インドネシアを拠点とするパブリッシャーGame Changer Studiosは、同国を中心に開発された、方向性の大きく異なる2つの新作に新たに日本語を実装し展開中です。
ひとつはPS5版が8月8日に発売されたばかりの、1998年のアジア経済危機を題材にした重厚なPC/PS5向けナラティブアドベンチャー『1998: The Toll Keeper Story』。
もうひとつは、5月25日に日本語が実装された、タロットをテーマにした癒しのPC向けビジュアルノベル『The Spirit Weaver』です。
本記事では、両作の開発者および、パブリッシャーとしてのGame Changer Studiosへのメールインタビューを通じて、それぞれの作品に込められた思いに迫ります。
『1998: The Toll Keeper Story』Steamストアページはこちら!『1998: The Toll Keeper Story』PSストアページはこちら!『The Spirit Weaver』Steamストアページはこちら!Game Changer Studiosについて
Game Changer Studiosは、『My Lovely Daughter』『My Lovely Wife』『My Lovely Empress』という「My Lovely」三部作で知られるインドネシアのスタジオ。ファンタジー色の強いダークな世界観で多くのプレイヤーを魅了してきました。
今回リリースされる2作は、そんな同スタジオのこれまでの作風とはまた異なる、新たな挑戦です。
『1998: The Toll Keeper Story』

1998年当時、インドネシアをはじめとするアジア諸国は深刻な経済危機に見舞われました。各地で暴動が何日にもわたって発生し、多くの都市が荒廃し、多くの命が失われました。Game Changer Studios自身が手掛ける本作は、この時代をテーマに開発された作品です。
プレイヤーは妊娠中の女性デウィとして、東南アジアにある架空の国家「ジャナパ」の料金所で仕事をしながら、市民の不安と経済混乱が渦巻く危機の中に巻き込まれていきます。国はすでに崩壊の危機に瀕しています――デモが巻き起こり、物価は急騰し、権力への信頼は失われる一方です。
プレイヤーは料金所で、通行する車両を検査し、書類を確認し、誰を通すか判断しながら、安全と仕事、そしてまだ見ぬ我が子を守り抜く使命を果たさなくてはなりません。
Game Changer Studios開発者インタビュー

――本作は1998年の経済危機という非常にセンシティブな歴史をベースにしていますが、このテーマをゲームとして描こうとした理由を教えてください。
私たちは、ゲームの中でこうした重い歴史的出来事を扱うことが、いまだにタブー視されていることは十分理解しています。しかし一方で、暗い歴史を題材にしたゲームが学びの媒体になり得ることも知っています。
私自身、1998年の暴動を思い出すと今でもトラウマがあります。当時私は大学生で、国全体が崩壊し、暗闇へ突き落とされていくような雰囲気を実際に体験しました。このトラウマは、現在でも多くのインドネシア人が抱えています。
だからこそ、このゲームを通して、あの暴動を忘れず、二度と繰り返さないようにという思いを伝えたいのです。
――プレイヤーに“楽しい”ではなく、“苦しい選択をさせる体験”を提供している点が印象的です。この感情設計はどのように考えられていますか?
1998年の暴動を実際に経験したナラティブデザイナーとして、この作品のストーリーを作るのは決して簡単ではありませんでした。
私は当時のインドネシアの人々の感情を、この作品の物語の中でできる限り表現したいと考えていました。しかし同時に、暴動によって友人や家族、家、仕事、さらには国籍までも失った多くの人々の悲しみを忘れてはいけませんでした。
そのため、物語やビジュアル面では、あえて描かなかったことも数多くあります。また、このゲームは実際の出来事をそのまま再現したものではありません。
――『Papers, Please』のような作品に通じる構造を感じますが、本作ならではの独自性はどこにあると考えていますか?
私は『Papers, Please』のような作品が大好きです。あのゲームはまるで私を追い続ける亡霊のような存在です。
実際、2024年に『My Lovely Empress』を完成させ、『My Lovely』三部作を締めくくった時から、『1998: The Toll Keeper Story』を作ろうと決めていました。
私にとって、『Papers, Please』ほど深い物語を作ることは不可能です。
一方で、『1998: The Toll Keeper Story』には、ゲームではまだ珍しい東南アジアならではの世界観と空気があります。また、主人公を妊婦にしたことで、物語・ビジュアル・プレイヤーの感情のすべてに独特の力が生まれています。
――主人公が「妊娠中の女性」であることは、ゲーム体験にどのような影響を与えると考えていますか?
正直に言うと、最初は主人公のデウィは妊娠していませんでした。
しかし物語を仕上げる段階で、意図的に彼女を妊婦という設定にしました。
そのことで、プレイヤーはより大きなプレッシャーや葛藤を感じ、彼女に共感しやすくなると思います。
もちろん、その分ストーリー作りはずっと難しく、複雑になりましたが(笑)。

