
『クロノアーク』『Monster Train』『Inscryption』『StarVaders』『Balatro』『Library of Ruina』……ありとあらゆるゲームに影響を与え、「デッキ構築ローグライク(ローグライト)」というジャンルを確立した歴史的傑作『Slay the Spire』が、ついに……ついに帰ってきました。
その名も『Slay the Spire 2』。2026年3月6日よりアーリーアクセスが開始されています。
果たして、またしてもゲーマーの睡眠時間を削り取る悪魔の作品に仕上がっているのか? 15時間ほどプレイした感想をお届けしましょう。

今再び尖塔を駆け登れ――デッキ構築ブームの火付け役が堂々の帰還
本作は大好評を得た傑作『Slay the Spire』の正統続編です。
今更説明不要かもしれませんが、一応さらっとおさらいを。本シリーズ(もしくはそれに影響を受けたデッキ構築ローグライト系作品)は、カードを用いて敵と戦い、報酬として得たカードでさらにデッキを強化していき、どんどんダンジョンの奥へと進んでいくというもの。
運と戦略のバランスが難しく、自分なりにシナジーや強いアクションを見つけていくところがこのジャンルの面白さになっています。

特に『Slay the Spire』は、同ジャンルの嚆矢となったこともあり、今となってはかなりシブい作りです。ターンごとに配られる「エナジー」の範囲内でカードを使用し、強力なパッシブ効果のある「レリック」を集め、ときに一発逆転の効果がある「ポーション」を使いながら、3階層のボスを倒すのが目的です。インベーダーゲームと融合した『StarVaders』や、スコアがインフレしていくポーカーの遊びと混ざった『Balatro』などの後発作品に比べると、シンプルな印象を受けます。

『Slay the Spire 2』はそんな前作を真正面から引き継ぎ、コアメカニクスを一切変えておりません。
前作のプレイアブルキャラクターから「アイアンクラッド」「サイレント」「ディフェクト」が続投し、新たに「リージェント」と「ネクロバインダー」が登場。
リージェントは“スター”というもうひとつのエナジーを駆使し、ネクロバインダーは“オスティ”という自律して動く左手を育てながら戦うスタイルですが、基本的なプレイフィールは前作とそこまで変わりません。マップの作りから、戦闘処理の仕方までほとんど変わらず、前作プレイヤーなら何の説明も読まずともすんなりと入っていくことができるでしょう。

では何が変わったのかというと、ひとつはカードの種類にあります。
本作でもゲーム進行によってカードがアンロックされていく形式ですが、ゲーム開始時点ですでに大量のカードが使用できます。
前作でも散々お世話になった、現在の防御値の分だけ攻撃できる「ボディスラム」といった懐かしのカードもあれば、敵に付与されている弱体の分だけ追加でダメージを与えられる「ごろつき」といった新カードもあります。
これにより、前作では実現しづらかった新しいシナジーが追加されました。
もちろん、アイアンクラッドらしく防御値をあげまくったり、サイレントらしく毒を付与させまくったりといった往年の戦法も残っています。

敵やレリック、ポーションも大量に追加されています。クセのあるものも増えており、周回する喜びがあります。

そして何より、今回もゲームバランスが良い!
一部、完成すればウィニングランになってしまう組み合わせの強カードもありますが、それらを引くまでにデッキを安定させる楽しみはしっかりと担保されています。
そして、イベントや敵の攻撃もいやらしいものが減って納得感が増したように感じます。???という行動予測がなくなったのも大きいですね。
現時点では大小いくつかのバグが発見されていますが、アーリーアクセスということで、今後ひとつずつ潰されていくことでしょう。

ゲームデザイン以外で大きく変わった点としては、演出がリッチになりました。敵も味方も逐一アニメーションを取るようになり、それぞれに攻撃や防御にアクションが付いています。
といっても、元々味わい深いローファイなビジュアルであった本シリーズ。見とれるほどダイナミックなアクションはないので、過度な期待は注意です。むしろ、演出の増加によってわずかにテンポを削ぐところもあり、やや好みが分かれるところかなと思ってしまいました。

