PS2を筆頭に、2000年代初頭のコンソール市場は「サバイバルホラー黄金期」のただ中にありました。『バイオハザード』の成功に始まり、『サイレントヒル』『零』『SIREN』など、各メーカーが独自の恐怖表現を磨き上げていた時代です。
その渦中、フランスのデベロッパーHydravision Entertainmentが2007年に世に送り出した『Obscure II』(北米版タイトル:Obscure: The Aftermath)は、他のどの作品とも異なる強烈な異彩を放っていました。

本作のアイデンティティを一言で表すなら、「90年代~2000年代前半の海外B級ティーンホラー映画のゲーム化」と言えるでしょう。「スクリーム」、「ラストサマー」、「ファイナル・デスティネーション」といった学園スプラッターやパニックホラーの王道プロットと、サバイバルホラー独特の緊張感を完璧に融合させているのが特徴です。

そこで本稿では、その不気味でポップな世界観、唯一無二の協力プレイシステム、そして容赦なく惨劇に巻き込まれていくキャラクターたちの魅力を深掘りしていきます。
◆完璧な「B級パニックホラー映画」風の世界観

物語の舞台は、前作『Obscure』で描かれたリーフモア高校の惨劇から2年後。過酷な事件を生き延びた主人公たちは、新たな生活をスタートさせるべく「フォールクリーク大学」へと進学していました。
しかし、平穏なキャンパスライフは長く続きません。大学のあちこちには、突如として見慣れない「不気味な黒い花(モルティフィリア)」が咲き始めます。
学生たちはこの花から精製された黒い物質を、幻覚を誘発する新しい“ドラッグ”としてパーティで乱用。無警戒な若者たちが悪ノリと狂宴に興じる中、ついにその種子が発芽し、恐怖の変異が引き起こされる……という、B級ホラー特有の「お約束」を忠実にゲームでも再現されています。

作品全体を包み込む湿り気のあるゴシック調のダークさと、アメリカン・ティーンの軽薄な空気感が混ざり合った独特の雰囲気は、当時の海外ホラー映画を深夜のテレビで観ているかのような強い没入感をもたらしてくれます。
◆特徴的なゲームシステム:「協力」と「光」が鍵を握るサバイバル

本作は、単に雰囲気を似せただけのキャラゲーではありません。サバイバルホラーとしても、当時としては非常に先鋭的なシステムを採用していました。
★「オフライン2人協力プレイ(Co-op)」
多くのホラーゲームが「孤立無援の恐怖」を描くなか、本作の最大の特徴は「常に2人1組で行動する」点にあります。本作のCo-opは、画面分割ではなく1つの画面を2人で共有するタイプ(ローカル画面分割なし)のオフライン協力プレイです。
途中参加・脱落自由のローカルCo-op: 2人目のプレイヤーがいつでもコントローラーを取って参加可能。ソロプレイ時はCPUが相棒を操作し、プレイヤーは瞬時に操作キャラを切り替えることができます。
分業制のアクション&パズル: 一人が敵を引きつけている間に、もう一人が鍵を解錠する、あるいは二人で協力して重い障害物を動かすなど、常にタッグで切り抜ける設計になっています。

「一人で遊ぶとしっかり怖い」一方で、友達と遊ぶと「後ろ後ろ!」とか「弾無くなった助けて!」とパニック映画の主人公さながらの盛り上がりを見せる、2つの側面を持った稀有なゲームデザインです。今思えば、『リトルナイトメア』などの協力ホラゲーの雛形になっていたのかもしれませんね。

★光と闇の攻防:懐中電灯とダイナミックな戦闘
敵となるモンスターたちは、暗闇を好むため、そのまま攻撃してもダメージが通りにくいという特徴があります。

ここで重要になるのが「光(ライト)」です。プレイヤーは銃火器だけでなく、懐中電灯などの光源を使って弱体化した上で弾丸を撃ち込みダメージを通しやすくする必要があります。懐中電灯の電池残量に気を配りながら、相棒と射線を交差させて戦う緊迫感は、本作の戦闘を単なる作業にさせない素晴らしいアクセントとなっています。

