタイルでしたか?

ヒツギ:最初はソロプレイで一通り遊びました。このゲームは倒したボスと再戦できないシステムなんですが、協力プレイとしてマルチに参加することで、実質的な再戦システムとして使えることに気づいたんです。

――ボスと効率良く再戦するためにマルチプレイをしていたということでしょうか

ヒツギ:そうです。正直なところ、純粋な人助けという訳ではありませんでした。ボスと再戦したかったというのが本当の理由です。

――エルデンリング以外の趣味はありますか?

ヒツギ:今は『ヘルダイバー2』くらいですね。

――普段どんなゲームを好んでプレイされますか?

ヒツギ:高難度の協力プレイが好きです。面白いのは、味方が弱い場合はマルチプレイ用の難易度を実質一人で戦う歯ごたえがあり、逆に味方が強い時は、阿吽の呼吸で連携プレイが楽しめる。この2つの異なる楽しみ方ができる“幅”が魅力だと思います。

――私たちに手紙でコンタクトを取ろうと思った理由は?

ヒツギ:実は皆さん以外にも、多くの方々にコンタクトを試みたんですよ。でも、DMやメールは全く返信が来なくて……手紙に関しても返事が来たのはGame*Sparkだけでした。

――マルチプレイ時のルーティンについて教えていただけますでしょうか?

ヒツギ:金の小偶像像を起動して、ボス前の場所を指定してるだけですね。色々試しましたが、これが一番効率が良かったです。

――プレイ環境について、特にこだわっているものはありますか?

ヒツギ:特別なものは使っていなくて、32インチの一般的なモニターです。コントローラーは以前デュアルショックエッジを使っていましたが壊れてしまい、今は通常のデュアルショックを使用しています。プレイ機はPS5です。

――ヒツギさんがラダーンを最強だと考える理由を教えていただけますか?

ヒツギ:開発側に(マルチでは)勝たせる気がないように感じたからです。即死パターン(ダメージ硬直からそのまま次のダメージが確定しているなど)があることも特徴的です。DLCのボスは、ラダーンも含めて回復できるタイミングが少なく、回復しようとすると距離を詰めてくることも難易度を上げている要因です。

――DLCにトロフィーがないようですが、約束の王ラダーンのクリア率はどのくらいだと思われますか?

ヒツギ:(考えこんで)25%くらいじゃないでしょうか。

――総プレイ時間はどれくらいになりますか?

ヒツギ:PS4で2,891時間、PS5で5,978時間です。ただし、これにはマッチング待ちや放置時間も含まれています。

――現在のエルデンリングにおけるラダーン戦の概観について教えていただけますか?

ヒツギ:私がソロでプレイする場合(ホストに召喚された上で条件を整えた場合)の勝率は70-80%程度です。純粋なマルチプレイ全体だと49%くらいまで下がります。例えば影樹の加護(DLC専用の強化アイテム)は最大で50まで段階がありますが、これはホストに依存するため、あてにはできないですね。最近はひどくなってると思います。

――ひどくなってる、とは?

ヒツギ:将軍(ラダーン)を倒そうという真剣さが感じられないことがある、ということですね。装備や影樹の加護の強化段階、戦闘中の立ち回りからそう感じることがあります。

――プレイヤーのレベルによってラダーン戦の難易度はどう変わりますか?

ヒツギ:レベルは180程度あれば十分だと思います。無限帯※のレベルである必要はありません。

(※マルチプレイのマッチングの際、レベル差が大きすぎないように考慮してマッチングが行われている。しかし一定のレベルを超えると、超えたレベルの中ではレベル差が考慮されずマッチングが行わており、こうしたマッチングの対象となるレベルや強化段階は『無限帯』と呼ばれている。)

王と神が恐れた伝説の褪せ人の装備とテクニック

この章に関しては、ヒツギさんから膨大な解説をいただきましたが、インタビュー形式では長くなりすぎてしまいますので抜粋して紹介いたします。

・方針:一定の被弾を許容しつつ、全ての状態異常を効率的に狙う。(ヒツギさん曰く、「火力とリスクの最大化」。他のプレイヤーが避けるような攻撃も、ダメージ効率を考慮し敢えて被弾しつつ攻撃する、などの指針)「死の刃」効果で70%となったラダーン第二形態の体力を、状態異常だけで61%削り、残りを直接攻撃で倒し切るプラン。

