
PlayStation 2の黎明期である2001年3月8日、まだハードのポテンシャルを模索していたあの時代に、ひときわ尖った輝きを放つタイトルがありました。それが、ソニー・コンピュータエンタテインメント(現SIE)から発売された『エクスターミネーション(EXTERMINATION)』です。

本作は、南極の極秘軍事基地を舞台に、未知の変異生物との死闘を描いたSFアクションホラーです。
PS2初期の作品でありながら、ハードの性能を極限まで引き出した圧倒的な臨場感とリアルな質感表現の美麗なグラフィック、攻撃を受けると「感染度(侵蝕率)」が上がるインフェクションシステム、グロテスクな敵、アクション性の高い探索、そして南極基地という閉鎖空間でのサバイバルなど、プレイヤーの心理を極限まで追い詰める見事なゲームデザインが施されていました。

さらに本作は通常時は三人称視点で移動し、構えボタンを押すことで主観視点に切り替えて狙いを定めるなど、当時のサバイバルホラーとしてはかなり射撃アクション寄りのシステムを採用していました。
『バイオハザード4』(2005年)が後に広く定着させた「肩越し視点で狙い撃つ」TPS的な手触りとはまた異なる、探索と精密射撃を組み合わせた設計には、後年のアクションホラーにも通じる先進性がありました。

また、環境そのものと対峙し、それを切り開いていく「環境サバイバル」的な仕掛けも印象的で、PS2初期の作品としては意欲的な要素を多く取り入れているのが特徴的です。
ちなみに、プロデューサーに『魔界村』などの藤原得郎氏を迎えて製作されています。というわけで今回はそんな本作のさまざまな魅力に迫ります。
◆『エクスターミネーション』の“画期的”な魅力とは

まずは舞台や登場人物など、本作の概要について簡単に触れておきます。
物語の舞台となるのは、外界から完全に孤立した南極の米国環境実験基地「フォート・スチュワート」です。このロケーションの選定こそが、本作の閉塞感と恐怖を決定づけています。

ハイテクな実験施設でありながら、肉々しい未知の組織に侵食されていく基地のビジュアルは、無機質さと有機的な不気味さが融合しており、五感がすり減るような圧倒的な不気味さに満ちていました。

ストーリーは、特殊偵察部隊としての任務(ミッション)と、予想を遥かに超えた生物災害(バイオハザード)という、二層構造のミリタリーサスペンスが展開します。
主人公のデニス・ライリーは通信が途絶えた南極基地の調査および救出のため、フォートスチュワートに乗り込みますが、潜入直前の事故により輸送機が墜落し、部隊は散り散りになります。

孤立無援となったデニスは、この極秘施設で行われていた「狂気の研究」と、生物兵器の真相へと近づいていくことになるのです。

さて、ここからは『エクスターミネーション』独自の魅力と、当時としては時代を先取りしていた画期的な要素をご紹介しましょう。
まず一つ目は、非常に高いアクション性です。2001年時点におけるホラーゲームは『バイオ』や『サイレントヒル』を筆頭に、操作性の面で言えば「ラジコン操作」が主流であり、あえて動きを制限して「もっさり」させることで緊張感(怖さ)を演出している一方で、その不自由さがゲームプレイのネックにもなっていました。
しかし、本作はそのセオリーを破り「プレイキャラをスタイリッシュに動かせる高いアクション性」を実装していたのです。

たとえば、対象物へジャンプできるのはもちろん、ぶら下がったりよじ登ったり、緊急回避をしたりと、異例なほど軽快で多様なアクションを行えます。そのためか、ホラーゲームとしては珍しく高低差による落下ダメージの概念も実装していたのも特徴です。

また、構えなしで即座に繰り出せるコンバットナイフでの近接攻撃や、敵の攻撃を紙一重でかわす挙動など、サバイバルホラーというよりも、「ミリタリーアクション」としての手触りの良さが追求されていました。
このアクションに比重を置いた結果、本来のホラーゲームとしての「ジワジワと迫ってくる怖さ」がトレードオフになっていた点が少し残念でしたし、賛否が分かれるポイントだと思います。

