サン電子のゲームブランド・サンソフトは、レースアクションゲーム『ROUTE16R』を、PC(Steam)/ニンテンドースイッチ向けに2026年8月6日にリリースしました。
『ルート16ターボ』から41年ぶりの完全新作で、プレイヤーは愛車の「マッド・エックスR」を操り、敵車両やモンスターの妨害を避けながら、ステージにあるすべてのアイテムを回収していきます。「レーダーモード」「メイズモード」の2種類のマップを切り替えるカーチェイスなど、シリーズならではの要素は健在です。
そして本作では新要素として「車が変形するロボットバトル」を採用。集めたお金で機体をカスタマイズしたり、パーツを集めて戦闘を有利にすることもできます。各ステージの最後にはボス戦も待ち受けています。また、ゲームをレトロスタイルのグラフィックで遊ぶことも可能です。


Game*Sparkでは、同作の発売を前に、完全新作『ROUTE16R』の開発スタッフだけでなく、ファミコン時代の『ルート16ターボ』に携わった開発の方を招いてインタビューを実施しました。新旧の『ルート16』シリーズへの想いだけでなく、最後にはとんでもない“幻の一本”の情報も明かされたので、ぜひとも最後までお読みください!

――まずは皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます! 読者の皆さんに向けて、自己紹介と『ルート16』シリーズとの関わりを教えてください。―そして、ご自身にとって『ルート16』はどんな存在ですか?
伊奈:サンソフトでプロデューサー/ディレクター/プログラマーを務めている伊奈正倫です。『ルート16』シリーズは、サンソフトを代表するタイトルなので、IPとして大切にしたいという気持ちがあります。

大山:『ROUTE16R』のディレクターを担当させていただきましたウィットワンの大山です。
『ルート16』は元々ゲームセンターで遊ばせていただき、私の中では『ルート』シリーズといえば『ルート16』でした。今回の話を聞いて、あらためて復刻版でファミコン版の『ルート16ターボ』をプレイしています。
今回『ROUTE16R』を制作するという形になって、それなら『ルート16ターボ』の方をアレンジしようという形になりました。

稲垣:今回『ROUTE16R』でアートディレクターを担当している、ウィットワンの稲垣です。シリーズとの出会いは『ルート16ターボ』です。
僕が住んでいたのが田舎だったというのもあり、近所のゲームセンターになかったんですよ。家にはファミコンもなかったんですが、友達の家で『ルート16ターボ』で遊んだことが印象に残っています。

竹内:元サンソフトの竹内昭人です。『ルート16ターボ』のサウンドプログラム開発に参加して、マニュアル作りや製造工程の管理などにも関わっていました。2001年にサンソフトを辞めてからも、他社でさまざまな作品にも関わっています。

川部 :『ルート16ターボ』でプログラムを担当した川部です。この作品はサンソフトがファミコン向けに開発した初期のタイトルで、当時はファミコン向けのノウハウもわからなかったので、色々試行錯誤した作品ですね。
1985年の『ルート16ターボ』製作の時点で、アーケードの『ルート16』は少し古い作品(アーケード版は1981年に稼働)でした。元々の要素はオリジナルに近くした上で、今で言うリメイクのような作り方をしています。
小井:小井洋明と申します。『いっき』『ルート16ターボ』の作曲を担当していました。クラシック音楽を中心とした作曲家で、現在愛知県立芸術大学でオーケストラのアレンジ等を教えております。
『いっき』はひょうきんというか、コミカルな曲を求められた難しさがありました。『ルート16』はカーレースなので、ひたすら格好いい良さを追求できるということで、その喜びはありましたね。
ルート16を担当した当時は20代半ばで、その当時私に限らず、一人、または複数で遊ぶ時はゲーム一択でした。その世相の中でゲームの音楽に携わることができるというのは、仕事である以上に、ワクワク感、高揚感の強い幸せなことでした。

※今回インタビューには参加していませんが、当時のプログラマーだった野村雅仁氏にも、事前のメール質問で一部参加してもらっています。野村氏は『へべれけ』など多数の作品に関わって、サンソフトを退社後に実家の和菓子屋「おかしの乃むら」を継いでいます。

