KONAMIは、Studio Far Out Gamesが手掛ける見下ろし型ACT『Deliver At All Costs』日本語版をPC向けに2025年5月22日(PS5/Xbox Series X|S向けには5月23日)にリリースします。
本作は1950年代の街を舞台に、配達員の「ウィンストン・グリーン」となって、指定された様々な荷物を車などで配達していくタイトル。Steamストアページには「街中で大混乱と破壊の渦を巻き起こそう」という物騒な一文が躍ります。
「あらゆるものを運ぶ」というゲームだけあってPVでは車同士の正面衝突に建物の破壊、さらには爆発につぐ爆発と文字通り“ぶっ飛んだ”プレイ映像が垣間見えます。
しかし『Deliver At All Costs』はただ「街を破壊し暴虐を尽くすのが笑える」という作品ではなく、アメリカンジョークのようなシニカルさあふれるストーリーやクエストが醍醐味でした。メインストーリーでは技術者としての道が閉じかけ焦る若者、ウィンストンの日常が紡がれるのですが、その一方でゲームの主軸となる「配達」はユーモアに全振り。積み荷の生きたカジキがびったんびったん地面をたたきながらこちらを邪魔したり、こちらが撥ねてしまった住民にチェーンソーやバットで車をぼこぼこにされたり、アメリカンジョークのような面白さが特徴の作品でした。
本稿では、そんな本作の先行プレイの模様をお届けしていきます!
◆配達というより共犯だろ!? 爆走だけではない、シニカルで時にブラックなシナリオが楽しい

ゲームを開始すると、昔のテレビ番組のようなナレーションから物語がスタート。主人公のウィンストンは優れた技術者でありつつ、様々な事情でその道が閉ざされかけています。そこで働きに出たのが「ウィー・デリバー」という配送業者。ここで配送の仕事を受けて、彼の物語を観ていくというのが『Deliver At All Costs』の大筋です。PVからは想像もつかない真面目なストーリー!

基本的に車の運転がゲームの主軸になるものの、あくまでプレイヤーはウィンストン・グリーンとなりSt.Monique(セントモニーク)で仕事をしていくことになるのです。結構がっつりと描かれるストーリーに沿って、見下ろし型の「セミオープンワールド」で配達を行っていきます。

とは言いつつも、本作はこのシナリオに沿って“真面目な配達”をしなければならないというゲームではありません。『Deliver At All Costs』の世界では安全運転なんて絶対に不可能。無事故無違反を心がけていても、この世界が許してはくれないのです。

さて、初めに運ぶのは花火。運転に失敗したらド派手に爆発しそうだな……と思っていると、もう運転してるだけで勝手に花火が飛びまくる!こっちは安全に運転しているだけなのに、回りに飛び散った花火が住民を襲い、これに激怒した住民がチェーンソー片手にこちらに襲い掛かってきます。この世界の住人はキレるとチェーンソーやバットでこちらを解体しにかかるのです。

どんなに派手に轢いても怪我することはなく、チェーンソー片手にボンネットを切りつけたり車の後ろにしがみついたり、とにかくこの怒りをすぐに発散してやろうとアグレッシブに襲い掛かるのが『Deliver At All Costs』世界の住人達です。
「車の後ろにご婦人が巻き込まれてる!」と思いきや自発的に怒りのまましがみついてるのだから笑っちゃいます。そんなわけだから「やべぇ、人轢いちゃったよ」という罪悪感はゼロ。むしろ「やべぇ、人轢いちゃったよ。ほらチェーンソー持ち出してきた!」と別ベクトルの後悔に苛まれます。

しかも今回運んでいるのは、なぜか自動で発射されていくも減らない花火。安全運転を心がけていても勝手に荷台から爆発物が飛び出していきますし、それに当たった住民は激怒のチェーンソー。もちろん車には耐久値があるので、ボコボコにされると大破、爆発してしまいます。

各クエスト(で、運ぶ奇天烈な荷物)ごとに「どういう運転が最適解か」というのは変わってきますが、花火運搬では「住民が暴徒と化す前に爆走する」必要がありました。初手から大量の人間に追われるというのはゾンビ映画さながらの絵ですね!
◆強烈なユーモアの中で50年代に思いをはせる