★多彩な武器とクラフト要素
ハンドガンやショットガンといった定番の火器に加え、チェーンソーやスタンガン、ダイナマイト、さらにはバットや鉄パイプといった近接武器も登場します。弾薬が非常に限られているため、雑魚敵は近接武器で殴り倒し、ボス級には貴重な弾薬を投入するというリソース管理のジレンマも、しっかりと古典派サバイバルホラーの醍醐味を継承しています。
◆異なる能力を持つ個性的な操作キャラクター

本作に登場する人物たちは、海外ホラー映画の「テンプレート」に見事ハマったようなキャラが盛りだくさんです。彼らはそれぞれ固有の特殊能力を持っており、探索やパズルの場面で能力を使い分ける必要があります。
具体的に操作可能なキャラクターたちを以下に紹介したいと思います。
★コリー・ワイルド (Corey Wilde)

コリーは、スケートボードと車を愛する、いかにもアメリカンな今どきの青年です。金髪で少し軽いノリですが、身体能力が非常に高く、本作の実質的なメイン主人公ポジションを担います。
固有能力は、高いフェンスを飛び越えたり、壁の突起を掴んで通常では登れない高所に登ることができる「アクロバット」。ちなみに、メイと付き合っており、彼女を深く愛しています。
★メイ・ワン(Mei Wang)

メイはアジア系の女性で、コリーの恋人でもあります。ハッキングや電子機器の扱いに天才的な才能を持つ、グループの頭脳派。常に携帯ゲーム機(PSP風の端末)を持ち歩いています。
彼女の固有能力は、電子ロックされたドアやセキュリティシステムを、ミニゲーム(暗号解読パズル)をクリアすることが可能な「ハッキング」です。
★ケニー・マシューズ(Kenny Matthews)

ケニーは「シャノン」の実の兄弟で、前作ではアメフト部のスターでしたが、惨劇のトラウマを抱えています。彼の固有能力は、スヴェンと同様に、重い物を動かすことができる「怪力」です。
物語の中盤、ついに体内の胞子とドラッグが完全に融合。理性を失い、巨大でグロテスクな本作のレギュラーボスモンスター(変異体)へと変わり果て、かつての仲間たち(妹のシャノンや親友のスタン)を襲う悲劇の存在となります。
★エイミー・ブルックス(Amy Brooks)

エイミーは非常に美しく聡明な女子大生です。カレッジ内でもモテる存在で、スヴェンやケニーからアプローチを受けています。鋭い観察眼を持っており、謎解きにおいて重要な役割を果たします。
彼女の固有能力は、一見すると何も見えない壁や床に隠された「かすかな手がかり(文字や模様など)」を発見し、複雑なパズルを解くことができる「暗号解読・パズル分析」です。

『Obscure II』を傑作たらしめている最大の要素、それは「誰がいつ死ぬか予測がつかない容赦のないストーリー展開」です。
通常のゲームであれば、「プレイアブルキャラ=生存フラグ」であり、死亡するとしても物語のクライマックスで劇的な犠牲を払うのが一般的です。しかし本作は、海外ホラー映画の惨劇を忠実に再現しているのです。

たとえば、さっきまで自分が操作し、愛着を持って謎を解いていたキャラクターが、次のカットシーンではあっけなく凄惨な方法で命を落とします。前作を生き延びて「もう安全だろう」と思われていたキャラクターたちすら例外ではなく、容赦のない悲劇や恐ろしい変貌が待ち受けています。
「味方の誰が最後まで生き残れるのか?」「誰が最後に笑うのか?」というハラハラ感は、プレイヤーを画面に釘付けにする強烈な魅力となっています。
◆今こそ遊んでほしい、愛すべきB級スプラッターホラー

本作は、大作ゲームのような洗練された操作性や超高画質グラフィックを持っているわけではありません。時には強引なストーリー展開や、癖のあるカメラワークなど、ホラーゲームとしての完成度は高いとは言えません。
しかし、「金曜の夜、友達とピザを頼み、ツッコミを入れながらB級ホラー映画のVHDを観たあの楽しさ」をそのままゲーム体験へと昇華させた作品として、本作の代わりになるタイトルは今なお存在しません。その強烈な残酷描写、突如として訪れる別れ、癖の強い個性的な登場人物たちは、今なおプレイヤーの心に残っています。

もし2000年代のレトロホラーや、80~90年代の海外スプラッター映画の空気が好きなら、ぜひ一度プレイしてみてはいかがでしょうか。