■ 完全新作への企画の始まり
――正直なところ「まさか『ルート16』が令和に復活するとは!」と驚いたファンも多いと思います。この企画はいつ頃、どうやって動き出したのでしょうか?最初に話を聞いたときの率直な感想も、ぜひ皆さんそれぞれお聞かせください。
伊奈:私は企画の立ち上げには関わっておらず、プロトタイプが完成した時点で初めて立ち会いました。
先ほども言った通り『ルート16』はサンソフトとして大切なIPなので、新作を出すことで皆様に知ってもらえれば、今後も継続できるというのでとても嬉しかったですね。
大山:最初に『ルート16』の新作を出すというお話を聞いた際は、どうやって作ろうか悩みました。ファミコン版を遊びながら、ロボットに変形させるなら車じゃなく飛行機にしよう、とか色々と考えました。
今の、車がロボットになるという形でプロトタイプを作ったんですが、それが受けて採用されました。そこからレトロスタイルの要素を導入するなどのアイデアも出ていきました。
稲垣:別の仕事に携わっているときに、大山に「絵を描いて」と言われて、そこで『ルート16』シリーズの新作を作っていることを知り、参加させていただきました。
ゲーム内で昔のビジュアルをそのまま使えるわけではないので、どのような形にしようかという話を開発の中でやり取りしていきました。

竹内:実は、先ほど初めて『ROUTE16R』を触らせてもらったんです。事前にロボットへの変形システムと聞いていたので、ゲームとしてのイメージが「マッドマックス」から「トランスフォーマー」に変わったのかなと思っていました(笑)
でも、実際にプレイしてみたら、しっかりと『ルート16』シリーズを引き継いでいるなと感じました。
川部:自分としては『ルート16』という作品をみんな知っているとはあまり思ってなくて、色々と騒いでいるのを聞いて「みんなの心に残っているんだな」と思いました。
『ROUTE16R』ではゲームのイメージは結構変わっていますが、当時のファミコンではやれなかったことを、今ならできているのかなと感じています。
小井:私は当時ツインキャブの車に乗っていて、エンジン音の心地よさなども感じていましたし、格好良さを求めたりもしていました。車への思い入れが、ゲームへの思い入れにもなっています。
今だと皆さんの車への思いも異なると思います。でも、我々の世代にとって格好いい車のゲームが出るのは嬉しいと思いますし、個人的にはもう一度『ルート16』シリーズが出るというのは嬉しいですね。
■ 『ルート16』シリーズの魅力
――『ルート16』シリーズの核となる魅力について教えてください。『ROUTE16R』の開発メンバーのお二方には、その上で目指したものも聞かせてもらえれば嬉しいです。
伊奈:『ルート16』シリーズは、やはり「逃げる」というコンセプトがゲームの核であり、面白さだと思います。
今作では新たに変形して戦うという要素はありますが、逃げながらアイテムや目標を集めていくという魅力は失われていません。その上でボス戦などの、これまでにない“新しい面白さ”を出せていると思います。
大山:メイズモードとレーダーモードの2つの画面を切り替えるシリーズの面白さは、新作でも大切にしています。『ROUTE16R』でも『ルート16ターボ』のマップの魅力を活かした上で、現代向けの解像度にアレンジしています。
BGMにもこだわっています。『ルート16ターボ』では難易度ごとに曲が違ったんですが、そのアレンジ曲をステージごとに組み込んでいます。僕はアーケードの曲も好きだったので、マルチプレイに組み込んだりもしました。
稲垣:やはり旧作でのメイズモードとレーダーモードの切り替えは素晴らしいですね。メイズのマップデザインも面白くて、入ったら日本地図になってたりして驚かされたりしました。
今作では、オリジナルのドット絵から新規に起こすので、アートデザインはとても大変でしたね。レトロ感を出した上で、今風の雰囲気も出す必要がありました。メガドライブくらいの色数やドットサイズ想定をベースに、今のピクセルアート要素を入れて昔と今のバランスをとる事を目指しました。
一番苦労したのはモンスターのデザインですね。当時の特徴的なキャラクターをどう活かして今風にできるのか、というのは色々と考えながら作っていきました。


