
先日、『アーマード・コア』シリーズへの独自の視点からの言及をきっかけに、多くの日本人から「ロボゲー・ロボアニメ詳しすぎな外国人」として知られるようになったオリー・バーダー氏。実は、氏はゲームやアニメを中心として日本サブカルを海外に長年伝えてきた記者であり、様々なタイトルにかかわってきたゲームクリエイターでした。
弊誌の取材に対して、そんな氏がこぼした最近の悩みと言えば「ロボゲーを作らせてくれるスタジオが見つからない!」ということなのだそう。そこで、本稿では、氏の文章を通じて、氏のもつ「ロボゲー・ロボアニメ」への視点や美学の一端をお伝えしていきたいと思います。
『MechAssault』シリーズの大成功と、海外で人気を得るはずだったのに、そうならなかった『クロムハウンズ』
今回は、海外における『BattleTech』関連ゲームの影響と、それらが米国や欧州で「メカ」というものに対する一般的な理解をどのように形作ってきたかを取り上げる全4回シリーズの第3回です。
第1回では『MechWarrior 2』が文化に与えた影響を取り上げ、第2回では新たな『MechWarrior 5』シリーズによる『MechWarrior』シリーズの復活について掘り下げました。今回は特に、初代Xbox向けに発売された、もう一つの『BattleTech』のビデオゲーム・スピンオフ作品を取り上げます。
数百万本を売り上げた、『MechWarrior』を簡略化した『MechAssault』

初代Xboxが発売され、オンラインサービスのXbox Liveが開始されて間もなく、新たなメカゲームが発売されました。『MechAssault』と名付けられたこのゲームは、『MechWarrior』において特徴的だった「トルソーツイスト」の仕組みを使わずに、メカ同士の戦闘における難しい照準の問題に、ゲームデザインから取り組もうとした作品でした。
以前にも取り上げたように、メカゲームには、2機のメカが戦闘を行う際に生じる、特有かつ非常に難しい照準の問題があります。旧作の『MechWarrior』シリーズでは、メカの上半身を脚部とは独立して旋回させることで、この問題に対処していました。
これにより、プレイヤーは敵を追尾するための時間をより長く確保できましたが、その代わり、メカの動作だけでも、火器管制のほかにほぼ常時にわたり2~3系統の軸を精密に扱う、より複雑な操作に対応しなければなりませんでした。
『MechWarrior 2』が主に「メカ戦闘シミュレーター」と見なされていたため、この複雑さも受け入れられていました。しかし、『MechWarrior 3』と『MechWarrior 4』が発売されるなど時間が経つにつれ、この複雑さ・専門性はシリーズへの新規参入を考えたプレイヤーが感じる心理的なハードルの高さに悪影響を及ぼすようになりました。
操作アシストなどをオプションとして導入することで軽減できる点もありますし、シリーズには実際にそうしたケースもありますが、より抜本的なアプローチはこれから触れる『MechAssault』のような、全てのプレイヤーに影響するゲームデザインからの対策です。
さて、『MechAssault』が何をしたのかを理解するには、『Halo』が発売された当時まで振り返る必要があります。当時は誰もが、ファーストパーソン・シューティング(FPS)をゲームパッドで操作することは不可能だと考えていました。しかし、Bungieは、ゲームパッドでも快適にプレイできるようにする数多くのエイムアシスト機能を追加することで、この問題を解決しました。
大まかに言えば、『MechAssault』シリーズが取り入れたのもこの手法でした。従来の『MechWarrior』にあったトルソーツイストを廃止し、その代わりに、ほとんど表には見えないエイムアシストを採用したのです。
『MechAssault』におけるトルソーツイストについて補足すると、メカは見た目としては確かに胴体をひねっていましたが、その動きの制御はすべて自動で行われていました。そのため、移動操作と視線の向きが切り離されるような状況にはなっていませんでした。つまり、見た目としては特徴的なトルソーツイストが導入されていても、操作感としては当時の一般的なシューティングゲームと同じようにプレイできる仕様だったのです。
しかし、こうしたアシストが機能する速度には上限があり、それが最終的に『MechAssault』におけるメカの地上移動速度を制限することになりました。それでも、メカの移動速度は『MechWarrior』よりもはるかに速いものでした。その結果、本作は海外で数百万本を売り上げ、Xbox Liveを最高峰のオンラインマルチプレイヤーサービスとして確立することに貢献しました。本作はオンライン対戦にも対応していたためです。
ここで比較のために説明すると、『アーマード・コアVI』以前で最も売れた『アーマード・コア』シリーズの作品は、PlayStation 2向けの『アーマード・コア2』でした。全世界で約80万本を売り上げ、そのうち3分の2は海外での売上でした。
個人的には、『アーマード・コア』シリーズのほうがプレイしていてはるかに好みですが、初代『MechAssault』が成し遂げた成功を否定することは困難です。そして、その成功は非常に取っつきやすい操作によって実現したものであり、これは『アーマード・コア』シリーズが今なお苦戦している点でもあります。
『MechAssault 2』と忘れられたニンテンドーDS作品