※影樹の加護はホスト依存なので、直接ダメージに依存しないことがポイントだそうです。

黒き刃

通常攻撃と戦技『死の刃』を合わせて第1形態の体力の半分を削ります。最大体力を削る効果が有効に作用します。

戦技「冷気の霧」

凍傷の付与を狙います。

レドゥビア

盾無しで将軍マルチに入るには必須になるほどの重要アイテムとのこと。攻撃範囲が広すぎるラダーンに対して、中遠距離での攻撃手段を確保できるそうです。出血を付与します。

猛毒の調香瓶

戦技「猛毒散布」で猛毒の付与を狙います。

戦技「腐敗の蝶」

腐敗の付与を狙います。

秘技、メテオ封じ

筆者は『エルデンリング』のDLCまで到達していなかったのですが、それでも理解できる壮絶なテクニックを解説されたので紹介します。

(当該箇所は1:45から)

HPが20%を切ると使用してくる通称「メテオ」を封じるテクニック。メテオを発動する体力になるまで状態異常が発動する蓄積値を寸前で止めておき、メテオの発動直前で一気に状態異常を蓄積、発動させます。


メテオの発動準備で画面外に飛んだラダーンが、メテオの発動を完遂する前に状態異常の継続ダメージで撃破され、メテオが完遂されなくなるという仕組み。属性の蓄積値の把握や体力の調整、ラダーンがどのモーションを出したか、などアドリブ&運要素も強く、アクションゲームの経験があれば誰でも凄みが伝わるのではないでしょうか。ヒツギさんは日頃のマルチ活動で、このテクニックを4割ほど成功させて撃破しているそうです。

奥義、置き腐敗

第一形態の終了前に第二形態の出現位置まで移動し、第二形態の出現と同時に戦技を直撃させるテクニック。

(当該箇所は0:20から)

成功することで第二形態開始時に体力半分まで迫ることができます。ただし、第二形態直前の戦闘のヘイトがホストに向いている必要があり、最近はあまり使用していないとのこと。少し疲れたときに使ったりするようです。

最後の1ピース、戦技「毒花は二度刺す」

毒、腐敗状態の敵に大ダメージ(最大体力5%の固定ダメージと通常ダメージ)。凍傷、出血を発動させて、なお倒しきれなかった時に使用する戦技だそうです。

(当該箇所は1:34から)

メテオ封じが使えなかったパターンの時、残ったラダーンの体力を削り切るのにピッタリだとか。「これ自体はそれほど強い戦技ではない」という評価の戦技ですが、ヒツギさんのラダーン戦攻略では最後の1ピースとなり得る戦技とのこと。

「神様の時間」

ラダーンの撃破からホストの死亡までの、クリア判定となる時間差のことをヒツギさんはそう呼んでいるそうです。

(当該箇所は01:45から)

上記の動画では、ラダーン撃破直後にホストが死亡していますが、ホストはラダーンを撃破した判定となっています。また、動画ではメテオ発動後の倒しきりテクニックも披露されています。霊薬の聖灰瓶でダメージをカットするバリアを張り、メテオに狙われるホストの元に接近。そこで腐敗の蝶発動。ふっとばされモーションによる無敵時間、霊薬バリア、余裕を持った体力という「三重の保険」をかけた上で、確実に戦技「毒花は二度刺す」でラダーンを撃破しました。


ヒツギさんが「ラダーン戦のマルチは破綻している」と考えている要因はメテオ(そしてメテオが必ずホストを狙うこと)であり、ホストが死亡する前提で、ゲーム中の仕様を最大限駆使した「メテオ封じ」その他テクニックでラダーンを攻略した唯一のプレイヤーであると主張しています。「エッジの向こう側まで行った攻略」とのこと。(※エッジの向こう側……サイバーパンク2077のセリフ。限界を超えているという意味で言っている。)

活動を取り巻く状況、過去と未来

――活動を通じて有名になったと感じることはありますか?

ヒツギ:私のXのフォロワー数見ました? 2桁しかいません。それが辛いところですが、続けてきました。

――活動を通じて知り合った人はいますか?

ヒツギ:何人かいます。その人たちは本当に心の支えになってくれました。

――Xでの討伐記録に楽曲名が記載されているのは?

ヒツギ:何も書いていないと味気ないなと思って、最初はホストへの愚痴とか書いていたんですが(笑)討伐数が増えて面倒になってきたので、その時に聴いていた曲を記録するようにしました。

――膨大な討伐数の記録はどのように取られているんですか?