竹内:『ルート16』は元々『ラリーX』を目指して作っていたと当時の先輩スタッフから聞いています。
ハードウェアにスクロール機能が無かったので「画面切り替え」で対応したそうです。でも、そのことで違うコンセプトが生まれたんです。ゲームとしては敵から逃げるときに、メイズモードを駆使したり、マップモードを利用するやり取りは絶対的な魅力になっていると思います。
プレイ中は車を止めることはできないので、限られた条件の中でどのように動くかというのも面白さになっていると思いますね。
川部 :ゲームとしてのオリジナリティを出すために、ファミコンの『ルート16ターボ』では画面切り替えアニメーションなどのアレンジを行っています。当時の容量や技術の中で、それらしく見せる演出はこだわったポイントで、印象に残っていると思います。
小井:『ルート16ターボ』では疾走感の魅力を出そうと思いました。楽曲の中で半音階を駆使したり、ベースでの統一感を出しながら、印象的な楽曲を作れたんじゃないかと思います。
制作に関しては、半世紀近く前のことなので、少ないメモリーの中での縛りが難しいことでもあり、腕の見せ所でもありました。これはサン電子さんの音色担当の方も同じ気持ちであったかと思います
■ 物語の時間軸
――もともとストーリー要素の強いゲームではありませんでしたが、『ROUTE16R』と過去作には物語上のつながりの設定はあるのでしょうか? タイトルの「R」に込めた意味も、あわせて教えていただけると嬉しいです。
大山:タイトルに関しては色々と考えながら、最終的に「R」になりました。タイトルの「R」には、REBOOT(再起動)、REMAKE(リメイク)、REBIRTH(再生)、RETRO(レトロ)といった意味を込めました。
そのため純粋な続編というよりは、「過去作を今の時代に合わせてリブートした作品」という側面が強いですね。でも、敵は「カンハルー軍団」、マイカーは「マッド・エックスR」と、名称は過去作を引き継いだ形にしています。
『ROUTE16R』公式サイトはこちら■ 変形ロボットバトル
――今作最大のサプライズは、やはり自機が変形してロボットになるバトルシステムだと思います。レースゲームにロボバトルを掛け合わせるというのは、かなり大胆な発想ですよね。このアイデアはどこから生まれたのでしょう?
大山:企画のときに、社長から「クルマがロボットに変形したら面白いのでは?」というアイデアがでたのがきっかけです。そこから、稲垣と色々なアイデアを考えました。
「マイカーを戦闘機にしてレーダーマップを自由に飛び回り、敵とエンカウントしたらロボットに変形してメイズマップに切り替わる」というシステムなども提案しましたが、変形要素は「敵とエンカウントした際、ロボットに変形して戦う」という、バトルを盛り上げる演出として形にいたしました。
敵機とぶつかったときにもっと派手な演出を考えたりしましたけど、最終的には全体のシステムを原作通りに踏襲することになりました。演出面では戦闘時の自機のパワーアップの見た目の反映なんかもあり、その点では苦労しましたね。

稲垣:最初にロボット要素の話を聞いて驚きました。『スーパーロボット大戦』も好きですし、過去の仕事の経験などもあり、演出のイメージを作ることはできました。
デザインは悩んだんですが『ルート16』の頃はスーパーカーブームがあったので、当時のスーパーカーを当時風ロボットに変形させる事にしました。色々考えて「口」があるロボットに変形するようになっています。
敵のカンハルー軍団のロボットは、90年代のオモチャをモチーフにデザインしています。70年代の男の子が好きなデザインvs90年代の男の子が好きなデザインの対決、というイメージですね。