そして次の仕事では、腐ったスイカをレストランに卸そうとして激怒されている依頼人ジョーイ・スイーツと遭遇。ここでは荷台で揺れるスイカを最低20個以上運べと言われます。逆に20個以上であれば何個地面に落としても許されるということです。

これだけ書いたらまともなクエストですが、配達、というか片棒を担ぐのは「腐ったスイカを新鮮なスイカに戻す」こと。ジョーイ・スイーツいわく果物に問題はなく“お色直し”するらしいです。しかし明らかにハエがたかっていて……これは新鮮には戻せないだろ……。

しかし農薬洗浄機や染色工場での不思議な過程を経るとあら不思議、腐ったスイカの見た目が新鮮なスイカに変わっていきます。この変わりようには、なんと初めに腐ったスイカを納品されてブチギレていたコルグレイブ夫人も気付きません。「まぁ、今度のは良さそうじゃない」と満足気。すみません、それ同じスイカなんです……。

このぶっとび具合で、わずか一日目。これを終えてウィンストンは「ウィー・デリバー」にて本格的な配達員として働き始めます。日々の暮らしは決して楽ではなさそうですし、配達で生まれる新しい人間関係もあれば同時に苦労も産まれていきそう。自室に飾られたロケットが切なさを醸しだします。

本作は1950年らしい夢と、若者のままならなさがいい味を出しています。真面目なストーリーラインが用意されつつも、シニカルなユーモアが中心となるのが『Deliver At All Costs』というゲームなのです。
他に体験できたのは「伝説の白カジキの配達」「風船の配達」などなど。漁師の娘と結婚したい依頼人が、彼女の父親に「伝説の白カジキを釣ってこい」と言われ、配送業者の主人公に依頼してきます。

どうやって海にいるはずの白いカジキを手にするのかは一旦置いておきますが、ここでは運搬中にカジキの機嫌を取らなくてはいけません。カジキは餌をあげないと怒りでバチンと尻尾を地面に叩き付け、車のコントロールを奪ってくるのです。また風船配達は、字面から想像出来るとおりに低重力となった車の運転が楽しめます。


ローカライズもかなり完成度が高く、純粋に見事と言えるものでした。文章に破綻がないのはもちろん、言葉遊びのなぞなぞまで日本語に変わっているので、機械翻訳などではない「気の利いた和訳」が準備されています。このなぞかけ自体はストーリーの本質には(おそらく)関係のないところなので、諸々力が込められていますね。

ちなみに本作は爆走推進と言わんばかりに、本作ではほぼ全ての建造物が破壊可能。その気になれば道なき道(建物)を(破壊して)真っ直ぐに進むことも可能。もちろんこの世界の自治は住民のチェーンソーのみに委ねられているわけではなく、普通に警察も存在しています。当たった際の衝撃が強めのパトカーで追ってきますが、銃乱射などはしたりせずでホッとします。

配達にちょっと刺激を加えたければ、民家をぶっ壊し住民をぶっ飛ばしてショートカットすることもできるでしょう。そのうち民家をみて「この住宅ならショートカットできそうだな」とか考え始めそうで怖い。まあ結果的には、パトカーやチェーンソーを持った住人にひたすら追いかけられることになりますが……。
試遊では進捗上あまり解禁されませんでしたが、後々になると自分の車を改造することが可能になるので、さらに物語のトンチキさに拍車がかかりそうです。

ちなみに捕まった後のウィンストンのセリフは「マグショット(逮捕時に撮影される写真)が格好よく撮れてることを願う」。この短い一言でさらっと流すあたりが、本作の「罪悪感を感じさせないけどブラックではある」ユーモアを体現しているでしょう。

『Deliver At All Costs』は1950年代というノスタルジーを感じる世界に、違和感なく織り交ぜられたユーモアが面白い作品です。「次に何を運ぶんだろう」というワクワクが常にありました。見下ろし型ACTかつ配達という、一種オーソドックスな形式にもかかわらず飽きは来ず、本作では「爆走の楽しみ」だけではない、ストーリーの牽引力を感じられました。テンポよく笑える作品を求めている方に勧めたい一作ですね。

真面目でありつつも迫り来るハチャメチャがこれでもかと味わえる『Deliver At All Costs』日本語版は、PC(Steam/Epic/GOG)向けに3,850円(税込)で2025年5月22日(PS5/Xbox Series X|S向けには5月23日)発売予定です。
¥3,122
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