2018年にリリースされ、多くのプレイヤーから人気を集めた一人称視点・ホラーアクションゲーム『Dark Deception』。
本作はこれまでエピソード形式でリリースを重ね、ファンコミュニティを育ててきました。そして2025年には最終エピソードである「チャプター5」のリリースを控えているほか、先日にはなんと映画化も決定。そんな『Dark Deception』のこれまでの道のりと今後の展望を、本作ディレクターであるVince Livingsさんに詳しく伺いました。
――まずは『Dark Deception』開発のきっかけを教えてください。

Vince:実は本作は、「3ヶ月で完成する」という目標があったんです。僕たちはインディーゲーム会社を始めたばかりでしたが、ビジネスパートナーは3ヶ月か半年でゲームを完成させたかった。モバイルゲームを作る予定だったんですが、3ヶ月ではとても開発なんてできません。
そのパートナーは「本当に深くてクリエイティブなものを作りたい」とも言ってくれましたが、限界があるので、簡単なゲームなら作り出すことができると考えました。レトロなAtari作品や『パックマン』のようなアーケードゲームなら作れるだろうと。
実はその頃、パックマンのホラーバージョンがYouTubeのクリーピーパスタ(※)コミュニティの中で流行っていました。「Pac 3D」だったかな。そこからインスピレーションを得て、現在のチャプター1「Monkey Business」になりました。2014年にデモ版をリリースできたんですが、実のところ、それが本当にゲームになるとは思っていませんでした。元々、本作はUnityで開発されたVRゲームだったんですが、開発途中でUnreal Engineでの開発に切り替えました。
※クリーピーパスタ…インターネット上にてユーザーがコピー&ペーストで流布する、ホラーや超現実的な要素のあるショートストーリーの一形態。「スレンダーマン」などが有名で、有名Sci-FiコンテンツであるSCPもクリーピーパスタがルーツに当たる。
チャプター1のデモ版を作った後、次のチャプターに移りたいと思っていたのですが、デモ版が人気を集めたため、他のデモや新しいキャラクターを作ってみたくなったんです。それ以来、多くのファンからのフィードバックを元にどんどんコンテンツを足していって、その中で統一したストーリーみたいなのを描き始めたんです。
そしてその後、本作のストーリーを繋げて、フランチャイズを作り始めました。なぜなら、これは簡単なデモにとどまらず、多くの作品になるべきだと思っていたからです。本格的な開発は2017~2018年に始まりました。
――なるほど、長い間開発を続けていらっしゃったんですね。本作のストーリーについてもきっかけを教えていただきたいです。
Vince:実は、最初のデモではほとんどキャラがいませんでした。マーダーモンキーもいませんでしたし、舞台のホテルしかなかったんです。僕はデヴィッド・ボウイが出演する「ラビリンス/魔王の迷宮」という映画が大好きだったので、デヴィッド・ボウイ演じる魔王のようなキャラクターを作りたかった。

まず、ビアスというキャラを作りました。ビアスは最初、本作の悪役だったんです。でもキャラに深みを持たせたかったので、互いに競争している2人の悪役を作りたいと思い、マラクを作りました。ストーリーが進むごとにどちらを信用すればいいのか、分からなくなってしまう。同時にクリーチャーがプレイヤーを追い詰めてくるし。そういった、緊張感や不安感が生み出されるストーリーにしようと考えて、そこから本作のストーリーが生まれたんです。
――なるほど、面白いですね。本作開発において、ホラーゲームとか映画作品ではどのようなものに影響されましたか?
Vince:もちろん、『バイオショック』です。『バイオショック』と『バイオショック 2』の能力システムには作品全体で影響を受けました。でも、各ステージでは、それぞれ別の映画や作品に影響されています。例えば、キラークラウンのステージでは「IT(1990年版と2017版の両方)」だったり、チャプター2の「アガサ」はGrudge Girl(「呪怨」を原作としたハリウッド版映画「Grudge」に影響された女性クリーチャーのジャンル)や「リング」などに影響を受けました。

もちろん、ゲームでは『SILENT HILL』シリーズにも影響を受けました。スピンオフの『Dark Deception: Monsters & Mortals』では『SILENT HILL』とコラボしましたが、その理由は、『SILENT HILL』がサイコロジカルホラーの影響源だからです。他にも、『バイオハザード』シリーズや、『デビルメイクライ』シリーズからも影響を受けています。カプコンからの影響が強いですね。
――なるほど。続いて、本作はクリーチャーが魅力的だと感じました。ホテルマンの猿だったりとか、学校にいる少女のアガサだったり。そういったクリーチャーはどのように着想されましたか?
Vince:まず1キャラあたり、30~60個ほどコンセプトのシルエットを描くことが多いです。僕は一つのシルエットを描くのに迷いがありません。そのバリエーションの中に、僕が好きなシルエットの全ての要素を詰め込んでいるんです。