――オリジナルスタッフの皆様は、最初にロボットバトルの話を聞いたとき、どう思われましたか?
竹内:そもそも『ルート16』が世の中に出てからずいぶん経っているので、現代向けの要素としてロボットを導入するのは良いと思いました。
「逃げる」ことがコンセプトのゲームなので、どのようにそういった要素を入れていくのか興味深かったですね。
川部:そもそも『ルート16』から『ルート16ターボ』でも、16面で敵から逃げるというゲーム性はそのままですが、大きく継承しているところはないと思います。その上でファミコンで遊べるようにアレンジした作品なんです。
『ROUTE16R』も同じように現行機向けに新作を作る中で、オリジナルとは異なる、新しいコンセプトを導入しなければならなかったと思います。
当時はやれることがどうしても限られていました。今の時代だと逆にやれることが多いと思うので、その点でとても苦労したんじゃないかなと思います。
小井:デザインなどを含めて『ルート16』シリーズのエンターテイメント性に関われていることは、楽しいことなんだろうなと感じています。
――当時は、ファミコン初期で容量を削減することで苦労した点はありますか?
竹内:僕はサウンドドライバーを作っていて、曲の繰り返し部分などは同じデータを使い回すなどして、容量を減らすといった工夫はしましたね。ただ、これは他社もやっていると思うので、特別な技術ではありません。
川部さんの方から、容量に関して特別な要求はなかったので、実はそこまで苦労したということはありません。
川部 :容量をあまり削った記憶はなくて、かなり贅沢に使っていたと思います。もちろん慣れていないこともあって当時としてはプログラムは大変でした。
キャラクターデータなどは『ルート16』で使っていたツールを変換して使っていました。当時は社内にデザイナーがいなかったので、キャラクターデザインは外注したものを自分たちでドットに起こしていました。ここは苦労しましたね。
野村(メール回答):当時はまだ覚えることが多くギリギリでやっていたと思います。
1ステージで16コースあるので、コースデータを減らすため車の通れる所を「0」、通れないところを「1」でデータを持つことで容量の削減にはなっていたと思います。
小井:楽曲を作る際に、主旋律ともうひとつ「対旋律」というものがあって、作曲家としては大切なものだったんですが、ゲームの容量でカットされた思い出がありますね。これはちょっと悔しかったです。
竹内:僕自身が音楽に関してはド素人だったのもあって、作曲家としてのこだわりもあったと思うんですが、伝わりきってなかったかも知れません。
本来なら時間をかけて直すんですが『ルート16ターボ』のときは開発環境が整備されておらず、納期も厳しい事もあって、そのままカットしてしまったかも知れません。申し訳ないです(笑)
――まさかのカットした本人ですか!
一同:(笑)

――当時のプログラマーである川部さんと野村さんへの質問です。当時はどのように役割分担をしていたのでしょうか?(メール回答)
川部:全体の設計は私がやっていたと思いますけど、自分がどこまでやったか記憶がありません。すっかり覚えていません(笑)
画面の切り替えに関しては、当時もかなりこだわった部分ですね。
野村:川部さんには当時、ゲームの作り方など色々教えてもらっていたので、基本的には川部さんの指示で動いていたと思います。
私はその中でも、敵の動きやコースを描くプログラムを作っていたと思います。
■ カスタマイズの奥深さ
――ロボットバトルではカスタマイズやバトルパーツなどの要素があります。レースとバトル、2つの側面でパーツ選びが変わってくるのでしょうか?また、「あえてバトルを避ける」という選択肢もアリなのか、そのあたりの駆け引きについて教えてください。
大山:カスタマイズを行うことで最大燃料、攻撃力、防御力、燃費、移動速度などをパワーアップできます。
たとえば、メイズマップのギミックには「移動速度がある程度高くないと通過できないカラーコーン」などがあり、その先にはレアアイテムが配置されていたりします。カスタマイズポイントを効率よく貯めるには、マイカーを強化して積極的に敵を倒すのが近道ですが、一方でステージを先へ進めるためには、バトルを極力避ける立ち回りも重要になります。
特にバトルパーツはボス戦で真価を発揮するため「道中で消耗しないようにバトルを避ける」といった、プレイヤーごとの戦略的な駆け引きを楽しんでいただけます。
何度やっても難しいと感じたら、地道に稼ぎながら強化する事もできます。パワーを使って無理やり突破するという戦略もあるので、色々な楽しみ方ができると思いますよ。