2つ目は、本作最大の特徴とも言える「インフェクション(感染)システム」です。
ライフ(HP)とは別に、「免疫力」が設定されており、デニスがクリーチャーの攻撃を受けたり、特定のトラップに引っかかったりすると、バクテリアへの感染度が上昇していきます。

この数値が蓄積し「感染度100%(つまりは免疫力がゼロの状態)」に達すると、デニスの身体は変異を起こし、ライフが徐々に減少するだけでなく、最大体力が大幅にカットされ、最終的には死に至るという恐ろしい段階的なペナルティが待っています。

免疫力を回復するには「ダブル回復剤」を使うか、点在する「MTS治療機」でワクチンを使用するかの2択ですが、回復剤はゲームを通して十個ぐらいしか手に入らない上、肝心のワクチンも有限なので、感染には十分気をつけたいところ。
この「敵からの攻撃が致命傷に繋がりかねない」という恐怖感は、探索時の緊張感を凄まじいレベルへと引き上げており、本作のアイデンティティとも言える独自のシステムです。

3つ目は、三人称視点と主観視点を使い分ける、射撃寄りの戦闘システムです。
『バイオハザード4』(2005年)は、キャラクターの背後にカメラを置き、肩越しに狙いを定めるTPS的な操作感を広く定着させた作品として知られています。

一方で、その4年前に発売された『エクスターミネーション』も、通常時は三人称視点で移動し、R1で三人称視点のまま照準、R2で主観視点の手動照準に切り替えるという、当時のサバイバルホラーとしてはかなり射撃アクション寄りの操作を採用していました。

『バイオハザード4』の肩越し視点そのものを先取りしていたわけではありませんが、レーザーサイトやスコープを用いて敵を狙い撃つ手触りには、後年のアクションホラーにも通じる感覚があります。敵の核や弱点を狙う場面もあり、単に弾を撃ち込むだけではない攻略性を持っていた点は、本作の個性的な魅力と言えるでしょう。

プレイヤーが扱えるメイン武器は「SPR4」という1挺のアサルトライフルのみで、基地内で手に入る様々な「カスタムパーツ(ユニット)」を換装・強化していくことで、多彩な攻撃が可能になります。

一例を挙げると、近距離戦で絶大な威力を発揮する「ショットガン・ユニット」や、爆発で複数の敵や硬い敵を巻き込める「グレネードランチャー・ユニット」などのサブユニットが装着できます。
また、ズームスコープやナイトビジョン、レーザーサイトといった射撃性能を強化する拡張パーツもリアルタイムで交換可能で、戦況に合わせて最適な体制を整えることができるのも特徴です。

こうしたSPR4のカスタマイズ要素は、現代的なクラフトシステムそのものとは異なるものの、限られた装備を状況に応じて組み替え、閉鎖空間を生き延びていくという点で、2001年のサバイバルホラーとしてはかなり先進的な試みでした。
◆今こそ再評価されるべき「早すぎた」名作

『エクスターミネーション』は、閉鎖空間での「擬態・感染」の恐怖と、シネマティックな演出が見事に融合した名作です。
当時のPS2市場では『バイオハザード』や『サイレントヒル』といった巨大タイトルの影に隠れがちでしたが、その歯ごたえのある硬派なゲーム難易度、プレイヤーに媚びない徹底した緊張感の演出は、今プレイしても全く色褪せていません。
しかしながら、ストレスを感じやすい操作性の悪さや、探索・謎解き要素の薄さ、淡白なストーリーなど設計の甘い点があり、メジャータイトルになれなかった理由も当然いくつもあります。

とはいえ、壁に張り付く、はしごを登る、段差を越えるといった多様なアクション、状況に応じて装備を切り替える武器カスタマイズ、プレイヤーの不安を煽る感染度システム、三人称視点と主観視点を使い分ける射撃操作など、当時のサバイバルホラーとしては意欲的な試みを数多く導入していたことは確かです。
粗削りな部分を抱えながらも、現在のアクションホラーに親しんだ目で振り返ると、その挑戦的な設計には改めて惹かれるものがあります。

もし手元に遊べる環境があるならば、ぜひこの極寒の地獄での「絶滅(エクスターミネーション)」の恐怖を体現してみてはいかがでしょうか。
筆者としては、リマスターまたはリメイク、はたまた続編への淡い希望をずっと心に秘めております…。