また、ロアが充実した点も悩ましい点です。
特に、本作ではラン中に特定のクエストを達成すると「断章」というものがアンロックされます。この断章に新カードや新レリックが紐づいており、強制的にこの尖塔やキャラクターたちにまつわるロアを読ませられるのです。
『Slay the Spire』の世界観に惚れ込んでいた人なら嬉しいかもしれませんが、筆者はそこまで思い入れがなかったので、この点もテンポを削いでしまっているように感じました。

と、多くのユーザーが求めたであろう純粋進化はほぼすべて上手くいっているように感じましたが、このグラフィックと世界観で演出を凝られてもな……という感想も同時に抱いてしまいました。
しかし、今回のスレスパはこれだけではありません。意外や意外! 新要素のマルチプレイが面白かったんですッ!
ありそうでなかった!? マルチプレイで遊ぶ“デッキ構築”
マルチプレイでは最大4人でフレンドと一緒にゲームにチャレンジすることができます。始めると、まず各プレイヤーは使用するキャラクターを選択(被りOK)。早速尖塔に向かいます。そしていつも通りネオーの祝福をそれぞれに選びます(ここも被りOK)。
いよいよマップ画面になると、そこにはプレイヤーの数だけアイコンが表示されています。おお~スレスパの孤独な世界にフレンドとともに立っている……。
マップ画面である羊皮紙には好き放題に落書きができるので、どのルートを辿りたいかの目印を描き込みましょう。行きたい場所が割れるとその中からランダムで選択されます。

戦闘の処理も基本的に一緒です。それぞれにデッキもエナジーも存在し、各々が好きな順番でカードを使っていきます。たとえば、弱体を他のプレイヤーに使ってもらってから、自分の大技を叩き込むなど、そういう連係プレイが求められます。
敵キャラクターもプレイ人数に応じて体力値が増加します。序盤のザコがとんでもない体力を持っていて笑っちゃいますね。

ポーションやカードの効果を味方に適応することもできるので、死にかけた味方を護ったり、逆に見捨てられたりします。マルチプレイ専用のカードもあったりして、独自の体験に仕上がっています。
宝箱のレリックは人数分しか用意されておらず、じゃんけんで取り合いになるのもちょっとした面白ポイントです。

複数人であれこれと話し合いながら、作戦通りに事を進める面白さはMMORPGのレイドボス戦や『バルダーズ・ゲート3』のような協力型RPGに似ている良さがありました。ソロで遊ぶときよりも何倍もプレイ時間はかかりますが、その分だけ体験の質も上がり、エリートを一体倒すだけでも感動できます。
ソロプレイではシナジーを組めるかどうかだけでデッキを作ることが多いですが、味方の状況に合わせていつもの自分では取らない選択を取るのも、新しい遊び方だなと感じました。

デッキ構築ローグライクは星の数ほど作られましたが、筆者が知る限り、このような形でマルチプレイに挑戦したタイトルは多くありません。まさか、最大手にして元祖がそこに切り込むとは……!
ですが、考えてみれば『Slay the Spire』はボードゲーム版も出ていますし、発想元のひとつとして知られる『ドミニオン』も複数人で遊ぶゲームです。この進化は必然と言えるかもしれません。

シングルプレイはいつもの遊びをより拡張し、マルチプレイでは皆と協力しながら楽しめるデザインを開拓した、まさしく続編らしい続編に仕上がっていました。
計算違いを起こして大ダメージを受けたり、ドローソースが無限にループするデッキを作ったりしながら「そう、これだよこれ……」とほくそ笑む夜が続いております。これからアセンションをどんどん登るのが楽しみだッ!
『Slay the Spire 2』はPC(Steam)にて早期アクセス版が配信中です。