■ テンポとスピード感の両立
――『ルート16』シリーズは、スピーディーなテンポ感が命だと思います。ロボット戦闘のカットイン演出を入れつつ、レースのテンポを損ねないようにするためにどのような工夫や苦労があったのでしょうか?開発中に「これはやりすぎだ」「ここは削ろう」と判断したエピソードがあれば聞いてみたいです。
大山:バトルのカットイン演出は、ゲームのテンポを損なわないよう短めに設計しています。よりスピーディーに遊びたいユーザーのためにスキップ機能も搭載していますが、パワーアップによってマイカーの演出がどう変化するのかというのは、ぜひ一度は見ていただきたいなというのが本音ですね。
余談ですが、企画段階では「遊技機の演出のように、ダメージが【777】と表示されたらさらにボーナスダメージが発生する」というアイデアもありましたが、今回は実装を見送りました(笑)
稲垣:実は開発初期は今よりも倍くらいの長さのカットイン演出だったのですが、流石にやりすぎだなと思って少しずつ削っていきました。テンポを悪くしないように調整していった上で、現在のような演出のリズムになっています。
■ 受け継いだもの、進化させたもの
――「メイズモード」「レーダーモード」の切り替え時の拡大演出など、過去作をプレイした人ほど思わずニヤリとする要素がしっかり入っていますよね。新作を作るにあたって「これだけは絶対に残す」と決めていたものと、「ここは思い切って進化させよう」と挑戦したものを教えてください。
大山:繰り返しになりますが、やはり「レーダーとメイズのマップ切り替え」がなければ『ルート16』とは言えないので、この根幹システムは絶対に残す方針でした。
一方でメイズマップは、子供の頃にファミコン版を遊び尽くしたユーザーの皆様にも新鮮に楽しんでもらえるよう、元のイメージを大切にしつつ、画面比率を4:3から16:9へとアレンジしています。ちなみに、マップNo.は当時のままです。
アイテムなどは、バトルパーツなど今作で新規追加したものはあります。あと、プレイしていただければわかりますが『スーパーアラビアン』の壺とか『マーカム』の敵を出したり、サンソフト要素をふんだんに盛り込んでいますね。
これはファン向けの要素でもありますし、新しい層のプレイヤーの方にも新鮮に感じられるんじゃないかなと考えています。

稲垣:実際、新しい画面のデザインはほとんどの要素が作り直しなので、どうやって昔のファンにも受け入れてもらえるか、という点には悩みました。
レトロ感と新しさのバランスを取るために、メガドライブ風のピクセルアートを採用したのもそういった考え方からですね。先ほど言ったモンスターも、動きは踏襲したままデザイン変更を行ったりしています。
これまでのシリーズになかった、マッドエックスの後部やカンハルー軍団のマークとかも制作しました。マッドエックスなので、後ろに目立つように「X」のデザインを入れています。タイトルが『ROUTE16R』なので、Rじゃないのかよ!なんて言われたりもしました(笑)
大山:カンハルー軍団だから「カンガルー」の意匠だよね、とかそういう話もありましたね。
稲垣:一応カンガルーっぽくないデザインもあったんですが、その流れもあってカンガルー風のデザインになってますね。レトロと現代のバランス取りは、本当に苦労しています。
その話で言うと、ゲームの後半に『いっき』をモチーフにしたステージがあるんですが、きれいに描いていたら違和感があって、結局ファミコン版のものを使わせてもらったりもしました(笑)
――当時のディレクター竹内さんから見て、「よくぞ残してくれた!」と感じたポイントはありますか?
竹内:カンハルー軍団の名前を残してくれたのが嬉しいですね。キャラクター名とかも残してくれていますが、オリジナルキャラクターの名前は当時のサンソフトのメンバーの名前をもじったものなので、残っているのは嬉しいです。

