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縦画面プレイ、3Dサウンド、遊ぶと死ぬ呪いのゲーム…DS傑作『ナナシ ノ ゲエム』が“体験型ホラー”として今なお色褪せない理由【特集】

DSの特性を活かした恐怖演出が光る、名作ホラーゲームを再考。

連載・特集 特集
縦画面プレイ、3Dサウンド、遊ぶと死ぬ呪いのゲーム…DS傑作『ナナシ ノ ゲエム』が“体験型ホラー”として今なお色褪せない理由【特集】
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古くはゲームボーイカラーの『バイオハザード GAIDEN』や、PSPの『サイレントヒル ゼロ』、ニンテンドーDSの『トワイライトシンドローム 禁忌の都市伝説』、近年ではPS Vita出身の『夜廻』シリーズなど、実はホラーゲームの宝庫である携帯ゲーム機。

今回紹介するのは、2008年7月3日、スクウェア・エニックスからニンテンドーDS向けに発売されたホラーゲーム『ナナシ ノ ゲエム』です。

開発はepicsが担当し、二画面やタッチパネル、立体音響といったDSというハードウェアの特殊性を極限まで引き出した独自設計がなされています。

また、「プレイすると一週間以内に必ず死ぬ」という「リング」風のテーマで、プレイヤー自身が呪いに巻き込まれていく没入感の高さから、携帯ゲーム機における傑作ホラーゲームとして評価されています。

本稿では、日常をじわじわと侵食していく和風ホラーの美学と、ゲーム機そのものを恐怖の媒介へと変貌させた革新的なシステムの両面から、本作がなぜ傑作であるのかその魅力と理由を探っていきます

◆「遊ぶと一週間以内に死ぬ」呪いのゲームと“スクエニ”的世界観

本作は、「1週間(7日間)」という限られた時間の中で展開する緊迫したサスペンスホラーが物語の主体です。

主人公が所持する携帯ゲーム機「TS(Twin Screen)」に配信されてきたのは、タイトルすら存在しない『ドラクエ』や初期『FF』のような謎のレトロRPGでした。

謎のレトロゲーム

巷で噂されていた「一週間以内にクリアしなければ死ぬ」という呪いのゲームを手にしてしまった主人公は、実際に怪死を遂げた大学の先輩や友人の足跡を辿りながら、自らの命を救うために呪いの真相へと足を踏み入れていくことになります。

長沢理子

本作のストーリーにおける最大の魅力は、映画「リング」の呪いのビデオテープや「着信アリ」の不気味な着信音のように、「日常生活の中に存在する身近なデジタル機器」を恐怖の入り口に仕立てた点にあります。

大山教授

プレイヤーがゲームを進めるにつれて、主人公が生きる現実は不穏な気配に覆われていきます。昼間の大学のキャンパスから始まり、雑居ビル、薄暗い廃病院、寂れた商店街など、誰もが足を踏み入れたことのある日常的な空間が、次第に異界へと姿を変えていきます。

この「見慣れた風景が徐々に壊れていく恐怖」こそが、Jホラーの醍醐味であり、本作のストーリーラインを支える強力な骨組みとなっています。

また、前述のように主人公の携帯端末に突然配信されるレトロゲーム風の「呪いのゲーム」(2D画面)をプレイすることで、現実世界(3D画面)に異変が起こるという、リアル世界と仮想世界が交差する「入れ子」の構造になっている点も面白いんですよね。

さらに、「呪いのゲーム」自体が2Dピクセルの王道RPGっぽい仕様になっている点も、発売元の「スクエア・エニックスらしさ」の融合が存分に感じられる世界観でした。

「ルグレ」登場シーン

そうして主人公がいる現実世界では、「呪い」が徐々に表面化していきます。探索パートにおいて、プレイヤーの脅威となるのが「ルグレ」と呼ばれる不気味な怨霊(敵キャラクター)です。

白い肌に黒い穴のような目口を持つ異様な姿で、触れると即ゲームオーバーとなる厄介な存在で、その正体は呪いのゲームの犠牲者の成れの果てであり、近づくと猛スピードで襲いかかるタイプもいます。ちなみに南斗大の大山教授が命名し、フランス語で「後悔」を意味します。

彼らが近くにいる場合、「呪いのゲーム」画面にノイズが入るなど強く影響を受けるので、逆にその性質を利用してルグレの位置を特定することも可能です。

怪死したかつての友人たちが姿を変えて襲いかかってくるという圧倒的な絶望感と、その背後に隠された呪いの誕生にまつわる切なくも恐ろしい人間ドラマが重なり合い、プレイヤーを深く物語へと引き込んでいくのです。

◆縦画面、3D音響…携帯機ならではの「恐怖」を追求したゲームシステムと没入感

『ナナシ ノ ゲエム』が現在でも高く評価される理由は、ストーリーだけではありません。ニンテンドーDSというハードの特性を最大限に生かしたゲームシステムこそ、本作最大の魅力といえるでしょう。