そしてバリエーションの中から、12~15個ほどのアイディアを組み合わせることによって、最終的なデザインを導き出します。チームと一緒に仕事をしているとき、コンセプトアートを彼らに委ねて、「どれが好き?」って聞くんです。なぜなら、自分の勘でだいたい何が足りないか分かるから。もしかしたら僕の思うベストではないかもしれないけど、彼らは正しい方向に舵を切ってくれます。だから自分のアイデアに、他者の意見を取り入れることは本当に重要だと思います。彼らは確かな目を持ってるから。まずデザインを詰めて、キャラの性格は最後に決めます。
――チャプター5のキャラクターについてお聞きしたいのですが、初登場するクリーチャーたちにはどういった特徴がありますか?
Vince:もちろん、彼らの武器や特殊能力、そしてマレック・ジェネラルズたちも関わっているのですが、様々な特徴があります。

そして、シークレットのキャラクターも存在します。全てのSランクを達成し、トリックパッドを解放すると、ウィケットウェイズというストーリーが開放されます。それが隠しキャラを解放することになる。実はまだ詳しく説明できないのですが……。ただ、楽しみにしていてください。
――なるほど、期待が高まりますね。では、チャプター5までの開発の軌跡についてお伺いしたいんですけど、2018年より以前から開発されているということで、各チャプターをDLCとして発売されているのには、どういった理由がありますか?
Vince:実は、本作以前にもエピソード形式でリリースしていたゲームがいくつかあったんです。彼らは無料チャプターをリリースし、ファンを獲得していました。一方で僕たちが2014年にリリースしたVRのデモ版は人気でしたが、実際に『Dark Deception』がリリースされるまで4年ほどブランクが空いてしまったんです。
それを受けてチャプター1は無料でリリースしたんですが、非常に大きなリスクでした。なぜなら、チャプター1が再び人気にならなければ、僕たちはお金を失うだけになってしまうから。
でも、僕たちは本作に自信を持っていました。そうしたリスクにもリターンがあるはずだと。実際チャプター1は成功して、プレイヤーが戻ってきました。無料でリリースしたので、デモ版より多くのプレイヤーが遊んでくれたんです。それがきっかけで、本作はDLCで展開していく、エピソード形式のゲームになりました。だけど、今はそれがベストな選択だったかと言われると、そうは思えません。
僕たちのチームは、エピソード形式のゲームを作るためのパイプラインを構築できる体制になってなかったんです。今はなんとかなってきましたが、開発体制を整えるのに時間がかかってしまいました。なので、チャプターごとのリリースに間が空いてしまったんですね。
――なかなか大変な道のりだったんですね。本シリーズはオリジナルの『Dark Deception』以外にも、ドット絵2Dの『Super Dark Deception』や、PvPマルチプレイホラーの『Dark Deception: Monsters & Mortals』など、多数のスピンオフ展開を行っていますよね。これらを開発しようとしたきっかけは何だったのでしょうか?
Vince:『Monsters & Mortals』は、ファンの要望から開発がスタートしました。チャプター2のリリース後、多くのファンから「『Dark Deception』にマルチプレイを追加して欲しい!」と要望があったんです。でも、僕たちは『Dark Deception』にマルチプレイを追加したくありませんでした。本作はもともとストーリー重視のシングルプレイゲームなので、いろいろと混線する恐れがありました。

シングルプレイのストーリーを作りたい、でもファンはマルチプレイの『Dark Deception』を求めている……。なので僕たちは、オリジナルとは別に、マルチプレイの『Dark Deception』を作ろうと思いました。
そうしてリリースした『Monsters & Mortals』は、150,000本以上の売上を記録しました。スタジオにとってはとてもポジティブな結果です。ですが、それは僕にとっては誘惑を与えたのです。今、僕たちには元々のファンと、『Monsters & Mortals』のファンがいます。彼らは本編のファンとは全く違う層です。彼らはより多くのコンテンツを欲しがっていますが、オリジナルの開発のためにも、アップデートはいずれ終える予定です。
一方で、『Super Dark Deception』を開発した理由は、子供などの若い世代を『Dark Deception』コミュニティに取り入れるためです。一部のファンにとっては、3Dゲームは画面酔いしやすくて、プレイできないし、動画を見ることもできない。そこから、2D版の『Dark Deception』を作ろうと思いました。