『The Spirit Weaver』

『The Spirit Weaver』はインドネシアのStarBullet Studioが開発し、GameChanger Studioがパブリッシングを担当する、タロットをテーマにしたナラティブなビジュアルノベルです。
プレイヤーはタロットリーダーのアローラとなり、スピリチュアルな世界で“エントロピー”と呼ばれる超常的な脅威に立ち向かい、タロットの力を使って、悲しみの中を彷徨う精霊たちを導いていくことになります。
現実のタロットと同じように、カードの解釈に「正解」や「不正解」はなく、プレイヤー自身のタロットリーディングが、世界の運命と物語を左右します。
StarBullet Studio開発者インタビュー

――本作はタロットを用いて魂を導くというユニークな設定が特徴ですが、このコンセプトはどのように生まれましたか?
私は(ゲームデザイナーですが)、趣味で時々タロット占いをしています。
私にとってタロットの魅力は、神秘性そのものではありません。むしろ、自分の心を開き、本当は無意識のうちに答えを知っていたり、見過ごしていた道筋を見つけたりするための道具であることです。
その発想から、人々がさまざまな苦難を乗り越えられるよう導く物語へと発展していったのは、ごく自然な流れでした。
――プレイヤーが“選択によって物語を紡ぐ”体験において、どのような感情や気づきを得てほしいと考えていますか?
私が最も伝えたいのは、「悲しみは人と人とを結びつける」ということです。
悲しみがあるからこそ、私たちは互いを深く理解できるのだと思います。
だからこそ、この困難な時代だからこそ、もっと共感し、弱さを見せ合い、支え合える人が増えてほしいと願っています。
――タロットという要素を、単なるテーマではなくゲームプレイとして成立させるうえで、どのような工夫をしていますか?
ちょうどよいバランスを見つけるのは非常に難しく、正直なところ、まだ100%成功したとは言い切れません。
それでも私たちは、タロットができるだけ「対話する道具」になることを目指しました。
本来タロットは直感によって使うもので、それはゲームシステムとしては非常に抽象的です。
そこでカード本来の魅力を損なわないよう配慮しながら、その意味を本質的な部分まで整理し、プレイヤーが選べる解釈をあらかじめ用意し、さらに表示する意味に対応した象徴的なビジュアルを強調するようにしました。
――プレイヤーは結末に対してどの程度まで本当に影響を与えられるのでしょうか?また、プレイヤーの自由度と、あらかじめ用意されたストーリーとのバランスはどのように取っていますか?
『The Spirit Weaver』では、プレイヤー自身の世界の見方が、物語の進み方に大きく影響することを表現したいと考えています。
プレイヤーの成績(つまりゲーム内スコア)がエンディングに影響する一方で、主人公アローラが「悲しみ」や「希望」をどう捉えるかという選択によって、到達できるエンディングが変わります。
つまり、結果だけでなく、その人がどのような意図で行動したかも重要なのです。

パブリッシャー・Game Changer Studiosへのインタビュー
――この2作はかなり方向性や作風が違いますが、Game Changer Studiosはゲーム好きに向けてどのような作品を送り出したいと考えていますか。
『My Lovely Daughter』『My Lovely Wife』『My Lovely Empress』の三部作は、ビジュアルもテーマもファンタジー色の強い作品でした。
一方、『1998: The Toll Keeper Story』は1990年代風のビジュアルで歴史を扱った作品です。そして『The Spirit Weaver』は、もっと日常に近いテーマを、子ども向け絵本のようなクレヨンタッチのアートで描いています。
これらはすべて、それぞれの作品が目指すビジョンやターゲット層に合わせて決めたものです。
ゲームプレイ、ジャンル、物語においてさまざまな選択肢を提供することで、プレイヤーにより幅広く、より深い感情体験を届けられると私たちは考えています。
――日本のユーザーに向けたおすすめポイントがあれば教えてください。
『My Lovely Daughter』や『My Lovely Wife』を気に入ってくださった日本の皆さんは、インドネシアという地域色の強いテーマを扱った『1998: The Toll Keeper Story』に驚いたり、少し戸惑ったりするかもしれません。
また、『The Spirit Weaver』の体験版はSteamでも公開しています。
さらに、この2作品はいずれも日本語に対応しています!
製品情報
『1998: The Toll Keeper Story』
タイトル:1998: The Toll Keeper Story
ジャンル:ナラティブアドベンチャー/シミュレーション
開発元/発売元:Game Changer Studio
プラットフォーム:Steam/PS5
発売日:2025年10月28日(Steam)/2026年8月8日(PS5)
価格(税込):1,400円(Steam)/1,398円(PS5)
ストアページ:
『The Spirit Weaver』
タイトル:The Spirit Weaver
ジャンル:ナラティブアドベンチャー
開発元:StarBullet Studio
発売元:Game Changer Studio/CC_Games/Beep Japan
プラットフォーム:Steam
発売日:2026年4月1日
価格(税込):470円
ストアページ:https://store.steampowered.com/app/3885820/The_Spirit_Weaver/