最も印象的なのが、本体を「縦向き」と「横向き」で持ち替えるゲームデザインです。現実世界を探索するときはDSを本を開くように縦に持ち、主人公の視点で周囲を見回しながら移動します。一方、「呪いのゲーム」を遊ぶ場面では本体を横向きに持ち替え、昔ながらのRPGをプレイする形式へ変化します。

単なる操作方法の違いではなく、プレイヤー自身がゲーム機の持ち方を変えることで、現実世界とゲーム内世界を身体的にも切り替える感覚が生まれます。この発想は当時として非常に斬新であり、ゲーム機そのものが恐怖演出の一部になっていました

また、本作を語るうえで欠かせないのが没入感のある3Dサウンドです。イヤホンの装着が推奨されており、後方から聞こえる足音や遠くから近付いてくる物音、耳元で囁かれるような声など、音だけで恐怖を演出する場面が数多く用意されています。

画面には何も映っていないにもかかわらず、「今、後ろに何かいるのではないか」と錯覚してしまう瞬間が何度も訪れ、プレイ中の恐怖を倍増させていたのは間違いないですね。

実際にプレイしていて特に印象に残るのは、「敵が現れた瞬間」ではなく、「何も起こらない時間」です。静まり返った空間を一歩ずつ進んでいるだけなのに、いつ何が飛び出してくるのか分からない緊張感が続き、気が付けばDSを握る手に力が入っていました。イヤホンから聞こえる小さな物音だけで思わず振り返りたくなる感覚は、携帯ゲーム機であることを忘れてしまうほどです。

ゲーム内のレトロRPGも単なるミニゲームではありません。画面が突然乱れたり、通常では考えられない現象が起きたりと、「ゲームそのものが呪われている」と感じさせる演出が数多く盛り込まれています。昔のゲームにまつわる都市伝説やバグの噂を知っている世代ほど、その不気味さはより強く伝わるでしょう。

さらに、タッチペンによる探索や謎解きも没入感を高めています。画面に直接触れて調べるという行為そのものが、「自分の意思で恐怖へ踏み込んでいる」という感覚につながっています

プレイしているうちに、自分が主人公を操作しているのではなく、自分自身が呪いに巻き込まれているような錯覚を覚えてくるでしょう。この体験こそが、『ナナシ ノ ゲエム』が他のホラーゲームにはない魅力を持つ理由だと感じます

ハードの限界を超えた「体験型メタホラー」の最高峰

本作は、ただジャンプスケア演出だけに頼ったホラーゲームではありません。ゲーム機の持ち方、視点、音響、操作方法、そのすべてを恐怖体験へ結び付けることで、「ゲームを遊ぶ」こと自体をホラー演出へ昇華させた作品です。

据え置き機のホラーゲームとは異なり画面とプレイヤーの距離は近く、そのプレイ環境だからこそ、本作は圧倒的な没入感のある恐怖を生み出していました

2009年には続編である『ナナシ ノ ゲエム 目』も発売され、シリーズとして恐怖演出はさらに進化しました。しかし、縦画面による探索やレトロRPGとの融合、「七日後に死ぬ」という都市伝説をゲーム体験そのものへ落とし込んだ初代『ナナシ ノ ゲエム』の衝撃は、今なお色褪せていません。

携帯ゲーム機には数多くの名作がありますが、本作ほどハードの特性を恐怖演出へ昇華し、プレイヤー自身を物語へ巻き込んだ作品は極めて稀です。

だからこそ『ナナシ ノ ゲエム』は、単なるホラーゲームではなく、「携帯ゲーム機史に残る体験型ホラー」と呼ぶにふさわしい一本なのです。今なお多くのファンが本作を語り継ぐ理由は、その怖さだけではなく、「ゲームでしか味わえない恐怖体験」を完成させた作品だったからなのだと思います。

DS本体および本作は、現在も比較的手頃なお値段で購入できるので、気になった方はぜひ一度プレイしてみては。

ナナシ ノ ゲエム
¥4,378
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
ナナシ ノ ゲエム 目
¥3,438
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

※UPDATE(2026/08/10 13:27):記事内容を修正しました。

《DOOMKID》


心霊系雑食ゲーマー DOOMKID

1986年1月、広島県生まれ。「怖いもの」の原体験は小学生の時に見ていた「あなたの知らない世界」や当時盛んに放映されていた心霊系番組。小学生時に「バイオハザード」「Dの食卓」、中学生時に「サイレントヒル」でホラーゲームの洗礼を受け、以後このジャンルの虜となる。京都の某大学に入学後、坂口安吾や中島らもにどっぷり影響を受け、無頼派作家を志し退廃的生活(ゲーム三昧)を送る。その後紆余曲折を経て地元にて就職し、積みゲーを崩したり映像制作、ビートメイクなど様々な活動を展開中。HIPHOPとローポリをこよなく愛する。

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