子供にとっては良いゲームです。画面酔いもしなければ、早く開発できるし、ゲーム自体も安い値段に設定できる。だから、若い世代が気軽に『Dark Deception』の世界に入れるんです。さらに彼らが成長したあと、オリジナルである3D版に戻ることもできる。同じ理由で、『Roblox』で展開している本作のスピンオフは、子供たちに『Dark Deception』の魅力を届けようとしています。その後、子供たちがそれを楽しんで、もっとダークなゲームをプレイしたいとき、オリジナルの『Dark Deception』に戻ることができます。
そして、オリジナルの開発については、チャプター5は非常にボリュームの大きい一作になっています。便宜上、僕たちはチャプター5と呼びますが、実際には『Dark Deception 2』と言えるほどのボリュームです。僕たちはこれをチャプターにすることを選びましたが、多くのプレイヤーは「とにかく早くリリースして欲しい」と願っているようです。端から見ればただのDLCですが、チャプター5はほとんど新作と言ってもいいでしょう。
チャプター5の開発は2年、3年のプロジェクトになり、今はもう4年経ちました。今の時点ではほぼ開発は終わりですが、長い期間がかかっています。だからこそファンの応援に応えたり、新しいファンを増やすために、『Monsters & Mortals』や『Super Dark Deception』が必要なんです。ファンベースを広げていくことが重要です。
――なるほど、今後もシリーズを展開させていくために、ファンベースを拡張するようなコンテンツの開発が必要だったんですね。続いて、映画化についてお聞きしたいのですが、映画版では本作の魅力である一人称視点というのはどのような感じで演出されるんでしょうか?
Vince:まだ詳細は分かりませんが、担当する映画監督によるかもしれません。制作側としては、本作を『バイオハザード』や『SILENT HILL』のようなゲームだと感じているのかもしれない。それが彼らの選択だと思う。
でも、監督の選考に関しては、僕たちのチームにも少し共有されています。それぞれの監督によって、得意とするスタイルが異なります。制作側が監督を選ぶのには数ヶ月かかるかもしれません。なので正直、一人称視点に関しては今の時点ではどうなるかは分かりません。
ちなみにゲームでは三人称視点にも切り替え可能です。ただ、全く違うゲームを遊んでいるような雰囲気になりますね。
実は映画化自体、スケジュールとしてはまだ初期段階です。僕たちがどのスタジオと契約するかは、スケジュールに大きな影響を与えます。
例えば『Five Nights at Freddy's』は、最初はワーナーブラザーズに製作を任せていましたが、結果としてスケジュールは大きく遅れました。でもその後ブラムハウスに乗り換えると、製作はスムーズに終わったんです。なので、IPに居座るような会社ではなく、すぐに製作できるような会社を決めて、3~4年以内にリリースできるようなものを作ってほしいと思っています。
――なるほど。本作はストーリーも魅力ですが、脚本はCory Todd Hughes氏とAdrian Speckert氏が担当しています。脚本の方向性についてはまだ、決まっていない感じですか?
Vince:脚本に関しては色々来ています。でも、オリジナルの要素を変えずに、忠実な翻案をして欲しいと望んでいますね。
ゲームのメディア化に関しては正直、オリジナルであるゲーム自体の売り上げに貢献しているのを見たことがないんです。メディア化の制作者は彼ら自身が欲しいものを作っているから、結果として作った作品も悪くなってしまう。それはファンにとっても、オリジナルのゲームにも、そしてゲーム周辺のコミュニティにとっても良くないことです。
だから、CoryやAdrianはオリジナルを尊重しています。彼らは重要な要素を変えようとはしません。彼ら自身のバージョンの『Dark Deception』を書いているんです。彼らは良い映画のバックグラウンドを持っていると思う。経験としてはまだ少ないかもしれませんが、彼らの過去作は本当に上手に作られていると思います。アンディ・ゴールドフィルムのような、レガシーを持った映画を今撮影しているようです。
正しい脚本を作って、正しい監督を選び、最高の映画を作る。いい作品ができるんじゃないかな。予算に関しても低くはないので、期待できると思います。
――なるほど、公開が楽しみです。先ほどお話に出たように、2024年には『Five Nights at Freddy's』が映画化され、日本では、同じく一人称視点のホラーゲームである『8番出口』の映画化が大ヒットしました。現在はホラーゲームだけでなく、そのメディア展開にも勢いがついているように思えます。そうした状況についてはどう受け止められていますか?