――全体マップ(レーダー)と拡大マップ(メイズ)という、性質の違う2つの画面を行き来するシステムは当時かなり斬新でした。切り替え時に処理速度を落とさずに同期させるため、どのような工夫をしたのでしょうか?
川部:とにかくスムースに切り替えることを考えました。そのまま切り替えるのも味気ないので、当時の技術は使えるツールや技術も少なかったんですが、上手く作れたんじゃないかなと思います。
竹内:『ルート16』では瞬間的に切り替わってしまうので、それだと場所がわかりづらくなることもありました。切り替え演出を入れたことでわかりやすくなったのは、川部さんの工夫があったからだと思います。
メイズモードに切り替わった瞬間に敵に追い込まれているのも面白い要素だと思います。『ルート16ターボ』では、メイズにナンバーがあり、その形を覚えておくというのもありますね。
『ROUTE16R』公式サイトはこちら■ 敵車の「いやらしさ」を表現する座標処理のこだわり
――『ルート16』の敵車は、ただプレイヤーを追うだけでなく、回り込んできたり進路を塞いだりと非常に賢く動きます。当時は複雑なAIを組む余裕はなかったはずですが、どのように「いやらしい動き」をプログラムに落とし込んだのでしょうか?
野村(メール回答):敵の車の動きは3種類だった気がします。
1つは基本の動きで、角(交差点)に来たらX軸とY軸をプレイヤーに近づく方向に曲がる。曲がれない時は道なりに進む。
他の2つは基本の動きに時々ランダムでX軸とY軸をプレイヤーに近づく方向と反対方向に曲がる。基本の動きに時々ランダムで進行方向の右に曲がる。
のような感じで作りました。
特別変な動きを狙った訳ではなく、3種類の動きがたまたまいやらしい動きに見えただけだと思います。
川部:敵の動きは野村さんがやっていました。プログラム自体はそこまで複雑ではないんですが、うまく組み合わさってゲーム内の動きになったんだと思います。
すごいと思うのは、敵がメイズにハマって抜けられなくなるというのがほとんどないことだと思います。こちらの動きに合わせて動くのに、敵がほとんどハマらないんですね。もしかしたら、忘れてる工夫があるかも知れませんけど(笑)

■ アイテム・ギミック・隠し要素
――『ルート16ターボ』にはさまざまなアイテムやギミックにくわえ、隠し要素がありました。『ルート16R』でもこうした"遊び心"は健在でしょうか?ネタバレにならない範囲で「これは探してみてほしい」というヒントがあれば、ぜひ!
大山:『ルート16ターボ』に存在した隠し要素はしっかりと盛り込まれていますので、ぜひ探してみてください。また、原作では目視できなかった隠し障害物「コフン」を、今回は見えるようにしました。
これにより、敵をコフンへ誘導して倒すという戦略がとりやすくなっています。ただし、誘導に夢中になりすぎるとマイカーで踏んでしまうリスクもあります。コフンをうまく活用しないと突破できないボスステージも用意していますので、ぜひ練習してマスターしてください。
今作はぶつかることでバトルが発生するシステムなので、ゲーム内から「ファルグ(旗・これを取るとしばらくの間敵車を倒せるようになる)」は撤廃しています。その代わり、マルチプレイで集める目標としてファルグは用意しています。