ヒツギ:マレニアの場合はアイテム数で数えています。ラダーンは、動画で記録を取っています。実はギネスにも申請したんです。

――えっ、ギネスですか。

ヒツギ:マレニア討伐数(1000体)で有名になった方と同じ方法を使いましたが、私の場合は証拠が認められずに申請が通りませんでした。ラダーンの討伐数も動画を撮って申請しようとしましたが、結局認められませんでした。

(記録を大きく上回っているにも関わらず、ギネスには認定されない。理不尽な状況はヒツギさんの生活に大きな影を落としたが、それでもヒツギさんはマルチでの討伐活動を続けたと語っていました。)

――活動モチベーションの下がった時期はありましたか?

ヒツギ:ギネス記録が認められなかった時と、討伐数が切りのいい数字になった時ですね。そういうときに、活動を続けているのにXのフォロワーの少なさが辛く感じられる時がありました。

――ミケラの刃マレニアと約束の王ラダーン、プレイヤーとしてこの二つのボスの完成度をどう評価されますか?

ヒツギ:マレニアについては、ソロプレイで2年間やっても飽きることがありませんでした。一見こちらからの攻撃タイミングがないように見えて、二刀流で戦うと特に、消費するスタミナのバランスがよく考えられているなと感じます。ラダーンに関しては、ソロプレイの場合はギリギリゲームとして破綻していないと思います。ただ、マルチプレイに関しては破綻していますね。

――最後に、他のフロムゲームや他のゲームと比較して、ヒツギさんの功績をどのように評価されますか?

ヒツギ:正直、自分では分かりません。ただ、他の方の証言によると「誰にも真似できない」と言ってくださったそうです。

――本活動、または本活動以外で、次の目標はありますか?

ヒツギ:既にラダーンを9,920体倒しています。10,000体目で引退する予定です。もう耐えられないです。(ホストに)ラダーンに勝つ気を感じないんです。

――勝つ気がない、と言いますと?

ヒツギ:さっき「ラダーンのマルチプレイは勝たせる気がない」って(レベルデザインの観点で)言いましたけど、ホストはホストで、装備面で勝つ気を感じないんです。例えば、ダメージ食らう回数が多いのに、被ダメージ増加と引き換えに攻撃力を上げる装備をしてるとか、至近距離で戦技をぶっ放して即死するとか、私が攻撃しつづけてヘイトを稼ぐ装備をしても、狙われると5秒持たないホスト、とか。年明けくらいからその傾向が強くなったと感じます。

――活動を引退されるとのことですが、今後発売予定の『エルデンリングナイトレイン』はプレイされないんですか?

ヒツギ:やらないです。ホストの質がひどいので(笑)。3年間活動してきて、今Co-opオンリーのタイトルが出ると聞いたら「名前を売る絶好の機会だ!」と思うはずなんですけど。世界記録(討伐数)二つ達成したのにフォロワーは2桁というのも辛かったですし、(ラダーン)将軍マルチがホンットにキツくて……今は気力が湧かないです。もしかしたら気が変わるかもしれませんが(笑)。

――長時間のインタビューにお付き合いいただき、ありがとうございました。


このインタビューを通じて、『エルデンリング』というゲームに深く関わり、独自の形で貢献を続けてきたヒツギさんの姿が浮かび上がってきました。

純粋な人助けというよりも、自身の追求するプレイスタイルの中で結果として多くのプレイヤーを支援することになった彼の活動は、ゲームコミュニティの多様性を示す興味深い例と言えるでしょう。

※UPDATE(2025/4/1 9:50):誤字を修正しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございます。


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企画:キーボード打海,編集:蟹江西部,ライター:KAMEX

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Game*Sparkの編集者。『サイバーパンク2077 コレクターズエディション』を持っていることが唯一の自慢で、黄色くて鬼バカでかい紙の箱に圧迫されながら日々を過ごしている。好きなゲームは『恐怖の世界』。

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編集/十脚目短尾下目 蟹江西部

Game*Spark編集部。ゾンビゲームと蟹が好物です。以前は鉄騎コントローラー2台が部屋を圧迫していましたが、今は自分のボディが部屋を圧迫しています。

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ライター/職務経歴書が長すぎるライター KAMEX

今の本業は行政書士。大手の会社でゲームプランナーを経験後、インディスタジオでディレクターをやったりしていましたが、ゲーミフィケーションや産学連携などで業界を横断した仕事をすること多くなり、法律の大切さを実感。その後、行政書士事務所を始めてゲーム業界から離れたつもりでしたが、結局ゲームが好きでたまにライターをさせてもらっています。

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