Vince:僕は『Five Nights at Freddy's』の映画を見た覚えがあります。人気のインディー・ホラーゲームで、同じくマスコットが追いかけてくるジャンルだったので、この実験的な映画化がどう転ぶか、気になっていたんです。
同作の映画化は、『Dark Deception』が映画やTVシリーズになるかどうかに影響を与えられると思っていました。ハリウッドの考え方は、とにかく目の前にある人気ジャンルを探すこと。成功できそうなストーリーを見つけたら、たくさんのお金を稼いでいく。稼いだ予算を使って、またストーリーを探していくっていう繰り返し。だから『Five Nights at Freddy's』が300万ドル売り上げれば、それがゲーム業界全体をひらくことになると思っていたら、実際それが現実になったんです。
例えば、それぞれのメディア展開を見た時に、『リトルナイトメア』にはTVシリーズプロジェクトがあります。その時、僕は映画化か、TVシリーズか、どちらかを選べると気づいたんです。どっちがいいか……僕の最初の考えは、アニメやTVシリーズを作るべきだというものでした。
『Dark Deception』のストーリーは、TVシリーズやアニメと相性が良いように思えます。また、僕は映画化に関する悲惨なディスカッションやアプローチを聞いたこともありました。失敗したビデオゲーム映画をたくさん見てきたからこそ、映画化の話が来たとき、最初は乗り気ではありませんでした。でも、『Five Nights at Freddy's』の映画化は、原作ファンからも非常に好評でした。
また、映画はどうしても賞味期限があるので、ゲームからずっと後に映画化されても、多分売れないと思ったんです。だから、映画化を見守りながら頑張るべきだと考えました。アニメやTVシリーズは後でやることができる。でも映画は、悪いものにならなければ、『Dark Deception』のためにたくさんの展開が作れる。制作側に話を聞いて、彼らが人気のIPを探しているのではなく、『Dark Deception』自体を気に入っていることを知ることができたので、彼らと契約することになりました。
――確かにアニメ化も面白そうです。先ほどカプコンのゲームから影響を受けたと語っていましたが、日本のホラーシーンはチェックされていますか?
Vince:日本のコンセプトと西洋のコンセプトを混ぜ合わせることは、みんなにとっては大きな価値があると思います。カプコンには『バイオハザード』があって、KONAMIは『SILENT HILL』を作ったけど、西洋の僕たちにはそうしたコンセプトはなかった。
他にも『ディノクライシス』や『DEMENTO』といった作品もありますよね。『DEMENTO』は大好きなゲームです。いつも日本の開発者によるゲームは好きなものが多くて、インスピレーションを高めてもらいました。西洋のゲームもインスピレーションを高めてくれましたが、多くはファンタジーゲームです。西洋のゲームで琴線に触れたものは最近本当に少なくて、『Alan Wake 2』ぐらいかもしれません。プレイしたんだけど、スタイリッシュだし、立ち上がりがいい。でも普段は日本のゲームのほうが好きですね。
日本は変なスタイルのゲームが多いと思います。スパイク・チュンソフトの『ダンガンロンパ』もプレイしたし……そういう変なゲームが好きですね。日本のものは全て好きだけど、特に変なスタイルのゲームが好き。シネマティックなホラーゲームが好きです。
あと、日本のキャラと比べると、最近の西洋のキャラは、おじさんっぽいキャラが多いように感じます。みんな一緒の仕事してるし、見た目も似てるし。お父さんみたいなキャラクターがレザージャケットを着てて、頭はハゲか丸刈り、みたいな。
一方で日本のゲームキャラはユニークな性格で、ユニークな見た目ですよね。すごくアイコニックな見た目なので、僕もよく参考にしています。三上真司さんや須田剛一さんも、素晴らしい仕事をしていると感じています。
――ありがとうございます。最後に、日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
Vince:日本のファンやゲーマーは何でもやってくれるので、『Dark Deception』も遊んでもらえて嬉しいです。海外のゲーマーは『コール オブ デューティ』とか『マインクラフト』だけしか遊ばない、みたいなことも多いので。すごいありがたいし、日本はゲーム作りの国なんだなと実感できました。いつもありがとう!

――ありがとうございました!
シリーズ最終章であるエピソード5は、まさに本シリーズの集大成になりそうな予感。さらに映画化についても、原作者のVinceさんを始め、制作陣の熱意が伝わってきました。そんな『Dark Deception: Chapter 5』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)向けに、2025年発売予定です。