川部 :『ルート16ターボ』では、面白い要素としてハガキを使ったプレゼント企画もありました。ゲーム内のステージクリアで文字を集めて応募するもので、早いもの勝ちでプレゼントが貰えるというものです。これは『スーパーアラビアン』でもありましたね。
■ BGMとサウンド
――『ルート16ターボ』のBGMが大好きなので、アレンジBGMは非常にうれしいものでした。小井さんは当時の楽曲を作られたご本人として、今回のアレンジはどう感じていますか?『いっき』も含めて、当時の制作秘話なども、もしあればぜひこの機会に教えてください!
小井:最初に担当した『いっき』はコミカルなだけでなく、プレイヤーが攻撃をするという要素も融合する必要があったので、そのバランスは難しかったですね。
私は元々クラシックの作曲家だったのもあって、ポップスには疎い部分もあってとても悩んだんです。その当時、大学からマンドリンオーケストラの委嘱を受けて、その時作った曲「マンドリンオーケストラの為のリフレクション」が、日本的な要素を持ったうえで激しい曲になったんです。
それがどう考えても『いっき』にピッタリだったので、その曲の一部分を使ったんです。僕が作った曲でもあったので、権利的にはまったく問題ないんですけど、当時『いっき』を遊んだ学生が、自分が演奏した曲が流れて不思議だったみたいです(笑)
次に手がけた『ルート16ターボ』は疾走感が重要で、これもマンドリンオーケストラ向けに作った別の曲「マンドリンオーケストラの為の交響二章」の一部を使ったんです。ポップスだけでなく、クラシックのニュアンスも若干入った仕上がりになっていると思いますね。
ゲーム音楽に携わることにより、クラシック音楽の世界ではあり得ない程、多くの人に聴いていただいておりますし、自作品の一部をゲーム音楽に、という選択は間違いではなかった、と確信しております。
『ルート16R』のアレンジもすごくいいと思います。やはりオリジナル作品の音づかい、ハーモニーと若干異なる箇所はありますが、これも個性や刺激が増しているので、これはこれでアリですね。
■ コレクション&コレクターズBOX
―― 同日に『ルート16』『ルート16ターボ』もリリースされ、3作品セットのコレクション、さらにコレクターズBOXも発売されるとのこと。レプリカカセットに取扱説明書が付属するそうですが、これは当時の内容を忠実に再現したものなのでしょうか? BOXの企画で特にこだわったポイントも教えてください。
伊奈:特装版は金カセットなんですが、それ以外の部分は忠実に再現されています。先ほど川部さんがおっしゃっていましたが、当時はファミコンの箱の中にはがきが入っていて、そういったものも再現されています。
あとはアーケード版『ルート16』のアクスタもあるんですが、まさか『ルート16』のグッズを今作ることになるとは思いませんでした(笑)
――ファミコンのカセットが入ってたプラスチックケースも懐かしいですね!

