華奢な少女がでかい武器を手にでかい敵に切りかかる。そんな絵にワクワクを覚えるのはゲーマーとして珍しいことではないでしょう。そんなロマンあふれるジャンルに颯爽と現れたのが今回紹介する『モータースライス』。無愛想な少女として巨大建造物を駆けまわり、身の丈ほどのチェーンソーを振り回して暴走する重機と戦う本作が我々の少年心をどれほど刺激してくれるものか、本稿ではその先行プレイレポートをお届けします。

本作は『プリンス オブ ペルシャ』や『ミラーズエッジ』シリーズ、『ワンダと巨像』に影響を受けたという、2024年6月に発表されたパルクールアクションアドベンチャー。終末世界の巨大な廃墟で、プレイヤーは「P」という名前の少女として襲いかかる自律型の建設機械をチェーンソーで切り刻み解体する危険な仕事に挑みます。アクロバティックで流れるようなパルクールアクションと、重機、プレイヤー共に容易に相手を倒せてしまうスピーディーでスリル満点の戦闘を特徴とし、発売日発表トレイラーは20万再生越え、公式Xフォロワーは2万人を超えるなど期待を集める作品です。
ハイテンポのパルクールは看板に偽りなし!チェーンソーを使った独特の移動法などオリジナリティも◎

実際にプレイしてみた感想としても、パルクールアクションの完成度は正に看板に偽りなしと言ったところ。多くのアクションが移動とジャンプボタンのみを使った直感的で簡単な操作でありながら、ジャンプや壁キック、ウォールランなどスタイリッシュなパルクールを次々と繰り出せます。

また、前述のようなオーソドックスなものはもちろん、クラッククライミングなどの高度な技術やチェーンソーを壁に突き立てての高速移動といったオリジナリティあふれる移動方法も用意されており、新鮮なパルクール体験が楽しめました。

一方で課題の解決手段としてパルクール要素を見た際には、操作自体が簡単な弊害として主に壁周りのパルクールで思った動作と別の動作が意図せず出てしまいがちになるなど、慣れが必要な点もあるので注意が必要です。とはいえエリアの踏破だけなら高度なパルクールが要求される場面は少なく、特に序盤は単一の技術を何度も利用するタイプの課題が多いなど、それらを習得しやすいようレベルデザインにも工夫が凝らされていると感じました。
その分収集要素として各所に設置されているオーブは、慣れてきたプレイヤーのチャレンジ精神をくすぐる一段高度な技術を要求されるような場所にありがちで、ついつい寄り道したくなりました。

一瞬の攻防が勝敗を分ける戦闘は適度にヒリ付く爽快感

本作の魅力を形作るもう一つの要素、重機との戦闘についても期待を裏切らない爽快感を味わえるものに仕上がっています。ステージギミックを含め基本的にダメージを受けたら即死と「華奢な少女」らしいPの打たれ弱さはなかなかシビアにも思えますが、エリア攻略中に現れるような等身大程度の重機相手であればこちらからの攻撃も大抵一撃で破壊できるため理不尽には感じませんでした。
中々重そうなチェーンソーを得物としながらもPの攻撃、回避モーションはかなり俊敏で、多少の乱戦であっても思うがままにスパスパと敵を切り刻んでいけます。むしろモーション面で言えばパルクールやその他のモーションに比べフレームが飛んでいるような印象を受けるほどに大雑把な作りにも思えました。

また、敵の攻撃判定に剣戟を合わせることでほぼすべての攻撃を弾けるパリィ要素も用意されています。回避で隙を突けば十分以上に立ち回れるため必ずしもマスターしなければならないような重要な要素ではない印象である一方、パリィ後に大きく隙を晒した敵にすかさず攻撃を叩き込む瞬間は戦闘の爽快感をより一層高めてくれました。
また、このパリィがステージギミックにも利用可能なのもユニークな点でしょう。例えば飛び越えなければいけない破砕機を一時的に停止させたり、振り子のように道を阻む巨大なローラーをはじき返せるなどタイミングさえつかめばごり押し的なギミック攻略で上手ぶれます。
『ワンダ』を彷彿させる巨大重機戦で培った技術を出し切ろう!

戦闘要素の目玉とも言える大型重機戦は打って変わってパルクールに重点が置かれたパズルに近いものでした。こちらも敵の攻撃にパリィを合わせて隙を作るといった基本の戦闘要素が応用できる部分はあるものの、通常攻撃ではダメージを与えられません。

その代わり大きな機体の至る所にパルクールアクションの「チェーンソー移動」が行える部分があり、それらの部位に十分な量のチェーンソーによる移動ダメージを与えることで重機を“解体”していくことになります。

詰まるところその”弱点部位”へいかにたどり着くかを一つずつ見つけ出していく攻略で、ダンプカーなら車体の下に潜り込んでよじ登れる場所を探してみたり、空中を行くヘリコプターなら周囲の地形からタイミングよく飛びつける場所を探すこととなりました。巨大な敵の弱点への道を探すというデザインは『ワンダと巨像』からの影響が色濃く感じられる点でしょう。

苦労して辿り着いた弱点部位を一気に切り開いた時、そしてその末に強大な機体が煙を上げて崩れ落ちる瞬間は達成感に満ちていました。ただ、クリア後に残るあまりに強い砂ぼこりは強敵の亡骸を覆い隠して興を削ぐ残念なポイント。苦労して倒しただけにもう少しかっこよく見せてくれていれば個人的には嬉しかったです。

加えてアクション要素ではチェックポイントが多くリスポーンが非常に早いのも評価点でしょう。ステージ攻略中はもちろんボス重機の攻略中にすらチェックポイントがあり、多少思い切った行動でも気軽に思いつきを試して気軽にやりなおすことができます。

ほくろの目立つ気だるげ少女の作り込みに駄々洩れの開発者の愛

さて、これらのメインシステムに並んで、あるいはそれ以上に作り込まれていると感じたもう一つの要素が主人公「P」です。ほくろの目立つ気だるげな少女となかなかフェティッシュな外見から察せられる通りPには相当な思い入れがあるようで、カメラを近づければ顔を赤らめ明かりを直に向ければまぶしがるなど細かな反応までよく作り込まれていました。待機モーション一つとっても壁が近ければ寄りかかり、そうでなければ武器を下ろしてもたれかかるとインディーゲームとしてはかなり凝った作りと言えるでしょう。



さらにステージ攻略中の至る所で再生可能な、Pの休憩と称して彼女とナビゲーションオーブが交流する場面を眺められるフレーバーストーリーもPへの深い愛を感じられる点でしょう。ナビゲーションオーブはステージ攻略中のカメラの役割を担い、プレイヤーの目線と同一視されていることからも2人の交流はそのままプレイヤーとPとの交流に置き換えることができ、プレイヤーもPに愛着を持ちやすい設計となっています。ツンからデレまで場面場面で様々な感情を覗かせるPの存在がストーリーと作中世界への没入感を高める重要な要因であるのは間違いありません。


ハイテンポなパルクールを軸に、ステージ探索、重機との戦闘、そして主人公との交流といった様々な体験を通して世界へ没入できる魅力的な作品『モータースライス』はPC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S向けに配信中です。