初代『MechAssault』に続き、再びXbox向けに、より高性能な続編が発売されました。しかし、この頃には『Halo 2』も発売されており、Xbox Liveを利用したオンラインマルチプレイヤーによって海外で絶大な人気を獲得していました。
とはいえ、『MechAssault 2』も数百万本を売り上げ、中程度のテンポのメカ戦闘と、さまざまなアシストを備えた手動照準によって、その成功を実現しました。
また、この頃には、Unreal Engine 3で開発される新たな『MechWarrior』の噂も出始めていました。しかし、その前にもう1本の『MechAssault』が発売されました。ただし、今回はニンテンドーDS向けでした。
これは変わったゲームで、比較的よくできてはいたものの、それまでの作品のファンの多くは、ゲームパッドによる直接的な操作や、Xbox Liveを介したオンラインプレイを好んでいました。
とはいえ、ここで本当に重要なのは、『MechAssault』シリーズが成し遂げたことです。それは目覚ましい売上そのものというよりも、メカゲームを誰もが遊びやすいものにするうえでの最大の問題の一つをどのように解決し、その結果として、それだけの売上を生み出したのかという点です。
『クロムハウンズ』と、海外で大成功を収めるはずだった理由

それから数年後、Xbox 360が登場すると、フロム・ソフトウェアとセガは『クロムハウンズ』という新たなメカゲームを発表しました。本作は、独自のオンラインシステムを採用した、よりゆったりとしたテンポのメカゲームでしたが、多くの人にとっては新たな『MechAssault』のように映りました。
『クロムハウンズ』のオンラインシステムについては触れておく価値があります。本作では非常に興味深い試みが行われており、後に『アーマード・コアV』や『アーマード・コア ヴァーディクトデイ』といった作品で、さらに発展させられることになります。
簡単に説明すると、チームメイトに加えて、戦場をより広く見渡せる司令官ユニットが存在しました。プレイヤーとチームメイトがマップを探索することで、司令官の目や耳として機能する仕組みでした。
ある意味では、人間が操作するリアルタイムストラテジー(RTS)の中にいるような感覚で、この仕組みは見事に機能していました。特に、タワーを占拠することで司令官の索敵範囲を拡大できた点も優れていました。
また、ゲーム世界は永続的に維持されており、プレイヤーは異なる勢力に所属してネーロイムス戦争に参加しました。各プレイヤーの勝敗は、それぞれの勢力全体の戦況に影響を与えました。
戦闘そのものも『MechAssault』から着想を得ており、プレイヤーには非常に高い自由度の手動操作が与えられていました。しかし、ゲームのテンポが比較的遅かったため、それによってアシスト機能が破綻することはありませんでした。
また、私の友人である臼井伸二さんは『クロムハウンズ』の開発に携わり、革新的なメカのデザインを担当していました。そのため今回、ゲームでの仕事について、短いコメントをお願いしてみることにしました。
『アーマードコア』との差別化、世界観・メカデザイン、産業機械・兵器の地に足付いた泥臭さということに辿り着くには大変苦労しました。
XBOX360のハイスペックを活かす表現として、 各モジュールごとにギミック機構を入れ込むスタイル、動力機関だったりサスペンションといった可動部を入れ込むことで 現実感を表現出来たことは新しかった。
社内では、XBOXタイトルを開発していたので海外ゲームを触る機会は多かったです。
当時の日本のゲームとはシステムが異なるので、プレイするたびに新鮮でした。
『ゴーストリコン』・『ヘイロー』など、シングル・チーム戦プレイは非常に面白く多々勉強に成った思い出です。
しかし、これらすべてが素晴らしい出来だったにもかかわらず、『クロムハウンズ』は海外で支持を得ることができませんでした。ただし、その原因はゲームの遊び方にあったわけではありません。
具体的には、『クロムハウンズ』が失敗した要因は2つあったと考えています。1つ目は、本格的なシングルプレイヤーキャンペーンが実質的に収録されていなかったことです。オフラインミッションは用意されていましたが、非常に簡素で短く、基本的にはゲームのチュートリアルとして作られたものでした。
それとは対照的に、『MechAssault』シリーズの各作品には、充実したシングルプレイヤーキャンペーンが収録されていました。
とはいえ、『クロムハウンズ』が抱えていた2つの問題のうち、こちらはもう一つの主要な問題と比べれば、それほど大きなものではありませんでした。
簡単に言えば、セガは海外で本作を十分かつ適切に宣伝しませんでした。ゲーム開発に携わるような仕事をしていた私の友人たちは本作を知っていましたが、それ以外ではほとんど誰にも知られていませんでした。それに対し、『MechAssault』の2作品には、膨大な規模の宣伝とマーケティングが行われていました。
さて、この点について私の言うことを信じられないのであれば、それが今回の記事の結論へとつながります。
『War Robots』は、『MechAssault』の手法が有効であることを証明している――ただし、適切な支援があれば
実質的に、『War Robots』は『MechAssault』シリーズ、ひいては『クロムハウンズ』の現代における後継作です。
ゲームプレイはこれらの過去作品と大筋で非常によく似ており、海外で非常に多くのプレイヤーを獲得することに成功しています。
2025年時点で、『War Robots』のプレイヤー数は累計3億人を超えており、史上最も成功したメカゲームの一つと言っても過言ではありません。
Unreal Engine 5を使用した新作『War Robots: Frontiers』も、PCおよびコンソールで非常に好調です。
次回のコラムでは、この点についてさらに詳しく取り上げるとともに、日本がこの動向に注目しなければ、海外市場で再び機会を逃すことになるかもしれない理由についても解説します。
オリー氏とともに「ロボゲー」を作ることに興味のあるスタジオや団体は、この記事の末尾にある氏のプロフィールから個別に問い合わせていただけますと幸いです。