――当時はスーパーカーブームなどもあり、皆さん車に関する思いはあるのでしょうか?なにか面白い車に関するエピソードがあれば教えてください。
竹内:川部さんと野村さんは車好きだったので『ルート16ターボ』の開発は適任だったと思います。川部さんは色々な伝説がありますよね、走り屋の車を持っていたとか、川に転落したとか。
川部:それは完全にデマです(笑)。乗っていたのはスプリンタートレノですし、大衆車ですよ。
小井:いやいや、十分に憧れの車ですって!
川部:川に落ちたというのも実際には違う話で、川沿いの堤防ではなく、中(なか)堤防から斜面を2回くらい転がり落ちて着地したんです。10メートルくらいあったのかな?
体は無傷でしたけど、車はボロボロになりましたね。左側面がボコボコで、タイヤが何個かパンクしました。それでも廃車にしないで、修理して乗っていましたね。
竹内:実はこのエピソードを川部さんから直接聞いたのは今回が初めてなんですよ。伝説がついに明らかになりましたね(笑)
■ 読者へのメッセージ
――それでは締めくくりに『ルート16』に対する想いや、読者の皆さんへメッセージをお願いします!
伊奈:これからもサンソフトのゲームをよろしくお願いします!
竹内:『いっき』『アトランチスの謎』『東海道五十三次』とか、タイトルの理由を聞かれる事が多いんです。でも『ルート16』ではほとんど聞かれることがなくて、不思議とゲームとして違和感なく認識されてるんだなと感じています。
『ROUTE16R』だけでなく、過去作も発売されるのでこちらも楽しんだり、懐かしがったりしてほしいですね。
大山:個人的にドットイートタイプのインディーゲームを制作していたこともあり、まさか自分が『ルート16』という歴史あるタイトルに関われるとは夢にも思いませんでした。コレクションでは新旧3作品が収録されているので、遊んでみて新しい発見や新鮮な部分を見付けてもらえれば嬉しいです。
当時『ルート16ターボ』をプレイした方には懐かしく、今回初めて触れる方には自分のペースでまったりと楽しんでいただける仕上がりになっています。
最大4人で遊べるマルチプレイは、集まれば間違いなく白熱しますので、ぜひ皆さんでワイワイ楽しんでいただければ幸いです。
稲垣:『ROUTE16R』ではデザインを担当しました。色々と再解釈したので過去のファンの方がどういった反応をするのかは怖いところもあります。
先ほどの竹内さんの話で「マッドマックス」のイメージだった(※)と聞いて、僕の中では「ブレードランナー」かな、と思っていたので、これもドキドキしています(笑)
(※竹内さんにとっても、公式設定ではなく個人的なイメージだったとのことです。)
川部:個人的にはそこまで思い入れが強い作品ではなかったんですが、みなさんが『ルート16』シリーズを愛してくれていて、現代に新作も出てくれました。
言い方は少し悪いですが、この時代は何でも作ればそこそこ売れていました。もちろん質の良いものを作ろうという思いはありました。それがこれ?って思うかもしれませんが……。この経験が生かされたかどうかわかりませんが、後に野村さんの『ファンタジーゾーン』『へべれけ』などの「これがファミコンか!」という傑作ができたと思いたいです。
この先さらに新しい作品が出るかも知れません。ぜひとも遊んでみてください。
小井:結婚式のスピーチで『いっき』の作曲を担当したんだと自己紹介すると、歓声が上がってサインを頼まれることが3回くらいあったんです。それくらいみんなが愛してくれているのが嬉しくて、幸せなことだと思います。
『ルート16』シリーズも、そういう道を辿ってくれると嬉しいと思います。発売おめでとうございます。
野村(メール回答):正直なところ当時はよくわかっていない状態で勉強期間だったと思います。
少ない容量、短い開発期間、少人数で自分のような勉強中の人間がいて川部さんは苦労したと思います。この頃に川部さんに色々教えてもらって経験したことである程度自信を持つことができました。
――ありがとうございました!
■最後に41年越しの驚きの情報が……?
この後も新旧開発メンバーの方とゲームについて色々なお話を伺いましたが、ここで掲載できない内容もあるので申し訳ないのですが、割愛させていただきます。
しかし、そんななかでもゲームコレクターやゲームの歴史マニアにはたまらない情報が。
実は、ファミコン版(記事執筆時点でNintendo Switch Onlineで配信されているものも含めて)『ルート16ターボ』は「ステージ9」でクリアできなくなるという“伝説のバグ”がありました。
しかし……実はたった一本だけ「クリアできるバージョンのカセット」が存在していたという驚きの情報が!当時、「クリアできない」と問い合わせた特定の方のために、川部氏が(手作業でROMを差し替えた)修正版のカセットを1本だけ作って送ったのだそう。
そのたった一本の“幻のバージョン”は、貴重どころじゃないものです。川部氏いわく、外見的には通常の『ルート16ターボ』のカセットと区別できるようにはしていなかったとのことなので、もしかしたら、流れ流れて読者の皆様方の手元のカセットが…ということもあるのかも……?
いずれにしても、もはや現存しているのかすらわからない、当時品のとんでもない“幻のバージョン”ですが、今回新たにリリースされる『ルート16ターボ』は同様に不具合が修正され、全ステージが遊べるようになったものです。
言い換えれば、今回の再リリース版でみんなが“幻のバージョン”を遊べるわけですね!

『ROUTE16R』は、PC(Steam)/ニンテンドースイッチ向けに2026年8月6日リリース予定。同日に『ルート16』ならびに、(前述の当時の大きな不具合が修正された)『ルート16ターボ』もリリースされます。
また、上記3作品が収録された『ROUTE16 COLLECTION』、超貴重な「レプリカ金カセット」やアクリルスタンドが付属する「コレクションBOX」も発売されます。詳細は公式サイトをご確認ください。
『ROUTE16R』公式サイトはこちら












